しらふで生きる 大酒飲みの決断

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344035324

感想・レビュー・書評

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  • 町田康さんは、ぼくが20年近く追いかけてきた作家です。
    町田さんがいなければ、今の自分はありません。
    少なくとも小説は書いていないのじゃないかしら。
    町田さんの影響で小説を書き始め、小説を書くのに膨大な時間を費やしてきました。
    この膨大な時間を、金儲けのために使っていたら、今ごろ自分は……。
    いえ、町田さんには本当に感謝しています。
    町田さんと言えば、大酒飲みで知られています。
    エッセーにも、酒にまつわるエピソードが数多く出てきます。
    その町田さんが酒を断ち、それも4年前から1滴も飲んでいないと本書で知り、腰を抜かすほど驚きました。
    酒を飲まない町田さんは、果たして町田さんと言えるのでしょうか。
    そうも考えました。
    本書を読んで、本当に止めたんだと何だか感動さえしました。
    町田さんほどではないにしても、酒飲みにとって禁酒は大変に辛いことです。
    かく言う私は毎晩、缶ビール1缶とワインをグラスに2杯飲むことを習慣にしています。
    休肝日は週1回。
    ただ、1日お酒を止すだけでも寂しい、何か人生を損したような気分になります。
    しかし、本書によれば、そんなことはありません。
    酒があろうとなかろうと、人生は寂しいものなのだとか。
    心に沁みますね。
    本書は、禁酒をしたい人のための一級のハウツー本になっています。
    ぼくも、読みながら、禁酒を何度も考えた次第。
    さらに、例によって町田節が炸裂し、随所に笑いが散りばめられていて飽きさせません。
    個人的には、酒を止した町田さんの作風が変わってしまわないか心配です。
    で、ちょっと調べてみました。
    町田さんが酒を止したのは2015年12月です。
    最新刊は、9編の短編を収めた「記憶の盆をどり」。
    9編のうち、後半の4編は恐らく酒を止してから書いた作品です。
    で、前半の5編と比べてみました。
    全く分かりませんでした笑。
    表題作「記憶の盆をどり」(2016年11月配信)は、次のような書き出しで始まります。
    「去年の暮れに酒をよした。人にそう言うと必ず、『どうしてよしたのですか』と問われる。」
    最後はこんな文章で締めくくられています。
    「ああ。酒をやめなければ。酒をやめさえしなければ死後の生を生きていられたのに。そんな後悔が頭を駆けめぐる。シャワーの音がやむ。」
    このころはまだ、酒に未練があったのでしょうか。
    禁酒して初めの頃は、7秒に一度くらい酒のことを考えていたのだとか。
    それが3カ月も経つと、酒のことを考える時間の方が少なくなったそう。
    酒を止して、「痩せた」「眠れる」「仕事が捗る」などの利得があったのも自信につながったようです。
    そうですか。
    うーむ、酒を止めようか、どうしようか。
    果たして止められるのか。
    うーむ、うーむ、うーむ。

  • 人は酒で不満を解消しようとするが、人生とはそもそも楽しいものではなく、その認識を改める事により不満は消え、これまで見えなかった物が見えてくる。それによって酒をやめる事ができる。と言う内容があらゆる語彙を用いて縦横無尽かつ自由奔放でリズミカルな天才的としか言いようのない文章で書かれている。しかも笑えもするんだ。もはや内容よりも文章に圧倒されてしまった。俺が興味あったのはなぜこの人が酒をやめたのかだったのだけど、そこは酒をやめようと思った考えが国道に落ちて死んだなどとわけのわからん説明がされててさっぱり要領を得なかった。なぜこれを読んだかと言うと今俺も酒をやめていて3ヶ月飲んでいないから。俺の場合飲酒時の問題行動が常識やらアレやらで許容される限度をはるかに越してしまったのが原因なのでもう少し明確な理由があるし、不満を解消するために飲んでいたというのは必ずしもそうなのかなあ?楽しくて飲んでた気がするけどな?と思って読んでた。ただ自分はアホだと認識を改めると良い、という部分のエッセンスには共感した。まあそれはいいけどこの人の文章は中毒性があるので小説も読んでみようと思った。文章にあっさり影響を受けてしまいそうで、この感想もそんな書き方になってるかもしれない。

  • 著者が如何にして飲酒を止めたか、という話を綴ったエッセイ。30年の間毎日飲んでいたのに、"突然"止めたくなっただけで断酒できる著者の意思の強さに圧倒された。酒を飲みながらこの本を読んでいる自分には、まだ縁がない話だと思った。

  • 4年間断酒している元大酒飲みのエッセイ。
    自分のような飲酒をコントロールしたいと考えている過量飲酒者には役立つ視点が多かった。

    自分が本書の肝だと感じたのは「飲酒にいたるメカニズムと、それをどう意識改造するか」という部分。

    ⇛自分は他人よりないがしろにされている
    ⇛自分にも幸福になる権利がある
    ⇛酒を飲めば幸福になれる
    自分の中でこれより優先できる考え方を手に入れる必要がある。

  • 大伴旅人は大酒飲みだった。酒を讃むる歌十三首。
    酒の楽しみは、人生の資産ではなく、負債そのもの。
    マイナスのほうが大きい。
    物事には、プラスとマイナスの面がある。酒はマイナス面のようが大きい。楽しみの本質は、酔い、であって数時間で消える。残らないので負債だけが残る。
    嫌酒剤は、割が合わない。楽しみがないのに苦しみだけがある。

  • うーん、文体に癖があり、非常に読み辛かった…
    自分を平均以下のアホと思う=酒なんて飲んでるうちはアホと考える、と捉えて、この本はおしまい。

  • この本と出会ってから半年以上経過。

    週一回の外食でのお酒は減らない。

    楽しみでもあり、良しとしよう。

    それ以外は、禁酒をできている。

    昨年までは360日呑んでいたが。

    すごい変化だ。

    五キロは、痩せた。

    週一回のアルコールは、

    今まで以上に、酔う(^^)

    良い本に出会ったなぁと時間が

    経過して思いました。

  • 図書館で借りた本。大酒飲みの大伴旅人を心の師としながら30年以上飲酒生活を続けていた町田さんが、断酒に挑んだエッセイ。要約すると身体が悲鳴をあげてたのを本人も自覚し、断酒となったようで飲めない辛さは半端無い。酒の誘惑に打ち勝つ為にどうしたのか?断酒後の体調の変化などを語っている内容。方丈とはすごく狭いの意味で方丈記を書いた鴨長明は狭い所で色々思考してたんだなぁと断酒の話以外の事が豆知識として知れた。

  • あの「大酒飲み」の町田康が「しらふで生きる」なんて、よほどのことがあったのか、或いは健康問題か?などと(酒飲みの)私としては他人事じゃない感じで読み始めてみたら…そういうことか!
    おりしも、今はお酒が一番おいしい12月…
    私のやめ時は…今?迷いは尽きない。

  • 町田康さんの、禁酒本?断酒本?というか、一見はそんな体なのですが、なかなかに深いような、案外そーでもないような、不可思議な町田ワールドが展開される一冊ですね。

    何故人は酒を飲むのか?という洞察は、面白いです。

    酒を飲む。ということは、自分の望まぬことに従事させられた、失われた自分を取り戻す、プラスの行為である。と考える。
    でも、それってホンマにそうなの?みたいな事を考えたり、

    飲酒とはなんぞや?から、人間存在とはなんぞや?という謎の深いテーマを町田さん流に思案していくこの思考の流れ、ああ、毎度毎度、おもろいなあ。町田さん、追求するよね~、とか思いつつ読んでましたね。

    あと、お酒を止めた町田さんの最終的な感想が、
    「いやあ、お酒やめた方が、なんだか頭と体のキレがいいんだよね~」
    っていう、超即物的なあたりまえの結論だった、ってのも、フツーにおもろい。ま、そのフツーの事に達するまでの、町田さんの思考、思索の流れが、やっぱ出色やなあ~ってね、思う。そんな一冊でしたね。

    で、これは完全に単なる偶然なのですが、自分も、相当な酒好きなのですが、たまたまこの本を読み始める前後から、なんとなくですが、お酒を飲むのをほぼ、止めてます。断固飲まない!わけではなくて、たまたま、飲みに行く機会がほぼ無くなって、んで、自宅飲みも、まあ、止めてみるかな?と思って止めてみたら、想像以上にお酒が無い生活でも、全然問題ないじゃん、って感じになってまして。

    ま、自分の場合は、町田さんみたいに完璧にお酒を止めるには至らないと思うんですが、あんだけお酒が好きだったのに、飲まないなら飲まないで、こんなに平気なんだなあ~。ってのが分かっただけでも、おもろいもんだなあ、って思ってますね。ホンマに、この本を読んだのと、自分の断酒が重なったのは、ホンマに偶然なんですけどね。

    そんな事も、非常になんというか、興味深い一冊でした。

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著者プロフィール

町田 康(まちだ・こう)
一九六二年大阪府生まれ。作家。九六年、初小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞・野間文芸新人賞を受賞。二〇〇〇年「きれぎれ」で芥川賞、〇五年『告白』で谷崎潤一郎賞など受賞多数。

「2022年 『男の愛 たびだちの詩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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