白鳥とコウモリ

著者 :
  • 幻冬舎
4.24
  • (34)
  • (40)
  • (9)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 1286
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (523ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344037731

作品紹介・あらすじ

『白夜行』『手紙』……新たなる最高傑作
東野圭吾版『罪と罰』

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【感想】
    東野圭吾版「罪と罰」がキャッチフレーズの作品。
    プロモーションで『「白夜行」「手紙」につぐ新たなる最高傑作』と書かれており、著者・東野圭吾の直筆メッセージとしても『今後の目標はこの作品を超えることです』とのことでした。
    このように、かなり大々的にPRされていた為、かなり期待して読み始めてしまいました。
    ・・・そのハードルが些か高すぎたことが、結果的に読み終えた後の「肩すかし」につながったのかもしれません。
    ※ちなみに本作品は、決して「白夜行」の続編ではありません。(僕以外にもそう勘違いしている方は多少いらっしゃるのでは?)

    あらすじに書いてある通り、港区海岸で殺人事件が起き、捜査が難航するもふとしたきっかけから犯人逮捕につながる。
    犯人も自供しているし、事件自体は解決したはずなのだが、どうも釈然としない事が多く、また謎が残ったまま・・・
    そもそも、なぜ犯人は?の供述を?
    捜査結果に納得できない被害者遺族の美令と加害者家族の和真が「白鳥とコウモリ」の如く異質のタッグを組み、真相究明に奔る・・・

    しっかりと作りこまれたストーリーで、読み進めていく中でも全く次の展開が読めない構成には舌を巻きました。
    また、毎度のことですが、作中に散りばめられた伏線が見事に回収されていく様も見事!!
    特に、最後のどんでん返しなど、「流石は東野圭吾!!」と読んでいて膝を打ったのはまた事実。
    物語自体、読んでいてとても面白かったと思います!

    ただ・・・・正直これは僕が単純に勘違いしてだけなのかもしれませんが・・・
    読んでいる間、やはりどうしてもずっと頭をかすめ続けたのは、「これって白夜行の続編なのでは?」という淡い期待でした。
    「罪と罰」というキャッチフレーズも、「白鳥とコウモリ」というタイトルも、何だか白夜行の雪穂と亮司を彷彿とさせるものがありましたし・・・
    また、プロモーション上で対比に「白夜行」を持ち出してしまっている以上、「幻夜」のように、やはり白夜行と何か関係のある作品なのでは??と期待してしまいますよね。
    上述の通り、結果として本作品は白夜行とは何の関連もない作品でした・・

    というわけで、作品の構成や完成度自体はとても高かったように思えますが、どうしても白夜行に比べると少し劣る作品だったなと思いました。
    (比較したくありませんが、出版社がそう対比させるプロモーションをしていますので・・・)
    結論、出版社である幻冬舎の行き過ぎたプロモーションが、ちょっと悪かったのかもしれませんね(笑)
    確かにイイ作品ではありましたが、些かPRが過剰でした為、肩すかしをくらいました・・・


    【あらすじ】
    2017年11月1日。
    港区海岸に止められた車の中で腹を刺された男性の遺体が発見された。
    被害者は白石健介。正義感が強くて評判のいい弁護士だった。
    捜査の一環で、白石の生前、弁護士事務所に電話をかけてきた男、
    倉木達郎を愛知県三河安城に訪ねる刑事、五代。
    驚くべきことにその倉木がある日突然、自供をし始める――が。
    二〇一七年東京、一九八四年愛知を繋ぐ〝告白〟が、
    人々を新たな迷宮へと誘う?。


    【メモ】
    p79
    「なぜ、あなたは『あすなろ』に行くんですか?
    そのことを息子さんに隠している理由は何ですか?
    それだけじゃない、あなたは浅羽さん母娘にさえも隠し事をしていますね。
    自分が、三十数年前に起きた『東岡崎駅前金融業者殺害事件』で痛いの第一発見者だったことを隠していますね。
    それはなぜですか?」

    「倉木さん…」
    「もういいです」
    倉木が五代たちのほうを向いた。
    五代は、はっとした。先程までとは比べものにならないほど穏やかな顔をしていたからだ。
    「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」
    「すべてって…それはもしかすると」
    はい、と倉木は頷いた。
    「白石さんを殺したのは私です。そして灰谷昭造を刺し殺したのも私です」


    p95
    倉木の供述は多くの疑問に答えてくれるものではあった。
    しかしひとつだけ、大きな謎を残している。

    なぜ倉木は三十数年前に逮捕されなかったのか、なぜ容疑の対象から外れたのか、ということだ。
    本来、事件の第一発見者は、真っ先に疑われるのが普通だ。
    だがそれについては倉木自身も、わからない、と答えるばかりだ。

    自分たちは本当に迷宮入りを免れたのだろうか?
    もしかすると新たな迷宮に引き込まれたのではないか?


    p291
    「どんな犯人だって、なるべくなら刑は免れたい。そのためなら、あれこれと嘘だってつくだろうさ。
    じゃあ、倉木はどうだ?あの人物が嘘をついているとして、それは何のための嘘だ?
    減刑には繋がらない。それなのに、なぜ嘘をつく?」


    p391
    「被害者の遺族と加害者の家族が協力して情報交換しているなんて、普通じゃちょっと考えられないですよ」
    中町は頭を左右にゆらゆらと揺らした。
    「その通りだが、あの2人の場合は特殊なんだよ。理由がある」
    「何ですか、それは?」
    「どいらも事件の真相に納得していないってことだ。もっと別の真実があり、それを突き止めたいと思っている。
    ところが警察は捜査を終えた気でいるし、検察や弁護士は裁判のことで頭がいっぱいだ。
    加害者側と被害者側、立場上は敵同士だが、目的は同じ。ならば手を組もうと思っても不思議じゃない」

    「光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ」


    p418
    「他の犯罪ならともかく殺人事件だ。裁判で死刑になるかもしれない。そんな罪を他人の代わりに被る人間がいるなんて、普通は思わないよ」
    「そうです。問題は、なぜ倉木はそこまでするのかということです」
    五代は液晶モニターに目を向け、キーボードを操作して映像を戻した。ある人物が横顔を見せている。
    その人物の写真を見たのは、浅羽母娘の部屋に行った時だ。小学生時代の姿が写っていた。
    少年の名前は安西知希、父親の安西弘毅によれば、中学二年生ということだった。


    p499
    「捜査を混乱させるためですね。車を移動させれば、子供の犯行だとは普通思わない。白石さんは最後の力を振り絞って、安西知希を守ろうとした」
    「倉木氏もそう考えた。白石さんは、安西知希を守ることで過去の罪を償おうとしたんだと。だからこそ倉木氏は、その意図を尊重しようとした」


    p507
    「殺人に興味があったというのです」
    女性弁護士の言葉を理解するのに、ほんの少し時間がかかった。数秒の沈黙の後、えっ、と発した。
    「興味?」
    佐久間梓はゆっくりと頷いてから、改めてファイルに目を落とした。
    「小学生の時、祖父が殺人犯だったことが周囲に知られ、いじめられるどころかむしろ恐れられていると感じ、人殺しという行為の影響の大きさに関心を持つようになった。やがては、人を殺してみたいと思うようになった。

    倉木氏から母親に送られたメールを盗み読みしたことで、状況が一変した。人を殺す動機を得たと思った。
    長年の恨みを晴らすためだったとあらば、世間も許してくれる、刑罰も軽くなるのではないか。
    その思いは瞬く間に膨れ上がり、行動に移す原動力となった」

    • 八幡山書店さん
      確かにタイトルといい、罪と罰といい、白夜行を連想させるフレーズが多かったですよね。笑
      自分も最初そうなのかもしれないという頭でしたが、読み終...
      確かにタイトルといい、罪と罰といい、白夜行を連想させるフレーズが多かったですよね。笑
      自分も最初そうなのかもしれないという頭でしたが、読み終わって、「いやー面白かった!でも白夜行の3部作目ではなかったから、楽しみが次の機会に持ち越されて良かった!」という気持ちになれました^_^
      2021/04/18
    • きのPさん
      八幡山書店さん
      コメント有難うございます!
      確かに、この作品そのものの完成度、面白さは圧巻でした!!
      「次の機会に持ち越されてよかった」とい...
      八幡山書店さん
      コメント有難うございます!
      確かに、この作品そのものの完成度、面白さは圧巻でした!!
      「次の機会に持ち越されてよかった」という八幡山書店さんの考え方はとても新鮮でポジティブで素晴らしいですね!!
      僕もそう思うようにします(^^)
      2021/04/21
  • 「手紙」「白夜行」・・・・・新たなる最高傑作

    この帯に惹かれ、即買い。
    500ページを超える大作ながら、一気読みで2日ほどで読了。
    善良な弁護士が港区海岸に停められた車の中で、刺殺された状態で発見される。捜査に当たる捜査一課の五代たちだったが、80ページ当たりであっさり犯人が捕まる。
    しかし、殺人を自供した倉木の供述は一切裏が取れず、自供のみで送検しようとする検察の裏で、父の犯した罪の真実を探す息子と殺害された弁護士の娘は立場を超え、協力して真相に迫る。
    今回の殺人の裏には既に時効になった1984年の殺人事件が絡んでおり、加害者と被害者の他に1984年の事件で逮捕され、拘置所で自殺した遺族の関係が複雑に描かれる。
    最近はシリーズものだったり、軽めの作品が多かったので、久しぶりに東野圭吾の「贖罪」をテーマとした重厚な作品を堪能出来た。
    タイトルの「白鳥とコウモリ」のとても意味が深く、殺人を扱いながらも、登場人物がそれぞれを思いやる気持ちがとても切ない。

  • 「白夜行」「手紙」ー新たなる最高傑作。東野版「罪と罰」

    面白いの一言に尽きる!東野ファンは必ず読んだ方がいいし、そうでない方も大満足間違いなし!500ページの大作をわずか2日で読了できたのも東野圭吾の執筆力に尽きる。

    殺された善良な弁護士。事件の被疑者を追うと、1984年の別の事件との関連がみえてきた。そして犯人の自供、解決。ここまではよくある殺人ミステリーの一幕だったのだが、そこでは終わらないのがこの作品。
    被告人の供述に裏が取れていないところに着目し、同じ理由から被告人の息子と被害者の娘が呉越同舟ながら事件の真相に迫る。光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ。

    前半だけでもかなり東野圭吾らしい心情描写に富んだミステリー作品である。中盤から後半にかけて真相が明らかになっていくにつれ、その心情描写も鋭くなってゆく。
    そしてこの作品の核心が被告人家族と被害者家族の心情とそれを反映できない日本の裁判制度である。どちらの家族も辛い思いをするのに、その思いを汲めない日本の司法にやるせなさを感じる。とても考えさせられました。

    個人的に東野圭吾作品の中でもトップ5に入るんじゃないかと思う。系統としては容疑者xの献身に近いかな?これだけの作品なので何かしらの文学賞を受賞することを願っている。

  • そう来たか!用意周到な廻り道を一歩、一歩踏みしめる毎に真実に近づいていく。さすが、東野圭吾。嘘と正義と真実を見事に描く渾身の大作!
    裁判は勝ちさえすればいい。これもまた認めざるを得ないのが、何とも空しい…。

  • 集めた白いピースをはめたら、黒いパズルが出来上がったような感覚。
    正義と悪、罪と罰、黒と白、白鳥とコウモリ、反対に存在しているようにみえるけれど、全て表裏一体で、私たちはそのどちらにもなり得ることを忘れてはいけないと思う。

  • 善良な弁護士が殺された
    警察の捜査の結果、愛知県に住む男が自分が犯人だと自供した。

    自供した男の家族の苦悩
    殺された弁護士家族の疑問
    過去の事件の結末・・・
    担当刑事が感じる違和感

    色々なものが絡まり合い物語は捻れながら反転していく。


    過去の罪、自分にできる事、罪人と家族などテーマは多々ありますが『死んでも良い人間』を放置しておく事の問題点を考えさせられました。

    本作を読んでいて過去作の『手紙』『虚な十字架』『容疑者Xの献身』などを思い出しました。

    それと522ページの超大作です!

  • 『光と陰、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ』 『とんでもない真実が出てきて、完全に事件がひっくり返る』 ザワザワ。なんだろうこの胸に吹く風は? 『すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です』 そう、それは倉木達郎の告白から始まった、否、始まってしまった。白石健介と倉木達郎。そして浅羽母娘。東野圭吾版【罪と罰】-幸せな日々は、もう手放さなければならない- 誰が白鳥で誰がコウモリだったのか? ひっくり返った瞬間、切なすぎた、結末。

  • 複数の殺人犯や犯罪者が登場するが、その全員に同情の余地があるというのが東野作品に没入できる要素。対局にいる2人が真相を求めて協力するストーリーも読者を引き込む。

  • 読み応えのある長編。
    一気に読ませる、さすが東野圭吾。
    じきに映像化されそう。

  • ある弁護士が殺された。その人は、「人情派」という言葉が似合うくらい、加害者に手厚くサポートをしている。
    捜査を続けていくうちにある一人の人物が浮上し、罪を認めた。これで解決したと思いきや、調べていくうちに様々なことが明らかになっていく。


    改めて、東野さんのミステリーの幅広さに圧倒されました。科学の知識を駆使したり、エンタメ系のライトなミステリーはたまた重厚感のある本格派だったりと色々な「顔」を持っていて、読み手としては大いに楽しませてもらっています。

    今回の作品は、科学もなく、エンタメでもなく、本格派ミステリーでした。それぞれの人が抱える罪と罰に自分だったらどう向き合えばいいのか考えさせられました。

    500ページという単行本では、ボリュームのある量でしたが、「どんな展開になっていくんだろう」という興味が常に頭に引っ付いていて、気づいたら沼にハマった感覚があり、迷宮にいる感覚でもありました。

    題名の「白鳥とコウモリ」ですが、後半になってわかるのですが、言葉選びが秀逸で、深い言葉だなと思いました。

    大まかに分けると、事件の捜査とその後の2つのパートに分かれています。
    前半では、主に警察側の視点で、弁護士の殺人事件を捜査しています。東京の下町を舞台にしているので、どこか「第二の新参者の誕生?」という想像をしていました。
    しかし、意外と前半部分で犯人が逮捕されるので、正直その段階ではちょっと肩透かし感はありました。ページ数としては短いものの、調べていくうちに意外な真実が明らかになっていくので、色んな想像を膨らみ、奥行き感のある物語が待っているのでは?と勝手に想像してしまいました。

    残りのページはどうなるの?と思っていましたが、そこからがこの作品の醍醐味かなと思いました。

    「その後」のパートでは、犯人が逮捕された後の事件の関係者の視点をメインにしています。被害者の娘や加害者の息子が、それぞれ事件の全貌を解明しようと奔走します。
    事件は解決しているかと思いきや、加害者の証言に違和感を感じた2人。検察や弁護士に止められながらも、調査をしていきます。
    逮捕から裁判までの準備期間の間にどう事件が明らかになっていくのかが描かれています。
    警察も登場しますが、主に脇役として登場します。

    事件がどう展開していくのかという楽しみもありますが、同時に関係者たちの苦悩といった心理描写も描かれています。
    世間からのバッシングや同情といった数多くの「声」に苦悩しながらも、事件の真相が知りたいという信念を貫こうとする姿に段々とその世界観に惹き込まれました。

    記者の理不尽なやり方や司法の立場から見た仕事のやり方も描かれていて、苛立ちもありましたが、これが現実なんだとも感じました。結局全てが明らかになるということは難しいということを身につまされました。

    そして、2人が掴んだ新たな真実に色んな要素が段々とつながっていく過程は、驚きとともに後悔のような感情にもなりました。まるでオセロが常にひっくり返るかのようでした。
    「知りたくなかった」とか「読む前のあの頃には戻れないな」といった関係者ではないのにそういった思いが芽生えしまいました。それほど衝撃的で、重厚感がありました。

    事件の関係者だけでなく、自分を含む全ての人にも響く「罪と罰」がこの作品には含まれていました。
    安易に情報や言葉を拡散するだけでなく、拡散したことへの責任や誰かを傷ついているのでは?という自覚を持つことも
    大切であると思いました。

    これからどう一歩踏み出していくのか。色々と考えさせられました。
    まだ発売されたばかりですが、今後映像化するのでは?と思うくらい、衝撃さ、重厚感、メッセージ性があるように感じ、むしろ映像化して欲しいなと思いました。

全42件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

東野圭吾の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

白鳥とコウモリを本棚に登録しているひと

ツイートする
×