蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 10537
レビュー : 1396
  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • ああー、一気に読み切ったー!という達成感。

    正直、最初は恩田陸版『ピアノの森』かぁ、という想いがないではなかった。

    けれど、一人一人の音を、これだけ言葉で描くことが出来るって、本当にすごい。
    それも、物語としてのバランスを欠くことなく、ちゃんと読者を本選まで導いてくれる。
    『羊と鋼の森』はどちらかというと静謐、だけど、こちらはまさに「ギフト」で、ワクワク感が半端なく、楽しすぎた。
    今まで読んだ恩田陸作品の中でも、『夜のピクニック』並みにお気に入りです。

    以下、ネタバレ有。

    この作品の、一つのターニングポイントに亜夜と塵の月夜のセッションを挙げたい。
    亜夜は、その後、マサルと重ね合わすこともあるのだけど、この夜の二人の即興シーンが嬉しくてたまらなかった。

    その後の予選では、二重カギカッコ付きで、塵のピアノと語り合う亜夜がいて。
    本選では、そのカギカッコさえ取れて、塵との会話の中で約束を交わす亜夜がいる。
    そのやり取りに正直涙が出そうだったし、二人が向いている方向は勝負ではなく、常に自分であり、常に世界であることも好ましかった。

    音楽を世界に返す。
    そんな無邪気なことを考え、また実行出来る人はいるのだろうか。
    けれど、また、それは人にしか出来ないことでもあるんだな。

    本選の章に入る前に、改まった気持ちにさせられた。

    以前のレビューにもあるけれど、装丁も素敵!

  • 恩田陸がとある国際ピアノコンクールを描く、音楽小説。
    方々で好評判だが、確かによかった。傑作あるいは名作というより、力作であり、読み応えがすごい。
    ピアノ弾きを主人公に据えた作品は漫画では時々目にするし、そこにある天才の描写や、挫折と成長という青春・成長ストーリーも目新しいものではない。しかし、安定と鋭さを併せ持った文章がなすこの作品は、鮮やかでとても印象深い。
    また、例えば年増のお兄さんを入れるあたり、物語の幅の取り方も上手い。
    音楽や芸術を表現し、読み手に響かせるのは、難しくてセンスがいると思う。バラエティに富んだ作品を一定ペースで書き続けている筆者が書くと、こんなにも安心して読めるものか、としみじみ感動した。
    4

  • 恩田陸の最新作は、ピアノコンクールを舞台にした群像劇。
    のっけから恐縮な話題だが、よく、恩田陸作品の『欠点』として挙げられることに、『オチがイマイチ』『登場人物が優等生ばかり』というのがある。本書の場合、『コンクール』という『ハッキリと順位がつけられる』舞台を描いているので、結論は順位という形で明確に示される。そして後者は基本的に本書でも変わらない。確かに優等生ばかりだ。良くも悪くも。
    しかし、それでも私は本書を恩田陸の『最高傑作』に挙げる。個人的に好きな作品は色々あるが、傑作ならこれしかない。
    理由はたったひとつ、私は読んでいる最中、本当に音楽を、ピアノの音を聴いたからだ。文章だけで読者の中にピアノの音を響かせた、その一点で本書は『傑作』と呼ぶに相応しい。ずっと恩田陸の本を読み続けていて良かった。

  • 長編
    音が溢れ出す大作だった!

  • こんなストーリーの紡ぎかたがあるんだ。多幸感に包まれつつ、前に踏み出すチカラを与えてくれる。
    好きな本をヒトに勧めることはタブーと思いつつ勧めてしまった。

  • 圧巻だった。音楽に造形が深くない私でも音源をネットで検索しホントをみながら聞くと情景が浮かんでくるような錯覚を起こした。 出てくる人がみんないい人! コンクールの話なのに他者ではなく己と戦っている姿に感涙。 本は厚いが読み進めるとあっという間に読了できた。

  • 読んでいて、頭の中に曲がイメージできて楽しかった。登場人物がみんな魅力的。
    終わり方はあっさりしていて少し残念。

  • ピアノが聴きたくなる本でした。

    こんな風に音楽を考えたこともないし聴いていなかったので難しかったけれども読み応えたっぷりでした。

    本気で何かに夢中になる人を応援したくなるし
    分からないけれども勝手に音楽が鳴りました。

  • 3年に1度開催される、芳ヶ江国際ピアノコンクールに参加した、音楽の神に愛された若手天才ピアニスト3人と、おじさん。

    彗星の如く表れた、今は亡き巨匠ホフマンの弟子、風間塵は、ホフマンと音楽を外へ連れ出す約束をしていて、自由奔放な演奏で観客を熱狂させ、審査員の物議を醸す。かつて天才少女として活躍していた栄伝亜夜は、引っ込み思案な性格で、母親の死が元で演奏会をドタキャンし、音楽界から姿を消していた。ジュリアード音楽学院で学ぶ、ナサニエル・シルヴァーバーグの秘蔵っ子、マサル・カルロス・レヴィ・アナトールは、容姿端麗でバランス抜群の戦略家。そして28歳、楽器店に勤めるサラリーマンの高島明石は、音楽家になる夢を捨てきれず、遅咲きのチャレンジ。

    物語は、栄伝亜夜が、風間塵の演奏に刺激されて、予選を追う毎に超弩級の進化を遂げる形で展開する。クライマックスは、第三次予選の亜夜の演奏シーン。

    そして、ホフマンの仕掛けた爆弾が、風間塵「自身の才能が起爆剤となって、他の才能を秘めた天才たちを弾けさせる」こと、「型にはまった演奏や、ただ技巧的にうまいだけの演奏ではなく、真に個性的な才能を、風間塵の演奏を触媒として、開化させること」にあることが分かってゆく。

    本作の魅力は、楽曲の美しさ、演奏の素晴らしさが、ビビッドに、これでもかというくらい表現豊かに語られているところにあると思う。曲毎に、草木の質感や匂い、温度や湿度、動物や人々の営みがありありと浮かんでくるのは、読んでいて楽しいし、聴衆の琴線に触れる感動的な演奏がされていると感じられて、心揺さぶられる感じがする。

    例えば、

    「甘さも華やかさもあるのに、彼の音は陰影もあり複雑だ。ヨーロッパの伝統の響き、ラテンの光と影、オリエンタルな詩情、そしてアメリカの闊達さ。それらがすべて無理なく同居し、統合されて彼の音楽になっている」(P137)

    「一音一音にぎっしりと哲学や世界観のようなものが詰めこまれ、なおかつみずみずしい。それらは固まっているのではなく、常に音の水面下ではマグマのように熱く流動的な想念が鼓動している。音楽それ自体が有機体のように「生きて」いる。」(P291)

    「たちまち風景が変わる。
    大きな、年代物の額縁に囲まれた、古い絵。
    くすんだ色の、黄昏の集落。ねっとりとした、亜熱帯のアジアの湿気。草の匂いや、熱風の匂いまで漂ってきそうな光景。古びた塔。
    まるで、パノラマ島。
    まるで3D映画。
    風景が舞台から飛び出してきて、座席に押し付けられるような重力を感じる。」(P386~387)

    ただ残念なことに、YouTubeで同じ楽曲を聴きながら本作を読んでみても、耳から入る音からは、文章に表現されているような幻想的なイメージが浮かんでくることはなかった。文章と楽曲のギャップはいかんともしがたかった。(ちょっと描き過ぎ感もあることだし)本作が描いているのは、あくまで文章でしか味わうことのできない創作の世界なだろうか。それとも、クラシック音楽の世界に身を置く人は、リアルに体験できることが描かれているのだろうか?? 勿論、本作が十分に楽しめないっていうことではないのだけれど…。とても気になる。

    本作、三浦しをんの「風が強く吹いている」とダブルなあ。

  • ピアノコンクールの様子を描いた小説。最初から最後まで一つのコンクールの予選から本線までみっちり描いている。
    最初は登場人物紹介の側面もあってか、次々に人物が増えてきて、一気に読まないと、誰が誰やらわからなくなっていく。ま、それでも最後の方はキャラクターが集約されてきて一気にクライマックスに持っていくので心配はご無用。
    それにしても、音楽の表現を文字だけで表すってのはとても難しい事だと思うけど、この小説は見事にやってのけている。音楽の知識なんて皆無の自分が読んでもとてもわかりやすかった。音楽家の心情の文学的表現や聴衆の反応などを盛りだくさんで、コンクールの緊張感や会場の一体感や圧倒的な迫力が感じる事が出来た。恩田陸すげぇ。

    音楽表現の小説としては中山七里さんの岬洋介シリーズ(「さよならドヴュツシー」など)が好きだったけど、本作品もとても良かった。

    読んでいるうちに誰が優勝するのかはもはやどうでも良くなってきて、みんながんばれ!って気持ちになる。
    爽やかな読後感を感じることができる、良書。

  • これだけの長編なのに会話が少ない本だったなぁ。それだけ音の描写が濃密だった。音楽の理解と知識が乏しい私でも音楽の素晴らしさを感じられた。辛く苦しい努力の上に素晴らしい世界があるんだろうなと想像できた。でも音痴で音楽への興味が薄い自分には描写が理解できないところもあって悔しくもあった。
    恩田陸作品でコンクールというとチョコレートコスモスが印象深くてそちらの方が理解しやすかったけど今読み返したら印象違うかもしれない。読み返して比べてみよう
    登場人物ではマサルが好き

  • 触発されてピアノを買ってしまった。
    文字しか並んでないのに何度も音楽に泣かされてしまった。
    感動よりかは同様、気圧され、に近い。
    映画化されるらしいので映画もぜひ見に行きたい。

  • 全然音楽に詳しくないけど、描写がすごく、なんだか聴こえてきそうなぐらいだった。

    音楽の世界ってすごく深くて、厳しくて、わたしには到底理解しきれないだろうなと思った。

    きっと、ステージに上がる気持ち、演奏が終わったときの気持ちなんてのも、その世界の人にしか計り知れないんだろうな。

    かっこいいな。
    クラシック聴きに行きたいな。

    長編で、予選が繰り返し行われるので途中飽きることもあったけど、すごく読みやすかった。

  • 素晴らしい。
    音楽家の葛藤や喜びを共感する手助けになる。
    読んでよかった。

  • 恩田陸作品の中では今のところ1番好き。
    過酷なピアノコンクールの世界。
    曲の拡がりを、多彩な表現で伝えてくれ、飽きることなく予選から本選まで読み進められる。途中、終わるのが惜しかった。曲を聴きながら、読み進めました。

  • 音楽をテーマに小説を書くのって、本当に難しいと思うけど、この小説は描写だけでピアノの音色が聞こえてくる感じがして、恩田さんの凄さを感じた。ピアノの音色の描写を読むだけで涙がふとこぼれる瞬間もあって、本屋大賞&直木賞受賞は納得!
    それぞれのピアノの音色の特徴も分かりやすいし、キャラクターも個性的かつ親しみやすくて感情移入しやすい。コンクールの結果もどんどん気になってくるので、ボリュームは多いけど、それが気にならないくらい。むしろもっともっと読みたいと思う程。ページをめくるのが惜しいくらい素晴らしい作品でした。是非皆さんに読んでほしい。

  • 優れた音楽家が、言葉のない音楽の中に、風景や心情を描くように、文字だけで表現する小説の中に、見事な音楽を鳴らした作品でした。

    登場人物のほとんどが主人公で、それぞれの一人称によるストーリーで展開していくのに、場面転換や時間の移動に全く違和感なく入り込めました。

    それぞれのキャラクターが漫画のように際立っているから分かりやすい部分はあるにせよ、素晴らしい文筆力です。毎日同じ言語を使って生活しているにもかかわらず、この差は、さすがプロと感嘆しました。

    ストーリー全体を通して私がもっとも影響を受けた考え方は、「仕事は全て同じ時代を生きる人のためにある」ということ。
    モーツァルトやショパンの名曲は現代まで愛され続けているが、それは現代のピアニストが演奏するからこそ感じられる。同じ曲であっても、どう演奏するかによって、与える感情は変わる。つまり作曲者は誰であれ、感情を動かしているのは、今、現代のピアニスト。

    世の中には、形の残る仕事、残らない仕事があるが、「同じ時代を生きる誰かを喜ばせること」。
    後世に残るか、未来の人が感動するかは、オマケみたいなものなのだと思いました。

    今を精一杯生きる人の美しさとみずみずしさを感じる作品でした。

  • ピアノコンクールの話で、ストーリー自体はシンプルだが演奏の描写が素晴らしい。
    全く音楽の知識がない人間が読んでも、音がイメージできるぐらい。
    ここまで表現力の高い作家はあまりいないと思う。

  • 遅まきながらやっと手にして読了
    評判に違わず素晴らしかった
    最初から最後まで一気読み
    本当に、クラシック全く無知の私にも、そこにある音楽が聴こえてくるような作品だった
    コンテスタント誰もがそれぞれに別の個性で魅力的
    伸びゆく若者たちの話はいつ読んでも清々しい
    映像化されているけど、こういう話の演奏の再現って難しいよね
    これこそ音の無い文章の魅力なんだと思うな

  • 直にピアノを聴く以上に、むしろ小説だからこそ、ピアノ、音楽の魅力がびんびん伝わってくる。そして、読後は実際にピアノが聴きたくなる。そういう点で、非常に優れた小説といえよう。映画化されるらしいが、この小説の良さは実写では再現不能な気がする。

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著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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