悪魔を憐れむ

  • 幻冬舎 (2016年11月24日発売)
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本 ・本 (412ページ) / ISBN・EAN: 9784344030305

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーには設定として犯罪コーディネーターのような人物が登場することがある。
    他人の心を操り、思い通りに動かし、その結果を見てほくそ笑むことためだけに。
    この物語にも、そんな悪魔のような人物が登場する。

    悪魔はプライドが高い。
    自分の論理を「キジョーのクウロン」だと切って捨てた人間を憎んでいる。
    復讐のために種をまき、芽吹くときをジッと待っていた。
    結果的に四人が犠牲となり命を落とし、四人が犯罪者となった。
    思惑通りに他人が動くことがそれほど楽しかったのだろうか。
    けれど、振り上げたこぶしはいつか自分へと跳ね返る・・・と思う。
    父と子の虐待の連鎖を断ち切ることが出来なかった自分の不甲斐なさを責めるべきだったのに。
    悪魔もいつかは後悔するのだろうか。
    一片の後悔もないとしたら、それはもはや人ではない。
    憐れむべき悪魔に成り下がったということなのだろう。

    タックとタカチの遠距離恋愛は続いている。
    互いの事情を理解しあったうえで、最良の選択をした二人。
    離れてはいても彼らの強い結びつきが感じられて嬉しかった。

  • これ、匠千暁シリーズの一つか。読み始めてから気づくという体たらく。もうダメである。
    短編集、四篇所収。
    オフビートに進んでいくかと思いきや推理はキレキレで「おお」と思わせてくれるものもあるが、そこまで響くような作品がなく残念だった。

  • 現行“匠千暁シリーズ”の最新刊。安槻大学卒業後の彼ら特に変わりなく。

    短編集ではあるけども中々ボリューミーで長編間の繋ぎ感はあまりなかったですね。事件の本筋とは関係ないような事柄が事件の事象の核心をついてくるような構成が面白い。

  • タックシリーズ。
    過去のシリーズ作品内容に関する記述がそこかしこにあるので、本シリーズは順番に読み進めることをオススメする。
    タック、タカチ、ボアン、ウサコの主要キャラ達の卒業後にも触れられているので、シリーズファンには見逃せない作品だが、“一見さん”には消化不良の残る内容かもしれない。
    この4人を中心とした登場人物達が、あーだこーだと推理をこねくり回す所が本シリーズの特長であるが、本作は短編集の形を取っているためか、その推理に“無理矢理感”が大きい印象は否めない。特に表題作の「悪魔を憐れむ」は、“悪魔”の思考回路及び犯行の工程と動機の理解に苦しむ。リアリティを求める類の小説では無いのかもしれないけれど。

    週刊文春ミステリーベスト10 11位
    本格ミステリ・ベスト10 7位
    ミステリが読みたい! 10位

    《タックシリーズ》
    1. 彼女が死んだ夜
    2. 麦酒の家の冒険
    3. 仔羊たちの聖夜
    4. スコッチ・ゲーム
    5. 依存
    6. 身代わり
    7. 解体諸因
    8. 謎亭論処
    9. 黒の貴婦人
    10. 悪魔を憐れむ

  • タック&タカチだからおまけの4かな。買ったのをずっと忘れてて借りてから見つかった(笑)。文庫を買わなくて良かったわ(-_-;)。相変わらず犯人が救いようがないくずばかりのシュールな世界観。この人はレズビアンと親子関係によほどトラウマがあるのかね。

  • 読むのが勿体ないほど好きなシリーズ。10作目。出版社が跨っていたこともあって時系列がバラバラ、短編集も時が飛んでいましたが、今回はタックの卒業後まもなくの時期、いろいろ気になっていた間の部分(ウサコが旦那様と出会ったり、先輩が教師になる過程など)を埋めてくれています。事件はすでに起こってしまった事件を読み解くもので、もちろん一筋縄では解けませんし、わかったつもりでいるとガツンと横っ面を張られるような苦い真相が潜んでいたりします。相変わらずの読み応えで、とても良かったです。全集出してくれたら勿論買います!

  • タック&タカチシリーズ最終作ということを知り、一時封印。1話目を読んだけど、ひねりがきいて面白い。その発想はなかった。よく思いつくな〜。

    2019.12.8 読了。
    ついに、現行巻にたどり着いてしまった。呑気な学生たちのお気楽ミステリーかと思いきや、タックタカチの重い過去からの、未来への前進。ちびまる子的永遠の学生かと思いきや、そこからの脱却をはかるボアン先輩にウサコ。
    謎解きとして面白いだけでなく、それぞれのキャラがたった、成長青春物語だった。

  • 匠千暁(タック)シリーズの最新巻中短編集。酒を飲みながらああでもないこうでもないと推理(酔理?)合戦を繰り広げるお馴染みの安楽椅子探偵スタイル。古い家で起こる超常現象を泊まりがけで確かめる「無間呪縛」,厳しかった元大学教授の自殺を阻止できなかった「悪魔を憐れむ」,3人の死体のうち2つだけが頭部と手首を切断・移動させられたという「意匠の切断」,数時間ごとにホテルの各階を移動する男の意図を探る「死は天秤にかけられて」の4編。風来坊だった大学7回生・辺見(ボアン)も卒業・就職目指して真面目に勉強している! タックと高瀬千帆(タカチ)の関係も大人っぽくなってきた。

  • タック&タカチシリーズの最新刊。やっぱり、この四人のしゃべっているところ好きだなあ。それぞれの組み合わせでいいけど、やっぱり先輩と匠の組み合わせが一番好き。基本ダークなので、そこが許せればおすすめ。

  • 卒業してから短篇集。

    フリーターになっていたり、3人が卒業したので
    必死になって卒業しようとするボヘミアンがいたりw
    一番びっくり、なのは、童顔のあの方が
    きれいさっぱり走ってゴールした事。
    いや謎解きのおつまみ感覚で進行していた事でしたが
    次の話ではお付き合いが始まって
    その次ではゴールイン。
    その間、卒業できなかったら~で
    内緒にされていたボヘミアン。
    互いが互いを理解している、というのは
    非常に素晴らしい(笑)

    偶然を装った殺意、も長くてすごい忍耐力ですが
    表題になっている話は、これはこれで…。
    相手を知りつくし、相手を操っているように思わせず
    思い通りの行動をとらせる。
    多少はできるでしょうが、ここまでは…。
    しかも事件の内容も、あれです。
    そもそもやっている事が犯罪なので、それを日常だと
    考える人間でないと、完全犯罪は無理です。
    それが複数になったりしたら…。

    次の話は、すっきりしたあげく、の再利用。
    いや、再利用も含めて、のすっきり?
    まさかそんな方向が動機とは、誰も考えません。

    最後の話は…プライドってすごい。
    むしろそこまで考えるのもすごい?
    しかし強弱はシーソーのようなものなので
    ずっと同じ位置、はありえません。
    こうなったのも、今か後か、ではないでしょうか?

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著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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