人類滅亡小説

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344033573

感想・レビュー・書評

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  • 急激な地球環境変化により、確実に人類には未来はないとわかったあとにどう生きるのかを3世代に渡って書く、社会派SF。
    今すぐでもなく、遠い未来でもない、自分の子や孫の世代にあたるこの時間設定が物語に効いている。

    最初はなんでこんなに雑なタイトルなのかなと思ったけれど、書いた人が死んだあとも、さらには人類が滅んだあとにも残って、名もなき人々の思い、繋いできた命を伝える物語の力を指しているのだとわかって納得した。
    「物語の力」は好きなテーマなのでうれしい。個人的には、もっとこっち方面に掘り下げてくれても良かったなあと思う。

    人類滅亡まで駆け抜けるかと思っていたので、最後はクライム・サスペンス的展開でこじんまりと終わってしまった感じがしたけど、これは私の趣味かも。
    面白かった。

  • 「人類滅亡小説」
    何故このタイトル?


    大気中で爆発的に増殖した細菌が形成するコロニー雲が突如発生。まともに吸い込めば窒息死するほど二酸化炭素の濃度が高い。当初は局地的に発生したり消滅したりを繰り返していたが、次第に増え続け、地球の酸素濃度を低下させていた。


    そして、早ければ二百年以内にも人類の生存が不可能なレベルまで酸素が減少する恐れがあると判明する。衝撃的な事実を受け、人類はAI完備のシェルターを建設するが、一方で人類全てが入ることは出来ない。果たして人々の運命は?


    テーマとしては王道ジャンル。タイトルばれもしている。そこから読み切った時、面白かったか、良かったか、他人に勧めるかの結論に読者を導くには作者の力量と共に読者側との相性もある、と言うのが勝手な個人指標。


    さて本作はどうか。吉井沙梨奈・香織姉妹を起点とした三世代を軸に話が進んでいく。香織は仕事場の後輩である潤太と結婚し、息子リュウリに受け継がれる。更に、リュウリの娘ラナに命運が託される。この三世代に渡った物語がゆっくり描かれる。


    彼らに加え、人々が人類滅亡と言う衝撃的な事実をどう受け止めて生きていくのかを描いているのだが、その受け止め方が一つのイシューになっている。自暴自棄になる者、テロを画策する者、事実を受け入れながらも今を生きる者と様々であるが、生きれると思っていた前提が一気に崩されるのだ。更に、生きれる道が見つかってもそこはブラックボックスであるAI判定が待ち構えている。おかしくなるのは当然だろう。だからこそ、その時人間の本質が問われる。果たしてどうしたらいいのか。


    王道ジャンルといったものの、違いがあるならば、一気に危機が訪れて崩壊しないところ。コロニー雲が突如現れて直ぐに世界を破壊するのではなく、じわじわと侵略していくのだ。このじわじわに加え、消えては消失を繰り返す為に、人々は危ないが、いつかは消滅するだろうと思ってしまう。恐怖が本当なのか判断し難い中で、少しずつ想像が現実になっていく。こんなことが起きたならば、きっとこういう風になるかも知れない。こういうじわじわが一番心身に来る。


    上記に係るが、時間がゆっくり流れていくのは、生きることによりフォーカスする為だろうか。残される者から生きることを託される者や、何も出来ない中でも今生きていると言うことを証明するためにどうあるべきか?を考える。苦しいが、決めないといけないのだ。


    驚愕な事実をどう受け止めるのか。受け止めた後、どう生きるのか。それを語るのがテーマになっていて、最後何故小説とタイトルに付いてるのか分かる。それだけ大切な訳だ。


    しかし、だからと言ってここまでのボリュームは必要か?とは思う。長いは長いし、単調に見える。しかし、ここが作者(と小説の内容)との相性かなと思う。彼らの立場で生きる希望を捨てずに今の命を繋げていけるのかを考えてみると、ボリュームはあまり関係が無い。つまり、ハマり込める人ならば、気にならない。しかし、完璧にハマりきらないとちょっと長く感じると思う。

  • 近未来に起こり得るかもしれない、
    と思わせる小説。
    全く同じ事は起こらなくても、
    猛烈な勢力の台風なんて近いものはある。
    SFだけど、人情話でもあるかな。
    最後の方がちょっとぐちゃぐちゃっとしてた。
    先生、重要人物なのかー。ん?ワクチン打っても爆発はしないけど死ぬのかー。え?700余年も続いたの?

  • 学生時代に『百年法』を読んで以来の作者の作品。
    今回も設定というか世界観の作り込みがしっかりしてて、人類が始まる前の地球の歴史を読んで、こういう人類が一旦滅亡する時代もいつか来るのかもしれないと考えさせられた。

    物語は、展開が急に子供世代に飛んだりしてるなと思ったので、長くなってもいいからもう少し点と点を繋いで欲しかった…

    なにかクライマックスがあるわけでなく、ゆるゆる人類滅亡までのカウントダウンが進んでいく感じだった。

  • 100年法で山田宗樹にハマって、いろいろ読んだけど、これは100年法に次ぐお気に入りになった。
    相変わらずなんでこんな話思いつくんだろう…

    吉井家と、池辺家を通じて語られる世代を超えた人類の生き残りを賭けた戦い。
    ほんとにこんなに熱く人類存続に命をかける人達の生き様に感心する。もし自分がこの世界に生まれたら、どちらかというとグレートエンディング派になってしまいそうだから。

    「人間は自分が正義と信じるもののために命を投げ出したり、だれかを殺したりすらできる。正義が引き金になって、虐殺など最悪の結果を招くこともある。
    歴史を振り返れば、そんな例には事欠かない。
    正義とは、ある人たちにとっての、ある時代、ある場所に限定された、最優先事項のようなものに過ぎないんじゃないかな」
    リュウリのこの言葉、ほんとにその通りだと思った。

  • 話は、ものすごく研究され、計算されていて良かったのだが、最後の盛り上がりにかけた。

  • 2019/4/8大叙事詩。傑作であった。

  • 面白かった…!
    時間の流れと視点の切り替わりが絶妙。
    つらい展開ばかりではあるけど、最後まで読むとなるほど…となる。

  • 「百年法」の山田さんが、また凄いやつ書いてくれました。
    近未来SF小説って事になるんでしょうか?
    ある理由から人類が滅亡するまで、あと200年。って所から物語が始まります。
    そこから3世代に渡って、「個人が生き残るために」では無く「種族として残すために」どうするか?
    それに対して、「人として尊厳を持って死ぬべき」と言う思想も出てきます。
    ワタシ的に「百年法」も忘れられない当りでしたが、「人類滅亡小説」も今年1番の当りだったかも。

    過去の「百年法」のレビューは以下より。
    https://booklog.jp/users/kickarm/archives/1/4041101913

  • 人類が滅亡するお話。発端から3世代。

    この手の話が好きで、本でも映画でも色々な原因があったけれども、エイリアンに殺されるより、地震で地面がなくなるより、テュポーンやプーニーにやられるより、一番なんかリアルに感じられました。
    大切な人を残していく、送り出す感じがいばらの王っぽかった。
    生きるけど失う。死ぬけど託せる。
    そんな3世代の家族が好き。
    受け継いだ聖火を次の人に渡すように生きるのが人生。

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著者プロフィール

1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化される。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテット』『代体』『人類滅亡小説』『存在しない時間の中で』など。

「2022年 『SIGNAL シグナル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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