- 本 ・本
- / ISBN・EAN: 9784344035676
感想・レビュー・書評
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親友のコウキがマンションのベランダから飛び降りた。そして、僕は学校に行くのをやめた。そんなとき、新聞の記事で紹介されていた「空色ポスト」の存在を知る。新宿御苑にひっそりと設置されている、手紙ではなく写真を運ぶポストだ。このポストをきっかけに、僕は外の世界への一歩を踏み出すことになり…。
自分の適性を正確に見極めて、早い段階から相応しい道を選択出来る。そんな人間はごく一部だ。
てんで畑違いの分野に足を踏み入れてしまい、失敗や回り道を繰り返しながら自身を見極めていくのが世の常なのに、中学入学と同時に柔道部へ入部した初心者コンビのダイスケ(主人公)とコウキは、「失敗」で片付けるには余りにも酷すぎる屈辱を受ける。
初めはそこそこ優しかった先輩が、2人に苛立ちの矛先を向けていく過程や、道場内に少しずつ澱んでいく悪意がリアルで苦しい。
部活の帰り道に歩道橋の上で二人語らう時間が互いを支え続けていたのに、最悪の形で友情を引き裂かれて、引き籠るしかなくなったダイスケの心情がやるせない。
スマホを敢えて「タキノ」と呼び(=多機能携帯端末の略)、柔道部員からの悪意溢れるメールと担任からの偽善メールに耐えかねて、とっとと解約してしまうダイスケは、無意味な繋がり手段よりも、不思議な縁の象徴とも言える「空色ポスト」に心惹かれる。
ここからの展開がとてもいい。
ミキ・ハジメさん・ホンダ先生とのやりとりも、ダイスケがポストに投函した写真も、ダイスケのもとに届いた写真も、全ては刹那的な戯れのように思えるが、ダイスケの中に確かな何かを残していく。
そうしてラストがやってくる。
要所要所でこみあげるもののある小説だったが、ラストはもう涙が後から後から溢れて止まらなかった。
とても素敵な小説だった。 -
想像していたよりかなり重くて苦しくて、読み進めるのがしんどかった。物語中盤まで、部活動での話が続いて精神的にきつかったので、第2章で空色ポストの話になってちょっと気持ちが楽になったけれど、やはり根底には重い雰囲気があり、第3章でようやくこれで明るいラストに向かうんだな…と思いたかったが、再会した昔の友人の姿は私にはつらかった。でもへんに明るいラストにもっていくより良かったとは思うが。
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著者名は余程有名中の有名人しか記憶に残らない自分。この本の著者名に記憶が無くても不思議には感じなかったのだが、中々読み出があったなぁ!と感じつつ著者紹介文まで来て、大学生が現役のまま仕上げた作品と知った。運動部内で発生したイジメは、消えることなく、綺麗事では終わらず、連綿と引き継がれながらも、主人公達は自分たちの時間軸を生きていく…。骨太。凄い。
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中学の柔道部に入部したダイスケと、コウキ。
初心者の二人が入部した理由。
それは「強くなりたい」「取り柄がほしかった」
先輩たち、同級生のレギュラー争奪戦。
そのため、部内に流れる重く粘りのある嫌な空気に
誰もが押しつぶされそうになっていた。
そこから生まれた悲劇。
その後のダイスケの新しい出会いから
明るい未来が見えるようだった。
何が本当の強さなのか。
ダイスケとコウキの笑顔が増えるといいな。
描写(タキノ・多機能携帯端末)に少し戸惑いがあったけれど
終盤、カタカナ表記はダイスケにとっては重大なことなのだろうと
納得した。 -
会話のカギカッコあるのとないのと、聞こえるか聞こえないかの言葉の使い分け。人名や「タキノ」など、カタカナで記号のように表現することの使い方、とても新鮮。心の中の繊細な表現、それがよく伝わる。はっきりとは書かれてないが2人の少年の家族達の交流が推測され、その優しい気持ちが大人にだけは分かるよ、って伝わることが素敵。表紙の絵、とびらの絵がナイスです!読み終えて見直すとぐっときます。本のデザインなど作家自身、良い人に恵まれていると感じました。帯も。
デビュー作だが、これから楽しみです。 -
内容濃すぎて、少々疲れました。。
少なくとも、帯に書いてあるような感想は私は持てませんでした。 -
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前半の閉塞感がしんどかった。
書いた人が若いだけに、リアリティがあった。
ラストの持って行き方はよかった。