吹上奇譚 どんぶり (第二話)

  • 幻冬舎 (2019年1月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784344034143

感想・レビュー・書評

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  • 第二話は第一話よりさらに精神に深く迫ったというか、一部オカルトっぽい要素が強めだった。でも印象としては穏やか。
    こういうシリーズものの二冊目って微妙な立ち位置になることが多いけど(ご本人もあとがきにそう書かれているが)私はこの作品がとても好きだ。

    ミミとこだちの母親は、突如としてなぜかどんぶりを作ることに目覚め、猛烈な勢いでどんぶり(とくに親子丼)を研究しはじめる。
    ミミは墓守くんの彼女である美鈴と知り合うが、美鈴は霊媒師として数年に一度活動しながらも基本はひきこもっていて、まともには見えないのだけど、ミミは美鈴に対してとても好印象を抱いて仲良くなりたいと思うようになる。
    そしてある日美鈴は仕事をしに出かけたのだが、除霊しようとした少女の霊に身体を乗っ取られて帰ってくる。

    人は基本的に自分の生活のための営みを日々(一生懸命)こなしていると思うのだけど、この小説の登場人物たちも同じで、第二話であるこの本に於いては主人公のミミとこだちはわりと穏やかに過ごしているものの、2人以外の人物の一部はとても濃く何かを営んでいる。
    毎日どんぶりを作ることに没頭する2人の母親や、命がけでボロボロになりながら霊媒師の仕事をする美鈴、町の中に漂う「何か」を弔うために花束を作り続ける墓守くんなど。
    そんな中、ミミは身近で2つの死に遭遇するのだけど、現実にもありそうなその2つのエピソードがとても切なく辛い。

    産まれて、生きて、勉強や仕事をして、人と触れ合って、恋をして、別れたりして、それでもまた生きていく。
    そんな風に当たり前に営んできた生活が、突然断ち切られる可能性は誰にでもある。人の命は、厳密に言うと1秒先のことでさえわからない。

    2人の母が作るこだわりにこだわった親子丼は生命力に満ちていて、疲れきった人たちに元気を与えていく。命の間際を見た人の凄みのようなものを、この母からはとても感じる。
    そして私は美鈴のキャラクターがとても好きだ。憑依してしまうくらい人のことを理解してしまうからこその苦しみを持っていて、命のギリギリのところにいるような危うさに抗いながらも生きている。

    こうレビューを書いていくとやはりオカルト要素は強めかもしれないけど、不思議と読後はその要素を強くは感じなくて、とても優しい物語だった。

  • 2017年10月に発売された『吹上奇譚 第一話 ミミとこだち』に続く第二話になります。

    あとがきから読み始め、今回ばななさんの周りで、たくさんの大切な人達やペット達との別れがあった事を知ってから本編を読んだので、余計に少女の霊に取り憑かれた美鈴の話は沁みる部分がありました。

    前作から哲学ホラーと称されていますが、ホラーの様でありながらファンタジー色もあり、そこに人間くささも加わって不思議な世界観を感じる物語になっています。

    それ故、両極端に好みが分かれる作品だと思いますがハマる人にはとても好きだと思える作品です。

  • 第一話でストーリーの土台をわかっているせいか、第二話は読みやすかった。

    墓守君の彼女の除霊師として生計を立てている美鈴のこと。
    身体を乗っ取った黒美鈴。
    ミミの身体の友達の都築君のこと。
    どんぶりを作ることを追求し、それが人々の心を打つものになる母のこと。
    墓守君の作る花束の力。

    彼らは確かに生きている。
    そう感じる一冊でした。

  • 第一話よりも、好き。きっとこの世界観に慣れたのだろうと思う。一気に読んでしまった。

    それぞれの登場人物のちょっとした心境の変化が、その世界の色をクルクルと変える感じが心地よく、まだ吹上町の奇妙だけど温かな世界に浸かっていたい、という気持ちにさせる。

  • いつも思うけど、よしもとばななさんの物語は、優しさに溢れている。
    一風変わった人が、ぞろぞろ出てきて、それぞれが悩みながらも自分らしく生きる道を見つけていく。
    それをたどっていくうちに、自分も自分らしく生きていくことを考える。

  • 内容・感覚が、次の時代の小説に入ってるなぁと思う。1番なんだかささった箇所を。「直感と偶然の中だけに流れがあり、未来が生まれる。そしてそれに至る道には、本人がどんなに力んでも不器用でも人生の妙なる味がある。」世界に浸って読む楽しさを味わえます。

  • 黒美鈴の件では泣いてしまった。
    大切なことを思い出すのに似た感覚。すぐに忘れてしまう的な。
    でもきっと心の奥底にいるはず。

  • 眠りから覚めた母とミミ,妹と結婚した勇の新しい暮らしが始まり墓守くんやその恋人,ボクシングの下手なセフレの都築くんとの改めて始まる関係の佇まいがとても素敵だ.そして,屍人あるいは幽霊との交わりが生きるということの意味を私たちにそっと差し出しているようだ.

  • わからない、
    これは吉本ばなな女史コアファン向けなのかもしれない、
    どうやら第三弾まであるらしい、
    あとがきにあるように、
    「わかる人、必要な人には必ず役立つものだ。」のかもしれない。
    一話から間をおかず二話を手に取ったけど、
    “わからないひとにはわからなくていい”
    、という引導を渡されたような読後感。
    縁があればまた第三話を。うーん。
    感想になってないけど。すみません。

  • 吹上奇譚の第2弾。
    個人的には前作のほうが好きです。
    少しわかりにくい?いや、突拍子もないことが起きてなんと幽霊と電車に乗るんだなぁ。
    でもさすが、最後はほっこりしました。
    第3弾は「ざしきわらし」だそうです。楽しみに待ちます。

  • 「吹上奇譚」の続編です。
    個人的には前作の方が好みでした。
    書かれていること自体はとても好きなのですが
    書き方に少しひっかかりを感じるところがいくつかありました。

    飲食店は素晴らしい反面、三大欲にかかわるから因果な商売というのは
    そういう考え方をしたことがなかったのですが
    だから飲食店は素敵だけれど大変なのかなと思わされました。

    仮面ライダーカブトは自分はよく知らないし
    そういう俗世の名称がさっと出てくるのがやや違和感があったかもしれません。

    お母さんに食事を出すときに使った入れ物が、
    新婚旅行で長野で買って大切にしていた蓋付きの小さな
    かわいい塗りの器で、おひなさまにあげる食事みたいにかわいかったというのが
    とても丁寧で温かい気持ちになる描写でした。

    確かに、人ってなにで眼が覚めるのか読めないです。
    他の人はなんとも思わなくても自分の琴線にふれるというのはよくあることだと思い舞ます。
    未来のことはそのときの自分に託して、逃げるのではなくて
    その日までにきちんとした判断ができる自分になれるようにするのが今できること
    という考え方は素敵だなと思いました。

    美鈴が乗っ取られていることに気がついて、墓守くんに連絡する
    とかではなくて取り敢えず放っておこうという判断にはびっくりです。
    とても自分にはできないです。
    墓守くんに、君という仲間がいるからと言われるのはちょっと誇らしい気がします。
    除霊の仕事とは武士道のようなものという描写はちょっとひっかかりました。
    途中で中身が違うとわかったのに、姿や体が好きだからやめられなかったという墓守くんには正直言って幻滅です。

    つきあっていた人が死んだから花を作ってくれる? と信頼して頼める人がいるのは
    やっぱりちょっとうらやましいなと思います。

  • すかさず第二話。登場人物が出揃ってのエピソードなので、前巻より読みやすい。ミミと墓守くんの彼女美鈴の物語、かな。でも、そこはなんだかなぁ…やっぱり吉本ばななワールド面白いなぁって納得させられちゃうから魅力的なんだなぁ。あとがきでご自身も言ってたが、アニメ化されたらすごく名作になりそう!シリーズ化してほしい。まだまだ、登場人物の謎は解けてないじゃん!

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1315025

  • 続編が気になるよ〜う!!よしもとばななさんの本で連続するものを初めて読んでいるけれど、早く続きが読みたくて仕方ない…内容は決して軽いものではなく、命について考えされられるものが沢山あるけど。

  • 誰かのために一生懸命になること、
    それはいつの間にか自分自身を癒やすことになる。
    ミミのお母さんの作る丼や、
    墓守君の作る花束、
    美鈴の霊媒も・・・

    黒美鈴の話は、切なかった。

  • 2021.12.31読了。
    今年13冊目。

  • 久しぶりに読んだら、前よりもすきだった。
    うれしい。

    どんぶりっていいな。

    私のライフワークは、なんだろう?

  • 68 都築君との関係。

    なんだか不思議な本だった。
    読んでる間はふーっとわかるー、
    そうだー、って感じ。

    読み終わった後は、こうだった!
    ってはっきり説明できない。

    一話よりもこちらの二話のがしっくりきた。

  • どんぶり
    なんだそりゃと思っていたけど、どんぶりに包括された一冊だった。

    三大欲求の食を満たすどんぶり。生きていく上で切っても切り離せない睡眠欲求を貪る充電中の美鈴。運動神経が悪くてボクシングが上手くないのにプロを目指そうかとする絵描きのセフレ。
    その上に、生と死が盛り付けられている。

    人生にブレブレで迷いまくっていたことを、突き刺さる言葉に思い起こさせられるというか向かい合わさせられるというか。

    台湾料理のおばあちゃんの人生とか。凄みが出るのって、信念があるからだよね。
    信念て、弱い自分が一番触れたくなくて逃げ出したいところ。

    黒美鈴が出てきた辺りから流れるように読みやすくなった。
    お母さんとのシーンは涙腺じわった。
    白美鈴さんが漢。
    ミミも竹割ったようにさばっとしてるけど。
    妹がいると名優がいていいなと思う。

    p12
    「どんぶりって全てを包み込む感じがするし、なんでも載せられるし、バリエーションもあるし(以下略)」
    どんぶりの中と上に盛り付けられた物語だった。

    墓守くんが作る花束、占いみたい。
    生きてる人のためにもつくってもらえるんだろうか。
    自分がわからないときに作ってもらったものを見てみたい。

    p181
    「得たものには好奇心の光を、失ったものには真実を語る花束を捧げたい。」

    うん、他にもあと二つほど刺さった言葉があった気がするけど、いいことにしよう。

    初版で買っていたけれど、一年半も積んどく山の礎にしてしまったけど、三巻が出たら読もうと思っていたんだ。
    それなのに書店で文庫版の一巻が出てるし、来月には二巻も出るっていうから慌てて読んだ。
    これでもたまに三巻出てないか検索してたんですよ。
    ざしきわらし、まだですか?

    あ、今回読み終わってはじめて気づいたこと。
    帯の後ろの折り込みに本の装丁の秘密が。
    触ると熱に反応して流れ星が輝く。
    表紙にさらに本屋さんの表紙かけてたから、最後にカバーもう一回見ておこうと思わなければ知らないままだった。
    いい工夫。素敵な工夫をありがとう。ございます。

  • 好きに書いた…というだけあって、この作品はもうファンタジーなのかホラーなのか、もう何なのかわからないくらい何でもありのお話だった。それでも違和感なく受け入れて読み進められるところが、さすがのストーリー。生と死。生きていることの意味を、ぼんやりと考えながら読みました。

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著者プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)、2022年『ミトンとふびん』で第58回谷崎潤一郎賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『吹上奇譚 第四話 ミモザ』がある。noteにて配信中のメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた文庫本も発売中。

「2023年 『はーばーらいと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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