- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344030992
作品紹介・あらすじ
自ら産んだ子を自らの手で「取り替え」た、繭子。常に発覚に怯え、うまくいかない育児に悩みながらも、息子・航太への愛情が深まる。一方、郁絵は「取り違えられた」子と知らず、保育士として働きながら、息子・璃空を愛情深く育ててきた。それぞれの子が4歳を過ぎたころ、「取り違え」が発覚。元に戻すことを拒む郁絵、沈黙を続ける繭子、そして一心に「母」を慕う幼子たちの行方は…。切なすぎる「事件」の慟哭の結末。渾身の書き下ろし!
感想・レビュー・書評
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自然分娩ではなく帝王切開、完全母乳でないことを責める、専業主婦。子どもとの時間をおろそかにし、食事に手間をかけられないことを責める、ワーキングママ。
現代の女性にぶつけられる、さまざまな呪いがつまっていて、読んでいて胸が痛む。
育ての子が、血のつながった我が子でなかったと知ったら? 難しくて、自分には決断できない。
いろいろ考えさせられる作品。
そもそもの取り替えの動機は弱く、そこだけが共感しづらかったです。 -
辛くて読むのをやめようかと何度も手をとめる。
誰も頼る人がいない中での育児の不安、子どもが産まれたからとらいって、突然母親になれるわけではない。でも、自分の子と他人の子を取り替える、その子を育てる、理解ができない。子どもがかわいそうだった。 -
初めて読む作家さん。
母との関係がうまく行っていなかったことから、極端に自己肯定力が低い繭子。自然分娩ができなかったことを気に病み、今後きちんと子供を育てられるのかという不安にかられる。
同じ日に出産をした保育士、郁絵の子供と自分の子供を突発的に入れ替えてしまう。
すぐに後悔するも、発覚しないまま時は経ち...
繭子とその母に終始イライラした。
そして帝王切開で産むことになんの問題があるのか。
繭子の義母も、「帝王切開は出産のリスクを母体が全て背負って赤ちゃんを守ろうとする方法」って言ってるし。
でもこの負の思考は育ってきた環境の中でできてしまったものなんだよなー。
子供たちがとてもかわいそう。 -
産院で起こった新生児の取り換え事件。
それぞれの母の目線で語られる4年間の話。
前半の章の繭子の行動が理解できないままでした。
初めての出産で、こんな小さな子をちゃんと育てることが出来るのかという不安を感じることは、自分にも思い当たる節がありましたが、そこからのあの行動はやはり理解出来ませんでした。
後半の郁絵の章、実の子と信じて育てた子を手放さないとならくなった母親の気持ちが辛かった。
そして、親から離されることになってしまった子供を思うと、ただただ不憫で仕方がなかったです。
何が正解かはわからないと思える物語。
フィクションで良かったと思わずにはいられません。 -
新生児の取り違え、しかもそれが片方の母親の手によるものだったという衝撃でしかないストーリーで描かれていく芦沢央さんの意欲作。
よりによって母親が、自分の子供をわざと入れ替えるなんて、そんなこと、あり得ます…?なんて半信半疑で読んでいたらガーンと頭を殴られたようなショックを受けました。
これはあり得る。あり得てしまうのが分かる。
共感はできないけれど、妊娠と出産を経てさらにどんどんと思い詰められていく繭子の心情は察するに余りある。
出産てそのくらい劇的なことだった、って思い出しました。
一章と二章で発覚の前後、それぞれの母親の視点に分けてすすんでいく構成がとても良かった気がする。
本当に暗くて誰も幸せになれないラストだった。
そして「獏の耳たぶ」というこのタイトルの真の重さ。
獏のぬいぐるみにしか、耳たぶにしか、そういうものに縋るしかない航太が不憫で可哀想で悲しさに胸が引き裂かれそうになった。
だけどそれでもどこかに希望が感じられるのは、航太と璃空、二人の男の子の日々は決して奪われたわけでなく、これからもずっと続いていくし、どんな形であれ未来をまだまだ描き直せるって分かったからなんだと思う。
うちの娘も私の耳たぶ大好きだなー。