蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
4.35
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本棚登録 : 10527
レビュー : 1394
  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • >本当に本当に、なんて不条理で残酷なイベントなんだろう。
    >なんて残酷で――なんて面白い、なんて魅力的なイベントなんだろう。

    ひとつのコンクールの始まりから終わりまで、ただそれだけの一冊。
    そこに関わる、コンテスタントたちと審査員たち、その他関係者たちの群像劇。
    漫画ではピアノの森とか、四月は君の嘘とか、素晴らしいピアノ演奏表現を見てきたけど、この本もまた素晴らしかった。

    さらに登場人物たちもすっごく魅力的でもう、みんな好きだ!って感じ。
    ページ数多めだったと思うけど、もっと彼らの背景を語ってくれ~という気持ちでいっぱい。それでいて不足するところを補えるだけの材料があるというか、それぞれが薄っぺらくはないという絶妙さ。

    目次がコンクールスケジュールになっていて、物語がコンクール時期のみという構成も好きだなー。
    予選で審査員に衝撃を与えるシーンから始まって、最終頁がアレなんですよ。素敵すぎる。
    二次予選後にコンテスタント主人公たちがつかの間の急速でお散歩にでる章「インターミッション」が挟まるのだけど、すべてにおいて緊張感マックスな本編の中にすごくリラックスした短章が、読んでいて気持ちよかった。
    あそこが一番好きかもしれない。
    ライバルでもある天才たちがふと見せる素顔を切り取った奇跡のような一瞬、を見ている非天才の視点、こんな光景は今だけでもう二度と見られないのではないかと思う気持ち。
    「ハチミツとクローバー」(お、蜜蜂つながり)の「なぜかただの1枚も写真が残っていない僕らには―」というシーンが思い浮かんで、奏が写真を撮ってくれたときは変にうれしかった。


    直木賞&本屋大賞に選ばれたのも納得な傑作。
    久しぶりに読むスピードに目が追い付かないという状況に陥った。
    つまり、面白すぎて読む気持ちは先へ先へと進んでいくのに、単語を読み取るのが追い付かずに読み落としながらページをめくってしまって、しぶしぶ戻るという。
    小説読むのに速読術はいらん。


    恩田陸の名前は以前から聞いていたし本屋さんでよく見ていたけど、今回初めて手に取ったけど、いやー、これはいい作家さんだ。

  • 面白かったし、音楽の素養がなくても伝わるものがあるし、キャラクターも魅力的。

    沢山の人が出てきても混乱することなく、興味を惹かれる流れるようなストーリー展開は流石です。
    中盤までは夢中で読んでたんですけど、2次予選辺りから演奏中の描写がくどく感じ始めて、3次予選では演奏の場面を読むのが面倒に…。終わりは良かったです。

    仕方ない事だけど、音楽を言葉で表現するとどうしても幻想的な景色になって、興味が続かない。
    これは自分の状態の問題で、小説としては、その表現力は素晴らしいと思います。
    音楽が聴こえるような文章だと思いました。

  • 評判通り、一気読みしてしまう面白さではあったけど、「漫画みたいな話だなあ」と思ってしまった。読みながら、脳内でアニメの絵で再生されてしまった。
     ピアノを持たず、養蜂家の父と放浪生活を送る天才ピアニストの青年、という漫画チックな設定を、どう納得させるのか?と思いつつ読んだが、とうとう納得できなかった。クラシック・ピアノは(バレエやヴァイオリンもそうだけど)、幼い時からちゃんと練習しないとものにならないわけで(天才とはそれが全く苦にならない人だと思う)、いくら旅先で借りて弾いても、毎日というわけにはいかないだろうし、素人の家で放置されたピアノは音がずれていることが多く、耳にいい環境とは言い難い。教師ともしょっちゅうあえたのではないのだから、やっぱりありえない設定なのだ。ジャズやポップス、作曲なら納得できるのだけど。
     もちろん恩田さんはそんなことは承知の上で、それでもこのテーマで書きたかったのだろう、とは思う。
     青柳いづみことか、ピアニストが書いた本を読むと、曲のどのあたりがテクニック的に難しいとか、アーティキュレーション、アナリーゼについて、素人でもわかるように書いてあって、そこが非常に面白いし、ローゼンの『ピアノ・ノート』なんかを読むと、天才と言われるピアニストでもすべての曲を楽々と弾けるわけではないということがわかるのだが、この本の登場人物たちは、技術的に苦労するということは一切ない天才ばかり。ほとんど星飛雄馬と花形満、左門豊作(は明石?)みたいな。(古いたとえですみません。)
    専門的な記述がない分、ピアノやクラシックに興味のない人にも面白いし、読みやすい。とはいえ、一曲丸丸を物語にしてしまうのはどうか、と思ったし、バッハの平均律1巻の1番のプレリュードなんて、ありとあらゆる弾き方が出尽くしているような気がするので、塵の演奏がどんなものなのか想像もつかない。亜夜は小柄な女性のように書いてあるが、そうすると手の大きさや指の長さに悩むのではないかとか、ベートーヴェンのような重たい曲を弾くのには苦労するんじゃないかとか、思ったけど。
     しかし、面白いのは事実。『羊と鋼の森』なんてのより、ピアノをずっと聞きたくなるところもいい。難しいテーマに挑戦し、勝利したことは間違いない。

  • 二段組で500ページだったので、読み切るのにも体力が必要だった。ずっと作中に出てくる曲を流しながら聴いて読んでいた。まるで聴こえてきそうな音楽描写に溢れ、読書体験というよりは濃密な音楽体験だった。

  • 一見、分厚さにたじろぎましたが(しかも久々の2段組!)、一気に最後まで駆け抜けることが出来ました。コンクールの予選から本選までのタイムライン小説なので、箱根駅伝の往路を見ている時の感覚です。そう、スポーツではこういうタイプの物語で熱くなったことあったな、と振り返ってみると三浦しをんの「風が強く吹いている」を思い出しました。ただ何と言ってもこの小説のすごいところは「文字で楽しむ音楽」を実現したこと。登場人物が群像なのも(それがみんな日本語を解するのも)弾き手であり聞き手である、という仕掛けが上手く機能しているのに感心しました。AIが人間の能力を追い越すのではないか?と言われているシンギュラリティ時代に「神の恩寵」としての音楽を再確認しているのもこの小説が支持されている理由なのかもしれませんね。

  • 読み終わった直後、スリラーなお話でもないのに鳥肌がゾワワっと立った。それから頰が熱かった。

    作中での表現が素晴らしくて感動した。特にピアノ演奏のシーンは本から音色、雰囲気、情景が自然と浮かぶほど感動的だった。

    ぜひ、ピアノが好きな人に読んで欲しい作品です。


  • 読み終わった瞬間 一つのコンサートが終わったような
    耳がじんじんとする感覚を覚えました

    作中にでてくる曲は名前を聞いてもわからないのに
    なぜか 身体中が音楽で溢れる そんな作品でした

    この感覚は初めてで
    心地よく 心臓がドキドキしていました

    次回読むときは 本の中で流れている曲を聴きながら
    読んでも 楽しいかと思いました

  • 「あたしの音楽」

    舞台はピアノコンクール。出場者たちが己の才能、努力、情熱を競い合い、互いに影響しあい、進化していく過程に夢中になりました。

    その中でも、私が最も自己投影できたのは、ヒロイン・栄伝亜夜。表舞台から去り、自分の人生に迷っていた彼女が、周囲の出場者のピアノを聴き、自分のピアノ、道を見つけていく、その成長に感動してしまいました。私自身、新社会人として、色々と迷うこともあるのですが、いつか彼女のように羽ばたける道を見つけたいと心から思います。彼女が、「あたしの音楽」を見つけたように・・・。

    ストーリー自体は非常に面白いのですが、個人的にキャラ設定に少し不満があったため評価4としました。好みの問題だとは思いますが、個人的に、初めから何でも出来てしまう、ステレオタイプの「天才キャラ」というのがあまり好きではないのです。天才と呼ばれる人ほど、裏では誰よりも努力をしているものだと思うので・・・。そんな天性の「天才」が複数現れ、しかもコンクール上位を掻っ攫っていく・・・、という展開に少し虚しさを感じました。まあ、繰り返し言いますが好みの問題なので・・・。

    文章が明瞭でとても読みやすいので、中学生や高校生にもお勧めです。

  • 分厚い上に二段組。猫ふんじゃったを譜面でみたら、意味わかんない、学校の授業程度の音楽の教養。こんな私じゃダメかと思ったけど、一気に引き込まれて、気づいたら読み終わってた。
    コンクールに関わる様々な人たちの立場や考え方を共有できただけでも、読んだ意味があると思う。曲をこれだけの言葉で表現できる著者の力量があるから、授賞も当然。
    もちろん、物語だからこんなにうまくいくことはないのだろうけれど、それでも引き込まれる。
    読書途中で、YouTubeで曲を探し始めてしまい、聴きながら演奏シーンを読み直しました。

  • 生音を聞きたい!
    人はそこに至る過程を、人々のドラマを見たいのだ。頂点を極めスポットライトを浴びる人を見たいのと同時に、スポットライトを浴びることなく消えていった人たちの涙を見たいのだ。
    明石さんよかった!

  • **の第*番とか言われてもピアノを習っていたわけじゃないので、さっぱりわからないのだが、文章を読んでいるだけで、いろいろな音が聞こえてくるような気がした。
    すごい表現力なんだな。文字から音が聞こえるって。
    外からは華やかに見えている世界も、その中に入れば過酷な世界なのね。ま、どの世界もそんなもんなんだろうと思う。
    それでも頑張れるって、本当に好きってことなんじゃないだろうか。

  • 2016年下半期直木賞,2017年本屋大賞受賞作品。
    かつて天才少女として騒がれながらも、表舞台から姿を消していた栄伝亜夜。亜夜の幼馴染であり、アメリカの名門音楽学校に在籍するマサル。サラリーマンとして働く出場年齢制限いっぱいの高島明石。今は亡き世界的音楽家の秘蔵っ子の少年・風間塵。4人は日本で開催される国際ピアノコンクールに出場し、第1次から3次予選そして本選へと進むにつれ、互いに影響を受けながら成長していく。
    文章から音楽が奏でられてくるよう。ダイナミックに臨場感を感じさせながらも、音楽が物語を語る情景もきれいに伝わってきた。個人的には、高島明石のキャラクターに一番惹かれた。単にクラシックという枠でなく、音楽の持つ魅力を感じさせてくれる作品。

  • 「本屋大賞2017」取っちゃいましたね。
    ピアノコンクールに挑む4人の若者たちの物語。
    ドキドキするし、スカッとするし、さすがって感じです。

    但し、曲の表現と言うか、情景描写についてはピアノを知らない私には
    「そんな訳無いだろ。」と思ってします。時々挟まれるそんな描写は、私には退屈でした。

  • 登場人物のパワーに、いや、作者のパワーにかな、引き込まれた。YouTubeに『蜂蜜と遠雷』で、曲が上がっているので、時々聴きながら読んだ。

  • 凄いなぁ!と唸ってしまうような本というのが正直な感想。

    音を文章で伝えるのはとても難しいことだと思う。様々な個性の人がピアノを弾いている。普通に書いたらそれだけのことなのに、多くの語彙を駆使し、豊かな表現力で登場人物の個性が伝わってくる。
    圧倒される文章力。文句なしの直木賞ではないかなぁ。

    あれだけのボリューム。
    本ならミステリ派の私にはかなり冗長に感じられてしまったので★★★★。

  • 私の中で恩田さんの作品はいつも当たり外れがあり、特にこの本は1頁上下の2段、500頁超えは買うのを躊躇うのに充分だった。
    だけどそんな懸念は一遍に吹き飛んでしまった。
    「音楽」、どれだけ楽しいものか、そしてそれに伴ってどれだけ苦しいものか。
    4人それぞれの音楽性。
    塵が持って来たホフマンの推薦状の意味。
    審査員、ステージマネージャー、調律師等々からの目線。
    このコンテストは自分を見つめるきっかけにしか過ぎなかった。
    ここからこの4人はどう音楽を過ごして行くのか?向かい合っていくのか?
    4人の「その後」を読んでみたいと純粋に思った。

  • 読もう読もうと思っていたんだけど、あまり機会がなくて今まで放って置いたんだけど。
    でも読み始めたら、おもしろくてあっという間に読み終わってしまった。さすが本屋大賞。

    芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場した四人のピアニストの、そのコンクールでの演奏や交流や葛藤や、すべてを記したものがたり。

    本の冒頭に、四人がコンクールで選択した曲がすべてのっていて、ピアノ弾きにはなによりの道標。
    出てくる曲がなじみがある曲ばかりなので、演奏の描写を読むとその曲が頭の中にうかんでくるようでした。

    風間塵、英伝亜夜、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、高島明石。
    四人のピアニスト、それぞれがそれぞれの過去を持ち、葛藤を持ち、そのうえで素晴らしい演奏をしていて。

    好きなシーンはいろいろあるんだけど、三次予選のあと、明石が英伝亜夜に「ありがとう、英伝さん」といって、一緒に泣いてしまうシーン。そして、彼女が明石に「あたし、あなたのピアノ好きです」というシーンがよかった。

    文章で読んで、自分の頭の中で繰り広げられた光景、演奏が大事に思えていて、映画化はちょっとみたくないかもな……と思ってしまった。

    音楽って、ピアノってほんとうに素晴らしい、って感じさせてくれる話でした。

  • 「蜜蜂と遠雷」
    音楽が鳴り響く。


    天才と言われた十代に表舞台から消えた少女、家族共に帰ってきたベテラン、既にプロとして活躍する少女、稀代の才能と風貌を持つ少年、そして音楽の巨人の弟子と言われる経歴不明なジン。


    様々なバックボーンを持つ音楽家たちが紡ぐ物語。音楽好きな読者はもちろんドストライクだろうし、そうでない人には熱き音楽家たちの挑戦に胸を打たれるだろうし、音楽をやることの難しさや厳しさ、楽しさに触れることになる。


    音を表現する文章が巧みであるから、音楽を奏でている姿をイメージしやすい。演奏者達の苦悩やコンサートにかける意気込み等の表現も良い。躍動感と緊張感も直ぐにイメージでき、その中で演奏する登場人物達も鮮明に浮かび上がる。


    個人的には、久しぶりに音楽の世界に帰ってきた明石と亜夜が、印象深い。特に、明石は、コンサートにかける重みがひしひしと伝わった。年齢も近い分もあるだろうが、一番感情移入してしまった。とにかく成功して欲しい、悔いない演奏をして欲しい、と思いながらページを捲った。


    とは言え、どのキャラクターも魅力的且つ個性的である為、読者は誰かに感情移入出来ると思う。みんな好きになる小説だと思う。


    実写化されるが、演技もそうだが、演奏シーンが肝な気がする。文章でも音楽を身近に感じただけに、映像化する場合は、期待値は上がってしまう。キャストは良いだけに。個人的には、新人さん、頑張れ!である。

  • 未知の世界だったピアノコンクールだが、一つのコンサートを満喫できた気になった。

  • とある有名な国際ピアノコンクールが舞台。
    そこに集うコンテスタント達が一次予選、二次予選、三次予選を経て、本選に進む様を描く。再起を狙う亜夜。その幼馴染でもあるアメリカ国籍のマサル。そして、伝説のピアニストの弟子として送り込まれた、養蜂家の息子である塵。彼らコンテスタントの他、そのコンクールの審査員、記者、など、そこに関わる様々な立場の登場人物達の目線で物語は進んでいく。
    とにかく、ピアノを弾く描写の表現が豊か!!本当に音色が聴こえてくるかのような。特に塵の演奏のシーンは神秘的で魅力に溢れてる。本当に聴きたくなってくる。
    作中に出てくる多くのクラシック音楽にも惹かれた。今度調べてゆっくり聴いてみよう。
    私もピアノを始めた身なので、こういう音楽小説は大好物。そして、恩田陸さん、こんな作品も描くんだ、と。
    改めて作風の広さに驚く。

著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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