たゆたえども沈まず

著者 :
  • 幻冬舎
4.06
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本棚登録 : 2761
レビュー : 336
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344031944

作品紹介・あらすじ

19世紀末、パリ。浮世絵を引っさげて世界に挑んだ画商の林忠正と助手の重吉。日本に憧れ、自分だけの表現を追い求めるゴッホと、孤高の画家たる兄を支えたテオ。四人の魂が共鳴したとき、あの傑作が生まれ落ちた-。原田マハが、ゴッホとともに闘い抜いた新境地、アート小説の最高峰。ここに誕生!

感想・レビュー・書評

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  • フィンセントファンゴッホ。ぞっとするほど、すごい画家だ。
    史実と想像が交じる原田作品の醍醐味は健在。とても面白かった。
    「たゆたう」という言葉が好き。意味もいいけど、響きが好き。

    パリで日本美術の為に戦った男、林忠正。どれだけの悲しみ、苦しみ、悔しさをセーヌ川に捨ててきたんだろう。本当の厳しさを知っているから、本当の優しさがわかるのだと思う。ここぞという時の林の優しさに救われる。
    最終章を読んですぐ、最初の章を読み返す。ゴッホ研究家の答えが最初に読んだ時よりずっとずっと寂しく感じた。

    テオという人物にはずっと興味があった。変わり者のゴッホをあそこまで支えたテオとはどんな人物か。ふたりが画家と画商の関係でもあるとは知らなかった(〃∀〃)ゞ
    テオとゴッホは光と闇と思っていた。だけど、闇と闇だったのかも…。闇と闇が支え合いぶつかり合って、真っ暗闇に。
    ふたりにとって絵が僅かな光だった。そして、輝いた「星月夜」!それなのに…。誰よりも深い絆で結ばれた兄弟だった。

    ゴッホと林忠正に交流があったという記録はないらしいけど、同じパリであれだけ浮世絵を愛したふたりが出会わないはずがないと思う。林忠正はパリでゴッホの最高の1枚をずっと待っていたに違いない。

  • ちょっとまえに「北斎とジャポニズム展」を見に行ったとき、日本の浮世絵がパリでブームになったことがあるという浅い知識はもっていたが、まさかここまで当時の印象派に影響を与えたとは思っておらずひどく驚いた。

    その流れもあり、いいタイミングでこの小説。
    ゴッホと浮世絵か、面白そうなテーマだなと手に取ることになった。

    結論から言ってしまうと、ちょっと中途半端かな??
    主人公が架空の人物加納重吉だとしても印象が弱い。
    ジャポニズムブームをけん引したとされる林忠正の生きざまを描くだけでも十分読み応えがあっただろうし、いわんやゴッホもしかり。おまけにゴッホを生涯支えた弟のテオもここでは主要登場人物の一人である。
    マハさんが一番描きたかったのは誰だったのか、なんだったのか焦点がぼけてしまっているのが残念。

    それを抜きにしたとしても、さすがのマハさんなので最後まで面白く読めた。
    ゴッホの有名な絵が小説の至るところにちりばめられていて、その描かれた背景を読むのも楽しかったし、ゴーギャンとの交流も興味深い。
    なによりの収穫は浮世絵うんぬんより、弟の存在かな。
    この弟なくしてはゴッホは画家として大成しなかったんだと思うと感慨深いものがある。良い弟を持って良かったね、ゴッホにいちゃん(笑)

    あと、これは私の問題なんですが、ついマハさんのアート小説を読むとき伝記を読んでる気になってしまうのが悪い癖。
    あくまでもフィクションですよって、わかっちゃいるんですけどね・・・。自分の知識が乏しく、マハさんの緻密な下調べと相まって勘違いしそうになっちゃうんですよ。鵜呑みにしてしまわないように気をつけます。

    • kaze229さん
      同感です。
      ついつい、フィクションだということを忘れがちになってしまう原田マハ・アート小説。素敵な小説に出遭ってしまうと、ついつい…
      同感です。
      ついつい、フィクションだということを忘れがちになってしまう原田マハ・アート小説。素敵な小説に出遭ってしまうと、ついつい…
      2018/04/12
  • 著者のアート小説は、登場人物たちの作品が表紙を飾り、どれも素敵な装丁で、つい手に取り上げてしまう。そして購入(笑)
    この作品も、表に<星月夜>、裏表紙に北斎の<大はしあたけの夕立>が。それぞれ、小説の中で重要な位置を占めてもいる。
    ゴッホ兄弟は勿論、林忠正も実在の人物であるが、彼らが出会った史実は確かではない。
    しかし著者は、彼らに架空の人物加納重吉という人物を絡ませ、史実とフィクションの見事な融合を果たした「アート小説の最高峰」に仕立ててしまった。
    世紀末のパリを舞台に、ゴッホ兄弟と日本人二人との交流が綴られ、名作<星月夜>の誕生となる。
    孤高の画家ゴッホと、彼を信じ献身的に支える弟のテオ。そんな弟のために、ゴッホがしてやれることは自分がこの世からいなくなることと、思い込んでしまうゴッホ。何という哀しい結論だろうか。
    最終頁を読み終えたあと、巻頭の「1962年」の部分を読み返すと、また一段とこの作品の魅力が増した。

    • norainuさん
      同じです!
      ラストまで読んで巻頭部を読み返してしまいました。
      同じです!
      ラストまで読んで巻頭部を読み返してしまいました。
      2019/03/13
  • 原田マハのアートを題材にした物語を読む時、スマホが手放せない。作中に出てくる絵画を検索するからだ。
    今回はゴッホ。生きている頃には認められず死後爆発的に認められたこと、自らの耳を切り取ったこと、そして自ら命を絶ったこと。わずかばかりの知識で読み始めたゴッホとその弟テオ、何より近しい場所にいた2人の日本人の存在に引き込まれていた。

    『印象派』と名付けられた理由が現在のプラスな認識とは真逆だったのか。『浮世絵』が絵画の歴史に多大な影響を与えたとは聞いていたが天地がひっくり返るほどの衝撃だったのか。こちらの観る意識がまたひとつ変わった。

    相手への尊敬が強すぎるからこそ生まれた信頼と、同じぐらいの比重で狂おしく憎んでしまう。寄り添いながら相手の顔を直視出来ず、彼のひとが逸らした瞬間に横顔を見つめるしかないようなもどかしさが美しく、残酷に感じた。

  • 改まって小説になると、ゴッホの絵や浮世絵が、まるで違うものに思えて(みえて)くるから不思議です。
    ゴッホが日本に帰化してもいいと思うほどに、本気で日本に行きたいと思っていたことは、全く知識が(興味を持っていたらしいくらいのことしか)なかったので、驚きました。日本にかなりつながりのある画家だったのですね。

    最後の著者の参考文献の多さにも驚きました。フィクション(架空の人物)もあるみたいですが、素晴らしいエンターテインメントとして、ゴッホの生涯を知ったのは、幸せでした。

    孤高の画家ゴッホ。
    でも周りには、温かい隣人や、なんといっても弟のテオがいました。それでも、ゴッホの心は孤独だったのでしょうね。
    ゴッホという人の絵を観る目がこれから変わりそうです。
    フィンセント・ファン・ゴッホの晩年の苦悩は、やりきれない気持ちがしました。
    生前全く認められなかった画家ゴッホ。
    せめて、絵が認められていればと思わずにはいられませんでした。
    彼の壮絶な一生が、一気に目の前を駆け抜けていった気がしました。

    • まことさん
      ありがとうございます!
      新刊は早速、図書館に予約します。今なら一番に借りられると思います。(^^♪
      既に読んだ本は、本棚以外では『楽園の...
      ありがとうございます!
      新刊は早速、図書館に予約します。今なら一番に借りられると思います。(^^♪
      既に読んだ本は、本棚以外では『楽園のカンヴァス』しかありません。
      そんなに、たくさんオススメがあるなんてワクワクします。
      2019/05/21
    • kanegon69 さん
      アート以外ですと、まずて始めに「キネマの神様」「翼を下さい」あたりがオススメです。感動しますよぉ〜^ ^
      アート以外ですと、まずて始めに「キネマの神様」「翼を下さい」あたりがオススメです。感動しますよぉ〜^ ^
      2019/05/21
    • まことさん
      ありがとうございます!!
      今、図書館に両方とも予約しましたので、来週には受け取りに行けると思います。
      楽しみにしています。(^^♪
      ありがとうございます!!
      今、図書館に両方とも予約しましたので、来週には受け取りに行けると思います。
      楽しみにしています。(^^♪
      2019/05/21
  • 原田マハさんは大好きな作家さんですが、まだ未読の物も多く、この本でやっと17冊目です。

    『たゆたえども沈ます』
    本当に良い本でした。

    これまでもたくさんの素敵な本に出合ってきました。
    じわじわと感動が押し寄せてくる本。
    思わず涙する本。
    などなど。

    この本は…
    圧倒的な強さで迫ってくる、気迫を感じる本でした。
    そして、ラストでは胸がつまって、思わず感涙。
    心が激しくが震えるような感じ…

    私は美術というものにとてつもなく疎い。
    絵心も全くなく、美術にも興味がありませんでした…
    そんな私の世界を少し開いてくれたのが原田マハさんの【楽園のカンヴァス】でした。
    やっとこさ、入口にたったばかりの私に原田マハさんは、『たゆたえども沈まず』で、”もう少しこちらへ”といざなってくれたのです。

    この本では、ゴッホと弟テオ。
    ゴッホの才能を認めていた林忠正、加納重吉との交流が描かれています。

    フィンセント・ファン・ゴッホの名前は知っていますし、有名な作品をいくつかは知っていました。
    でも、その程度の知識でした。
    弟テオの存在など全く知りませんでした。

    生前のゴッホはその才能を認められることなく、37歳でこの世を去っています。
    そして、ひたむきに兄ゴッホを支えた弟テオは兄の後を追うように33歳で亡くなっています。
    ゴッホとテオは、二人でひとり。
    お互いに必要としあい、離れられないのに、お互いの存在に苦しむ。
    そんな二人の関係に胸がしめつけられました。

    林忠正は19世紀末、パリに拠点を置き、日本美術の普及に尽力した人物。
    ゴッホと交流があったかどうかは定かではないようですが…

    原田マハさん自身
    「今回は、ミステリーやホラーといったジャンルの要素を極力排してみました。直球勝負の物語が読者に届くと本望です」
    「誰もが知るゴッホの悲しい生涯を思うとき、この作品をいまの私たちが美術館に足を運びさえすれば見ることができるのは、本当に奇跡としか言えません。そのことに勇気づけられて、この作品を書くことができました」
    と、インタビューに答えています。

    少し前にテレビで桂南光さんが『たゆたえども沈ます』を紹介されていました。
    ちょうど京都国立博物館でゴッホ展が開催されているときでした。
    展示作品も紹介され、日本に居たら行きたかった…

    原田マハさんの言葉にもあるように、私たちは”見ることができる”。
    いつか機会があれば足を運びたい。
    そして、”見ることができる”幸運に浸りたい…
    今、強く願っています。

    この本の中で胸に刻まれた言葉たち。
    パリに拒絶されていると感じるゴッホに忠正が言った言葉。

    セーヌに受け入れられないのなら、セーヌに浮かぶ舟になればいい。
    嵐になぶられ、高波が荒れ狂っても、やがて風雨が過ぎ去れば、いつもの通りおだやかで、光まぶしい川面に戻る。
    だから、あなたは舟になって、嵐を過ぎるのを待てばいい、たゆたえども、決して沈まずに。
    そして、いつか私をはっとさせる一枚を書き上げてください。
    そのときを、この街で待っています。

    悩むテオに重吉が言った言葉。

    考え込んでも、どうにもならないことだってあるさ。どんなに嵐がやって来ても、やがて通り過ぎる。それが自然の摂理と言うものだ。
    嵐が吹き荒れているときに、どうしたらいいのか。ーーー小舟になればいい。
    強い風に身を任せて揺れていればいいのさ。そうすれば、決して沈まない。…だろう?

    タイトルの「たゆたえども沈まず」は、パリ市の紋章に刻まれている言葉

    Fluctuat nec mergitur

    ラテン語で どんなに強い風が吹いていても、揺れているだけで沈みはしない という意味。
    日本語の「たゆたう」は
    物がゆらゆら動いて定まらない。ただよう。
    心が動揺する。ためらう。
    たゆたう…
    美しい言葉ですね。

  • 信念と恐怖、矜持と不安。自分が信じる道をただひたすらに前を向いて歩き続けているように見える4人の男たちにとって、その道ははたで見ているよりもはるかに険しく不安定で細く暗い。
    なのに、なぜそんな道をまっすぐにブレずに歩き続けられたのか。
    この小説を読むまで、ゴッホについての知識はあの強烈な色彩の絵と代表的な絵、浮世絵の影響と彼を支え続けた弟の存在、ゴーギャンとの生活そして耳と狂気と自死、その程度だった。ゴッホのあの絵の後ろに日本人がいたことなど全く知らなかった。
    日本が文明開化の波の中で大きく動いていたその時代に、遠く離れたフランスでも大きな波にもまれたゆたいつつも、沈まぬようにもがいていたゴッホと彼を支え続けた3人の男たち。彼らの夢を、葛藤を、そしてその慟哭を、125年の時を超えて原田マハが鮮やかに蘇らせてくれた。

  • いかなる苦境に追い込まれようと、たゆたえども決して沈まず、やがて立ち上がる…世の中から孤立し「芸術」という名の魔物と闘い、それでも自分の絵をひたすら描き続けるゴッホ。
    そんなゴッホを子供の頃から慕い支え続ける弟のテオ。
    この二人の兄弟と、当時世界の中心とされたパリで運命的に出逢った二人の日本人画商・林忠正と加納重吉。
    これら異邦人4人の奮闘から日本と西洋美術との繋がりが理解できた。
    ゴッホと日本の結び付きを鮮やかに描ききった原田マハさんにお礼を言いたい位、この作品に夢中になれた。

    常に孤独の匂いが染み付き世間から拒絶され不幸な事件を起こしたゴッホ。
    けれど彼が晩年に描いた「星月夜」は清澄で明るく希望に満ち、観る者の心を掴まずにはいられない。
    NY近代美術館にある実物の「星月夜」が観られたら、私も本望である。

  • 出来事と時間軸が行ったり来たりして、何が書かれているのかと思うと、実はもう回想のなかに連れて行かれている。
    場面転換の激しい映画のようだ。
    テレビや映画の中のパリの街角を思い出しながら、映像の中に浸る。

    日本美術がヨーロッパでもてはやされた時期、浮世絵をはじめとして、多くの日本の美術品を売りさばいた画商・林忠正(はやしただまさ)サイドは、彼の片腕を務める加納重吉(かのうじゅうきち)、フィンセント・ファン・ゴッホ側は、彼の実弟であり画商の、テオドール・ファン・ゴッホ(通称テオ)の視点で描かれる。
    孤高の人の“視点”はいつも描かれることはない。
    彼らが何を見ているのか、我々は下から見上げ、測るだけだ。

    歴史に名を残す芸術家は、えてして生活力がなく、ダメ人間である。
    凡人には見えないものが見え、感じられてしまう感性で、日常を過ごしていくことができないからだ。
    そして、彼らが作品を残す陰で、力になり、悪く言えば犠牲になってきた者がいる。
    フィンセントとテオの兄弟。
    世間的にはテオが光の世界に生き、兄のフィンセントはテオに影を落とす存在だろう。
    だが、芸術の世界から見れば、いまや伝説の画家となったファン・ゴッホの作品の陰で、その誕生を、愛情と疎ましさの狭間でもみくちゃになりながら支えた陰の存在がテオなのだ。

    あれやこれやの展覧会を、なぜあの時見に行かなかったのかと悔やむ。

  • 今回の作品は、ゴッホ。

    原田マハさんの美術史小説を読むと、いつも遠い時代の画家たちの生きた時代に引き込まれます。

    史実とフィクションが巧みに混在してるので、美術の教科書のようでもあるし、単純に読み物としてもおもしろくて。
    一気読みでした。

    読み終わって、平日の夜だっていうのにどこかへトリップしてたような非日常を味わうことができました。
    本を読むって幸せだなぁと思える1冊です。

    読み終わって、登場人物が実在の人物か調べてしまいました。その時、著者がこの本について書かれた文章を見ることができてそれも併せて興味深く読ませていただきました。

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著者プロフィール

原田マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞。2019年『美しき愚かものたちのタブロー』で第161回直木賞候補に。

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