ムスコ物語

  • 幻冬舎 (2021年8月4日発売)
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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784344038196

作品紹介・あらすじ

国籍?いじめ?血の繋がり?受験?将来?は?なんだそりゃ。

「生きる自由を謳歌せよ!」


『ヴィオラ母さん』で規格外の母親の一代記を書いた著者が、母になり、海外を渡り歩きながら息子と暮らした日々を描くヤマザキマリ流子育て放浪記。

●いじめっ子のところに押し掛ける●エリート学校こっちからお断り●一緒に遊ぶ。むしろ自分の方が遊ぶ●宿題で寝られないような学校はやめちまえ!……

『ヴィオラ母さん』で規格外の母親の一代記を書いた著者が、母になり、海外を渡り歩きながら息子と暮らした日々を描くヤマザキマリ流子育て放浪記。
ムスコによる「ハハ物語」も収録


「息子にとってこの世で誰よりも理不尽でありながらも、お人好しなほど優しい人間である母ヤマザキマリ。そんな母のおかげで国境のない生き方を身につけられた私は、おかげさまでこれから先も、たったひとりきりになったとしても、世界の何処であろうと生きていけるだろう。」――山崎デルス(ムスコ)

感想・レビュー・書評

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  • ムスコ物語はよかった。そしてそれ以上にと言ったらヤマザキマリさんに失礼だろうか?あとがきの「ハハ物語」がよかった。
    デルスというムスコさんの名前は、東シベリアの大地で、家族を失ったあとも大自然に守られながら生きる狩人の名前からつけられた。地球という惑星の子どもとして生まれてきたことを感じて欲しかったから。デルスくんはその願い通り、成長を遂げている。大人よりも大人の対応を身につけて。
    デリスくんはシリアへの引っ越しが告げられた時、「頭の先から足の先まで有無を言わせない威圧的な立ち姿を前に、萎縮し、肯定するしかなかった」という。大人の側からの素直のもう一つの側面である。
    息子にとって理不尽でありながらも、お人好しなほど優しい人間と母への感謝を述べている。
    国境のない生き方を身につけられたことにも、敬意をもって感謝している。
    ムスコを大人扱いしながらも、ムスコが辛いいじめにあった時は「殴り込んでやる」と烈火の如く怒るマリさんもすてきだ。
    もちろんムスコは母を止めたけど。
    ハハとムスコはいい距離感をもちながら互いに認め、愛でつながっている。

  • NHKの『100分de名著』で『砂の女』の解説をしているヤマザキマリさんの姿を見て、この人はどんな子育てをしたのだろう?と思い手に取りました。

    イタリア人との間に産まれた息子を一人で育て、その後、息子と14歳違いのイタリア人と再婚。世界中を飛び回りながら(旅ではなく引っ越し)の育児。
    言葉も文化も違う国に引っ越す度に、息子のデルスは対応力を身につけていった‥‥と。しかし、これは親がそう思いたいだけで、息子の気持ちは違っていたのかもしれない‥‥と。

    あとがきに『ハハ物語』として、大人になった息子のデルス君のエッセイが載っているのですが、お母さん、その通りだったようですよ。息子が母の行動にどんなに困っていたか、引っ越しをする度にどんなに悲しかったかが綴られています。でも、あの経験が今とても役に立っていると。
    このあとがきがなかったら、だいぶ違った印象で読み終わってしまうところでした。
    『ハハ物語』あってこその『ムスコ物語』。
    家族を大切にしつつも、お互い一人の人間として尊重し合い自由に生きる。
    ステキな親子の物語です。

    • こっとんさん
      アールグレイさん、こんにちは♪

      あれれ?
      『夜明けのすべて』のレビューにコメントをいただいた時に、私たち、同じ年代なんだな、と思ったのです...
      アールグレイさん、こんにちは♪

      あれれ?
      『夜明けのすべて』のレビューにコメントをいただいた時に、私たち、同じ年代なんだな、と思ったのですが‥‥おそらく同じくらいなのだと私は想像しています。
      だけど私は遅くに出産してるので、子どもはまだ成人していないのです。
      この本の中でヤマザキマリさんは、「今思うと、息子がこう思っているに違いないと感じたのは自分に都合の良い思い込みだったのかもしれない」と書いています。
      今、まさしく私は子どもに対して都合の良いように思い込んでいるのかもしれないなぁ、と反省しつつ読みました。

      2022/08/16
    • アールグレイさん
      こんばんは★

      夜明けのすべてのコメント、読み返しました。そうでした!!
      なんだか皆さんが私よりお若い方に思えてしまうのです。私も出産はもう...
      こんばんは★

      夜明けのすべてのコメント、読み返しました。そうでした!!
      なんだか皆さんが私よりお若い方に思えてしまうのです。私も出産はもう少しで高齢になってしまうところでした。う~ん、どうすればうまく手抜きができるか、なんて思っています。
      (・u・)>
      2022/08/16
    • こっとんさん
      アールグレイさん♪

      分かります!
      皆さんが自分よりも若く思えてしまいますよね!
      私なんか特に、ママ友がみーんな若いので、自分が一番年上‥‥...
      アールグレイさん♪

      分かります!
      皆さんが自分よりも若く思えてしまいますよね!
      私なんか特に、ママ友がみーんな若いので、自分が一番年上‥‥と常に思ってしまいます笑

      うまく手抜き‥‥私はいつも手抜きです、ハハハ。
      2022/08/16
  • 今まで読んできた『ヴィオラ母さん』『イタリア家族』その後の家族との日々を息子を中心に綴る。親と子は別物、家族の在り方はそれぞれというのが一貫してて清々しい。「あとがきにかえて」デルス君の文章どんでん返し感ににんまり。

  • 息子デルス君の話でありながら、母ヤマザキマリさんの歩んできた半生の記録であり、家族のカタチや世界との関わりについて考えさせられる内容。ヤマザキマリさんの堂々とした行動や発言が潔くてカッコいい!「これはこうあるべき」に縛られない生き方…これはなかなか凡人には難しい。

  • 大変よい本でした。
    基本的にマンガを読まないし、映画にも疎い私は著者のお名前を見ても全くピンと来なかったのですが「テルマエロマエ」の漫画家さんなんですね。

    イタリアで、詩人の彼との間に授かった子をシングルマザーとして産み育てたヤマザキさん(途中から新たなパートナーを得て3人家族となります)。そんな彼女が息子のデルスさんに係るあれこれを綴ったエッセイです。

    何だかもうスケールが違いすぎて面食らいます。国をまたいだ転校が多すぎるし、物理的にも気持ち的にも身軽すぎだし、決断が早すぎるし。
    海外引っ越しは経験があるけれど、ここ10年以内のことでもかなり大変でしたよ。子連れなら尚更なはずなのにタフすぎやしませんか。

    けれどそれらはマリさんが1人の人間として自分自身を満たすために必要なことだったのでしょう。というのは本作の中に以下のように書かれていたからです。
    「少なくとも私はデルスを産んだ時点から、この子の存在は私の生きる理由ではないと自覚し続けてきた。」
    「子育てに欠かしてならないのは、たとえ子供に対してどんな理想が芽生えようとも、あらゆることが未来で起こりうるという覚悟を備え持つこと。母親という立場からいったん離れて、自分の力で自分を満たす術を持たねばならないこと。」
    子育てを生きがいにはしてはいませんが、子どもの機嫌や成長、出来不出来で感情が動かされまくりの日が少なくない私には響きました。

    もちろん、ヤマザキさんの生き方や子育ての全てに賛同できるわけではないけれど、ご本人がご自分を客観視して淡々と書いておられるので、尊敬も疑問も発見も素直に受け入れることができました。

    母息子という関係だけでなくご自分のお母様との関係についても時折触れているので、性別を問わず親子関係、親子の距離感とそこから派生する自立について考えさせてくれる一冊だと思います。

    他に印象に残ったのは「世界というものが、見えている範囲だけだと思っていると、いずれたくさん窮屈な思いをすることになる」。
    本当にその通り。

    最後に息子のデルスさんが母親のマリさんについて書いた「ハハ物語」が添えられていたのが良かったですね。
    ヤマザキさん視点だと、なんだかとても聞き分けが良い子どもに見えてしまったけれど、やはり本人なりに葛藤や苦悩があったよう。デルスさんには悪いけど安心しました。

    まとまりのないレビューになりましたが、子育てしてるかどうかは関係なく、おすすめです。

  • 私が読むヤマザキマリさん作品の3冊目にして、本書が一番良かった。

    できれば章を、デルス君の年齢順に配置して欲しかった。

    あとがきという形でデルス君本人の弁を知れたことが良かった。

    キューバの章が特に印象に残った。
    キューバ人のクリスティーナの考え方、キューバのホームステイ先の家族からのプレゼント、そしてそれを託されて届けてくれた(イタリア人なのかどうかはわからないが)見知らぬフィレンツェの紳士の件。

    旅先で見知らぬ誰かから荷物を託されないように(知らぬ間に密輸に加担させられる)という注意喚起があるのが現実なので、実際には関わるべきではない。
    でもこの話を読んで、私は『五色の虹』(三浦英之 著)のレビューに書いたことを思い出していた。
    あれとこれの件では、託された側の人が届ける行為が尊いなと思った。

  • 読みながら何度も目頭が熱くなりました。
    中でも第4話は嘘みたいな感動的なラストで、特に好きなエピソードです。

    ヤマザキマリさんは作品とともに、ご自身の破天荒とも言えるワールドワイドな暮らし方も有名な方ですが、そんな破天荒なヤマザキさんが息子のデルス君をどのような決意で生み、どんな風に育てて来たのかを綴ったエッセイです。

    イタリア、北海道、シリア、ポルトガル、シカゴなど、世界中を転々と引越しながら、その都度言葉を覚え、知らない文化と人々の中に混じって成長してきたヤマザキさん親子。
    母、マリさんの行動はパワフルで潔くて、子どもにとってはきっと本当に理不尽。でもその愛情も不安も心配も、普通のお母さんと何ら変わらないのだなぁということが、読んでいるとよく分かります。

    そして親子であっても互いの心のうちまでは理解し得ないのだなということが、デルス君のあとがきからしっかりとわかるのです。

    それにしても息子が「私は、これから先も、たったひとりきりになったとしても、世界の何処であろうと生きていけるだろう」と言えるだけの人間になったらもう、親としては本当に言うことないな。


  • かねがね素敵だな、と思っていたヤマザキマリさんの子育て記。
    もう、びっくりすることばかり。
    ご本人は「規格外」と書いておられますが、これは宇宙人レベル。
    ここまでぶっ飛んでいると、清々しい!

    妊娠が分かった頃、マリさんは食べ物にも事欠くほど貧乏だったとか。
    結婚する気はなく、パートナーとは別れる決意もしていたとのこと。
    出産を迷う彼女に、キューバ人の友人が かけた言葉が素敵です。
    「そんなあなたを母にしようと決めた赤ちゃんなんだから。
    あなたの価値観で子供の幸せを決めちゃだめよ」

    赤ちゃんが親を選んで生まれてくるという話、聞いたことがあります。
    本当だとしたら、「選んでくれてありがとう」と言わなくては。

    マリさんの息子の名前はデルス。
    森林で一人でも毅然と暮らしていける伝説の狩人が由来なのだとか。

    最後の章は、デルス君から見た「ハハ物語」。
    高校の時、寝る時間もないほどの課題をこなすのに必死だったデルス君。
    徹夜が続いて体調を崩した時に、母親のマリさんが言ったこと。
    「そんな学校はさっさと辞めちまえ」
    そして、学校を休ませ 課題もほったらかしにさせたとのこと。
    アメリカの実力至上主義に囚われていたデルス君は
    それが唯一の価値観ではないことを、その時に教えられたと記しています。

    マリさんは世界の様々な場所で暮らしてきました。
    17歳でイタリアに渡り、出産後は日本に戻り
    その後、子連れの結婚をしてシリア、ポルトガル、シカゴ…。
    引っ越しや旅が繰り返され
    遺跡を前にすると、興奮して子どもを忘れて姿が見えなくなる母親。
    そんな生活の中で培った逞しさと自由な発想を持ち
    国境を持たない地球人のデルス君。
    これからどんな人生を送っていくのでしょう。

    奇想天外なヤマザキマリさんの子育て。
    色んな人がいるからこの世界は楽しいんだなぁ、と
    私の小さな世界が少しだけ広がったような感じがしました。

  • 環境や国が変わる度、その都度軌道修正しながらよくぞ曲がらずに育った!デルスくん。受け入れるって一番難しいこと。大人でも難しいことを子供の頃からずっと繰り返してきた彼には辛いことがたくさんあっただろうに。でも、いろんな国を横断する子供時代を送れたことは、大変だけど本当に貴重な経験だったと思う。母のおかげで、たった一人きりでも、世界の何処でも生きていけると言ってのけるデルスくん。自立すること、自分で選択して責任を持って歩いていくことの重要さを教えてもらった。

  • 育てたように子は育つ。そんな言葉がしっくりいきます。
    子育て期間中に読みたかった!
    とは言え山崎さんは同年代(笑)
     子育てに欠かせないことの一つに自分の力で自らを満たす術を持たねばならない…
    30年前の自分に横っ面を引っ叩いて言いたい
     次はさかなクンの本を読んでみようと思う

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著者プロフィール

訳:ヤマザキマリ
1967年東京生まれ。北海道育ち。漫画家・文筆家・画家。17歳でイタリアに渡り、フィレンツェ国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を学ぶ。1997年、漫画家としてデビュー。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機に、シリア、ポルトガル、アメリカなどで暮らし、現在はイタリアと日本を往復する。2010年、古代ローマを舞台にした漫画「テルマエ・ロマエ」で手塚治虫文化賞短編賞、マンガ大賞受賞。2017年、イタリア共和国星勲章コメンダトーレ章綬章。著書に「ステーブ・ジョブズ」「プリニウス」「オリンピア・キュクロス」、「望遠ニッポン見聞録」「国境のない生き方」「ヴィオラ母さん」「ムスコ物語」「歩きながら考える」など多数。

「2023年 『だれのせい?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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