作家の人たち

  • 幻冬舎 (2019年4月11日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784344034495

感想・レビュー・書評

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  • 売れない作家の悲喜こもごも、権威ある文学賞の選考会、ラノベ編集者の日常。
    実在する出版社や作家をもじって、ブラックユーモアたっぷりに描く、短編集。

    なぜ作家は、出版業界と作家の内幕を毒舌で書きたがるのか(笑)

    シニカルで、にやりとするタイプの作品。

    もともとベタな展開でオチが読める話ばかりではあるが、カバーがネタバレ満載なのは、気になった。

  • 売れない作家
    能力のある編集者
    文学賞
    ブラック
    悪ふざけ

    出版業務のウラ側(?)をブラックユーモアで描いた作品。
    作家さん達の日常に興味があって手に取りました。
    図書館本

  • 「押し売り作家」
「夢の印税生活」
「持ち込み歓迎」
「悪魔のささやき」
「らのべっ!」
「文学賞選考会」
「遺作」
七編。
    作家、編集者の実情を描いていたりするんだろうな、それをブラックに、面白く。自虐ネタもあるのではないかしら。作家で生きてゆくのも大変なのねとつくづく思う。この本はミステリではなかった。パロディー満載、こういったのは得意分野なのかな。

  • 小説業界の舞台裏をブラック・コメディ仕立てで描いた連作短編集。

    この手の連作では、東野圭吾の『歪笑小説』がサイコーだった。当然、作者も『歪笑小説』を意識して書いたことだろう。

    本書も悪くはないのだが、『歪笑小説』と比べてしまうと見劣りがする。

    最初の2編――「押し売り作家」と「夢の印税生活」が、とくに小粒感があってつまらない。なぜこの配列にしたのか、首をかしげる。この2編を読んで投げ出す人も多いと思う。

    「夢の印税生活」は、念願の新人賞を受賞した駆け出し作家が、担当編集者の忠告も聞かず勤めを辞めてしまい、専業作家生活5年目にして食いつめるまでを描いたもの。

    その間の年収の変化が細かく書き込まれていて、〝売れない作家の生計ってこんな感じですよ〟と、生々しく理解できる。
    その点で、作家志望者にとっては「実用的」ですらある一編だ。
    ただし、本書を手に取るような読者なら、この程度のギョーカイ裏事情は先刻承知だろう、という気もする。

    最初の2編を読んで、「ハハーン、この連作は『歪笑小説』をもっとハウツー寄りにしたものなんだな」と思った。

    ところが、3編目から6編目の「持ち込み歓迎」「悪魔のささやき」「らのべっ!」「文学賞選考会」は、一気に趣が変わる。スラップスティック寄りに振り切って、『歪笑小説』というよりむしろ筒井康隆的になるのだ。

    そして、この4編のほうが最初の2編よりもずっと面白い。
    とくに、ラノベ編集者の世界をドス黒くパロった「らのべっ!」は、畳みかけるスピーディーな展開が素晴らしい。

    近未来の小説業界ではお笑いタレントの小説ばかりがもてはやされ、専業作家は過去の遺物となっている……という悪意に満ちた設定の「文学賞選考会」は、筒井の『大いなる助走』のパロディのようでもあり、読ませる。

    この4編のタッチで全体を押し通せば、もっと面白かったのに……と思う。

  • 業界をカリカチュアライズしたドタバタ劇ということで昔読んだ筒井康隆「文学部唯野教授」を思い出しました。東野圭吾「黒笑小説」とか。
    業界を、作家の業を、はたまた読み手を、批判しているのか揶揄しているのか、ただの悪ふざけなのか、けむにまくようなラストが倉知さんらしくて私は好きです。

  • 私が萌豚だったら、書いた原稿他社に持ち込むけど。それの対策はしてるのかな。
    そういえば以前直木賞選考委員の大御所作家が候補作を読んでなくて、女性選考委員がその場で内容を説明してフォローしてるって噂を読んだことが。直木賞は大作が多いから、選考委員も大変だ。選考委員が紅一点って古いな。今は女性は複数、男性と同数、あるいは男性より多くても当然。でもM-1は女一人か。それを意識してかな。
    新潮社、講談社が最大手、KADOKAWA、文藝春秋は大手、東京創元社は中堅って認識なんですね、倉知さんは。あれ、倉知さん、東京創元社デビューじゃなかったっけ。いいのかな。
    この手の内幕もの、特にミステリ作家は好きだよね。何でだろ。

  • おふざけを装った業界内幕話でしょうか。売れない作家の作品の押し売りに辟易する「押し売り作家」デビューに気をよくして仕事を辞めた挙句の転落を綴る「夢の印税生活」持ち込み原稿を持たずに現れる作家志望者たち「持ち込み歓迎」の三作は、現実でもきっと似たような話は多いのだろうなぁと推察。
    「悪魔のささやき」は星新一先生の作品を彷彿とさせ、この中では異色か。
    「らのべっ!」「文学賞選考会」の二作はパッケージや話題性ばかりに特化した一部の現状を痛烈に皮肉ったように思われる。
    最終話の「遺作」は作家の業を感じさせる。

  • ミステリではなく出版業界の毒小説。
    以前読んだ百田さんや中山さんの本を彷彿とさせる。
    それにしても作家さんって大変なんだなと。特に「夢の印税生活」は新人賞を獲ってからの5年間の経緯が、収入金額とともに描かれるのが何とも言い難い…。
    「らのべっ!」もラノベに対する毒っぷりが面白かったです。こんな風にタイトル作ってたりして??

  • 出版業界・作家裏事情を悪意ある視点で描いた短編集。何十年も売れない作家が持ち込みしてきて対応に困る「押し売り作家」や新人賞を取った後の浮かれ振りが危うい「夢の印税生活」の時点ではあるある位だったけど、破綻した理論で作家を目指す人に翻弄される「持ち込み歓迎」某作家さんがディスられてるの大丈夫?さらに「文学賞選考会」までいくと虚構とはいえ毒が効き過ぎじゃないかと思う。しかし最後の「遺作」毒が自身に向けられていて作家でいらずにはいられない業に捕らえられたのは不幸なのか幸福なのか考えさせられる。倉知さん次はまたミステリ読みたいです。

  • ……ひどい。これはひどい。本当にこれってフィクションですよね。でなければこれは、本好きとして耐えられないことがいろいろと多すぎます。「持ち込み歓迎」とか「らのべっ!」とか、「文学賞選考会」とか、「こいつら本好きをなめとんのかっ!」という気分になります。うわー、許せんっ! 本は読むものなんですよ!
    しかし、フィクションとして読む分には抱腹絶倒。作家さんも編集さんも偉大で大変な職業だということを改めて感じさせられ、その一方で作家という職業に憧れを抱く者としては切ない気分にさせられたりも。逆に中途半端に作家になりたいという輩には、この本を読ませてやりたい(笑)。シビアすぎるぞ「夢の印税生活」。
    そして「遺作」で切ない気分になりつつも、作家でいられる人が羨ましくもなったのでした。書きたくて書けるってことは、素晴らしいよね。

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著者プロフィール

一九六二年静岡県生まれ。日本大学藝術学部卒。九三年「競作 五十円玉二十枚の謎」に応募し、若竹賞を受賞、九四年『日曜の夜は出たくない』で本格的に作家デビュー。二〇〇一年『壺中の天国』で第一回本格ミステリ大賞を受賞。著書に『星降り山荘の殺人』『片桐大三郎とXYZの悲劇』『皇帝と拳銃と』『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』『月下美人を待つ庭で猫丸先輩の妄言』などがある。

「2021年 『作家の人たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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