お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

著者 :
  • 幻冬舎
3.97
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本棚登録 : 2537
レビュー : 281
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344032156

感想・レビュー・書評

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  • 法定通貨以外の価値をベースにした経済圏が複数併存する時代という見方には激しく同意。 ソーシャルキャピタル等の概念で類似のことはここ10年ほどで言われ続けてきており、筆者の主張が全く新しいものだとは思わない。が、実務家ならではの感覚と随所に放り込まれる歴史観、それに最新の実例をふまえた説明になったことで説得力ある整理になった。新しい経済学を構築する起点にすらなりうるストーリー。 飽和経済の中でお金を稼ぐことが難しくなり、法定通貨で測れない価値を蓄積することが重要になるとの主張は新しい時代の生き方の指針となる

  • 資本主義から価値主義へ。
    お金と感情を分けて考える。
    どんな経済システムの中で生きていくのかも自己選択できるようになっていく。

    これからの生き方に大変参考になった。

  • ・資本主義から価値主義へ
    ・あらゆる価値を最大化しておき、その価値をいつでもお金と変換できるようにすること。
    (=お金を貯めて持つより、お金を稼げる力のほうが大事)

  • 今はお金が絶対の価値になっているけれど、それはここ100年ちょっとの話で、今後お金の価値は揺らぐ。その分、新たな価値を持ったものが産まれてくるはずで、それが何か?という事がきちんと纏められて書かれており、私の様な経済のど素人でも分かりやすかった。

  • ‪言わずもがなのベストセラー本。てっきり仮想通貨の話かと思っていたら経済から労働まで幅広くて面白かった。資本主義から価値主義への変化について述べた第3章が特に。自分の中の常識がことごとく破壊される。デジタルネイティブならぬトークンネイティブかぁ…ダグラス・アダムスの言葉が重い。‬

  • 参考になる考え方は多くありましたが、一方で、本当にこの本に書いてあることがすべておこるような社会が近い将来くるんでしょうかねとも思いました。という考えが古いのかも知れませんが。

  • 「お金」というものの実態は何なのかという定義づけから始まり、その支払という手段が別のものに変わっていっている現実を説明。そこから、すでに始まっている未来の形まで、一つの流れとして分かりやすく書かれています。お金中心主義の時代に生きてきて人間からすると抵抗感のある未来図でもありますが、その変化はやはり感じていて、今までの価値観を変える必要があることは痛感します。ただ訳のわからない世の中の急激な変化について行くことは自分を滅ぼす可能性があるのですが、本書はその世の中でどのように自分を変えれば良いのかについての指南書になるとも思います。
    「お金」の稼ぎ方は、今の時代に生きているほとんどの人間は知っていると思います。これからはそうでない別の「価値」を稼ぐ必要が出てきます。それはどうやったら良いのだろうと、将来に対しての不安に対してはあくまで一例をあげているにすぎません。自分で勉強しなさいということだと思います。その動機付けに本書を読まれたらと思います。

  •  これは、お金ではなく、将来経済の新しい在り方を予測した本だ。

     資本主義では、もちろんお金は重要だ。
     だけど、お金では買えない価値があるということも言われてきている。
     そこで、将来は人間としての「価値」が資産になると考え「価値主義」を提唱している。

     さて、ここで以前に読んだ坂口恭平の本で「態度主義」という言葉を思い出した。
     私はこれができます。あなたはこれができます。
     そのスキルを交換しましょう。
     
     ポスト資本主義は個人の能力=価値をもとにしている考えが大きい。
     その価値をお金に換算してしまえば、それは資本主義なのだが、ビットコインの登場でお金ではなくトークンへの変換が可能になってきた。
     ビットコインはお金じゃない、情報そのものに価値があり、それは資本主義に組み込まれない使い方ができる。

     テクノロジーの進化、そして社会の新しい価値観が融合して、新しい経済のルールができる。
     今後、社会がその方向に進んでいったときに、いや俺はそんな社会は認めない、なんて頭を固くせず、時代に乗っていける柔軟な考えでありたい。

  • これまでの資本主義での「お金」至上主義から、「価値」の重要性が増していき、「資本経済」から「価値経済」へとパラダイムシフトが発生し、「お金」は「価値」の一部として取り込まれ、相対的にその「価値」も減少していく。その過程では、これまでの労働の考え方(報酬としての金銭)ではなく、まさに一人一人が自己実現していくことがこれからの労働になっていくと論じている。
    本書のタイトルである「お金2.0」からは、仮想通貨などに変わるという単純なものではなく、現在のお金の考え方がパラダイムシフトによって根本から変わるということを示唆していると感じた。

    これからの世の中(経済)は資産(お金)を最大化することが目的ではなく、価値を最大化することが目的となる。お金は価値の一部にしか過ぎなくなる。

    内面的な価値の例として、誕生日プレゼントやお土産が実用性としての価値が重要ではなく、気にかけてくれているという好意そのものに価値があるという指摘は自分に欠けている価値観だと反省した。

    この世界で活躍するためには、他人に伝えられるほどの熱量を持って取り組めることを探すことが、実は最も近道と言えます。そして、そこでは世の中の需要たったり、他の人の背中を追う意味は薄くなります。なぜなら、内面的な価値ではオリジナリティ独自性や個性が最も重要だからです。その人でなければいけない、この人たからこそできる、といった独自性がそのまま価値に繋がりやすいです。

    現在は、ルネサンス以来のパラダイムシフトが起こりうる状況を作りだしている。お金が有り余り行き先を失ったお金がテクノロジーへの投資を加速させており、次のパラダイムシフトが起こると予想される。

    自身では資産を所有せずに、個人が所有している資産を供給したい側と利用したい側をつなぎ合わせれば、UBERやAirbnbのようなサービスは、至る所にヒントが転がっている気がしてくる。後はそれを人より早く行動に移せるかどうかだけである。


    ・自分なりに現代社会の欲望を大別してみると、①本能的欲求、②金銭欲求、③承認欲求の3つに分けられます。本能的欲求に比べると、金銭欲求も承認欲求もいずれも歴史の浅い欲求です。
    経済は人と人の繋がりが切れたり、新しく繋がったりと、ネットワーク全体が常に組み替えを繰り返していて流動的です。そして、このような動的なネットワークには共通する特徴が2つあります。
    ①極端な偏り。経済が欲望のダイナミックなネットワークたとすれば、このようなネットワークには「偏り」が自動的に生じます。多くの繋がり.を持つ中継点ほどさらに多くの繋がりを獲得しやすく結果的に極端な偏りが発生する。例えば格差社会もこの特徴によって発生する。一般的にはパレートの法則と呼ばれます。
    ②不安定性と不確実性。些細な出来事がネットワーク全体に影響を与えて、常に全体が不安定で不確実な状態になる。
    ・持続的かつ自動的に発展していくような「経済システム」にはどんな要素があるかを調べていった結果、5つほど共通点があることに気がつきました。①インセンティブ,②リアルタイム、③不確実性、④ヒエラルキー、⑤コミュニケーション、の5つです。
    ①報酬が明確である(インセンティブ)。現代は生物的な欲望よりも社会的な欲望が目立ってきていて、中でも頭文字を取って3M (儲けたい・モテたい・認められたい)の3つが欲望としては特に強く、これらを満たすようなシステムは急速に発展しやすいです。現代ではお金以外の欲求が高まっています。自分がその会社で働いていることで社会的な承認が得られるか、若年層であれば異性からの評判が良いかなども重要になります。
    ②時間によって変化する(リアルタイム)。人間(生物)は変化が激しい環境では緊張感を保ちながら熱量が高い状態で活動することができます。反対に変化が全くない環境では緊張も努力も必要がなくなり、全体の活力が次第に失われていきます。
    ③運と実力の両方の要素がある(不確実性)。人間は生存確率を高めるために不確実性を極限までなくしたいと努力しますが、一方で不確実性が全くない世界では想像力を働かせて積極的に何かに取り組む意欲が失われてしまいます。自らの思考と努力でコントロールできる「実力」の要素と、全くコントロールできない「運」の要素が良いバランスで混ざっている環境のほうが持続的な発展が望めます。
    ④秩序の可視化(ヒエラルキー)。持続的に発展する「経済システム」を作る上で、秩序が可視化されている必要があります。世の中には、偏差値、年収、売上、価格、順位のような数字として把握できるものから、身分や肩書きのような分類に至るまで、階層や序列に溢れています。目に見える指標がないと参加者は自分の立ち位置がわからなくなってしまいます。また、指標が存在することで、自分と他人の距離感や関係性を掴みやすくなるメリットもあります。一方でこのヒエラルキーも、それが固定化されると、②リアルタイム(時間によって変化)と、③不確実性(運と実力の要素)が失われ、全体の活気を失わせてしまうことにもなる諸刃の剣です。当然、優位なポジションを手に入れた者はその地位を守ろうとするので、新陳代謝を強制的に促す仕組みを組み込んでおく必要があります。
    ⑤参加者が交流する場がある(コミュニケーション)。人間は社会的な生き物ですから、他人との関係性で自己の存在を定義します。参加者同士が交流しながら互いに助けあったら議論したりする場が存在することで、全体が1つの共同体であることを認識できるようになります。部門の飲み会やら会社の総会やらで、参加が面倒たと考えている人も多いでしようたた、実は組織としてはこういった交流の場が重要で、業務とは関係ない話でもしてメンバーが仲良くなっていると、いざ仕事でトラブルがあったり悩んでいる時にも気軽に声をかけることができて、互いに協力しあうこともできます。会社で働くメンバー同士の交流の機会が増えるはと企業としての一体感は高まります。
    ・国家、通貨、宗教、偏差値、学歴、経歴、年収、資産、倫理、権利など、私たちの精神や行動を縛る概念のほぼ全てが人工的に作られた幻想ですが、これらの効力が薄れ、時にはまた別の幻想が誕生し、人々の新たな価値判断の基準になっていきます。

    ・先進国では、ものやサービスが溢れています。まずヒットするサービスを考える場合は、衣食住などの生理的欲求以外の社会的欲求を刺激できる仕組みを導入できないかを考えてみることが重要です。またサービスがリアルタイムとは言わずとも、毎日・毎週・毎月変化する企画があることで,ユーザーは常にそのサービスのことが気になってくるようになり、何度も訪れてくれる可能性が高まります。また、そのサービスを利用している人同士がコミュニケーションを取れる場所やら空間やらの機能を用意してあげるとべターです。さらにそこで特にサービスの発展に貢献してくれたユーザーに対しては、他の人とは区別して「特別待遇」をし、それがユーザー間で可視化されていることが必須です。そして、貢献度に応じて受けられる優待や割引などを用意しヒエラルキーを作ります。
    ・こうしてサービスを軸にして、それを使ってくれるユーザーを母集団にして1つの経済システムを形成し、サービスが成長することでユーザーも得をし、ユーザーが得をすることでサーピスも成長するという「利害の重ねあわせ」を丁寧にやっていき,共生関係を作り出していきます。これによってサービスの差別化が難しくなったとしても、サービスを軸に形成された経済圏が競争優位性となり成長を続けることができるようになります。
    ・今後、情報伝達がここまで速くなった世界では模倣は簡単です。目新しいと思われたアイディアも一瞬でコピーされます。ただ、強いロイヤルティカスタマーに支えられた経済システムは一朝一夕でコピーできるものではありませんし、コピーしたとしても同じものを作ることはできません。製品やアイディアで勝負する時代から、ユーザーや顧客も巻き込んた経済システム全体で競争する時代に変わってきています。

    ・私たち人間や動物の脳は、欲望が満たされた時に「報酬系」または「報酬回路」と言われる神経系が活性化して,ドーパミンなどの快楽物質を分泌します。この報酬系は、食欲・睡眠欲・性欲などの生理的欲求が満たされた場合はもちろん、他人に褒められたり、愛されたりなどの社会的な欲求が満たされた時にも活性化して快楽物質を分泌します。
    ・この報酬系のおかげで、私たちの行動における動機付けがされます。少々言い方が悪いですが、人間も動物もこの報酬系の奴隷のようなもので、ここで発生する快楽物質が欲しいために色々な行動に駆り立てられます。この快楽物質という「ご褒美」なしに、人間は何かに繰り返し打ち込んたりすることはできません。そして、報酬系が分泌する快楽物質には中毒性があります。一度、気持ち良いと脳が感じると何度も繰り返しゃりたくなってしまう性質があります。一方で、脳の報酬系は欲求が満たされた時たけではなく、報酬が「期待できる状態」でも快楽物質を分泌することがわかっています。
    ・長時間変化の乏しいような環境であったり、予測可能性の高いような場合は、脳内の報酬系が刺激されにくいのです。脳は確実な報酬が予測されている状況下では、快楽を感じにくいのです。例えば、頑張っても頑張らなくても自分の給与は変わらず、毎日同じことを繰り返し、予測通りの数字が上がっているような職場だったら、あなたは楽しいと思うでしょうか?
    ・反対に、脳は予測が難しいリスクのある不確実な環境で得た報酬により多くの快楽を感じやすいということが研究でわかっています。さらに、自分の選択や行動によって結果が変わってくる場合には刺激や快感はさらに高まります。
    ・この脳内の報酬系の仕組みをフル活用した装置が、私たちがよく子供の頃に(場合によっては今も)遊んだ「ゲーム」です。優れたゲームほど、適度に私たちの報酬系を活性化させ、人々を熱中させるように作られています。ゲームの存在は、目に見える「リターン」がなかったとしても、仕組みによって人間の脳の報酬系は刺激されて快楽物質を分泌し、特定の行為に熱中するようになる証明とも言えます。
    ・つまり、金銭的な対価を一切求めずに、経済システムを作ろうとするとゲームに近づいていくことになります。昨今の優れたサービスや組織が、ゲームの手法を真似た「ゲーミフィケーション」を取り入れているのを見てもわかる通り、ゲームというものが私たちの脳を直接的に刺激する仕組みを凝縮したものであることは間違いありません。

    ・自然を3つの特徴(自発的秩序・エネルギーの循環・情報による秩序の強化)を持つ有機的なシステムとして眺めてみると、全く関係ないように見えるものも、自然と同じような構造で動いていることに気づかされます。
    ①自発的な秩序の形成。ルールを作っている人かいないにもかかわらず、簡単な要素から複雑な秩序が自発的に形成されているという特徴です。
    ②エネルギーの循環構造。自然界で暮らす生物は食物連鎖を通してエネルギーを循環させ続けています。熱力学の世界では時間が経つと秩序のある状態から無秩序な状態に発展していくとされていますが、自然や生命はこのエネルギーの循環の機能があるため秩序を維持するこもが可能犬と言われています。
    ③情報による秩序の強化。もし、この世界が完全に決定論的な規則で成り立っていたり、反対に完全にランダムの世界だったとしたら「情報」の必要性はありません。「情報」が必要になるのは「選択」の可能性がある場合だけです。つまり、生命が「情報」を体内に記録し始めたのは選択の必要性がある環境だったからと考えられます。「情報」が内部に保存されることで、構成要素が入れ替わっても同じ存在であり続けることができるのです。
    ・生命・細胞・国家・経済・企業まで、いずれも無数の個が集合して1つの組織を作っており、いずれも動的なネットワークとして機能しています。興味深いのは、入れ子のような構造が続いていることです。自然の中に社会があり、社会の中に企業があり、企業の中に部署があり、部署の中に人間がいて、人間の中に器官があり、器官の中に細胞があるといった風に。社会ではそれぞれ、違うものとして名前をつけていますが、構造的には、全て同じものとして捉えることができます(フラクタルといいます)。

    ・テクノロジーの変化を見る時は「点」ではなく「線」で捉えることが大事です。日々登場するIT業界のバズワードを追っていっても、それぞれを「点」で見ていては何も見えてきません。テクノロジーの変化を「線」で捉えるとは、現在の社会システムがどんな課題を解決するために作られたものなのかの「原理」を正しく理解し、最新のテクノロジーはそこにどのような変化を起こすのかを1つの「現象」として理解することを意味します。

    ・これから10年という単位で考えれば、大きな変化の流れは「分散化」です。なぜなら、既存の経済や社会は、「分散化」の真逆の「中央集権化」によって秩序を保ってきたからです。それは、近代社会が「情報の非対称」を前提に作られているためです。情報が偏って存在し、それぞれがリアルタイムで完全に情報共有できないことを前提に、代理人や仲介者を「ハブ」として全体を機能させてきました。
    ・これからは、オンライン上で人と情報とものが「直接」かつ「常に」繋がっている状態が実現します。そうすると中央に代理人がハブとして介在する必然性はなくなり、全体がバラバラに分散したネットワーク型の社会に変わっていきます。この状況では、情報の非対称性は消えつつあるので、間に入っている仲介者には価値はありません。むしろ情報の流れをせき止めようとする邪魔者になってしまいます。分散化が進んでいくと情報やものの仲介たけでは価値を発揮できず、独自に価値を発揮する経済システムそのものを作ることができる存在が大きな力を持つようになっていきます。
    ・この「分散化」という現象は近代までの社会システムの前提を全否定する大きなパラダイムシフトであり、中央集権的な管理者からネットワークを構成する個人への権力の逆流、「下克上」のようなものです。

    ・共有経済(シェアリングエコノミー)と呼ばれるサービスは、社会が常に繋がって分散している状態ができて初めて機能し得るものです。UBERもAirbnbも車や不動産を所有しているわけではなく、ただの個人と個人を繋ぐネットワークを構築し、支払いの仲介や,レビューによる信頼性の担保など、よく回る1つの経済システムを作っているだけです。シェアリングエコノミービジネスは、分散している状態でネットワーク化した社会での成功例の典型で、運営者に必要なのは「主体」としてサービスや商品を提供していくことではなく、「黒子」として個人をサポートしていくことに尽きます。
    ・そこではいかに優れた経済システムを設計できるかが全てです。遊休資産を活用して収入を得たい個人を対象に、適切な報酬の設計を行い、誠実に運営をして顧客満足を追求する人はレビューによって評価を可視化され、さらに多くの収入を得ることができるようにする。ユーザー同士がチャットやコメントを通してコミュニケーションを取れる機能を提供し、ユーザーの手によって勝手に発展していくようなサイクルを作る。

    ・従来は企業と個人の間が主流たったお金のやりとりが、ネットワーク型の社会に移行すると個人から個人への流れがメインになり、そこには今までとは全く異なる経済が発展しつつあります。

    ・実際に私たちが生活している経済は少なくとも2つの性質の異なる経済が混ざりあってできています。労働をして給与をもらい、コンビニに行ってお金を払うという一般的な経済は、「消費経済(実体経済)」と呼ばれています。大半の人はこの経済の中で生きているはずです。もう一つは、お金からお金を生み出す経済、これは「資産経済(金融経済)」と区別されています。こちらの経済をメインに生きている人は資産家や金融マンなどのごく一部の人たちです。ただ、世の中に流通しているお金の流れの9割近くは資産経済の方で生まれています。
    ・今はこの消費経済に対する資産経済の割合はどんどん大きくなっていて、経済はより不安定な状態になっていっています。むしろ、人々は消費をしなくなっていて、先進国に関して言えば消費経済は縮小すらし始めているようにも感じます。ミニマリストが増え、ユニクロの製品のように安くて良いものが手に入り、車や家を購入しなくても普通に生きていけます。一方で、資産経済はどんどん拡大を続けていて,世界中で金融マネーは投資先を探してさまよっています。もう利回りの良い金融商品などなくなってきているため、お金はあるけれど使う対象がないといった状況にあるわけです(あくまで資産経済の話)。日本では企業の内部留保金も過去最高の406兆円となっています。

    ・ものを扱わないネット企業で、財務諸表上の価値として認識されていないものの1つが「人材」、もう1つが「データ」です。ネット企業にとってはこのデータこそが価値であり、会員データ・購買データ・広告配信データなどを失った瞬間に廃業しなけれぱなりません。
    ・フェイスブックの最大の価値はユーザーのデータであり,これらの価値をお金に換えていないたけでした。もしこういったユーザーの行動データも資産として企業価値に反映させることができれば、財務諸表から企業価値を判断する際の認識のズレも生まれなかったはずです。金融の枠組みはどんどん現実世界の価値を正しく認識できなくなっています。

    ・今後は、可視化された「資本」ではなく,お金などの資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていくことが予想できます。私はこの流れを「資本主義(capitalism)」ではなく「価値主義(valualism)」と呼んでいます。
    ・資本主義で一番大事なことは資本を最大化すること、簡単に言えば「お金を増やすこと」を追求することです。どれたけ人々が熱中して膨大なユーザーがサービスを利用してくれていても、それらが「お金」という形に換えられなければ資本主義経済では存在しないものとして扱われてしまいます。逆に、実際は価値がないものであっても、それをうまくお金・資本に転換できさえすればそれは評価の対象になってしまいます。
    ・価値主義ではその名の通り価値を最大化しておくことが最も重要です。価値とは非常に暖昧な言葉ですが、経済的には人間の欲望を満たす実世界での実用性(使用価値・利用価値)を指す場合や、倫理的・精神的な観点から真・善・美・愛など人間社会の存続にプラスになるような概念を指す場合もあります。興奮・好意・羨望などの人間の持つ感情や、共感・信用などの観念的なものも、消費することはできませんが立派な価値と言えます。価値主義における「価値」とは経済的な実用性、人間の精神にとっての効用、社会全体にとってポジティブな普遍性の全てを対象にしています。

    ・価値という言葉は、①有用性としての価値、②内面的な価値、③社会的な価値、の3つに分類できます。
    ①有用性としての価値とは、「役に立つか?」という観点から考えた価値です。実世界での「リターン」を前提にした価値です。
    ②内面的な価値とは、愛情・共感・興奮・好意・信頼など、実生活に役に立つわけではないけれど、その個人の内面にとってポジティブな効果を及ぼす時に、価値があるという表現を使います。
    ③社会的な価値とは、個人ではなく社会全体の持続性を高めるような活動(NPO等)も私たちは価値があると表現します。

    ・内面的な価値も数字のデータとして認識できれば,それらは比較することができ、かつそのデータをトークン化することで内面的な価値を軸とした独自の経済を作ることもできます。このような内面的な価値を軸とした経済の例が、「評価経済」や「信用経済」です。お金ではなく、他人からの評価や信用などの人間の内面的な感情によって回る経済を指しています。ソーシャルメデイア上で多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーと呼ばれる層が、消費に対して大きな影響力を持ったり、メデイアとしての役割を担ってきたりしている現象も、評価経済や信用経済の一部として語られています。
    ・誕生日プレゼントやお土産も、実用性としての価値が重要なのではなく、気にかけてくれているという好意そのものが価値であることもよく似ています。
    ・一方で、なぜ多くの人が評価経済や信用経済に対して違和感を抱くのかというと,今話題になっている大半の仕組みが「評価」や「信用」ではなく、「注目」や「関心」に過ぎないから、ということがまずあげられます。ネットのインフルエンサーが集めているのは、興味・関心・注目であって、世の中の人が考える評価・信用とは似て非なるものです。
    ・アクセス数やフォロワー数などのデータは、興味・関心・評価・信用などが混同してしまっていて、それらを明確に区別できていません。その人が多くの人に評価されているのか、注目されているたけなのか、面白がって野次馬的に見られているたけなのかは現在のフォロワー数やアクセス数のような簡単な指標からは判断できないのです。もし、今目の前で起きていることが「注目経済」「関心経済」と表現されていれば、多くの方も納得できたでしょう。
    ・もう1つの理由としては、注目や関心などの特定の内面的な価値のために、共感や好意などの他の内面的な価値や、治安や倫理などの社会的な価値が犠牲になることがあるからです。「注目経済」「関心経済」においての必勝バターンは、何を犠牲にしても注目と関心を集めることに尽きます。例えば、倫理的に問題のあるような行為をして、それを動画に収めてYouTubeにアップして炎上させて再生数を稼ぐといったこともよくやられています。
    ・社会は絶妙なバランス感覚で成り立っています。ある特定の価値が過剰に持ち上げられて、他の価値を毀損し始めると、バランスを取るように揺り戻しが起きます。評価経済や信用経済のメリットばかりが最近は強調されていますが、根本的にはどの仕組みも行きすぎると資本主義と同じような問題は起こり得る、ということを全員が認識しておくことが重要です。

    ・かつて企業は情報格差や政治的特権を活用して利益を上げることができました。今は消費者がネットを使ってあらゆる選択肢を調べて自力で最良の選択ができるようになってきています。ネットの集合知のおかげで消費者が劇的に賢くなりました。これからの時代は本当に価値のあるサービスを提供しない限りは利益を出しにくい、価値と利益がイコールで結びつく時代だと思っています。一方で、以前はビジネスとしては全く魅力的には映らなかった研究開発的事業や社会貢献的事業も、それに価値を感じる支持者を集め、利益の出るビジネスとして成立しつつあります。
    ・スマホやブロックチェーンなどのテクノロジーの普及によって、これらの社会的な価値を軸にした独自の経済圏を、グローバルで誰でも簡単に構築できるようになると、この流れは一気に加速します。
    ・反対に「楽に儲かる」という動機で始められるビジネスの多くは、情報がオープンである世界では過剰な競争を発生させ最終的には満足な収益が出にくくなっています。
    ・これら全体の流れを見ると、社会的に価値のある取り組みは利益を出しやすくなってきている一方で、利潤のみを徹底的に追求する事業は短期的な利益を求めすぎて消費者に避けられてしまうか、過剰競争に巻き込まれて長期的には収益を出しにくくなっているような気がします。数十年後には「営利」と「非営利」という区別はなくなっており、活動は全て「価値」という視点から捉えられるようになっているでしょう。

    ・AIなどのテクノロジーが急速に発達していき、大半の労働は価値を失います。人間がやるよりも機械がやるほうがはるかに安価で効率的であるからです。そうなると大半の人が失業してしまうことになります。そこで、ベーシックインカムの導入などを考える国が増えてくるでしょう。
    ・へーシックインカムによって働かなくても生きていけるという状態を全員が享受できるようになったら、私たちにとってお金はとのような存在になるでしょうか。お金のために嫌な仕事をする必要もない。労働からもお金からも解放された状態になります。当然ですが、お金の相対的な価値はさらに下がります。現在はお金には人を動かすカがありますが、生活するためにお金を稼ぐ必要のなくなった人からすれば、お金はもっとあったら便利なものであり、なければならないものではなくなっているはずです。なので、お金からは人の行動を変える魅力は失われます。現在の経済では最も強カなお金を稼ぎたいという欲望(金銭欲)が、報酬として機能しなくなることが想像できます。
    ・私たちがどんな職業につき,誰と結婚して、どんな宗教を信じ、どんな政治思想を持つのも個人の自由であるのと同様に、何に価値を感じて、どんな資産を蓄え,どんな経済システムの中で生きていくのかも自分で選んで自分で決められるようになっていく。私たちはその過程じあります。そこでは優劣を決めようとしたり自分の基準を他人に押し付ける必要は全くなく、ただ個人が自分に最も適した経済を選んでいくという「選択」があるだけです。

    ・ミレニアム世代(1980年以降に生まれた世代)は、比較的裕福になった後の世代なので、お金や出世みたいなものにモチべーションを感じにくいです。生まれた時から衣食住が満たされている状態で、あの服が欲しかったとか、もっと美味しいものが食べたかったみたいな強烈な執着というのが生まれにくいのは理解できます。
    ・ミレニアム世代以前は足りないものがあって、それを埋めるために必死に頑張るという明確な方向性を持っていました。そして、その基盤を受け継いだ世代は満たされてしまっているので、何に向かって頑張れば良いのかがわからなくなっている。そしてその不完全燃焼のような感覚が多くの人を不幸にしているという事実。おそらく上の世代からは「なんて賛沢な悩みだ!」とお叱りを受けると思いますが、これが深刻になってきているので、危機感を覚えている人が増えてきたということです。
    ・人生の意義や目的とは欠落・欲求不満から生まれるものですが,あらゆるものが満たされた世界ではこの人生の意義や目的こそが逆に「価値」になりつつあります。この流れはさらに加速していき、人間は物質的な充足から精神的な充足を求めることに熱心になっていくことは間違いありません。これから誰もが自分の人生の意義や目標を持てることは当然として、それを他人に与えられる存在そのものの価値がどんどん上かつていくことになります。

    ・金銭的なリターンを第一に考えるほど儲からなくなり、何かに熱中している人ほど結果的に利益を得られるようになります。つまり、これまでと真逆のことが起こります。利益やメリットを最優先にする考え方は実用性としての価値の観点であって、それを内面的な価値に適用したところで全く機能しません。簡単に言えば、「役に立つこと」や「メリットがあること」と、「楽しいこと」や「共感できること」は全く関係がないのです。これまでの経済はいかに役に立つかを価値の前提にしてきて、使用価値のないものに価値を認めてきませんでした。内面的な価値は、商品でもサービスでもありませんでした。しかし、共感・熱狂・信頼・好意・感謝のような内面的な価値は、SNSといったネット上で爆発的な勢いで広まっていきます。今や誰もがスマホを持ち歩いてネットに常時接続しているので、人の熱量が「情報」として一瞬で伝播しやすい環境が出来上がっています。
    ・仮想通貨やトークンエコノミーの普及によって、こういった目に見えない価値もネットを経由して一瞬で送れるような仕組みが整いつつあります。ものやサービスが飽和して使用価値を発揮するのがどんどん難しくなり、多くのミレニアム世代が人生の意義のようなものを探している世界では、内面的な欲望を満たす価値を提供できる人が成功しやすくなります。
    ・この世界で活躍するためには、他人に伝えられるほどの熱量を持って取り組めることを探すことが、実は最も近道と言えます。そして、そこでは世の中の需要たったり、他の人の背中を追う意味は薄くなります。なぜなら、内面的な価値ではオリジナリティ独自性や個性が最も重要だからです。その人でなければいけない、この人たからこそできる、といった独自性がそのまま価値に繋がりやすいです。

    ・かつてルネサンスが起こった時は,イタリアは貿易によって急速に裕福になっていきました。貿易や金融で財産を築いたメディチ家など大富豪が有り余る富で芸術家を支援しました。結果的に、近代芸術の発展につながります。さらに宗教の後ろ楯を得たニュートンなど科学者が様々な物理法則を発見して、産業革命を引き起こし、そこでもたらされた経済的な基盤きもとに宗教から民主主義・資本主義・科学の時代へ大きなパラダイムシフトが起きていきます。
    ・今回の経済に関する革命は、今まで「儲からない」という理由で投資を受けられなかった最先端のテクノロジーへの投資を加速させ、人類を次のパラダイムに移行させるトリガーになり得ると見ています。

    ・先ほど経済と政治の境界も消えると話しましたが、同様に経済と宗教の境界線も消えていくでしょう。株式会社も宗教法人も、利益か思想かの入り口は違いますが、やることが似ているからです。株式会社は理念を掲げて社会的な価値をより追求していく流れにあり,一方で宗教は内面的な価値を取り込み経済を形成していきます。
    ・経済システムも国家も都市も宗教も会社も、私たちは目的や規模や用途に応じて別の名前をつけて別の概念として扱ってきました。しかし、「価値」という視点で分類し直すと、これらを区別する意味はなくなります。価値主義では、物理的な存在を前提にした近代の分類が溶けてなくなり、バーチャルな空間でのネットワークの構造に着目するからです。

  • 正直、日々目に入るニュース以上の内容はない。
    ただ、価値の捉え方の具体例があったのは参考になった。
    短い本だったので幸いにも読むのに時間をかけずに済んだのが救い。

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著者プロフィール

福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。2015年に東証マザーズに上場。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「30 Under 30 Asia」などに選出。2017年には時間を売買する「タイムバンク」のサービスの立ち上げに従事。宇宙産業への投資を目的とした株式会社スペースデータの代表も兼務。
『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(幻冬舎)で「読者が選ぶビジネス書グランプリ2018」リベラルアーツ部門賞を受賞。

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恩田 陸
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