蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
4.35
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本棚登録 : 10528
レビュー : 1394
  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  •  まったく知らない世界のお話だったので興味深く読めた。
     世界的なピアノコンクールの仕組み、コンテスタント(出場者)の過ごし方、精神状態。さらには、審査委員、ピアノ調律師、ステージマネージャ、マスメディア、そのコンテストに携わる多くの関係者の多彩な視点、モノローグで立体的に作品が創り上げられていた。誰の視点からの表現が面白かったかと言えば、審査員かな。とにかく誰の視点に自分を置くかで作品の楽しみ方も変わってくるのかもしれない。それくらい多彩な登場人物たちだった。

     未知の領域なので、並行して予習(?)もしながら読み進む。著者恩田陸は3年に1度のリサイタルを4回に渡り取材、12年をかけて周到に準備をしたそうだ。その思い入れの大きさは、長編となった本作の文量によく表れている。
     主要登場人物の4人のピアニストの心情も、個々人につき具に語られる。実際のリサイタルを4回分、全部の演奏を聴いているうちに演奏者の気持ちも理解できるようになったと著者は言う。あとは描き分けの工夫と、曲ごとの解釈と味付け次第か。

     恩田陸の作品は『まひるの月を追いかけて』が最初。その時、人物の心の動きや行動を、思いもよらないハッとするような文章で表現していて感心した覚えがある。本作品も、音楽という聴覚で感じるものを、著者がどう文章で表現するかが楽しみであった。
     それが成功したかどうかの判断は人それぞれ、難しいところだ。それこそ、音楽を聴いての感じ方は千差万別。そもそも元の楽曲を分かっていないと、その文章表現が的を射ているのかどうかも判らないと来たもんだ(苦笑)
     なので、途中からYoutubeを聴きながら読んでみた。クラシック音楽と読書の相性は、すこぶるよろしく気持ちよく読み進められたが、果たしてその音楽を文章で言い表せていたかとなると「?」が浮かぶ。なにより、こりゃいかんと思ったのは、「鬼火」とか「雨の庭」と言ったタイトルの付いた曲。それを「まるで鬼火がチロチロと・・・」とか、「雨が降って温度が下がったように・・・」とか、それってタイトルから安易に想像しただけじゃないの? 音だけ聴いて本当にそう思える?鬼火が見える?私しゃそうは聴こえないよとか、いろいろ意に沿わない、共感できない誇張したかのような比喩が散見されて止めてしまった(後半、オケとの合奏では、作者も表現しきれなくなったか、曲にまつわる比喩が少なくなって聴きながら読めたけど)。

     ともかく各出演者の演奏ごとに、ライバル、審査委員、恩師、友人が、それぞれの視点で、曲解説(解釈?)や、演奏者の心情の推察、あるいは当人による感慨、回想などが織り込まれ、1次から3次までの予選、さらに本選と重厚に物語は展開していく(著者が取材した浜松国際音楽祭の構成の通りに進む)。
     神童、秀才、復活を賭けるかつての天才、努力の一般人。その4人を軸に話は進むが、最終的に誰を優勝させるかは著者自身も最後の最後まで分からなかったという。ならば、最後は、その演奏を文章で表現しきったとき、その表現の巧みさ、いかに描き切れたかで決まるのかなと楽しみに読み進む。
     その時、かつて漫画家水島新司が代表作『ドカベン』で明訓高校の初の負け試合となる弁慶高校戦を描いたときのエピソードを思い出していた。主人公山田太郎の第1打席は、敵の策略にハマりピッチャーゴロかフライの凡打とする予定だったそうだ。だが、その打席の打撃シーンを描いた時、腰の入った見事なフォームが描けてしまったのだとか。「これはもうホームランにするしかない」と筋書を変えてしまったというから面白い。
     本書も最後はそうした文章力の、誰の演奏をどう描けるかで決まるのかと楽しみにしていたが… (これから読む人は、果たしてどうだったか確かめてください)。

     スポーツ漫画の例を、つい思い出してしまったけど、私より先に読んだ読み友の感想も、「スポーツ試合のような気分で読んでました、終盤になるとキャプテン翼みたいな。」
    だった(笑)
     そうなんだよなー、ちょっと文学の香りはしなかった。表現、筋立て、結末含め、どこか漫画チック。努力の一般人の結果にしても、ライバル(憧れ人?)に「また、どこかで」と微笑んで語られ、「やはり、始まりだった。」と納得するだけで十分。今後、彼はその「また、どこかで(一緒に演奏しましょう)」という一言を糧に、飛躍成長してくのだろうと想像することが楽しいのであって、「はい、ほらね、彼にもご褒美を用意しましたよ」的な蛇足は要らなかったな~。 どこか感動を安売りしているようで「ったく、近頃の小説は!」って、ついつい愚痴りたくなる。

     そう、途中でヤな予感もしたのだ。ライバルの演奏を聴いた感想をこう述べる場面がある。

    「ふと、最近のハリウッド映画はエンターテイメントではなく、アトラクションである、と言った映画監督の言葉を思い出す。チャンの演奏は、なんとなくそれに近いような気がする。」

     映画だけじゃなく、最近の小説もそうだよ、この作品はそうならないよね、と一瞬そんな思いがよぎったのだったが、どうも「ハイ、ここ感動するところ」「ここで泣いてね」みたいな安易な展開が、あぁ今風の作品だなと思ってしまった。
     
     そんなことで、悪くない作品なんだけど、スポーツ漫画的な安易な感動とカタルシスを、お手軽に楽しめる(文量の割には驚くほどサクサク読める)、現代的には、一流のエンターテイメント作品であった(アトラクションとまでは言わないよ)。

  • おもしろかったが、自分がピアノ等経験があり内容に馴染みがあるせいか、コンクールや演奏などの描写が至って普通に感じられ、予選ごとに各人の演奏解説が繰り返されるのが最後の方は飽きた。リアリティがあったということか。

  • ・『のだめカンタービレ』みたい。
    ・リアリティがない。登場人物たちが練習しなくても超絶技巧が弾ける天才ばっかり。『のだめ…』の方がリアリティがあるかも。
    ・それは試みだったのかもしれないけれど、音に関する記述がほとんどないから、軽く感じてしまう。
    ・彦麿呂の食レポを延々と聞いているかのような…
    ・山盛りのソフトクリームを食べたかのような読後感。
    ・「帰ってきた、帰ってきた」としつこいので最後は「おっことぬしか!」と突っ込んでしまった。
    ・頭のなかでクラシックを鳴らして楽しんできたのに、最後の最後の「耳をすませば」の一行で頭のなかが「カントリぃーロぉード♪」になってしまった。
    ・直木賞、あんまり合わないけれど本屋大賞とダブル受賞というので買ってみた。でもやっぱり直木賞って感じだった。
    ・二段組、ふと戻りたい場所を探すのに疲れる。

  • 前評判高かったせいで期待値上げすぎたんだろうけど…。評判通り2段組みの厚い本の割に読みやすい。というか読み易すぎる…。なんか各登場人物のキャラの立たせ方とか、コンクールの流れとか、「のだめ」や「ガラスの仮面」の小説版かって感じで。さらっと読めちゃったけどあの二つの漫画読んだときみたいな「え、次どうなっちゃうの?」感もなかったかな…。

  • 図書館で300人待ち。頑張って飛ばし飛ばし読みました。ガラスの仮面も、舞台のところは飛ばすタイプなので。長かった。

  • 初期の作品は読んでいたが、近年次第に遠ざけていたものの、W受賞ということで手に取った。
    漫画を読むようなスピードで読み進めているうち『ピアノの森』の既視感があっていただけなかった。
    終盤の失速もあり、ハライチ岩井勇気の名言「1を増やすのが得意なだけでゼロから1を作れない」が頭を過ってしまう。
    ピアノの~を読んでいなければ、別の読後感になっていたかと思うと残念。

  • 日本で開催されるある国際ピアノコンクールの始まりからラストまでを、複数の参加者と審査員の視点から描いた作品。音楽家の世界とか、ピアノコンクールってこんな風に開催されるんだと、とか、こんな世界に足を踏み入れたことのない人間にとっては新鮮でした。それに、演奏されている音楽を文章で表すというところがこの小説の見せどころなんだと思う。確かに、読みながら音楽が流れる雰囲気を感じられる、気がする。しかし、やはり門外漢にはちょっとつらい。数々のクラシック音楽のタイトルを聞いただけで思い出せるようであれば良いけど、門外漢には音楽を文章だけ読まされるのが繰り返されるのはやはりつらい。それにちょっと長すぎる。二段組みで500ページは。結構長い年月を掛けて連載されてきた作品のようなのだが、一気に読んでいるとピアノが演奏される度に同じような表現が出てくるのに疲れる。登場人物達は若者が多いので仕方ないのかもしれなけど、喋り方もなんだか軽くてみんああんまり区別出来ないし、おじさんにはちょっとついて行けない。登場人物達があまりにも天才ばっかりなのもどうなのかな。みんなピアノ弾きながらどっかに行っちゃってるみたいでちょっと怖い。残念ながら小説としては大して面白くなかった。

  • 作者は音を言語化したかっただけでは?
    それではただの自己満足。
    ピアノやクラシックに縁のない人には全く入ってこない。

    これは小説なのか?
    主人公が曖昧だし、ストーリーとしてはコンクールが1回あったただけ。そのくせ長い。

    高評価に期待しすぎた…

  • ピアノコンクールが始まり終了するまでのコンテスタントたちの心情を描いた作品。某有名漫画に酷似したストーリーだったので小説化かと思った。
    好ましく思ったのは、天才君がオケの位置を変えたところ。天才とは何かというのを一瞬で簡潔に明示できていた。素晴らしい。こういうのがもっとあれば。
    『チョコレートコスモス』のときも思ったけど、生まれながらの天才の方は自分語りしないのに、努力型の方はしつこいほど心理描写をするからバランスが悪いと思った。

  • たくさんの人が高評価の中
    私はそこまで楽しめずでした。


    音楽の表現力は素晴らしく臨場感に溢れていました。
    あれだけたくさんの演奏を違った表現であらわしていたこともすごいと思います。



    しかし、本選までとても長く、中盤でお腹いっぱいになってしまいました…
    私に音楽の知識がなかったからかもしれません。

  • ピアノや音楽に携わる方々の心情が細かく描かれていてよかった。
    お互いを認め合う、崇高な世界に彼らはいる。
    ただ、メインになる4人がみな同じようなパターンで動き語るので、単調に感じてしまった。

  • あまりにも同じ言葉が羅列され、退屈だった。

  • 面白いのだけど、ちょっと嘘っぽすぎて…

  • 音楽のことはよく分からないですが、色々な曲や作曲家の作品と活字ではあるけれど、出会えたことは良かったと思う。

    作者の表現力はとても素晴らしく、よくこんなたとえを思いつくなと感心させられました。

    ただ、物語として驚きや良い意味での裏切りはないため続きが気になるなどの感覚にはならなかっです。

  • これを読む前に中村紘子さんの「チャイコフスキーコンクール」を読み、現実のピアノ界の面白さを堪能したため
    こちらは、同じようなシチュエーションで、フィクションだなぁという感じが拭えず…

    先に「チャイコフスキーコンクール」を読んでいなければ、楽しめたかもしれない。

  • 2017年本屋大賞受賞作
    書きすぎ!
    上下2段の必要があるのかな?
    回りの人は長すぎてけっこう挫折してました。
    6番目の小夜子で快調に読んでいて、最後に裏切られた思いがあったので、敬遠していた作家でした。他のも読んだけど、やっぱりもういいかな。

  • 少女漫画かよ

  • 図書館で半年待って、やっと順番が回ってきた。でも私は素直にのめり込めなかった。

  • 面白さがまったくわからなかった……。
    音楽の表現は、場面を思い描くうえで、すごい細かくてリアリティあふれていたんですが、それだけな感じが否めなかった。登場人物も魅力的で、素敵だなーとは思ったけど、なんだろ、いまいち感情移入できない。次のページを早く読みたいと全く思わないから、最後まで読むのにすごい時間がかかってしまいました。さらに、本がでかくて、持ち歩けないので、さらに読み進められなかった。

  • すごい表現力というか言葉知ってるなぁって思った
    それだけ
    ストーリー的には10ページで終わる内容

  • ダブル受賞でちょっと自分の中でハードルが上がりすぎてたかな。
    表現力はさすが。

  • 恩田陸の感じは健在。
    文そのものを味わえる、小説の醍醐味を満喫できるエンターテイメント作品だと思う。
    が、無駄のない小説が好きな私としてはちょっと冗長に感じるところや、ちょっとした矛盾の発見など うーんとなるところもあり。。

  • 話題の本なので、読む前に期待値を上げ過ぎてしまったのがいけなかったかも。
    最初は良かったのだが、終始コンクールネタばかりだと流石に飽きてくる。
    ピアノ曲に余程詳しくないと、理解も難しいのではないかな。(ところどころいいシーンもあったので勿体ない)とはいえ、他の方々の書評を見るとかなりの高評価なので、私の読み取りが悪いのかな(音大卒ながら…)
    天才少年についてもいささか既視感があり(才能に無頓着で専門教育は受けていない、というような)目新しさはなかったかな。

  • クラッシック音楽と言えばチャイコフスキーのくるみ割り人形しかほぼ知らない私には、手に余る作品でした。
    「直木賞」受賞作なのですから、かなりのレベルの作品だろうと思う反面、同じ恩田陸さんの「本屋大賞」受賞作『夜のピクニック』の方が、より多くの読者を魅了するのではないかと思います。

著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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