口笛の上手な白雪姫

著者 :
  • 幻冬舎
3.28
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本棚登録 : 602
レビュー : 91
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344032453

作品紹介・あらすじ

劇場で、病院で、公衆浴場で-。"声"によってよみがえる、大切な死者とかけがえのない記憶。その口笛が聴こえるのは、赤ん坊だけだった。切なく心揺さぶる傑作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 冷ややかで時に残酷で、けして温まりそうにないのに気づけば人肌のようにしっとりと温かい。境界も存在もいつの間にかあやふやになり、あなたなのか私なのかわからなくなる。密やかに侵食される。迷い込む。怖い。ああ小川さんの物語世界だ。その物語世界に耽溺しつつ、読後には帰って来られた安堵の吐息をまずひとつ。ふう。

  • 表題作含め8篇を収めた短編集。
    どれも、静謐で穏やかで、秘密めいて、不思議さがあって。そしてとても優しい。
    この空気は小川洋子さんの本でしか味わえない。
    時々無性に浸りたくなる。
    『盲腸線の秘密』が好みだった。

  • 小川洋子さん独特の世界を満喫できる短編集。どのお話も印象深くしみじみとひたひたと楽しみましたが、少女とお針子のりこさんとの交流を書いた話と、先回りローバの話が特に好きでした。それとお話の展開は心がざわざわしたものの、小説は目で読むのではなく作家が自身の声で語ってくれるのを聞いているのだ、というお話にはそうだったらいいのに!と思ってわくわくしました。読み終わるのが惜しい感じでした。

  • 気持ち悪さと美しさが渾然一体となる不思議。
    以下ネタバレ含む。注意。




    「先回りローバ」
    留守中に電話に出ることの怖さから、時報の声に聴き入る吃音の少年。
    この取り合わせの妙。小川洋子凄すぎる。
    そうか。時報って声なんだな、と思い出す。
    関係ないけど、昔、NHKで12時を知らせる黒盤の時計を食いいるように眺めていた。
    規則正しく刻まれる声への憧れ。
    知り合いの吃音症の方に、自分の発声に対するコンプレックスを聞いたことがある。
    でも、内容よりも訥々と語るその姿に、美しさを感じたことを覚えている。

    「かわいそうなこと」
    身の回りにあるかわいそうなことを、ノートに収集して慰撫していく話。
    シロナガスクジラの骨、図鑑のツチブタ、不器用な野球少年。
    そうした存在に、当事者以上の痛みを感じ、その痛みを丁寧に癒しに変えていく「僕」。
    一見、「かわいそう」と勝手に判断して、自分たちの世界に連れ込んでは、実のところ自分たち自身を慰めているに過ぎない、そんな今の社会の光景を彷彿とさせる。
    でも、この「かわいそう」な存在は、自分の身代わりに出来てしまったものなのかもしれない、と辺りを見渡す「僕」を否定する気にはなれない。

    はっ!キリがないのて、一言ずつ(笑)

    「亡き王女のための刺繍」
    ツルボラン、整然とした姿が怖い。

    「一つの歌を分け合う」
    レ・ミゼラブル、脳内再生間違いなし。

    「乳歯」
    海外で迷子は、確かに死を覚悟する。

    「仮名の作家」
    ファンに気を持たせてはならない教訓(笑)

    「盲腸線の秘密」
    曾祖父を苛めないで……。

    「口笛の上手な白雪姫」
    短編に詰めきれない濃い作品を最後に持って来る所に、笑みが零れる。

  • 小川さんの感性に浸るのが好き。文章には声があるって話、なるほどなあと思いました。ただそのお話のラストはちょっと悲しかったので、☆は4つ。

  • 小川洋子さんのプロとしてのゆるぎない文章力で
    不思議な世界へ誘われる
    八編の短編集
    どの世界も静謐で不思議で、でも優しさに満ちている
    物語を読む喜びを味わわせてくれる
    表紙の白鳥が語ってくれるようだ
    ≪ 境界は 意味をもたない この世界 ≫

  • 小川洋子さんの新作短編集。…正直なところ、どんなお話でも端正な文章から予想もつかない静かで豊かな世界が広まっていきそれが例外なく素敵なので、読むのになんの不安もなく、ひたすらに楽しみに新作を待てる作家さんのひとりです。

    今回の短編集も、現代のようで現代でない、ふつうのようでふつうでない出来事をひとつひとつすくいあげて描かれたお話はどれも切なげな余韻を伴い、そのどこにもない空想の世界に浸れる幸せを味わえました。

    今回の話では、「亡き王女のための刺繍」の懐深いやさしさ、「盲腸線の秘密」の二人の孫と子の絆、「仮名の作家」のおかしくも哀しくもある傾倒ぶり、それらのお話の人々の心の揺らぎや信念がとても好きだなあと思いました。

    少年の登場が多くて、いつもよりもみずみずしさというか、動きのあるお話が多いようにも感じました。そういう意味では、小川さんのお話を初めて読む人にも向いているかも、と感じました。

  • 8編。流石にうまいな〜楽しめました。どれも像が浮かび上がる。「先回りローバ」吃音の子の気持ちよく書けてるし、「仮面の作家」の主人公のような人のこと、なぜかやってみたい気がする(最後は非難を受けるのでそこまではパスだけれど)。「盲腸線の秘密」の子供と曾祖父さんのやりとりも素敵だし、「乳歯」や「口笛の上手い白雪姫」の不思議な世界もすっと入り込めました。小川さんの世界、しっかりしてました。

  • 「先回りローバ」が好き。ローバが何かわかってからは先回りしてる姿を想像するとおかしい。電話に出たくないから時報を聞き続けるとかわかる。レミゼのミュージカルを観に行く話は、本編よりミュージカルの力が強かった。

  • ここ数年の小川洋子さんは本当に名作連発で凄い。

    この短編集も本当にどれも素晴らしいです。

    現実と幻想、生と死の間を彷徨う感覚がたまりません。

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著者プロフィール

小川 洋子(おがわ ようこ)
1962年、岡山県生まれ。高校時代に文芸を志し、早稲田大学第一文学部文芸専修入学。在学中から文芸賞に応募。卒業後一般企業に就職したが、1986年の結婚を機に退職、小説家の道に進む。
1991年『妊娠カレンダー』で芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞、本屋大賞、2006年『ミーナの行進』谷崎潤一郎賞、2012年『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞、2013年早稲田大学坪内逍遙大賞をそれぞれ受賞。芥川賞、太宰治賞、読売文学賞、河合隼雄物語賞などの選考委員を務める。
『博士の愛した数式』は映画化され、大ヒットとなった。受賞作以外の代表作として、『薬指の標本』『人質の朗読会』『猫を抱いて象と泳ぐ』。

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