ゆりかごに聞く

  • 幻冬舎
3.37
  • (9)
  • (35)
  • (61)
  • (9)
  • (1)
本棚登録 : 514
感想 : 31
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344034600

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ミステリという名の、母性、哀しみ、やるせなさが絡み合う物語。
    世の中産んだ瞬間に当たり前のように強制される、持たなければいけない母性の重圧に苦しむ人だっている。
    完璧な母性なんてない。
    毎日手探りでいい、必死でいい、一緒に過ごすそれが一番大切。泣いて笑って怒って、自分を責めたっていいじゃない。毎日ちょっとずつ芽生えていく母性があったっていいじゃない。
    終わりなんかない、一生子を想う、それが母性だと思う。それを最初から放棄する、知ろうともしない親、途中放棄する親がいるという悲しい現実。
    涙と共に怒り、哀しみ、やるせなさがいつまでも心にとぐろを巻いて渦巻く。
    重い読書時間だった。

  • 出生に秘められた悲しい物語。

    プロローグ
    一章
    二章
    三章
    四章
    五章
    エピローグ

    新聞社に勤める宝子のもとに、二十一年前に亡くなった父親の変死の知らせが届く。

    娘を愛せず、離婚し、絶望的になっていた宝子は、父からのメッセージを受け取り、自分の出自をたどることに。

    八王子の阿部定様事件、産婦人科医殺人事件とのつながりが徐々に見えてきたとき、自分の驚愕の出生の秘密を知る。

    誰しもが子供に母性を生ずるわけではない現実が、悲劇の連鎖を生む。


    生まれてきた子供に愛情をそそげるかではなく、子供に自分の愛情を感じてもらえるか。深い。

  • 私には子供が居ないので、もし自分が産んでいたら我が子への愛情や接し方がどうなっていたか想像もつかない。

    犬の折り紙のシーンはなんというか子供ってこんな残酷なんだ〜ってビックリした。
    やんちゃなのはわかるけど、こんな事するんだーって。

    ママが折ってくれた折り紙をバンバン笑いながら足で踏みつけるって、我が家ならひっぱたかれたかもw それも今は虐待なんだろうなー
    結構引っ叩かれたけど、心の傷にはなっていないかな。

    謝りなさい。と諭す事は間違いじゃないと思う。
    いくら幼くても教えることは大事だからね。

    日々あんな感じなら、そりゃ世のお母さん達は大変だわ。
    可愛いけど憎たらしいの繰り返しだね。

    読みやすいのでどんどん読めたけど登場人物の誰にも感情移入できないまま終わった。

  • 次々と繋がっていく過去の事件、人物。
    続きが気になって、ページをめくる手が止まらなかったです。
    でも。。。
    宝子にどうしても感情移入できないと言うか。
    愛里にしたことはやっぱり許せないな。未知子と依子と浩人の言い分がごもっともだと思いました。
    同じく、黄川田も。妻に思う事あるなら言えばいいじゃん。妻も旦那の職場に置き去りにするなんて信じられない。
    明美みたいな人も、現実にいますね。。
    今で言うならアスペルガーとかかな。
    謎は回収できたけど、読後感が重かったです。

  • とっくに死んだはずの父が生きていた!!! なぜに?
    残されたものを手にしても何が言いたいのかわからない。
    そりゃ、調べるわ。調べてよかったのか、知らないほうがよかったのか。

  • 最近気にいって読んでいる「まさきとしか」。
    これは、うーん、いまいち。
    主人公のことが全く好きになれないんだよね。考え方も行動も。

    最初の謎であったお父さんの死の偽装の理由が、
    しっくりこないというか、それだけ?なんで?って感じで。

    主人公宝子については、
    実際の父親は極悪人で、母親は無感情の人で、弟は殺人鬼で、
    育ての母親は欲しくもなかった子供を誘拐する犯罪者だし、
    で、それは好きになれない女でもしょうがないか・・・

  • +++
    新聞社で働く柳宝子は、虐待を理由に、娘を元夫に奪われていた。ある日、21年前に死んだはずの父親が変死体で発見され…。遺留品には猟奇的殺人事件の大量の記事の切り抜きと娘に宛てた一通の手紙。「これからも見守っている」。宝子は父の秘密を追うことになるが、やがてそれは家族の知られざる過去につながる。一方、事件を追う刑事の黄川田は、自分の娘が妻の不貞の子ではないかと疑っていた。
    +++

    親になるとはどういうことだろう。母性は人のなかにいつ芽生えるものなのだろう。父性はどんな条件でどの段階で芽生えるのだろう。そんな、人の生にまつわるあれこれを考えさせられる物語である。親に愛されること、子を愛すること。それは誰にでも無条件に与えられるものではないのだということが、本作を読むと痛いほど伝わってきて、胸が締めつけられる。さまざまな命の扱われ方を考えさせられる一冊でもある。

  • 究極の問い。
    「私は誰」
    人間って自分の親が誰と誰か、って絶対に自分じゃわからないんだよね。
    母親だって子どもを生んだ瞬間に入れ替えられたらわかんないし。DNAで調べても絶対に間違いないって答えはないわけだし。
    それでも「親」だ「子」だ、と思って一緒に過ごしているから親子だと思っているだけで。
    一緒にいるから似てもくるしなじんでも来る。そんななかで、突然その根拠が揺らいだら…その不確かさって本当に怖い。自分の根幹が揺らぐ感じ。
    母親はこうあるべき、母親としてこうするべき、そういうたくさんの「べき」の中でおぼれそうになる女性って本当に多いと思う。
    母親である前に、一人の女性であり、母親であると同時に、一人の働く人でもあり。そのいくつかの自分と、こうある「べき」自分のギャップ。
    子どもを産んだ瞬間に「母親」として生きることを求められる、でも、自分は「母親」であるだけではないんだ。という声に出せない叫びの一番奥を目の前に叩きつけられたような気がする。

  • 21年前に火事で死んだはずの父親が別の場所で死体となって発見された。父親の謎を探るうちに自分の出生まで遡る宝子。自分の子供でさえ上手く愛せない親がいるのだろうとは思うし、宝子のように愛せないジレンマの中、母親失格と苦しみ娘の幸せを願っているのならまだマシだと思います。虐待なんて論外。子供の人権を考えさせられる作品でした。

  • 終始重い。

    子を次々産むだけの女、産みはしたが可愛いと思えず虐待する母親、妻の不貞の子だと思い込み、子を愛せない父親、金儲けの為に赤ん坊を物として扱い、売買する大人、癖のある登場人物が勢揃いだ。

    様々な要因や環境で、お腹を痛めて産んだ我が子を愛せない親だっているだろう。

    しかしこれは酷すぎる。

    最近頻繁に見かける児童虐待のニュースだが、ひとつの命を生み出す前に覚悟や責任を持って欲しい。

    救いは血縁がなくとも子供を愛した親の存在だけだった。

    殺人事件の真相を追うミステリーだが、ラスト1ページでのどんでん返しに衝撃が走る。

全31件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1965年東京都生まれ。北海道札幌市育ち。1994年『パーティしようよ』が第28回北海道新聞文学賞佳作に選ばれる。2007年「散る咲く巡る」で第41回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞。
著書に『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ある女の証明』『祝福の子供』『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』などがあり、近刊に『レッドクローバー』がある。

「2022年 『屑の結晶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

まさきとしかの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×