片見里荒川コネクション

  • 幻冬舎 (2021年5月26日発売)
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感想 : 55
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  • 本 ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344037908

作品紹介・あらすじ

人は、何歳からだって「動ける」。
継男、“まだ”75歳。――“弟分”に頼み込まれ、「オレオレ詐欺」の受け子に!?
海平、“もう”22歳。――寝坊で卒論を出しそこね、まさかの留年!?
老人と青年の荒川での出会いが、足踏みしていた自分たちと、周りの人たちの人生を少しずつ動かしていく。人生を優しく肯定してくれる、小野寺史宜ならではの、長編小説。寝坊で卒論を出しそこね、留年が決定した22歳の海平。片見里の実家に報告に戻ると、ばあちゃんからこづかいとともに頼まれた。東京に出た同級生・中林継男を探してくれと。
一方、大学入学で片見里から上京して、一人で生きてきた荒川在住の75歳の継男。同郷の次郎から「オレオレ詐欺」の受け子の代役を頼まれ、老女の家を訪ねることに。
同じ片見里出身ということ以外接点がなかった継男と海平が荒川で出会った。継男はある〈ヤバい〉ことを海平に相談する。
当たり前に正しく生きることの大切さが、優しく染みる、長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • しずくさんのレビューにも書かれている通り、小野寺史宜さんは『一服の清涼剤』
    小野寺さんの本はとても癒やされるのだけど、いい人ばかりが出てきて『こんなにうまく行きます?』と読んでいる途中で思ってしまうのは、やはり本音なのであります‥‥しかし!最後まで読むとやっぱり『あぁ、いいお話だったなぁ』と思っちゃってるのも事実なのです。
    同じ出身地(片見里)の海平・22歳と継男・75歳のお話です。
    就職が決まっていたにもかかわらず、卒論を出し損ねて留年が決まった海平、幼なじみの次郎と一緒に振り込め詐欺の片棒を担いでしまいそうになる継男。
    そんな二人が出会って友情を育んでいく。うん、やっぱりこれは友情なんだろうな。お互いに若い相手を、年老いた相手を助けてあげようと思っているのかもしれないけれど、結果、とっても“仲良し“になってるし。
    それもこれも、飾らない人柄だからなんだろうな、と思います。
    「場所じゃないんでしょ。結局は人でしょ。自分でしょ」
    「お前が言うな」

    『片見里シリーズ』今作の前にも出ていること知らずにこちらを先に読んでしまいました。
    そちらも結局読んでしまうんだろうな、そして『あぁ、いいお話だったー』と思ってしまうんだろうな。

    • しずくさん
      わおっ、読んで下さったのね❗
      二人の友情がとても素敵でしたね。
      私も未だシリーズの前作を読めてません。こっとんさん、読まれましたら是非感...
      わおっ、読んで下さったのね❗
      二人の友情がとても素敵でしたね。
      私も未だシリーズの前作を読めてません。こっとんさん、読まれましたら是非感想をお聞かせください。
      2021/10/02
    • こっとんさん
      しずくさん、こんにちは。
      小野寺さんに癒されるためにも、ダークな作品を続けて読んでみようかな?笑
      しずくさん、こんにちは。
      小野寺さんに癒されるためにも、ダークな作品を続けて読んでみようかな?笑
      2021/10/02
  • 良かったな、の一冊。

    最適な言葉が浮かばない。
    ただひたすら良い物語を読んだな、良かったな感でいっぱい。

    75歳の老人と22歳の青年、歳の差大きい同士の関係は良いな。
    歳を重ねた人生経験豊かな年長者が若者に贈る言葉はどれも嘘偽りがないから良い。
    素直に聴ける。

    酸いも甘いも経験してきた年長者同士の関係も良いな。
    近くにいても遠くにいてもほっとけない、ほっとかれない仲って良いな。

    シンプルな会話のキャッチボールから溢れる優しさ温かさも良かったな。

    ラストシーンは涙ひとすじ。踏み出す一歩、それはいつだって人生の大切な一歩。

  • 手に取る本が矢継ぎ早にダーク過ぎ断念が相次いでいたところ、小野寺史宜さんの名前がふっと浮かんだ。昨年夏に集中読みして、あげく世の中そんな良い奴ばっかじゃなく甘くはないでしょうと飽いたのはどこのどなたさんでしたっけ!? 結果、当たり前に正しく生きることの大切さをさらりと描いた本作は一服の清涼剤となった。
    寝坊が原因で留年した海平と独身・75歳ナッカンの故郷は共に片見里。海平は寝坊で卒論を出しそこね、留年が決定し片見里の実家に報告に戻ると、ばあちゃんからこづかいとともに、東京に出た同級生・中林継男(ナッカン)を探して欲しいと頼まれた。一方、ナッカンは大学入学で片見里から上京して荒川に住んでいた。近くに住む同郷の次郎に「オレオレ詐欺」の受け子の代役を頼まれ(ナッカンは知らない)老女の家を訪ねることになった。ナッカンが「オレオレ詐欺」の親分格の男に気に入られ、逆スカウトされる所が面白い。悪い男でも上に立つ者は人を見る目はしっかりしていると妙に感心させられた。ちなみにこの男の名は菅となっていてシニカルだ。やるなぁ、小野寺さん! 「なあ、じじい、あんたはつかえる人間だよ。70を過ぎてつかえる人間なんてそうはいない。みんな、いざとなれば動けると自分で思っているだけで、実際には動けない。でも、あんたはあのじじい(次郎)から連絡を受けてすぐに動いた。以下略」と宣った。ナッカンは〈ヤバい〉ことになった経緯を海平に話し相談することになり、片見里と繋がっていく。
    ナッカンが俺にはいいところはないという海平に「お前は人を結びつける何かを持っている。自然と人を引き寄せ集まって来るだろうが」みたいな事を示した。本当に、ナッカンが言う様に海平は好青年だ。肩肘張らずにいい意味で素直で、現代に流されながらもたくましく生きている。『ライフ』の主人公・井川幹太を彷彿させた。
    片見里にさほど繋がりはないと思っていた2人だが、彼らの周囲には住職を初め色んな人達が関わり世話を焼く。押しつけがましくなく距離感を保った緩やかな繋がりが羨ましい。故郷を離れて50年経た私には、彼のような素直さがなかったのが少し恨めしかった。

  • 小野寺さん作品、読了17冊目(^^)

    これまで全く関わりがないが、同郷のお爺さんと若者が主人公。
    しょっぱなの西武池袋線、富士見台は昔最寄りだった駅だし、足立も荒川も今近いので、本当に「その辺の話」として入っていってしまいます(笑)

    継男っちが図書館で「ライフ」を借りてたり、海平が「今日も町の隅で」の「君を待つ」を読んでたりしてニンマリ(o^^o)

    海平が最初はただのポンコツなのに、実は周りの人たちを繋ぐ良い役割をしてるのが分かっていくのが良いなぁ(*^^*)

  • 75歳、身寄りのない世話好き老人と、22歳、自堕落が故に留年し、就職も白紙になった年の差コンビのはなし。
    歳が離れてても仲睦まじい2人をみてるとホッコリする。
    多分、それはきっと海平がすごく人懐っこい性格だからなんだろうな~!!!
    高齢者の悩みというものが知れた。若いにしろ生きていくと言うのは常に、悩みは尽きないんだよな~。

    サクサク読めてすごく面白かった作品です♪

  • 「片見里、二代目坊主と草食男子の不器用リベンジ 」とリンクした作品。作品を発表する度に小野寺史宜という作家の世界が広がっていく。読者としてリアルタイムで体感出来るのは幸せ。

  •  『片見里』シリーズ第2作。設定は前作から3年後で、主となる舞台は東京。

          * * * * *

     主人公は2人。22歳の田渕海平と75歳の中林継男。ともに片見里出身で、現在は東京・荒川近辺で独り暮らしです。

     物語は片見里の縁が繋ぐ出会いがメインで描かれ、海平と継男それぞれが未来に臨むスタンスを固めていくというストーリーです。

     終盤がサスペンスタッチの展開になるところは前作と同様ですが、今回はしっかり緊張感を感じさせる描写になっており、作者の技量が格段に上がっているのがわかります。
    ( 結局はハードな展開にならないところはさすが小野寺作品ですが。)

     まとめ方が希望に満ちたものになるのはこちらも期待するところで文句なしだけれど、嬉しかったのは前回主役の徳弥と一時が、脇役として ( しかも重要な役どころで ) 後半を飾ってくれたことでした。 ( 一時の成長が特に嬉しい! ) 

     とても面白かった。3作目の執筆もぜひ熱望しています。

  • 私が読んだ小野寺史宜氏の9作目。

    後々直接本筋には全く絡んでこない登場人物がフルネームで相変わらず沢山出てくるのだが、もうそのことには慣れてきたので、覚えておかなければいけないのか?と考えず、肩の力を抜いて読めるようになった。

    小野寺氏作品のアパートの呼び鈴は「ウィンウォーン」。
    缶ビールでの乾杯の音は「ノン」。
    でも今迄の「元カノジョ」は本作では「元カノ」になっていた。

    中林継男75歳と田渕海平22歳。
    2人の関係性を表したのが題名になっている。
    いい。(だから後で改題とかしないで欲しい)

    色んな人の、いいセリフがある。
    私はお坊さんの徳弥という登場人物が一番好き。

    中林継男の章の最初と最後の一文と田渕海平の章の最初の一文を読んだら当然、田渕海平の(つまりは本書の)最後の一文が想像できるのだが、ちゃんと呼応して正当に締められていて良かった。


    (一度確かに投稿したはずのレビューが何故か消えていたので、仕方なく思い出しながら書き直したら、タイムラインに新旧2つのレビューが後から現れてびっくり。最近、ブクログさんの機能がおかしい)


    追記 本書で真相がはっきりしなかったこと(徳弥と一時の件)については前作があったようだが、そちらの方の多くのレビューを拝見し、そちらは読まなくてもいいかなという結論に至った。
    (うちの図書館には無いし)
    ブクログの多くの方々のレビューのおかげである。

  • 負け組の話、とたかを括っていた自分を呪いたい。勝ち組だの負け組だの言ってる奴がクズだ。こんなに上質な人達が真っ当に丁寧に生きている。出て来る人たちが軒並み、なんていい人たちなんだろう。

  • 面白かった。

    片見里出身の二人、75歳の継男と22歳の海平が東京で出会い、展開する話。

    詐欺をしそうになった牛島さんのところに、継男と次郎で謝りに行くところが良かった。他のエピソードも行動を起こすことで、事が進む。それが何歳になっても…。励まされた。

    他の方の感想で片見里シリーズがあることを知り、そちらも読んでみようと思い、楽しみ。

    本好きの皆さんの感想は興味深いし、いろいろ情報をもらえて助かります。皆さんやこのアプリに感謝です✨

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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