〈あの絵〉のまえで

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344035805

作品紹介・あらすじ

詩帆17歳の誕生日デートは岡山の「大原美術館」、ピカソ〈鳥籠〉のまえ。それからふたりはいつも一緒だった。けれど、彼は今日旅立つ。
(「窓辺の小鳥たち」)

ある少女に導かれるように会社と逆方向の電車に飛び乗った私。箱根「ポーラ美術館」のセザンヌ〈砂糖壺、梨とテーブルクロス〉のまえで夢を諦めた記憶が蘇りーー。(「檸檬」)


日常の中の小さな幸せに寄り添う、珠玉の6篇。

感想・レビュー・書評

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  • ゴッホ 「ドービニーの庭」         
    ピカソ 「鳥籠」              
    セザンヌ「砂糖壺、梨とテーブルクロス」   
    クリムト「オイゲニア・プリマフェージの肖像」
    東山魁夷「白馬の森」            
    モネ  「睡蓮」              

    6篇の物語。それぞれ短いお話だけれども、一枚の絵画が登場人物たちの人生にしっかりと寄り添っている。
    日常の中で忘れてしまった夢や大事な人への想い、後回しにして逃げてしまいたい現実。
    失ってしまった大切な人、戻せない時間。
    受け入れるには辛い、でも受け止めなければならない、生きているのなら少しずつでも進まなければ。
    絵画がそっと背中を撫で、優しく押してくれる。
    絵は何も変わらずに、いつもの場所に居るだけなのに、いろんな人の心を動かす。
    立ち止まり考えることを気付かせてくれたり、忘れていたことを思い出させてくれたり。

    正直言うと、短すぎるなと思うお話もありましたが、“それはそれで良き”と思わせてくれるほど絵画に存在感があります。
    個人的に前々から訪れたいと思っていた美術館(豊田市美術館・信濃美術館・地中美術館)が登場し、今すぐにでも行きたくなりました。
    箱根のポーラ美術館には子供の頃の思い出もあります、親に叱られる苦い思い出ですが…

    先日、上野の国立西洋美術館に「ピカソとその時代展」を観に行きました。
    会いに行って自分の目で観るというのは、その画家の描いた絵と同じ空間で同じ時間を過ごせるということ。
    本当に絵が生きていて鑑賞されることを喜んでいるように見えました。
    その絵の生まれた時代や経た月日を想像するととても楽しくて、時間を忘れて常設展もゆっくり鑑賞しました。

    死ぬまでに行きたい土地や美術館がたくさんあります。
    ブクログをやっていると、読みたい本の増えかたがすごいです。
    本もいっぱい読みたいです。

    • yyさん
      あゆみりんさん

      こんにちは。
      「ピカソとその時代展」を観にいらっしゃったのですね。
      いいなあ~。
      国立西洋美術館での展示はもう終...
      あゆみりんさん

      こんにちは。
      「ピカソとその時代展」を観にいらっしゃったのですね。
      いいなあ~。
      国立西洋美術館での展示はもう終わって、次は大阪かな?

      私がこの作品を読んだ時に一番気になったのは
      「窓辺の小鳥たち」のピカソの『鳥籠』でした。
      『楽園のカンヴァス』にも出てきた絵ですね。
      鳥は籠の中にいるの?それとも窓辺?
      実は昨年、大原美術館に行ったときに
      やっと、この絵に「会う」ことができて
      なんども何度も見つめて…。
      楽しかったです。

      あゆみりんさん、
      たくさん行きたいところや読みたい本があるって
      幸せですね☆彡



      2023/01/27
    • あゆみりんさん
      yyさん、コメントありがとうございます♪

      大原美術館いいですね〜、羨ましいです。
      yyさんは会いに行ったんですね、「鳥籠」に。
      面白い絵で...
      yyさん、コメントありがとうございます♪

      大原美術館いいですね〜、羨ましいです。
      yyさんは会いに行ったんですね、「鳥籠」に。
      面白い絵ですよね、実は自由な鳥さん?
      私も行きたい…

      次のピカソ展は大阪ですね、たぶん土日なんかは結構混むと思います。
      上野のグッズショップもとても混雑していて私は断念してしまいました。
      yyさんの感想はいつも楽しく読ませていただいています、星の数は無しでというのもかっこいいです。
      原田マハさんの小説は、これからどんどん読んでいきたいと思っています。
      ご教示、よろしくおねがいします(〃ω〃)
      2023/01/28
  • 「A Piece of Your Life」Maha Harada
    それぞれ1枚の絵をモチーフにした、マハさんからのプレゼントのような1冊の短編集。絵にまつわる6編の物語。

    その中の1編『窓辺の小鳥たち』に出てくる高校生の詩帆とその後、恋人となる男子なっしーが、初デートで出かけた地元岡山県の大原美術館。

    その時に二人が見たパブロ・ピカソの『鳥籠』の絵のなっしーの解釈がいいと思いました。

    ピカソの『鳥籠』はこの本の表紙にもなっていますが、私は初めて見ました。

    「かごの向こうに窓があるじゃろ。鳥が飛んできてたまたま、窓辺にとまった。それが、空っぽの鳥かごの向こうに鳥かごを通して見えてるだけ」
    「つまり鳥は「かごの鳥」として飼われているんじゃなくて、自由に飛び回っているんじゃないか」
    絵を見ると、なっしーの言っている意味がよくわかりなるほどと思います。

    他の5編もよかったです。

    • kuma0504さん
      こんにちは、まことさん。
      現在「楽園のカンヴァス」を読み始めているのですが、最初のところにも同じような「見方」が出ていましたね。
      私の市に大...
      こんにちは、まことさん。
      現在「楽園のカンヴァス」を読み始めているのですが、最初のところにも同じような「見方」が出ていましたね。
      私の市に大原美術館があるので、小学生の頃から何回も行き、作文に書いて褒められたのでピカソ「鳥籠」は、私のお気に入りだということは前にも書いたと思います(正確にはあの時、「アルルの女」と「木を切る男」も褒めました)。その時は、鳥がどこにいるかは考えなかったのですが、思ったのは単純なことでした。

      実は、ピカソの絵は、あの時二つ並んで展示されていました。題名は知りませんが、牛か何かの骸骨が描かれた色の灰色の絵と、この鳥籠です。
      「なんだ!ピカソの絵って、難しい難しいと大人は言うけど、単純じゃないか!骸骨はとても悲しく辛く感じるけど、鳥籠は暖かく穏やかな気持ちになる。そういうことを描いているんじゃないか」多分、このようなことを作文に書いたと思うのです。もう40数年前のことなので、ハッキリしませんが、そうすると、担任の女先生がみんなの前で褒めてくれたのです。気持ち良くて、それ以降ずっと美術が好きでした。

      というようなとをまざまざと思い出しました。
      ありがとうございます!
      2020/05/29
    • まことさん
      kuma0504さん♪こんにちは。

      先日に引き続きコメントありがとうございます!
      私も、この本の『鳥籠』のところを読んでいるとき、k...
      kuma0504さん♪こんにちは。

      先日に引き続きコメントありがとうございます!
      私も、この本の『鳥籠』のところを読んでいるとき、kuma0504さんから頂いたコメントを思い出し、kuma0504さんは、一体どういう作文を書かれたのかなあ…もしかして、この作品と同じことだったりして…などと、思っていましたが、それは、違ったようですね。
      『楽園のカンヴァス』のレビューもとても楽しみにしています。
      それから、私も、先日kuma0504さんがレビューされていらした作品を買いました(*^^*)
      2020/05/29
  • 6人の画家、6枚の絵をモチーフに綴られた短編集。一気に読むのがもったいなくて、ひとつひとつの作品の余韻を味わいながら読み進めた。

    最初の「ハッピー・バースデー」の後には安堵感と嬉しさで笑みがこぼれた。原田マハさんが一緒に旅するという相方を勝手に想像しながら。
    何といっても「聖夜」が響いた。大好きな東山魁夷さんの「白馬の森」がモチーフで、登山する誠也くんが登場してきたから。鼻の奥がつーんとするような最後だった。
    ある番組でマハさんは語っていた。モネの絵は動的な絵だと。
    子どものいたずら書きなんて揶揄されたこともあったなんて今日まで知らなかった。
    「さざなみ」も情景が目に浮かんだ。

    そうなのだ。
    原田マハさんは絵を描くように文章を書くから
    きっといつまでも残るんだ。
    まさにアートだ。


  • 心が和む一冊。

    一枚の絵と人生の通過点を描いた6篇の物語。

    癒されたというかとにかく読んでいて心が和む、そんな読書時間だった。

    一枚の絵から受け取る言葉にならない感情。
    そこから見つめ出す自分。

    その瞬間を時に優しく時にせつなく描いた6人の物語はどれも甲乙つけがたいほど心に残る。

    ずっと眺めていたい絵、心が落ち着く絵。わけもなく涙が出る絵に出会えたら幸せ。

    数年後、その絵に再会しあの時の自分は間違っていなかったって思えたらさらに幸せ。

    人の心を動かし揺さぶるアートのチカラ。深呼吸をする様に存分に感じた。

  • マハさんのアート小説短編集。どれも前向きになれるステキなお話でした。そして、やっぱり美術館に行きたくなります。聖夜が1番泣けました。

  • 日常生活の中で、時には人生の転機に、ふと巡り合う一枚の絵。
    絵画をキーにした、短編集。

    実在する美術館の絵なので、実物を見に行ってみたい、と思わせられる。

    よかったのは、「豊饒」。
    作家になる、というおばあちゃんとの約束を果たせずにいた女性が、少しずつ変わっていく。
    隣人との心あたたまる交流が素敵だった。

  • ゴッホ、ピカソ、セザンヌ、クリムト、東山魁夷、モネの6つの著名な絵画に添った小さな物語集です♪
    さらりと読めますし各地の美術館に所蔵の作品なので興味も湧きますよね!
    行ってみたくなったのは6番目の短編の舞台、瀬戸内にある直島の「地中美術館」でした。
    こういう分野は原田マハさんの独壇場なので長編中編もこういう短編集も安心して読めますよね。

  • どの絵にも会いに行きたくなってしまう。
    そんなマハさんの短編集でした。

    マハさんのおかげで大原美術館を知り、ずっと行きたいと思っているのに未だ行けず。
    ポーラ美術館も訪れてみたかった場所です。

    最後の「さざなみ」で舞台となっている直島には、私がアートの知識なんてまったくない頃に友人に誘われて行きました。
    その旅行でアートにはまり始めたと言っても過言ではないと思います。
    それくらいおだかやな優しい時間の流れる別世界です。
    地中美術館は中に入らなかったので、こちらもまた訪問しないとですね。

    どんどん行きたいところが増えるじゃないですか。


    I want to see you in front of the work.
    Then, what kind of things can we talk about?

  • 日本各地の実在の美術館&絵画が出てくる短編集。同じ短編集の『常設展示室』と異なるのは、アートと主人公の関わり方だと思った。本書ではアートがそれぞれの人生のさりげない脇役として登場するが、『常設展示室』では美術館の企画や展示に直接的に携わる形で勤務する人が主人公の話もあった。中でも、夏の空気がリアルに感じられた広島が舞台の「ハッピーバースデー」が良かった。仕事や学校で、日常生活で様々な形で辛い思いをした主人公が、何らかの形でアートに触れることで再生していく様子が描かれており、改めて美術や文化の果たす役割の大きさを実感した。心温まる短編集。

  • こういう短編集もいいなぁ と思った。
    六人の登場人物はそれぞれ 岐路に立っていたり、迷いの中にいたり。
    その背中をそっと押すのは六枚の絵。

    表紙にもなっているピカソの <鳥籠> は
    二番目のストーリー『窓辺の小鳥たち』に登場する。
    夢を叶えるために海外へと旅立つ恋人が主人公の詩帆に言う。
    「おれらは、かごの中にいるわけじゃない。自由に飛んでいけるんだ。
    おれ、きっと帰って来る。あの窓辺に」

    そういえば、『楽園のカンヴァス』にもこの絵が登場した。
    大原美術館で監視員をしていた織絵が
    この絵の鳥を見て ハッとするシーンが印象的だった。
    その直後に MoMAからニューヨークに来てほしいと連絡を受け、
    ルソーの絵の調査をすることになった…はず。
    織絵の人生の節目に登場した絵だったと思う。

    そして、最後の短編『さざなみ』では
    地中美術館にあるモネの <睡蓮>が登場する。
    心身ともに深く傷ついた主人公の あおい が
    ふと思いついて仙台から香川県の直島へと向かう。
    全方位 <睡蓮>の池に囲まれ、寄せ来るさざなみを感じる あおい。
    時間を忘れてその中で浮遊するうちに、
    これまでの悩みや苦しみから解き放たれていく。

    もしかしたら、誰にでもこういう瞬間があるのかもしれない。
    背中を押してくれるのは 絵画だけでなく、音楽、風景、誰かの言葉だったり。
    そんな風に思うと、この世界が とてつもなく優しく温かいものに見えてくる。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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