往復書簡 限界から始まる

  • 幻冬舎
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本棚登録 : 388
感想 : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344038158

作品紹介・あらすじ

「上野さんは、なぜ男に絶望せずにいられるのですか?」
女の新しい道を作った稀代のフェミニストと、その道で女の自由を満喫した気鋭の作家が限界まできた男と女の構造を率直に、真摯に、大胆に、解体する。

「しょせん男なんて」と言う気は、わたしにはありません。――上野
・女の身体は資本か? 負債か?
・娘を幸せにするのは知的な母か? 愚かな母か?
・愛とセックスの分離から得たもの、失ったもの
・家族だけが磐石だという価値観は誰に植え付けられたのか?
・人間から卑劣さ、差別心をなくすことはできるのか?
「エロス資本」「母と娘」「恋愛とセックス」「結婚」「承認欲求」「能力」「仕事」「自立」「連帯」「フェミニズム」「自由」「男」――崖っぷちの現実から、希望を見出す、手加減なしの言葉の応酬!

感想・レビュー・書評

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  • 高学歴スーパーお嬢様で夜の仕事やAV女優を経験された鈴木涼美さんは、私にとって最も関心のある作家で、いままでにエッセイを2冊読みました。

    今回は上野千鶴子さんとの往復書簡ということで、
    終わりの方はちょっと難しくて退屈だったけど
    ほとんど滅茶苦茶面白い内容でした。

    私は佐藤優さんや出口治明さんから「小説読んだ方が良い」と言われ、「何かの役に立つかな」と思って読んでいるのですが、この本を読みながら、やっぱり小説はノンフィクションにかなわないと思いました。
    そしたら上野千鶴子さんがこうおっしゃっていたのです。

    〈どんなひとも一生に一度は傑作を書くと言われますが、職業的な書き手は、一度ではなく、何度も継続して書き続ける必要があります。そうして一生に一度のベストセラーではなく、イチローのように毎シーズン打率3割の安定したバッターであり続ける必要があります。
    こういうときほど、自分が社会学者であってよかった、と思うことはありません。その裏側にあるのは、作家でなくてよかった、という感慨ですが、もちろん自分に作家になるほどの才能があったとは思いませんが、作家は自分を実験場にして切り刻むような仕事、それにくらべれば社会学者は他人の集合である社会を実験場にします。自分の足元をいくら掘っても退屈なだけ、だから他人という戦場に赴くのだ、と思ってきました。そして他人という存在は無尽蔵ですから、社会学者の仕事にはタネが尽きるということがありません。わたしは想像力は身の丈を超えない、現実のほうがはるかに想像力を超える…と思っている人間なので、フィクションに対する要求基準がきわめて高く、小説をおもしろいと思ったことがめったにありません。つまらない小説を読むと、「時間を返せ!」と言いたくなりますし、反対にどんなつたない論文やノンフィクションでも、知らない事実を知ったときの喜びのほうがまさります。〉

    最近小説を読んでなんかモヤモヤしていたのは、こういうことだったんだと思いました。
    「知らない事実を知ったときの喜び」
    私はそんな読書が好きなんだって。
    上野さんから、佐藤さん出口さんとちがう意見をもらって、すごく嬉しかったです。

  • 上野千鶴子と鈴木涼美。この二人が往復書簡を通して一体何を話すというのだろうと、想像するだけで息が詰まる、でも絶対にとんでもない一冊に仕上がっているだろうと約束してくれる凄い組み合わせだ。
    エロス資本、母と娘、自立、フェミニズム、男、などなど。12個のテーマに一応は分けられているが、話題は連続しており一貫している。
    豪速球が飛び交うかのような議論に、一瞬でも目を離したらすぐに球を見失ってしまいそうで、ついていくのに必死だった。
    ちなみに付箋をべたべた貼りながら読み進めている私をみて夫はぎょっとしていました。
    発見の多いとても実りある読書だった。私ものこのぐらい言葉を駆使してこれらのテーマについて表現できる女性になりたい。

  • 上野千鶴子さん鈴木涼美さんが往復書簡を終えてはじめて語り合うイベント開催|往復書簡 限界から始まる|上野千鶴子/鈴木涼美 - 幻冬舎plus
    https://www.gentosha.jp/article/18998/

    上野千鶴子/鈴木涼美『往復書簡 限界から始まる』 - 幻冬舎plus
    https://www.gentosha.jp/store/ebook/detail/10820

  • 鈴木さんのことはあまり知らなかったけれど、この本が話題になって経歴などを調べ、考えの違う二人の白熱議論が展開される書物かと思って読みました。

    しかし、軍配は最初から上野さんに上がっていたようです。鈴木さんは上野さんの論理の説得力に飲み込まれ、促されるままに自己開示をしていきます。
    しかし、30代女性になった私は鈴木さんの痛みを伴う自分自身の振り返りを、時に涙を流しながら読み進めました。
    母と娘との熾烈な争いの中で、得たものと失ったもの。究極の親への反発として入った夜の世界。被害者だと認めたくない気持ちと自立心と罪悪感…。鈴木さんは今まで自分自身にも隠してきた自身の被害者性や痛み、後悔と向き合っていきます。そして、いろんな諦めも知った今、これからの人生をどう設計するか…。厳しい現実を前に生き方に悩む姿は、境遇は全然違えど人ごととは思えませんでしたし、鈴木さんの背景に沢山の女性たちがいることを考えると、なんとも言えない感情が押し寄せました。

    しかし、鈴木さんは最後、問いかけられ自分で見つけかけた「どう生きるか」の問いからは、逃げて終わってしまった感がありました。「構造と主体の隘路」が一貫したテーマでしたが、彼女は構造へのアプローチからはまだ距離をとりたいように見えました。中立、寄り添うという言葉でその立場に居続ける人は五万といます。構造の中の主体であることをどれだけ理解して、さらに構造と切り結んでいくのか。この問いにどれだけ正面から向き合い続け形にするのか、彼女のこれからを見ていきたいと思いました。

    また、上野さんの言葉に私もハッとすることはたくさんありましたが、フェミニズムはいろんな思想を含むため、私も上野さんの言説が全て正しいとは思いません。しかし、鈴木さんとのやりとりを見て、この方がフェミニストとして切り開いて残したものの大きさは感じずにいられませんでした。
    私は女性が主体的である条件に、性的な能動性や主体性を置く必要はないと思っていますが、それは私自身が考え実践していきたいと思います。

  • 読了。最初と最後の上野先生の書簡を読んで、涙が出た。自分は男なので、この本にでてくる、しょせんの男であるが、「痛いものは痛いと、おっしゃい」の言葉が心の奥底を揺さぶったようだ。

  • 「人生の道標であり避難所」となった一冊。
    女として生まれて、なんとなく感じ、悩まされてきた「何とも言えないもやもや感」が、二人の女性の圧倒的な文章や知見によって、見事に言語化。上野さんが鈴木さんへ語り掛けるアドバイスは、私の心にも響く格言ばかりで、ノートに書き止める程。
    女性の悩みや生き様について、あらゆる面で核心がつかれ、男性にも、子どもにも、女性活躍を謳う人事担当者やマネージャーにも読んでほしい、フェミニズムの真髄だと思う。

  • めちゃくちゃ全員に読んでほしい、そして各々の考えを交わしたい。上野さんの深さ広さ豊かさ、鈴木さんの正直さと向き合う姿勢がすばらしく、こちらを揺さぶってきてくれた。自分が切り分けられず混乱していたことを切り分けてもらえる箇所もたくさんあった。これからはこうやって考えて生きていこう、と思って線を引いたところもたくさんある。はーいい本読んだ。

  • お二人の文才のせいか、知らない世界を垣間見たい願望からか、とても興味深く、一言一句読み込んでいます。
    千鶴子さんは、生トークセミナーにも伺ったことがある好きな作家さんですが、涼美さんは存じ上げていない方で初でした。究極的なご経歴とご経験から紡ぎ出される達観されたアレコレが、実に興味津々で考えさせられる事、多々。
    男女共に人間が潜在的に持っている感覚にも切り込まれ引き込まれる深い本です。

    • 【プロ会社員】寧華さん
      読了し、漸く【限界】の意味を悟❣️千鶴子さんが子どもを持たない選択をされた理由、ボンヤリは聴いたことがありましたが、詳細を初めて知れました...
      読了し、漸く【限界】の意味を悟❣️千鶴子さんが子どもを持たない選択をされた理由、ボンヤリは聴いたことがありましたが、詳細を初めて知れました。
      ここ数年に読んだ中でも最も読み応えあり全女性が読むべき逸品の一冊
      2021/09/20
    • 【プロ会社員】寧華さん
      切れてしまうので続き…
      痴漢はあれど、セクハラに遭った経験無しでも、何故か物凄くワカル感覚や知らなかった知識もギッシリ。日本で直近過去2年に...
      切れてしまうので続き…
      痴漢はあれど、セクハラに遭った経験無しでも、何故か物凄くワカル感覚や知らなかった知識もギッシリ。日本で直近過去2年にあったアレコレを契機に産み出された様な濃い充実の内容でありコスパ良い本だと断言します。
      2021/09/20
    • 【プロ会社員】寧華さん
      noteにも書きました✍️
      https://note.com/ruly_yasuka/n/nc7793c615934
      noteにも書きました✍️
      https://note.com/ruly_yasuka/n/nc7793c615934
      2021/09/21
  • とてもいい本。薄っぺらく平べったい最近のフェミニズム本や言説には本当にほとほとうんざりしていたのだけれど、この本には身を切るような痛みが、血を流しながら獲得した知性が、しかし人間であるからこその矛盾する思いが詰まっていた。まったくこういう本に出会えると、ああ自分もまだ踏み外さないでいようと思えるのだった。人生は、差し出した分、与えられる。差し出した分しか、与えられない。そういったことが感じられる往復書簡だった。

  • ようやく本気の鈴木涼美が出てきたなという感想。いろんな葛藤があってこれまで風俗系のエッセイを書き連ねてきたという事情が理解できたが、一年間の連載を経て「禊ぎ」を済ませて今後のどのような活動をするのか楽しみである。母親と娘の関係が主なテーマになっているが、一方では上野千鶴子が父親に関して何度も探りを入れてくるのに対し露骨に避けはしないものの、本音は明かさない彼女の心境はどういうものなのか気になるところ。

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著者プロフィール

1948年 富山県生まれ 京都大学大学院社会学博士課程修了 現在,東京大学大学院人文社会系研究科教授。
専門:女性学,ジェンダー研究。この分野のパイオニアであり,指導的な理論家のひとり。近年は高齢者の介護問題に関わっている。
著書に『上野千鶴子が文学を社会学する』朝日新聞社。『差異の政治学』『当事者主権』(中西正司と共著)岩波書店。『おひとりさまの老後』『男おひとりさま道』法研。『世代間連帯』(辻元清美との共著)岩波書店。など

「2010年 『「生きづらさ」の時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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