たゆたえども沈まず

著者 :
  • 幻冬舎
4.08
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344031944

感想・レビュー・書評

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  • ゴッホ兄弟が本当にこんな会話をかわしていたのではないかと思えるくらいに、フィクションを感じさせないストーリー。
    分かちがたい二人の絆と、繊細過ぎる二人のもろさと、危うい結末に向かっていくであろう不穏な感じ。
    全体的にモノトーンなお話の中に荒々しく生々しく感じるゴッホの描く絵(勝手なイメージだが)。

    浮世絵がパリで人気があったのは知っていたが、これほどまでに熱狂的だとは思わなかった。
    日本人としては誇らしい気持ちだが、肝心の当時の日本人には価値があまりなく、今でこそ価値が認められているゴッホが当時は全く認められず。なんとも皮肉だ。

  • 感情的になりがちなゴッホに対し、弟のテオは苦労していた。ということは知っていたが、それぞれの心の葛藤や繋がりを美しく生々しく描いている。
    当時のパリの華やかな様子が見えてき、日本人の葛藤も伝わってきた。
    絵の説明や情景の表現が素晴らしい。

    参考文献の量が凄い。原田マハさん、尊敬します。
    この本を読むと、私のように部屋中がゴッホグッズ塗れになります。

  • 美術にはあまり…いやほとんど興味がないが、ゴッホの絵には惹かれる。そしてなんとなく知っていたゴッホのことをこの本により、もっと知りたくなったし、日本の浮世絵についても知りたい。

  • T図書館 2017年
    史実を基にしたフィクション、架空の人物に特定のモデルは存在しない
    林忠正(起立工商会社)は実在人物

    心に突き刺さる話
    特に兄弟と師弟の二つの関係性が印象的だった
    フィンセントとテオの家族の問題
    いつの時代にも、どの家族にもある
    家族という血縁は、見放しても見放さなくても心の片隅に存在し、自分に責任はないにも関わらず心の中で葛藤し続ける
    東日本大震災でも、なぜ自分が死ななかったのかという自責の念に駆られる人がいたという
    家族の問題はとこでもあるのに、表に出てきにくく、そして深いものだ
    テオに、よくやってたよと声を掛けたい心境になった

    一方、重吉と林忠正の上司と部下(師弟)関係
    自分が新人の時を思い出し感情移入した
    頑張っているのに失敗してしまうあの感じ
    怒られるシーンは、まるで自分に怒られているようで、萎縮してしまったくらいだった
    筋が通って尊敬できる上司の林氏
    並々ならぬ思いで渡仏し、ここまで事業を大きくするのに、どれだけバカにされても頑張ってきた
    だからこそシゲにも早く一人前になってほしい
    怒るのは愛のムチなんだろうな

    話はかわるが、切り裂きジャックが文中にでてきてちょっとわくわくした
    その後フィンセントが耳を削ぐという伏線に繋がる

    《抜粋》題の由来
    33たゆたえどもパリは沈まず
    ヨーロッパの世界の経済と文化の中心地として、絢爛けんらんと輝く宝石のごとき都パリは、しかしながら、いまなお洪水の危険と隣り合わせである
    いつしか船乗りたちは、自分たちの船にいつも呟いている呪いの言葉をプレートに書く書いて掲げるようになった
    パリはいかなる苦境に追い込まれようと揺蕩いこそすれ消して沈まないまるでセールの中心に浮かんでいるシテ島のように

    印象派をみた当時
    44ボサボサに毛羽立ったような色の絵、どこが真ん中がわからないような構図も見ていて居心地が悪い、おぞましい絵

    追伸
    2016年
    ゴッホの耳を処置した当時の医師(クリスマス時期で研修医)が存命していて直接インタビューできたという本がある
    耳をバサッと切って、耳たぶだけ残った状態だったという

  • フィクションと事実の織り混ぜが絶妙、、、

    これで原田マハさんの作品にハマりました最高

  • 芸術には全然詳しくないですが、ゴッホの絵は好きで。この本の表紙の絵も好きです。

  • フィンセント・ファン・ゴッホとその弟テオドルス、浮世絵を広めた画商の林忠正といった実在の人物たちに林の助手にしてテオの親友という架空の加納重吉を配して、浮世絵が印象派の画家に、さらにはゴッホ、ゴーギャンといた次の世代の画家にどれだけの影響を与えたのかが描かれる。フランス語読みでヴァン・ゴーグとかアヤシと呼ばれる異国での自国民の気概を教えられる。
    日本での浮世絵に対する評価が欧州からの逆輸入であるのに、評価を上げた立役者のはずの林を貴重な浮世絵を世界に散逸させた犯人のように捉えるといういかにも日本人らしい見方を知る。
    冒頭のエピソードに登場するフィンセントの正体が分かるラスト、そしてタイトルが意味するセーヌ川をいだく芸術の都パリ。基本のストーリー展開はフィクションとして読んだが、どこまでが史実なのだろうというモヤモヤ感が残る。
    20-41

  • 正とその弟子加納広重は日本芸術を世界に広げるために、芸術の都パリへと向かう。
    そこで出会ったのは、画商のテオとその兄で画家のフィンセント・ファン・ゴッホであった。

    今となっては有名なゴッホが日本の浮世絵に影響を受けていたとは知りませんでした!
    試しに「ゴッホ」とインターネットで画像検索すると、日本の掛け軸の模写なのか見返り美人の画像が出てきたので、彼は愛日家だったようです。

    そして、本作の見所は兄フィンセントと弟のテオのたとえ、神であろうとも間を入ることさえできぬ兄弟愛である。

    「なぜ世間がフィンセントの絵をなかなか認めようととしないのか。そしてフィンセントの絵が、ほんとうに『認められる』ものなのか。そもそも、何をもって世間に『認められる』ことになるのか。」

    テオはフィンセントの才能について考えるも、答えが出ない。

    どうにかしてフィンセントをもり立てていこうとするテオの熱意は、新しい芸術を後押ししていこうという、人生を賭けた彼の熱意の表れにほかならなかった。

    しかし、フィンセントときたらテオの稼いだ金は全て酒代に消え、自堕落な生活をするばかり。
    口を開けば口論になり、お互いを傷つけることしかできずにいた。

    絵は一向に売れる気配はなく、のしかかる兄の存在にテオは限界まできていた。
    そんな時、テオはヨーと運命の再会を果たし、結婚を決意するも、自分が幸せになることが、兄から逃れるための裏切り行為なのでは無いかと葛藤するのであった。

    互いに半身の様な存在の2人は、もはや運命共同体などという言葉では表せないほど、遠く深いところで結びついていた。

    テオには聞こえる。
    フィンセントが何かを求めて飢え、自分がここにいるのをみつけてほしくて、声にならない声で叫んでいるのが。

    この兄弟の行く末は本作にて目撃してみては

  • 炎の画家。
    情熱の画家。
    そして悲運の画家。

    フィンセント・ファン・ゴッホ。

    命の奥底から沸き出でる熱をキャンバスに描き続けたゴッホ。

    物事を深く考えすぎ、絵を描くこと以外に全く関心を示さず、心の病と闘い続けた。

    日本美術を愛し、日本を理想郷と信じた彼は、日本人になりたいとさえ願っていた。

    だがその願いは叶えられることなく、生き急いだ天才画家は37歳の若さで自ら命を絶ってしまう。


    彼は、弟のテオとその妻ヨーに支え続けられていた。

    「この絵を部屋の中に飾ったら、まるでもうひとつ新しい窓ができるようだわ!」(ヨー)

    画家と画商のゴッホ兄弟に、パリの日本人画商のパイオニア・林忠正とその弟子・加納重吉が深く関わっていく。


    近代絵画の大きな分岐点となったジャポニズムと印象派。


    そこにたゆたえども流れる熱い情熱と友情。

    蕩々たるセーヌの流れが、常に変わることなく見守り続けてくれている。


    アートを通して描かれる、原田マハの人間賛歌。

  • 嵐が吹き荒れているときに、どうしたらいいのか。重吉は、小舟になればいいと言った。「強い風に身を任せて揺れていればいいのさ。そうすれば、決して沈まない。」たゆたえども沈まず。
    フィンセントもテオも、もっともっとそんなふうに生きられたらよかったのに。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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