- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344034600
感想・レビュー・書評
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ミステリという名の、母性、哀しみ、やるせなさが絡み合う物語。
世の中産んだ瞬間に当たり前のように強制される、持たなければいけない母性の重圧に苦しむ人だっている。
完璧な母性なんてない。
毎日手探りでいい、必死でいい、一緒に過ごすそれが一番大切。泣いて笑って怒って、自分を責めたっていいじゃない。毎日ちょっとずつ芽生えていく母性があったっていいじゃない。
終わりなんかない、一生子を想う、それが母性だと思う。それを最初から放棄する、知ろうともしない親、途中放棄する親がいるという悲しい現実。
涙と共に怒り、哀しみ、やるせなさがいつまでも心にとぐろを巻いて渦巻く。
重い読書時間だった。
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出生に秘められた悲しい物語。
プロローグ
一章
二章
三章
四章
五章
エピローグ
新聞社に勤める宝子のもとに、二十一年前に亡くなった父親の変死の知らせが届く。
娘を愛せず、離婚し、絶望的になっていた宝子は、父からのメッセージを受け取り、自分の出自をたどることに。
八王子の阿部定様事件、産婦人科医殺人事件とのつながりが徐々に見えてきたとき、自分の驚愕の出生の秘密を知る。
誰しもが子供に母性を生ずるわけではない現実が、悲劇の連鎖を生む。
生まれてきた子供に愛情をそそげるかではなく、子供に自分の愛情を感じてもらえるか。深い。 -
とっくに死んだはずの父が生きていた!!! なぜに?
残されたものを手にしても何が言いたいのかわからない。
そりゃ、調べるわ。調べてよかったのか、知らないほうがよかったのか。 -
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新聞社で働く柳宝子は、虐待を理由に、娘を元夫に奪われていた。ある日、21年前に死んだはずの父親が変死体で発見され…。遺留品には猟奇的殺人事件の大量の記事の切り抜きと娘に宛てた一通の手紙。「これからも見守っている」。宝子は父の秘密を追うことになるが、やがてそれは家族の知られざる過去につながる。一方、事件を追う刑事の黄川田は、自分の娘が妻の不貞の子ではないかと疑っていた。
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親になるとはどういうことだろう。母性は人のなかにいつ芽生えるものなのだろう。父性はどんな条件でどの段階で芽生えるのだろう。そんな、人の生にまつわるあれこれを考えさせられる物語である。親に愛されること、子を愛すること。それは誰にでも無条件に与えられるものではないのだということが、本作を読むと痛いほど伝わってきて、胸が締めつけられる。さまざまな命の扱われ方を考えさせられる一冊でもある。 -
21年前に火事で死んだはずの父親が別の場所で死体となって発見された。父親の謎を探るうちに自分の出生まで遡る宝子。自分の子供でさえ上手く愛せない親がいるのだろうとは思うし、宝子のように愛せないジレンマの中、母親失格と苦しみ娘の幸せを願っているのならまだマシだと思います。虐待なんて論外。子供の人権を考えさせられる作品でした。
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終始重い。
子を次々産むだけの女、産みはしたが可愛いと思えず虐待する母親、妻の不貞の子だと思い込み、子を愛せない父親、金儲けの為に赤ん坊を物として扱い、売買する大人、癖のある登場人物が勢揃いだ。
様々な要因や環境で、お腹を痛めて産んだ我が子を愛せない親だっているだろう。
しかしこれは酷すぎる。
最近頻繁に見かける児童虐待のニュースだが、ひとつの命を生み出す前に覚悟や責任を持って欲しい。
救いは血縁がなくとも子供を愛した親の存在だけだった。
殺人事件の真相を追うミステリーだが、ラスト1ページでのどんでん返しに衝撃が走る。