どうしても生きてる

著者 :
  • 幻冬舎
3.53
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本棚登録 : 1510
レビュー : 139
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344035164

感想・レビュー・書評

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  • “死にがいを求めて生きているの”を読んでから約2年。
    その作品からはものすごいエネルギーを感じて、わたしの中で、苦手だった作家さんが好きな作家さんになった瞬間だった。そんな、大切な大切な一冊。
    そして、本作品“どうしても生きてる”。作家10周年という節目の作品にもなるようで、この作品からも並々ならぬエネルギーを感じた。

    “死にがい~”では生きるための原動力、生きる意味、というところに焦点があてられていた、ように感じている。
    本作品では、主人公が“死にがい~”よりも年齢を重ねていて、「生きる」ということに対する価値観が明らかに変化している。それは、作者である朝井リョウ自身の生きることに対する価値観の変容と、作家としての想像力の拡張、のように感じられた。

    作品は全6編からなる短編集。
    主人公はだいたいみんなそれなりの年齢で、「何かのために死ぬ気になってもがいている」年代ではない。”死にがい~”では、そこに焦点を当てて「生きる」ことに向き合うのだけれど、本作品では、そこを乗り越えて歳を重ねた今、「生きている」ということに向き合う、そんな印象だ。
    何かのために死ぬ気になってもがいて、そこでした選択。
    例えば、立ち向かう、逃げる、裏切る、利用する。
    成功と失敗。その時の状況と自分の気持ち。
    誰しもが抱えている、過去。
    そうした過去を重ねて、今になってまた新たな問題が目の前に降りかかってくる。
    でも、その問題はもう、死ぬ気になってもがいたって解決できない。そもそも答えのない問題だったりすることが多い。それに、過去の失敗が実は今の成功だったり、過去の成功が今の失敗だったりしていて、何が失敗で何が成功か、それすら曖昧なのに、また選択をしなければならない。
    どんな選択をしても、結局は辛い選択で、逃げ道なんてなくて、生きていかなければならない。
    選択すら許されない、つまり決断して前に進むしかない場面だってたくさんある。
    そう、この作品のタイトル”どうしても生きてる”はつまり「何があったって生きていくしかない」ということだ。

    朝井リョウの作品は、いつだって読者の心を剥き出しにする。
    作中で否定的な立場として描いているキャラクターの気持ちにものすごく共感させたり、あるいはこちらが平凡な社会生活を営むために着せている鎧を、いとも簡単に、剥いでしまう。こういう描き方が、本当に巧い。
    本作品では「生きがい」のその先「生きていくこと」に焦点をあてつつも、読者の中にある、とっくの昔にしまいこんだ情熱のようなもの、かつてあった生きるエネルギーのようなものに手を伸ばして抉ってくる。「ねえ、昔はあったよね、生きる意味とか、エネルギーってやつ。君は今、何のために生きてるんだっけ?今君は、生きていて楽しい?」と、心のずーっと奥の方まで、手を伸ばしてくる。「もうやめて!」そう叫んでも、朝井リョウという作家は、決してそれをやめない。これが、全6編。結構苦しい。

    一話を引き延ばして、それだけで一冊の本を出版できるのではないか、と思えるほどの筆致。読了後は、心の中にずっしりと残ってくれました。
    朝井リョウさん、作家10周年、おめでとうございます。

  • どうしても生きてる。

    タイトルを目にした瞬間頭から離れなかった。
    そう思ったことが何度もあるから。


    TVもスマホも本も何も手につかなくて、お腹は空いてないのに妙な飢餓感を感じてスナック菓子なんかを手に取ってしまう。

    どうにもやりきれなくて、ただただ時間を持て余す。
    眠りたいのに眠れない。そんな夜を何度も耐えてきた。

    納得できないこと、でもどうにも出来ないことは沢山ある。いやな思い出ばかり蘇る。襲いかかる憂鬱は少しずつ身体がとらわれていく沼のようで、静寂さえも耳に痛い。



    そんな孤独にとらわれるのは私だけではない。この本は少しの安心を与えてくれる。


    今日もどうしても生きてる。

  • 6篇
    『健やかな論理』死の直前のSNS投稿を集める女性。死にたいから死ぬわけじゃない、という健やかな論理。
    『流転』心のまま嘘のない漫画を描こうとしていた豊川、しかし周りの人を裏切って生きてきた。
    『七分二十四秒目へ』
    派遣を首になった女性、YouTubeを見ながらラーメンを食べる。
    『風が吹いたとて』
    仕事で苦しむ夫を見守る主婦。心に風が吹きまくる。
    『そんなの痛いに決まってる』
    妻は仕事で活躍するばかり。その一方で転職に失敗する夫。自分より格下と思う女性と不倫する。
    『籤』性別、家族、家庭環境。どれも選べない。

    どれも苦しい内容。日常を生きる中、酷く苦しさしんどさを抱えた人たちばかりで。表に出さずに抱え込んでいる人たち。ポジティブな人とか人間関係でのトラブルにひどく悩まされない人、性格とか気持ちの問題もあるかも、そして、そこまで思いつめないタイプの人はなんでこんなに苦しむのだろうとか思うだろうね。ただ、今の閉塞感いっぱいの社会は程度のこそあれ、登場人物のような人、多いんだろう、朝井さんはその面を描きたかったのかな。最後の『籤』は割りを食いながらも生きようとする力強さがあって前向きな終わり方でよかった。前に進む、どうしても生きるのだ。

  • 日常を生きるやるせなさを細切れに見せてくれる短編集です。
    この本読むと、どうしても生きているなあとしみじみ思えます。そういう意味で秀逸なタイトルだし、よくもここまで人間のしょうもなさと、おかしみを描けるなと感心します。
    どの話もオチというオチがあるわけではないのですが、その人が生まれてから長年培った独特な世界の一部分を切り取ったような話です。
    悟られたら恥ずかしいような内面的な話なのですが、多かれ少なかれ自分に当てはまる部分があるように感じました。
    正直どの短編も読後感良くないし、特に救われる事ないのですが、逆にどんな人生でも自分しか生きることは出来ないと、肯定されているような気になりました。
    誰も彼も大満足という人生を送っては居ないと思うし、はた目から見たらみんな自分より上手くやっているように見えます。自分だけが上手い事やれていないような気になるというか。
    僕も人生相当上手くやれていないなと思っていたので、過去を振り返ってやるせない気持ちになったかな。それだけ今幸せって事なんでしょう。

  • 著者の作品は、初めて読みました。短編集、一編読むたびに、タイトルの通り、どうしても生きてるを実感しました。読み終わるたびに、ため息と天井を見つめてしまいます。後味悪いです。相性が悪いのかなあ。

  • 「健やかな論理」がいちばん好きだった。妊娠する人の話がいちばんきつかったけど良かった。朝井さんは、身勝手な男も女も美化せずに書くし、抱え込む男も女も書くし、憤る人にも別な身勝手な部分があって、それを誤魔化さずに書く。もうデビューして10年になるんだなあ!一冊一冊、他の好きな作家さんのように「楽しい!とても良い!」となれないときも、読みながら苦しいときも、「でもこの人が何かを書くならそれは絶対に読む」と思う。

  • アラフォー。
    若くも年寄りでもないけれど、夢を追い続けているわけでもないけどあきらめているわけでもない年ごろ。
    ある程度の経験を持ち、先も見えてくるころ、ちょっとブルーになりがち。
    あの分岐点で違う道を選んでいれば、ほかの人生もあったのでは?と。
    そんな人々を描いた物語。
    朝井さんも年齢を重ねてきたということなのでしょう。その苦労や悩みがあるのかもしれない。

  • 高校生や大学生や就活生やらだと、懐かしく共感していい感じの痛さや苦さがあったけど、やや近しい存在になってきたからか、もうちょっとしんどくなったしやだー共感できんーってところもある。
    共感だけを求めているわけではないけれど、もうちょい気楽に生きていきたい。

  • 「人間には多分」(中略)「誰にとっても誰でもない存在として、思ったことをそのまま言える時間が、必要なんだろうね」(215ページ)

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    6本の短編が収録された1冊。
    どのお話も、登場人物も環境も雑誌掲載の月もまったく違うのに、読みながらタイトルの「どうしても生きている」という言葉でつながっているように思えてしまうのが、なんだか不思議な感じがしました。

    6本の短編の中で、どのお話にいちばんピンとくるかは、今の自分や過去の自分がどんな生きづらさを抱えているかで、変わってくると思います。
    わたしの場合も、短編それぞれに“ピンとくる”度合いがちがっていて、総合して☆3つかなと思い、☆をつけました。

    わたしが一番ピンときた短編は、「そんなの痛いに決まってる」でした。

    「人間には多分」(中略)「誰にとっても誰でもない存在として、思ったことをそのまま言える時間が、必要なんだろうね」(215ページ)

    誰ともつながらない中にポツンといることに耐えられなくなる人もいれば、本当に何一つつながらない人との会話の中だけ、“本当の自分”としての思いを吐き出せる人もいる。
    どっちがいいとか悪いとか、どっちの方がマシとか、これはそんな話ではなく、ただ“そのままの自分として叫べる場所”がないと、生きられないのが人間なんだよなあ…と、ポツンと感じました。

    ・自分のままで、自分の感じたままを叫べる場所があるから。

    ・そして生きたいからではなく、死ねないから、生きている。

    なぜ生きているの?と、もし聞かれたら、わたしはきっと、この2つのうち、どちらかをこたえるでしょう。
    その時に、どちらのこたえを口に出すかは、そのときの自分次第だろうな…と、この本を読みながら思いました。

    そんな中、ラストの短編「籤(くじ)」が、ほんのりと「生きててもいいかな」と思える話だったのが、印象的でした。

  • 朝井リョウという作者への印象が大きく変わった一冊だった。有り体に言うと、「こんなにこねくり回した表現をする人だったっけ?」ってな感じ。生きるってことを様々な特性を持つ登場人物を通して思考しようとしてるんだと思うのだけど、ざっくり言えば誰一人として共感できるキャラクターはいなかった。だからこそ、生きるってそんな軽い/重いことだっけ?って感じたし、あまりに複雑すぎる。それでいて、諸所の表現は「うまいこと言ったでしょう!!」というあざとさを覚えてしまい、なんだか物語そのものに入り込めなかった。もちろん、その中には確かに「うまい!」と思える表現があるんだけど、それ以上に、「狙ってんなあ」と感じちゃう表現があって、細部で共感することはあれど、総体として親密さを感じる一冊ではなかったな。

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著者プロフィール

'朝井リョウ
一九八九年岐阜県生まれ。二〇〇九年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。一一年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、一三年『何者』で直木賞、一四年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に『星やどりの声』『もういちど生まれる』『少女は卒業しない』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『ままならないから私とあなた』『何様』、エッセイ集『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』などがある。

「2020年 『夜ふかしの本棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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