聖者が街にやって来た

  • 幻冬舎
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344033962

感想・レビュー・書評

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  • とりあえず、色んな問題の坩堝のような感じになっていますが、個人的には、一つか二つに絞って深く掘り下げて行った作品を読みたかったなあ。LGBTのレイカの心境や生い立ちや、その周りの人たちの思いや発言だけだって、かなりおもしろくなるだろうなあ。格差、母子家庭、LGBT、貧困、ドラッグ…盛り沢山すぎて。そこにサイコパスみたいなやつまで出てきたらもう軽い印象を受けてしまう。社会の暗い闇を扱うなら。やはりそちらサイドの世界で起こる物語をかかないと、必然性が伴わないんだなあ。ただ、その軽さがエンタメ小説のよいところなんだよなあ。文句ばかり言ってますが、結果、楽しんで読みました。

  • とある町で連続して起こる殺人事件。
    その現場には必ず花が置かれていた。

    宇佐美まことは私のお気に入りの作家だが
    今作は可もなく不可もなくな印象しか残らなかった。

  • センセーショナルな帯に惹かれて、手に取った作品。
    著者初読み。
    急激に住宅街化する、架空の多摩川市で若い女性の遺体が続けて見つかる。
    2件目までは、事件とも自殺とも判断がつかず、連続殺人としては扱われないが、一人の刑事だけは現場に残された花に共通点を見つけ、連続殺人の線を追う。
    物語は急激に住宅街となる地区に残る、昔ながらの風俗街で、夜遅くまで営業する花屋の母子の話を中心に展開する。
    「同一犯か?模倣犯か?」と煽っておきながら、事件そのものについての描写は少ない。
    多摩川市で行われる市民ミュージカルや、娘のサイコパス的なボーイフレンドの話など、何を主で描きたいのかが、理解出来ない。
    事件が解決しても、動機がいまいちで、帯に騙された感が否めない。

  • 長編のミステリー。連続殺人事件の現場に残される一片の花、どんな意味があるのか、興味が湧く。順を追い書かれていると思うが中間が長いと感じた。犯人は意外な人物だった。


  • 歓楽街で花屋を営む 桜子
    その娘 菫子(トーコ)
    桜子の友人 刑事の純

    菫子は市が開くミュージカルで準主役を掴んだ
    次々と女性が殺される
    現場には花が残されていた
    犯人は何故死者に花を手向けるのか
    犯人の動機は何か

    聖者とは、生きる意欲そのもの
    誰の中にでもある本能

    群青から藍色、黒へと青の重なりが
    夜の訪れを迎える歓楽街で
    殺人事件の真相が解き明かされる

  • 著者の作品はミステリーには違いないが、作品毎に作風が違ってとても面白い。今回も連続殺人もののミステリーではあるが、川崎の武蔵小杉をイメージした新興都市に住む雑多な人々の、時には切なく、時にはハートウォーミングな日常を過不足なく描きながら、そこに住み市民ミュージカルに必死に取り組み女子高生の成長物語が軸になっている。少し物足りなさも感じるものの不思議にページが進んでしまう小説。

  • 個人的に、今まで読んだこの作者の本の中で一番つまらなかった。
    何か全てがこじつけのような気がする。
    花を使った殺人事件にしたい。
    自分の好きなミュージカル、音楽を織り込みたい。
    そして、オシャレで少し心温まる感じにしたい。
    それがあってストーリーを作った感じで、何か違和感があったし、私には響くものがなかった。

    連続殺人事件が起きる。
    その殺人の共通点は死体には全て花が添えられていたという事。
    この物語の主人公はその殺人事件の起きた界隈に住む、親が花屋を営む女子高生。
    彼女の母親の幼馴染で事件を追う刑事、周辺の、夜の仕事をしている人々によって構成されていて、市民ミュージカルに参加し、一生懸命に生きている女子高生の様子が描かれている。

    話の途中で主人公が恋する、頭がいいけど性悪な男子高校生の事が描かれているけど、彼の存在って必要だったのか?と思ったし、他の登場人物にしても存在感が薄いな・・・と思った。
    それは、こう、という形ありきで書いているからだと思う。
    この人の本にしては珍しく、読み味が軽くて明るいな・・・と思ったら結末に、らしいな・・・と思う真相が描かれていた。
    だけど、それも何か上滑りな感じがしたし、読んでいる間も退屈だった。

  • 多摩川にあるとある街で起こる連続殺人。その殺人現場には必ず花びらが置かれている。1回目の殺人ではパンジー、2回目はマリーゴールド。その後もデンファレ、クレマチス、そしてプリムラ。
    その連続殺人事件と同じ頃、街では新しくできる文化ホールで行われる市民ミュージカルに向けて、オーディションで選ばれた市民が著名な演出家のもと毎週練習会が開かれていた。そのミュージカルに準主役級の役が与えられた高校生・小宮菫子、その母でフラワーショップを営む桜子、ごく普通の生活を送っていたこの母子が連続殺人に関わる事件に巻き込まれ、桜子の同級生で偶然この地区に配属になった刑事・乗松純が捜査を行うミステリー。
    この他にも様々な人物が登場しますが、それぞれ個性があり人物関係が混乱しません。そのうえ複雑なトリックが使われているわけでも無く、とても読みやすい作品です。
    ただし!
    単純な人間関係のもつれによる殺人事件ではなく、そこにはIQ150を持つ超進学高に通う男子高校生、飛び級で東大に合格しその後MITでも学んだ研究所勤務のリケジョ、そして危険ドラッグに溺れ育児を放棄した女など、様々な要素が絡んだ読み応えがある展開です。
    そして最後は思いもよらない真相の告白。
    人には語られない過去があり、消したい過去がある。そんな思いが生んだ悲劇は本当に切ないです。最後はみんな幸せになってもらいたい。

  • 企業誘致に成功し、タワーマンションも乱立して人口が急増する神奈川県多摩川市で、小谷桜子は古くから花屋を営んでいる。
    娘の十七歳の菫子が市民の結束を目的に企画されたミュージカルの演者に選ばれた。
    新旧の住民が入り乱れながら盛り上がっていく街。
    だが、水を差すかのように若い女性が立て続けに殺される。
    それぞれの遺体近くには異なる花びらが一片だけ、なぜか残されていた。
    犯人が捕まらずに謎も不明なまま、街は恐慌状態に陥るなか、今度は菫子が何者かによって誘拐されてしまう。
    (アマゾンより引用)

  • 内容はとても重くて辛い内容だけど、引き付けられるように一気に読んだ。自分ではどうすることもできない境遇の中でもがき苦しむ子供たち。無気力で破壊的な若者のすべてが、小さい頃の環境に影響があるとは思わないけれど、大人の犠牲になっていく子供達もやはり多いのだろうと思います。最後、悲しかった。違ってたらいいのに…と願いながら読みました。

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著者プロフィール

(うさみ・まこと)1957年、愛媛県生まれ。2007年、『るんびにの子供』でデビュー。2017年に『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2020年、『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。著書には他に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』などがある。

「2023年 『逆転のバラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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