愛と子宮に花束を 夜のオネエサンの母娘論

  • 幻冬舎 (2017年5月25日発売)
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本 ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784344031173

感想・レビュー・書評

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  • あちこちのバレエ発表会に一人で訪れる男性がいます。
    50代か60代でいつも一番前に座る彼。
    私は嘗てパリや旧ソ連のバレエ劇場に低俗な趣味の男性たちが足を運んでいたことを知っていたので、彼をその類の人物であろうと疑っていました。

    でも東大大学院卒法政大教授で東京藝大や早稲田大学院等でも教鞭をとる鈴木晶さんのバレエ本を読んで、「そうではない、心から芸術としてバレエを愛する男性もいるのだ」と思い改めました。
    肩書が時として180度考えを変えてしまうのは、私だけではないですよね。

    その鈴木晶教授のお嬢さんが、この鈴木涼美さん。
    鎌倉に住み、清泉小学校中学校から明治学院高校、慶応大学東大大学院に進み、日経新聞記者もされました。
    このスーパーインテリお嬢様が、大学&大学院時代にAV女優をされていたことを知り、この本を読んでみました。

    〈そもそもそういった「お嬢様校」に通わせたのは完全に父の変態趣味である〉
    〈私の父が以前、「ママがキャバクラみたいな仕事を死ぬほど嫌ってるのは、ホステスと遊びまくって浮気してたパパの影響もあるかも。キミにとっては迷惑な話だろうが」とメールをくれたことがある〉

    というわけで、父鈴木晶教授の影響も多少うけているのでしょうが、彼女を作ったのは母親であると確信しました。

    涼美さんは楽しく生きているのだから、私などにとやかく言われたくないかもしれませんが、彼女のお母さんは胃がんで亡くなっていて、私は涼美さんへのストレスが病気の原因の一つと思っています。

    令和元年の今年、わりと裕福な家庭の男の子が関わる大事件が多発し、「男の子育てるの難しいな」と思いました。
    でもこの本を読むと、女の子だって。

    だから自信満々で子育てしないで、視野を広げる意味でも、女の子を育てるお母さんに読んでほしいと思いました。

  • 慶應と東大出て、日経の記者でAV女優もやってたっていう涼美さんの経歴が大好きです。やりたいこと、全部やって生きている感じ。

    けっこう下ネタや夜の世界のことが書かれているけれど、
    氏の筆力で論壇チックでしたよ。

    お母さまとのコンプレックスの章が、やっぱりわたしには
    かさぶた剥がすような痛みがあって、それでも向き合いたくて、
    結果とてもおもしろかったです。

    表紙、ご本人です。美人さんですね。

    【本文より】
    ・それでも私たちは、自分が新しい世界に出会う度に、誰かに複雑な思いをさせていることには自覚的であるべきだ。

    ・「大学出てオトナになったらさ、理不尽なものに頭下げたり、礼儀としてダサい恰好したり、自分の都合より会社の都合優先したり、好みと反対のことさせられたり、そういう場面って絶対あるでしょ。」

    ・否定しながら愛し、愛しながら許さないというのが、母の一貫した態度であった。そして、否定し続けても愛しており、愛してはいても絶対に許していない、ということを理解するくらいの人間に私を育てあげた自信は失っていなかった。

  • 与えられることで奪われるものもあるし、満たされることで、失うものだってある。そう思わせるエッセイだった。キャバクラ嬢やAV女優、ホストなど夜の世界の人間が多く登場するが、彼らにもまた親子関係が存在するのだなと思った。

  • 「人に、とりわけ子供にものを教えるのはとてつもなく時間と手間がかかる作業である。そして教えたところで子供たちは、常に斜めを向いて突っ走る。けれど、教えようとすることを離れた母のつぶやきが私を導くとしたら、もしそれが愛なんていうものの正体なのだとしたら、母と娘の関係なんて、本当に皮肉なものである。」

  • 鈴木涼美さんという著者のことを一切知らずに、ただタイトルでおもしろそうだなーと読んでみた本だったのですがどストライクでした。
    慶應卒で東大の修士ってすごいですね。そして日経新聞社勤務の後にAV女優て。どえらい経歴だ。

    エッセイ中にはセックスとかホス狂いとかデリヘルとかそんな単語が臆面もなく散らばっているのですが、ちっとも下品だったり馬鹿っぽく感じられたりしないのは、著者の筆力と知性ゆえなんだろう。
    地頭がいいと文章のテンポも良くて読みやすくてなにしろとてもおもしろい。
    一種独特なんだろうけど、娘に対して依存するでもなく束縛するでもない著者の母親が素敵だ。
    否定しながら愛し、愛しながら許さない。否定し続けても愛しており、愛してはいても許していない。
    このスタンスには全く矛盾がないと思う。聡明で懐の深い愛し方だと思った。
    そして娘にもその考え方や姿勢や愛がきちんと伝わっている。私もこんな風な母娘関係を築きたい。

    他にも、オンナとしての人生や、愛についてや、夜の世界についてや、著者による目新しくて斬新で清々しい見解をたくさん発見できました。
    とにかく最後まで興味深く読ませてもらえる濃ゆい一冊でした。

  • 望月衣塑子のyoutubeチャンネル見てたら、この人が出てて
    はじめて、この人、見たんだけど
    彼女は、性について喋っていた

    アホなフェミニストの見当違いな言説とはまるで違う、おおよそ女性とは思えないくらい、男性の心理を正確に把握したうえで、とても論理的に話してていて・・・・・・そんな人、今まで見たことなかったから・・・・・・
    ちょっと、後ずさってしまったんだよね

    そして
    なぜか
    話している間中
    望月衣塑子と、彼女の視線が交わらないのよ・・・・・・

    その、視線が宙に浮いてるカンジが、とてもキモチ悪くて、この人の底なしの複雑な内面を覗き込んだような気がして
    恐くなってきて・・・・・・
    この人、誰?って思って・・・・・・

    『身体を売ったらサヨウナラ』
    『愛と支給に花束を』
    『オンナの値段』

    を、図書館に予約したら
    どれも、すぐ借りれて
    ということはつまり、誰も読んでいない、ということ

    『オンナの値段』の表紙に載ってる
    上野千鶴子教授のクソありがたいお言葉なんぞ、まるで見当違いそのもので、一文の価値もないくらい、鈴木涼美は本当のことを書いていた

    鈴木涼美は、ものすごい優越感と劣等感が交錯する、残酷な戦場のような場所で、エリートのパパとママに、強烈に反抗しながら血迷ってる傷だらけの戦士のような人だった・・・・・・
    危険なものに頭から突っ込んで行きたくなる衝動でもあるのか?ヘミングウェイのように?
    あるいは、リストカットする女の子のように、自己破壊的な衝動に突き動かされているのか?

    とくに、お母さんとのやり取りがすごくて、怖かったなあ・・・・・・
    ズバ抜けたエリート意識と、他者との差別化とか、怨念とか、蔑みとか、ポップなカンジとか、ドロドロした底なしの泥濘とか・・・・・・

    この人って、不幸な天才、なんじゃない?

    こういう、不幸な天才、って見たことあるんだよね

    その人は、男だったけど
    何度か自殺しそうになりながら、東大と京大で学んで、今は、パッとしないまんま、なんとか、ふつうに生きてるんだけど・・・・・・

    要は、周囲と違いすぎて、生きてて、苦しいんだよね。
    永遠に調和できない、っつーか。

    ただ、鈴木涼美っつー音の繰り返すペンネームは良いなあ、って、そこだけは好感を持てた

    7
    ワタシより母親のほうがちょっとだけ優良物件な気がしてる

    10
    どっかに行ってしまえ!あなたなんて私の子供じゃない

    私は自宅から藤沢市にある大学まで通っていた
    靴はピンヒール
    くわえタバコの片手運転
    結構な勢いでガードレールにつっこみ、車を半壊させてしまった
    お父さんが半泣きになったら
    お母さんが怒鳴りわめきちらした
    「お前はそこに土下座しろ!」
    その日から3ヶ月は親とは音信不通に
    キャバクラの寮に入る

    14

    「私はあなたが詐欺で捕まってもテロで捕まっても全力で味方するけど、AV女優になったら味方できない」

    クリスプスをバカ食いして、ロンドン滞在中の1年半で、14キロ太った

    69
    レインボーブリッジからの景色を堪能するほど私達は運転に慣れていなくて

    166
    半年前に胃を3分の2切除してすっかり軽くなってしまった母は、さらに一言一言が、後悔と嫌悪に満ちていた

    アッパーウエストサイド滞在を自信を取り戻す契機としてくれたのならば、それに越したことはない

    あああ
    オレも、アッパーウエストサイドのコンドミニアムに滞在してたことあったなあ
    毎日、近くのお肉屋さんで、ステーキ買って、キッチンで焼いてた
    この時、はじめて、食器洗浄機を使って、コレって便利だなーって感心したんだよね

    168
    胃を切除すると、匂いや味に過敏になるのね
    うま味調味料や人工甘味料を拒絶するようになるのか
    有機野菜や、高カカオのチョコレートを好み、空気を入れ替えたり、タバコや香水の匂いがほんの僅かでもダメになるという・・・・・・
    鈴木涼美はタバコ吸ってるらしいからなあ

    170
    怖い、という感覚

    183
    あ、オレもレ・ミゼラブル観に行った
    ハワイには、お仕事で、タダで、行った

    198
    ママの、女性観が、なかなか冷笑的で怖い
    キモチはとても分かるけど
    細かいこだわりが、怖いなあ・・・・・・女だなあ・・・・・・

    202
    聖路加病院に入院してたのかあ

    203
    母は、それなりに遊び人の父よりもずっと、思春期以降の私のふるまいに気を揉んでいた
    嘆き悲しんでいたし、断固として否定する態度を崩さなかったし、結局最後の一息を吸い込むまで、一度も私のことを許さなかった。

    212
    いろいろな美術館を連れ回されたりいろいろな国を連れ回されたり

    ああ、オレも、こーゆーこと、やったなあ


    鈴木涼美は、ほんとうは、男なんじゃないかなあ。
    子宮を持った男、というかさー。

  • 社会

  • うーん、この本は何を伝えたかったの?かな?
    あと、1つ1つの話のオチ?もよくわかんなかったなぁ。

  • うまくいかなくても
    利用されても
    嘘をついても
    愛が重くても
    それがその母子

    そんな
    考えさせられる話の間に
    愚かにも思える
    夜の世界の男女模様が
    深く浅く読める 面白かったです

  • 読了。良かった。風俗やAVに暗さがなかった。最貧困女子から遠く離れているように感じる。

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著者プロフィール

鈴木涼美

作家。1983年東京都生まれ。慶應大環境情報学部在学中にAVデビュー。その後はキャバクラなどに勤務しながら東大大学院社会情報学修士課程修了。修士論文は後に『「AV女優」の社会学』として書籍化。日本経済新聞社記者を経てフリーの文筆業に。書評・映画評から恋愛エッセイまで幅広く執筆。著書に『身体を売ったらサヨウナラ』『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』『ニッポンのおじさん』『JJとその時代』、『往復書簡 限界から始まる』(上野千鶴子氏との共著)など。

「2022年 『娼婦の本棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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