風は西から

著者 : 村山由佳
  • 幻冬舎 (2018年3月27日発売)
4.18
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  • 本棚登録 :108
  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344032682

風は西からの感想・レビュー・書評

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  • 過労自死。
    その一言で思い浮かぶのはワタミの一件。そして、登場人物の一人がどうなっていくのかも、その言葉を目にした時点で想像はつきます。

    なので、恋人同士のたまの休日デートのシーンが、とてもつらい。きらきらまぶしくて。その先に、確実に訪れる破局が、過労自死という出来事が。
    なにより、そのきらきらしていると感じていた日常に、気づかないけれど、見過ごしてしまいがちだけど、着実に侵食してきているブラックの跡。

    主人公の一人がそれに気づくのは、しらばっくれる企業相手に労災認定を勝ち取るための調査中。と同時に、ただただきらきらしてる、とだけ考えて読み進めていた自分も、同じだと気づく。

    人は自分の見たいものしか見ない。

    この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
    と書かれていますが、この作品を読んで何を思い浮かべるかは、いわずもがな。
    夢も希望も人望もあり、真面目で責任感もある。そんな人ほど逃げ出せない呪い。そこから逃げ出す方法が自死でしかなかったというのはやるせない。
    それでもまだ、「週休七日は幸せですか?」と言ってのける精神って、なにかね?そこだけ切り取った言葉なので、文脈はあるでしょうが。
    なにかね?

    『明日はきっといいぜ 未来はもっといいぜ』
    文中に何度も引用される歌詞の一節。どんな気持ちで、歌って聞いていたのだろう。
    希望の詩だったはず。将来を約束する詩だったはず。
    それがいつの日か、重圧に聞こえていたんじゃあないだろうか。課せられるノルマのようになっていたんじゃないだろうか。呪いのようになっていたんじゃないだろうか。
    「頑張って」「乗り越えられるよ」と、気楽に声をかけたのが、最後の言葉になってしまったことを悔やむように。根拠のない明るい言葉が、追い詰める原因になったんじゃないだろうか。

    そんな後悔と罪悪感を拭い去ってくれるのが、ラストシーン。ありがとう。

    明日が明るい日だと誰が決めたんだろう。

    それでも、
    明日はきっといいし、
    未来もきっといい。
    魂で行こうぜ。

    風は西から吹いている。

  • 恋人の健介が勤務先の激務から追い詰められついに過労自殺をしてしまう。主人公の千秋は恋人の健介の両親と共に大手居酒屋チェーン「山背」と戦うことを誓う――あらすじを見ると、物語が進むにつれてだんだん異常な勤務状態が明らかになるのかなと思うが、実はそうではない。話は健介が自殺する少し前から始まり、千秋の視点からだけではなく健介の視点でも語られていく。読者にはあらかじめどうやって追い詰められていたのかが明らかにされているのだ。自殺するとわかっている恋人同士の物語を読み進めるのは正直つらい。しかし、こうやって書くことで、健介が逃げるポイントはたくさんあるということがわかる。働いている読者は、もちろん自身の働き方と照らし合わせての読書となるだろう。僕自身も休日出勤の電車の中でこの本を読むのは素晴らしい読書体験だった。自分は誰と幸せになるために生きているのか、幸せになるための手段は正しいのか、自分の心に問いかけるだけではなく、誰かと話すことが大切だと感じた。

  • 20180328Mリクエスト

  • ブラック企業や過労死の問題はここ数年ずっと取り上げられてきているけどまああまり改善されているとは言い難い現実がある。読みながらとても辛かったし楽しめる小説ではないかもしれない。フィクションだけどノンフィクションとして受け取るべき内容だった。
    わたしも一時期月100時間以上の残業を1年くらいしていて病みかけたことがあった。家にもなかなか帰れなかったりして、何もしてないのに勝手に涙が出てくるような状態になって初めて自分でヤバいと気付けて逃げたから良かったものの、そうなってもがんばってしまう人もいるのだろう。
    死ぬくらいなら辞めればいい。確かにそうだけどそういう思考さえ働かなくなるくらいに病ませる企業に存在価値はない、って世論が動くにはまだかかるのか。
    しかし村山先生の作風の幅には驚かされる。

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