ディア・ペイシェント

著者 :
  • 幻冬舎
3.52
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344032477

作品紹介・あらすじ

病院を「サービス業」と捉える佐々井記念病院の常勤内科医・千晶は、押し寄せる患者の診察に追われる日々を送っていた。そんな千晶の前に、執拗に嫌がらせを繰り返す患者・座間が現れた。病める人の気持ちに寄り添いたいと思う一方、座間をはじめ様々な患者たちのクレームに疲弊していく千晶の心の拠り所は先輩医師の陽子。しかし彼女は、大きな医療訴訟を抱えていた。失敗しようと思って医療行為をする医師はひとりもいない。なのに、患者と分かり合うことはこんなにも難しいのか-。現役医師が医療に携わる人々の苦悩と喜びを綴る、感涙長篇。

感想・レビュー・書評

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  • モラルのないクライエントは非常に多くなっている。病院以外でもハードクレーマーは存在する。そんな中でできることは、とにかく誠実という言葉に尽きる。相手に対してでもあるが、
    何かあった時に誠実な対応が自分を守ってくれる。

  • 病院を「サービス業」と捉え「患者様プライオリティー」を唱える
    佐々井記念病院の常勤内科医になって半年の千晶。
    千晶は、押し寄せる患者の診察に追われる日々を送っていた。
    そんな千晶の前に、執拗に嫌がらせを繰り返す患者・座間が現れた。
    病める人の気持ちに寄り添いたいと思う一方、座間をはじめ
    様々な患者たちのクレームに疲弊していく千晶の心の拠り所は
    先輩医師の陽子。
    しかし彼女は、大きな医療訴訟を抱えていた。
    失敗しようと思って医療行為をする医師はひとりもいない。
    なのに、患者と分かり合う事はことはこんなにも難しいのかーー。

    前回の「サイレントブレス」にとても感動したので期待して読み始めました。
    今回は現代日本の医療界の現実を切々と訴えていた。

    お医者様と尊敬と感謝を込めて呼ばれていたのは古き良き時代だったのか
    学校の先生もそうですね。
    今や患者様の時代なのか…。
    外来患者にはS・М・Lがあるという。
    Sとは「スムーズ」要領よく病状を伝えてくれて、説明もすぐに理解してくれる患者
    Мとは「まだるっこしい」病状説明の手際が良いとは言えず、世話の焼ける患者。
    Lとは来院した瞬間から災厄を振りまく台風そのものといったタイプや
    気付いた時には手に負えないほどに成長するタイプ
    何かあれば訴えてやると身構えているタイプ
    これを読んだ時に、とっても嫌な気持ちになった。
    読み進めているうちにそう思いたくなる医師の気持ちもわかって来ましたが、
    やはり患者の立場の私からは侮辱されている様に感じた。
    大きな病院にいくと、信じられない位の長時間の待ち時間。3分診察。
    予約しているのに3時間なんて当たり前。5時間6時間なんてのもありますが、
    態度にも言葉にも出さず、お医者様には丁寧に接するのは当たり前。
    診察室には挨拶をして入り、宜しくお願いしますと頭を下げ、
    必ずありがとうございましたと言って診察室をでます。
    でも心の中では色んな不満が渦巻いています。
    前回の結果を全く覚えていない…目が一度もあわない…etc.

    しかし、お医者様の方も深い悩みを抱いている事がわかりました。
    現役の医師である南さんが書かれているからこそ、
    医師が追い詰められていく様子が苦しくなるほど伝わってくる。
    こんなにも医療現場が過酷な状況になっていたとは…。

    主人公の千晶のお父さんの言葉が心に沁みました。
    人は必ず死ぬ。
    治すための医療だけじゃなくて、幸せに生きる為の医療を考える。

    千晶の様な患者に寄り添えるお医者様に出会いたい。
    心の通わせられるお医者様に出会いたいって思った。

    色んな事を考えさせられました。


    犬が吠える、風が伝える。だがキャラバンは進む。

  • 4.1
    良かった。
    医療とは関わりのある職場で働いていることもあり、よりリアルに読めた気がします。
    それでも、それだからなのか、患者さんが亡くなったりする場面では思わず泣けてきてしまいました。
    学生時代は成績が良くてエリートで、医師になり、そこまで頑張って来たのに、勤務医になると過重労働、荷重責任、があり、その分過剰な承認欲求があり、と、確かにどれも当てはまるケースが多いのだろうなと想像できます。
    医師は人なので、診断も正直怖いです。本当に正しいのか、どうか。
    でも、人なのでそこは完璧にはならない、そう考えると、信頼できる医師に診てもらう事が納得性を高めることになるんだろうなと思う。

  • 以前読んだ『ヴァイタル・サイン』は看護師さんの過酷な日々を描いていたが、こちらは市中病院の常勤内科医 真野千晶の過酷な毎日を描いている。

    この作者はモンスターペイシェントへの思いが非常に強いのかもしれない。
    そして私が知らないだけで、世の中にはこういった患者様が大勢いるのだろう。
    この作品の中では、本当のモンスターは患者ではなく、はっきりと犯罪者であるが、日々理不尽な苦情や要求にさらされる医療従事者には、本当に頭が下がる。
    ただもちろんモンスターは困るが、患者側としては2~3時間待って機械的に診察3分では、不安な気持ちで病院へ来たのに…と、納得できない不満感を抱いてしまうのも正直なところだ。
    安易な患者が多すぎるのか、医師が少なすぎるのか、医療システムの問題なのか、その全てなのかもしれない。

    千晶は、患者の声を聞こう、誠実であり続けようと、今日も診察を始める。
    せめて受診する側の自分たちも同じような心持でいて、病院という場が少しは平和になることを祈りたい。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    病院を「サービス業」と捉える佐々井記念病院の常勤内科医・千晶は、押し寄せる患者の診察に追われる日々を送っていた。そんな千晶の前に、執拗に嫌がらせを繰り返す患者・座間が現れた。病める人の気持ちに寄り添いたいと思う一方、座間をはじめ様々な患者たちのクレームに疲弊していく千晶の心の拠り所は先輩医師の陽子。しかし彼女は、大きな医療訴訟を抱えていた。失敗しようと思って医療行為をする医師はひとりもいない。なのに、患者と分かり合うことはこんなにも難しいのか―。現役医師が医療に携わる人々の苦悩と喜びを綴る、感涙長篇。

    医師というと、人間が思いつく職業の中でトップクラスに尊敬され、社会的信用も高く、前途も洋々で人生の勝ち組というイメージが有ります。僕自身もそうだし世の中のほとんどの人はそう思っていると思います。でも自分自身がこんなに重大な責任を背負う陽な職に就くかと言われたら、絶対に就かない職業のダントツトップになります。人の命を左右する重大な決断を一個人が決め、相手の全幅の信頼を受けて治療する。そんな事とてもじゃないけれど考えられない。
    毎回小説を読んでいて思うのは、ずさんな医療を正す小説を読んでいるときは医者に対して酷いと言い、無責任な教師に苦しめられる小説を読むと子供たちの気持ちに寄り添う。はたまたモンスターペアレントに苦しめられる教師の苦悩を描いた話では、教師の苦悩に心を寄せる。それぞれ一辺通りではなくそれぞれの事情に対して寄り添う事が出来るので、自己矛盾を見つめて、それに対して真摯に考える材料を与えてくれるのが小説の尊い所だと思っています。
    この本は医者が患者の為を思って動いても、患者にはそれが伝わらず訴訟やクレームという手段で医者の心と尊厳を削り取っていく様が、医者の側の視点で切々と描かれています。読んでいて胸が苦しくなるような気がしました。この苦しい感じの原因を探そうと、心の中をぐっと覗き込んでみると、自分も医療行為で家族に何かあったら、医者を責めるのではないかという自己矛盾で、すっきり医者に肩入れ出来ない痛みだったような気がしました。
    私の身の回りのお医者さんは皆親切で、一生懸命治療してくれているので感謝しかないのですが、それでも時に納得できない時に湧き上がる悲しみともあきらめとも言えないあの感情。本当にこの人を信じてよいのかという猜疑。それを無数に向けられる医者という職業の苦しみがこれでもかと描かれます。
    医者でないと書けない本だと思いました。ある意味現在進行形で治療している人はどう感じるのだろうかと思わせる本でした。

  • 途中は座間と高峰事務長に腹が立ってしょうがなかったが、最後は悪いやつはお前だったのかー!っていう感じですっきりした。

    「治すための医療じゃなくて、幸せに生きるための医療を考えてきた。たとえ病気があっても、その病と共存して、最後まで心地よく生きられるような医療を誠実にやってきた。その先に死があっても、それを受け入れる。」といったお父さん。
    素敵な人だ。

  • ドラマ化されていたんですね。
    ドラマだともっとキツそう…

  • 他2作品とは違い終末期医療がテーマではなく、医師としても未熟な主人公。
    すんなり診察が終えられない言動をする患者が色々出てくるが、どれも医療現場で実際にある話なんだろうと思う。
    軸になるモンスターペイシェントが気味悪い。

  •  著者第2作
    第1作の「サイレント・ブレス」がすごく良かったので、期待して読み過ぎた感があります。
     今作は、今の医療現場のお医者さんの過重労働や、患者のモンスター化などの問題を、自分の理想の医療をなんとか目指そうと頑張っている、女性医師真野千晶とその同僚の医師達や、地域医療で頑張っている、千晶の父の姿を通して訴えています。
     実際36時間労働がざら、という現実は大変過ぎて重かった。
    お医者さんが忙しすぎたら、現実的に良い医療なんて出来ない。
     でも、治して欲しい患者さんも一杯いる。
    そして、待ち時間が長いと特に自分の体が辛い時は、辛いのも本音。
     いろいろ考えさせられた一冊でした。

    • しのさん
      お久しぶりです( ´∀`)
      変わらずお元気でいらっしゃいますか?

      やはり読まれていたのですね( ´ ▽ ` )
      私も今、丁度この作品読んで...
      お久しぶりです( ´∀`)
      変わらずお元気でいらっしゃいますか?

      やはり読まれていたのですね( ´ ▽ ` )
      私も今、丁度この作品読んでいます。
      まだ半分位しか読めていないのですが、
      ロッキーさんと同じな感想を抱いていますd( ̄  ̄)
      でも、後半分読むのがとても楽しみです。
      優しい 文章温かみのある文章いいですね
      2018/05/09
  • 総合病院に勤務する内科医師の目を通して、医療者と患者間の様々な問題が描かれている。
    患者たちから発せられる数々の理不尽に、病気そのものよりも恐怖を感じた。医師という職業は求められるものが多いと以前から思ってはいたが、読んでいるだけで疲れ果てる日常がそこにあった。それでも体力と気力を振り絞って目の前の患者に向かう姿はそうそう真似できるものではない。
    医者の日常って戦場だな…というのが読後すぐの感想。

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著者プロフィール

1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、慶応大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の高齢者向け病院に内科医として勤務するかたわら『サイレント・ブレス』で作家デビュー。『いのちの停車場』は吉永小百合主演で映画化され話題となった。他の著書に『ヴァイタル・サイン』『ディア・ペイシェント』などがある。


「2022年 『アルツ村』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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