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本 ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784344038349
作品紹介・あらすじ
はるな檸檬氏、感涙!最初の自殺未遂から30年。誰よりも人付き合いが苦手だったあの頃。
「大丈夫?」「大丈夫だよ」 湿った暖かい手を握り、私たちはそっと歩き出す。
「孤独だったんですね」
その言葉を耳にして、私は喉の奥に何かが詰まり、次の言葉をつなげなくなった。自分が孤独だということは薄々感じていたけれど、それを認めたくなかったのだ――
いじめに遭っていた子供の頃、ペットのインコが友達だった。初めてできた恋人には、酷い扱いを受けた。たくさんの傷を負い、何度も死のうとしたけれど、死ねなかった。そんな私をここまで生かし続けたものは何だったのか。この世界には、まだ光り輝く何かが眠っているのかもしれない。そう思えた時、一歩ずつ歩き出すことができたのだ。
どん底を味わった著者が、人生で出会った人たちとの交流を見つめなおし、再生していく過程を描いた渾身のエッセイ。
「人生はクソだ。それでも生きてさえいれば、いつか必ず美しいものに巡り合う。そういうふうに、できている」――はるな檸檬氏
感想・レビュー・書評
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小林さんが自分の半生を振り返った自叙伝。暴力を振るう父にそれを耐える母。そして性暴力をしてくる兄。破綻した家族のもとで居場所を必死に探していた。家族の関係が上手くいっていない上に、学校にも馴染めない生活。自分の居場所なんてどこにもなかった。小林さんは構ってほしさから自殺を試みたのではなく、孤独でこの世界では生きられないから、違う世界で生きるために自殺を試みていたのかなと思ったら。凛子ちゃんとのお話、痛いほどよくわかる。自分と相手の気持ちが必ず同じとは限らず、近づきすぎると離れていってしまうのが友達。ずっと味方でいてくれるのは家族だななんて思うのだが、小林さんの場合、家族は自分を苦しめる存在だった。友達に居場所をつくってもらったつもりが、逆に距離感で苦しくなってくる。女子の世界ではあるあるなのではないか。離れていってしまう人もいる中、興味を持って話しかけてくれた祥子ちゃん、百合子ちゃんもいる。こんな自分と向き合ってくれるなんてと小林さんは、自分と向き合い、肯定してくれる存在をこれ以上ないくらい大切にしていた。ピーコのことも、家族からしてみれば小さい命だが、小林さんにとっては自分の命くらい大切な存在で、死んでしまった時、自分を痛いくらいに責めていたところに、繊細でとてもとても優しい方なのかなと思った。恋と男性から愛されることも知ったが、それでも孤独は埋まらず何回も自殺を試みる。毎回、助かった後には、小林さんに影響を与える素敵な人と出逢えているので、何かしらの運命がそうしているのかもしれない。人と人との出逢いは偶然でもありながら、その時の自分の様子や心の持ちようで、出逢える人って本当に変わってくると思う。生きていて良いのか、苦しみながら迷いながら、彼女が最後に見つけた、「みんな怖い」ということ。怖いながらもみんな生きているんだよね。と少しこの世界に優しくなれている彼女がいた。苦しみや死にたいという気持ちを一度でも抱えたら読んでみてほしい。痛いほど共感でき、痛いほど幸せになれる。
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読後に街行く人たちの顔を眺めた。表面からは見えないけれど、みんな孤独や不安を抱えている。無力な私たちはお互いの手を取り合いながら、時には自分のパンを分け与えながら人生を歩いていく。怖がらなくていいんだ。みんな怖いのだから
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なんだかんだで豊かな人間関係を築いている作者に羨望を感じる。
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向田邦子のエッセイに「ごはん」というのがあるけれど、その作品で印象的だったのが、美味しく楽しく幸せだった食事より、心に引っかき傷が残った場面での食事のほうが記憶に焼き付いて、描かれる光景も美しいということ。
きっとこれは食事に限らないのだろう。
とても孤独な幼年期から青年期を過ごしたこの著者の、訥々と、あまりに赤裸々に表した第一部のエネルギー。
似たような孤独をわずかでも感じたことのある人ならひりつかずにはいられない。
人一人の幸福を論じるなら本来歓迎すべき第二部は、前半のダイナミズムの前に霞んでしまった。 -
小林エリコのエッセイ集を読むのは、本書で6冊目である。
一般にエッセイというと、日常のよしなしごとを書くものというイメージがあるだろう。だが、著者のエッセイは過去のヘビーな思い出が中心である。エッセイ的な軽みよりも、私小説に近い重みがあるのだ。本書もしかり。
本書も含めた6冊のエッセイ集は、どれも著者の半生が素材になっている。ゆえに、時にはエピソードの重複もあるし、マンネリに陥るリスクもある。
本書でいうと、最初に働いたエロ漫画誌編集部の先輩との短い恋愛(とも呼びにくい)関係は、「またこの話かよ」と思ってしまった。
それでも、本ごとに角度とテーマを変え、初登場エピソードを投入するなど、読者を飽きさせない工夫がなされている。だからこそ、私も毎回著者の新刊に手を伸ばしているのだ。
本書の場合、タイトルからは内容が連想しにくいが、著者が経験してきた友情(と恋愛)のエピソードが中心となっている。
孤独な幼少期を経て、ようやく居場所を見つけ、かけがえない友情にも出合ってきた著者の来し方が綴られているのだ。
前半で描かれる少女時代は、この世に一人も仲間がいないかのような激しい孤独感に満ちている。
たとえば、高校時代に友人に裏切られた(客観的には裏切りというほどではないが、著者はそう感じてしまう)日について綴った部分には、次のような一節がある。
《私は、ノートにずっと日記を書いていた。その日あったことや、悩んでいることを書き記していたのだが、その日のノートにはこう書いていた。
「ずっと一人で生きていく。誰のことも信じちゃいけない」》59~60ページ
年齢に関わらず、いま孤独感にさいなまれてる人が本書を読めば、深い共鳴を覚えるだろう。
だからこそ、終盤に著者が自分の居場所を見つけ、仲間にも恵まれていく様子に、我がことのようにホッとする。
孤独と貧困、将来への絶望から自殺未遂も重ねた著者が蘇生するまでの軌跡を綴った、味わい深いエッセイ集だ。 -
小林エリコさんの本はいままでほとんど読んでいるし、『精神病新聞』も読んでいたんだけど、この本にたどりつけてよかった!
私はこの本の祥子さんのような立ち位置の人間なのですが、エリコさんのように悩んでいたはずの親友のことを気がつけなったことは、ずっと後悔している。でも、それに気がつけないのが私であり、だから仲良くいられたのかもしれないなとか、エリコさんの本を読むといろいろ考える。彼女と一緒に『車掌』も読んでいたので、なおさら。 -
これまで出版されている小林エリコさんの本を全部読んでいる人間には目新しい情報はなかったように思う。
辛い事を克服した本が多い中、小林エリコさんはまだ苦しみの最中にいるので、本が出る度に少しずつ前向きになれていっている様子に感動を覚えます。 -
著者の人生の中で、負の部分を中心に綴った自伝集。
学校でいじめにあい、家庭では暴力、兄からは性虐待、成人してからは痴漢にうつ病、自殺未遂。
辛い経験を経て、再び社会復帰した彼女の言葉は、鼓動を伴って胸に響いていく。
精神科のデイケア、特に運動会の描写は明るく楽しそうで、暗い精神科のイメージを変えてくれた。
人付き合いって面倒だな、そう思っている自分でも、そんなに体に力を入れずに、まぁ深く考えずにフラフラと生きてみてもいちのではないか?と思える処方箋のような本だった。
この人の大人になってからの行動力、そして魅力的な人を引き寄せる人柄。
それらは天性のセンスだと思う。
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図書館で借りた!
過去が壮絶すぎてちょっとしんどい。
次から次に人が出てくる。
外の世界には自分とは違う価値観のひとがいてそこから受ける刺激や繋がりが自分を孤独から救い生きさせてくれる。
色んな人と出会って色んな経験をして、だいすきな友だちと一緒にすごす毎日を大切にしたい。
著者プロフィール
小林エリコの作品





