なんで僕に聞くんだろう。

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 172
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344035683

感想・レビュー・書評

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  • なんで幡野さんに聞くのか?

    幡野さんは写真家で余命3年を宣告されたガン患者。しかし、なぜか、人生相談が寄せられる。子育てや自殺、病気、恋愛相談まで。

    幡野さんはそれらに丁寧に全力で答える。
    非常に豊かな洞察力と推察をもって適切にズバズバと答えていく。痛快に。

    ー 人は人それぞれの、しあわせを享受するために生きている。

    まさしく、そうだと思う。
    そして、相談者に寄り添うから、たとえ自殺願望であっても否定しない。「死にたいという気持ちを大切にしてください」とまで言う。

    極めて誠実な人だ。
    そりゃ幡野さんに相談するよ。
    人生に迷ったら、ぜひ読みたい一冊。

    その他、心に響いた言葉。

    ー あなたが自分にかけた呪いの言葉はいつか、悩む誰かにあなたが掛けてしまいます。あなたが誰かの敵になってしまいます。

    ー なにかを否定することは、同時に可能性を否定することでもあります。

    ー 誤解を解いたさきにあるのが、理解だと思ってます。逆にいえば、誤解を解かないさきにあるのが、偏見だとおもいます。

  • 幡野広志さんの本を読むのは、これで3冊目です。
    そして幡野さんの文章を読むと、いつも気になるのが「おもいます」という表現をされている点です。
    「思います」という表現が主流のなか、なぜ著者は「おもいます」と表現されるのでしょうか?

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    本書を読み終わったあとしばらくして、「14歳の教室 ~どう読み どう生きるか」(若松英輔・著、NHK出版、2020)を読み始めました。

    その第1章は「おもう」について考えていくものだったのですが、この章には「私たちが『思う』と書くのと、『想う』と書くのでは、意味が違ってきます。」(18ページ)という記述があり、「おもう」という言葉の深さと広さをおもいました。

    「思います」という字面は、どこか変化を拒むような、「自分の考えはこれしかない」という固さを感じます。
    相手の意見はどうであれ、自分はこう思う、というようなイメージを持つのです。

    ところが「おもいます」という表現には、それが書き手の考えであることを示しながらも柔らかさがあり、自分の意見を伝えているにも関わらず、そこには「あなたはどうおもいますか」というような、相手があっての対話だという雰囲気が感じられます。
    「思います」が壁に向かってのボール投げだとしたら、「おもいます」はキャッチボールのようなイメージですね。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    幡野さんはあとがきで、こう書かれています。

    「答えは悩む言葉のなかに隠れている。悩み相談は相手を分析する作業だ。
    男性がやりがちな『問題解決』だけでも、女性がやりがちな『共感』だけでも足りないのだ。この二つがうまくミックスされたものが悩み相談に必要だとおもっている。」(268ページ)


    「なんで僕に聞くんだろう。」の中で、幡野さんは相談者さんの相談に対して、ご自分の考えをとても明瞭に述べておられます。
    しかし本の性質上、というのでしょうか。
    そこには幡野さんの回答を受けての相談者さんの意見は載せられていません。
    それにも関わらず、読んでいるとなぜか幡野さんの回答を「押しつけられた」と感じないのです。
    そしてその理由は、「おもいます」という言葉にあるのではないかな、と感じました。

    「思います」という言葉には、問題解決方法の提示という意味合いを強く感じます。
    でもそこを「おもいます」と表現することで、そこには問題解決と共感という二つがミックスされた文章だと感じられるのです。

    「なんで僕に聞くんだろう。」というタイトルですが、きっと相談者さんは幡野さんの文章の中の「おもいます」に、キャッチボールをしているような感覚を覚えるから、問題解決も共感も感じられるから、幡野さんに相談してしまうのではないでしょうか。

  • こんなにマーカーひいた本は久し振り!
    特に悩みはないけど。読みながら私のしたいことって何かな、私の幸せって何かな…と内省がはかどった。自分の気持ちに正直でありたいと思う。

    親として大切にしていきたい言葉もたくさんあったし、医療職だったり父をガンで亡くしたりしたのでガン患者さんの話のところも心に響いた。

    ところどころ出てくるユーモアもクスッと笑える。肩パットで風をきって歩く時代…とか。好き。

    はたのさんすごい。他の本も絶対読む!

  • ガンになった写真家幡野さんに人生相談が絶えない。その理由はすぐに分かった。どれだけのパワーを使ったんだろう?と心配になるぐらい真正面から相談者に向き合う。回答が私にも刺さりまくった〜。考え方や視点をぐっと広げてくれるようでした!

  • 余命宣告されたカメラマン幡野さん。
    送られてきたいろいろな相談などに答えていく本。

    とにかく前向きな強いひとだと思う。
    前向き・・・なのかな、これを読む限りではそう見える。
    ちょっと達観しているところもあるし、
    自分に合わない人は切り捨てていく、よい意味で自我が強い人だと思った。

    もともとの性格なのか、
    それとも奥様やお子さん、その他の出会いによって形成されたものなのか、
    それとも病がそうさせたのか・・・わからないけれど。

    刺さる言葉がたくさんあった。
    考えさせらる言葉もたくさんあった。
    私もポジティブにやりたいことをやっていきたい。

  • 写真家でガン患者の幡野さんが、寄せられた悩み相談に答えていくのだけれど、それがどれもウソがなく心地よい距離感の回答。率直だからこそ染み入ります。

    「彼はあなたのことが嫌いなんですよ。」なんて言っちゃうのもすごいし、でもそのあとにちゃんと救いがあるのがいい。
    そして自分が嫌いな人はキチンと嫌いと言い、その理由もはっきりしているところが素敵。

    こんな風に自分にウソなく生きて、だからこそ他人にもウソのない優しさを差し出せる人になりたいな...と思ってみたりする。
    本当に何度も読み返したい。

    カバーを外した表紙も素敵で、めくったときにハッとした。
    手触りも最高すぎる。


    帯にある言葉には完全にやられました。
    「言葉で人の歩みを止めることも、
    背中を押すこともできるならば、
    できるかぎりぼくは背中を押す人でありたい。」

  • 2017年に「余命3年」と宣告されたがん患者の著者によるお悩み相談。ちなみにまだご存命。著者のアドバイスを求めてものすごい数のお悩みが寄せられるそうで、「人の役に立つ」実感というのは余命を伸ばすくらいすごいんだなと思わずにはいられません。

    相談者からのお悩みをいったん自分ごとにとらえて、そこから本質を炙り出しています。ユーモアを交えてかなりライトな口当たりですが、時に厳しくズバンと重い球を投げ返している。読みごたえはかなりあります。

    目から鱗の解答メモ↓

    ・「がん患者に『頑張れ』と声をかけることについて」
    がん患者にとって「がんばれ」という言葉が一番苦しい。声をかけるのではなく、耳を傾けること。否定せずにできる範囲でやりたいことを手伝ってあげる。否定されることほど辛いものはない。
    ・「精神疾患があるひとをどう思いますか?」
    精神疾患はだれでもおこりうる病気。それに罹っている人を否定するのは自分も否定することになる可能性がある。そもそも健康な人でも精神疾患でも事件を起こしうる。ひとそれぞれということ。病気の人への誤解は当事者しか解けないけどその先に「理解」がある。理解してくれるひとは必ずいる。
    ・「身体障害のある人を見て子供が言ったストレートな感想にどう対応する?」
    「関係性」と「距離感」についてはできるだけはやめに子供に教えたほうがいい。それができない大人がSNSでも実生活でも拒絶されている。「あなたのようになりたくない」という感情は日常で普通に湧き起こる感情である。それを否定すると社会はダブルスタンダードになってしまう。相手を傷つける言葉を使ってはいけないという一般的なことは教えつつ、それだけだとネットスラングを使う大人になってしまうので、自分と違う人がいることを当たり前で楽しいということを教える。
    ・「援助交際がどうしてもやめられません」
    やりたくないのにやっているのであれば依存症になっているのかもれない。まずは医療とつながるべき。そして援助交際はやめるべき。これは倫理観というより損得勘定。売春はリスクが大きすぎるし、1万5千円は相談者の価値ではない売春市場の相場である。どうしてもやめられないのであれば売春ではなく風俗店で働いてみるのはどうか。風俗店だとリスクから守られるし経済的余裕も生まれてくる。経済状況の立て直しで余裕が出来ると視野が広がり、選択肢ができる。少なくても現状維持はダメ。まずは自分の気持ち優先で。

  • 寄せられた質問(重めなものが多い印象…)に対して、ただ寄り添ったり耳ざわりの良い優しい言葉をかけるのではなく、理解できないものは理解できない、わからないものはわからない 、自分にはどうすることもできない、など 、ともすればキツく聞こえてしまうことを言葉を尽くしてきちんと相手に伝えるということもまた誠実・真摯 ということなのだと思った。
    もちろん優しかったり思いやりに満ちた言葉もたくさんあって、この方はたくさんの人と接してたくさんの言葉や気持ちを交わして来た人なんだなぁと思いました。

  • 身の上話に幡野広志さんが回答していくのだけれど、寄り添うような感じの回答で心が温まりしました☺️

    相談者の人たちのその後が気になります。結構重たい相談もあったりして…みんな前を向けていますように

  • 子どもに対する愛情が深く、がんで余命宣告をされた方ということで読み始めたが…

    痛快、と言えば痛快なんでしょうが、なぜか上から目線のキツイアドバイスが多いような気がする…

    当然、死を意識している方から見たら、些末な悩み事なのかもしれないけれど、言い方がきつすぎることが多々見受けられた。

    あまり読後感が良いと思えなかった。

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著者プロフィール

1983年 東京生まれ。写真家。元狩猟家、血液がん患者。2004年日本写真芸術専門学校中退。2010年広告写真家高崎勉氏に師事。2011年独立、結婚。2012年狩猟免許取得。2016年息子誕生。2017年多発性骨髄腫を発病。著書に『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』(ポプラ社)、『写真集』(ほぼ日)、『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP)、『なんで僕に聞くんだろう。』『他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。』(ともに幻冬舎)がある。

「2022年 『ラブレター』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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