無明 警視庁強行犯係・樋口顕

  • 幻冬舎 (2022年3月16日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784344039315

作品紹介・あらすじ

君はもう懲戒免職だ――。突き付けられた最後通牒。それでも信念を貫けるか? 本部と所轄の狭間でもがく刑事を描く警察ミステリー
内藤剛志、絶賛!「“今”の社会を色濃く反映させながら、地道に歩む人間を鮮やかに描いている」

東京の荒川の河川敷で高校生の水死体が見つかった。所轄の警視庁千住署が自殺と断定したが、遺族は納得していない。高校生は生前旅行を計画しており、遺体の首筋には引っかき傷があったという。両親が司法解剖を求めたものの千住署の刑事に断られ、恫喝までされていた。本部捜査一課の樋口は別働で調べ始める。しかし、我々の捜査にケチをつけるのかと千住署からは猛反発を受け、本部の理事官には「手を引け」と激しく叱責されてしまう。特別な才能はなく、プライドもないが、上司や部下、そして家族を尊重する――。等身大の男が主人公の人気シリーズ最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 〈警視庁強行犯係・樋口顕〉シリーズ最新作。前作がイマイチだったような記憶だが、今回は楽しめた。

    波風立たせることや人と争うことが苦手で堅実を絵に描いたような樋口が、所轄が自殺と片付けた事件を調べ直すことに。
    当然所轄からは反発があるし、上司の理事官からも激しく叱責されクビだ!とまで(実際には理事官一人の権限でクビには出来ないだろう)。
    だが今回の樋口は決して引かない。

    『警察組織の秩序は大切ですが、それと同じくらいに大切なものがあると信じております』
    『真実を明らかにすることです』
    『組織が正しく運用されるための規則であり秩序でしょう。秩序のために警察組織があるわけではありません』

    こんなに毅然とした樋口はなかなか珍しいのではないか。新鮮な気がする。

    だけど天童管理官、樋口が板挟みになる前に助けて欲しかった。まあおかげで熱い樋口が見られたけど。
    今回も氏家が助っ人で参戦。コンビを組む藤本だけでは出来ない部分を助けてくれた。近く少年事件課に戻るらしい。やはり氏家は少年事件が合っている。

    樋口シリーズも以前は男臭い雰囲気だったのが、藤本という女性部下が出来たり、警視庁担当の記者に若い女性がいたり、ドラマ版に影響されたのか華やかになった。まあ時代が変わってどんな世界でも男女関係なく活躍出来るのは良いことだが。
    一方でパワハラだの無言の圧だの変わらない部分もある。
    今野作品なので最終的には上手く収まるだろうとは思っていたが、現実は本当にクビになるのかも。

    楽しく読めたが、一点、何故所轄のこの人物が自殺断定に固執したのか、そこがきちんと描かれているともっと良かった。管理官まで担ぎ出したのだから何かあるのかと思っていた。
    警視庁なので田端課長がラスボスで登場。やはり頼れるしフットワークが良いのが気持ち良い。

    樋口の娘・照美の就職問題など家族の話もあったがこちらも上手くまとまった。

    ※シリーズ作品一覧
    ★はレビュー投稿あり
    ①「リオ」
    ②「朱夏」
    ③「ビート」
    ④「廉恥」
    ⑤「回帰」
    ⑥「焦眉」★
    ⑦「無明」本作★

  • お久しぶりのヒグっちゃん

    やっぱり好き
    ヒグっちゃんの特性は恐ろしいほどの自己評価の低さだ
    自分はことなかれ主義で周囲との軋轢をなるべく生まないよう周囲に気を使っている気の弱い人間だと思っている
    周りが何故か誤解して自分のことを評価している…

    そんなわけあるかぁ!
    それでこんなことなるかぁ!!
    というのがこのシリーズ最大の面白味だ

    今回も思ってることとやってることは正反対
    上司の参事官に向かって正しいことができないのならクビでもかまわないと啖呵を切る
    それでこそヒグっちゃんだ!
    だから味方がいるのだ!

    ヒグっちゃんは僕らのヒーローだ
    藤本もそう言ってるからそうなのだ

    そしてヒグっちゃんのシリーズはなんといっても奥さんの恵子さんの存在だ

    毎回いいなぁ〜ヒグっちゃんと思ってしまう

    いやいやいやうちのもなかなかあれですよ
    うんあれ(すっごい濁す)

  • 警察組織の闇を根気よく静かなエネルギーで攻めていきます。
    無明 ― 警視庁強行犯係・樋口顕シリーズの7作目
    2022.03発行。字の大きさは…小。2022.05.08読了。★★★★☆
    警視庁捜査一課殺人犯捜査第三係、通称「樋口班」係長・樋口顕の活躍の物語です。

    樋口係長は、東洋新聞社会部記者の遠藤貴子から東京の荒川にかかる西新井橋の下で発見された公立高校生・井口友彦17才が自殺で処理された事について、井口の親族が不満に思っていると聞く。樋口係長は、所轄が自殺と決定したことを部下の藤本由美巡査部長と二人で調べ始めます。
    樋口係長は、所轄の千住署に気を使いながらも、所轄の刑事組対課強行犯係長・桐原雄一たち刑事に対して、根気よく、下手に出て、あきらめずに、本庁の係長の階級を嵩にきず、あからさまな攻撃をするわけでもなく、静かなエネルギーでプレッシャーをかけ続けます。
    そして高校生の井口が自殺でなく、殺された事を突き止めますが。千住署の主である新庄巡査部長に邪魔されて。新庄と同期の警視庁捜査一課石田理事官に千住署が自殺と決定したことを覆すのは、警察の信用を失うことになるので止めるように命じられますが。樋口係長としては珍しく上司である石田理事官の命令を無視して、田端守雄捜査一課長の前で石田理事官と対決して殺人事件として捜査する許しを得ます。
    千住署に殺人事件の捜査本部を設置して捜査を始めます。

    【読後】
    警察組織は、階級より年齢が重要視され。千住署では、年齢が高く、独自のネットワークを持っている新庄が、千住署を牛耳っていました。今までの物語は、階級が上の者のいう事を聞く、縦社会と思っていましたのでビックリしました。
    今野敏さんの「隠蔽捜査」の神奈川県警刑事部長・竜崎伸也と、この樋口係長の物語は、対照的な主人公で読んでいてとても面白いです。

    【記録】
    警視庁強行犯係・樋口顕シリーズで読んだものは、単行本で
    廉恥2014.04発行。回帰2017.02発行。焦眉2020.04発行。無明2022.03発行です。
    以下の本は、字が小さくて読めませんでした。
    《単行本》
    リオ1996.07発行。朱夏1998.04発行。ビート2000.10発行。
    《文庫本》
    リオ2007.07発行。朱夏2007.10発行。ビート2008.05発行。廉恥2016.08発行。

  • 樋口シリーズ。
    もう何作目なのかは忘れてしまった。
    安積班シリーズの安積と同じ係長でも、樋口は捜査一課の係長で、今作は長編なのでそれなりに読みごたえがあった。
    大きなヤマを終えた樋口は、帰り際に新聞記者から千住署管内で起きた高校生の自殺の事件の真相を調べて欲しいと頼まれる。
    所轄が「自殺」で片づけた一件を、掘り起こすように再捜査することに躊躇する樋口だったが、上司の管理官の一言で部下の女性刑事と二人だけで特別に捜査することに。
    本部、所轄、メディア、そして遺族の間で苦悩する樋口の様子が丁寧に描かれる。
    事件そのものは所轄の手抜き捜査の一言に尽きる。
    事件以外の中間管理職の苦悩を楽しむシリーズだと思っているから、そこは敢えてスルーするとして、千住署の主任とやたら樋口を敵対視する石田理事官は、他の方のレビューにもあったが、本当にむかつく。
    事件が突発的に解決するのも、最近どのシリーズでも同じ展開でちょっと飽きて来たかも。

    • hs19501112さん
      「塗仏の…」へのコメントありがとうございました。今「残り数mm」の地点です。本当に長い(苦笑)

      ここまで終盤にさしかかっての黒幕の登場...
      「塗仏の…」へのコメントありがとうございました。今「残り数mm」の地点です。本当に長い(苦笑)

      ここまで終盤にさしかかっての黒幕の登場に気圧されてますが、なんとか今夜くらいには読了できそうです。


      樋口さんのシリーズは、数年前に初期三部作を読んでめっちゃ面白かった記憶が。

      続編も文庫化を待って読む予定です。
      2022/05/12
  • 小説幻冬vol.52〜63連載のものに加筆修正して2022年3月幻冬舎刊。シリーズ7作目。樋口さんの警察官として正しいことをするという話は、別シリーズ隠蔽捜査の竜崎に通じるところがある。とは言え、ためらいは、樋口さんの方に多くあり、その中での事態の好転には無類の爽快さを感じます。今回も、スッキリとしたラストでした。

  • 実は樋口さんシリーズは初でしたが、読み始めてすぐに彼自身の魅力に取り憑かれました。職業は異なりますが、組織のあり方や管理職の振る舞い方など参考にすべき点が多々あり、一気に読み終わりました。

  • <品>
    この本は一体どのシリーズの最新刊なのだろう。良く分から無いながらも特に不安はなく安心して読み進める。今敏作品なのだから面白くない訳はないのだから。


    で,どうやらどのシリーズにも属さない新しいストリーで有ることが分かったので俄然読む意欲も湧いてくる。どれかまだ僕が手を付けていないシリーズの最新作の場合はちょっと「あっ,しまった」感がどうしても有る。


    で,この作品の面白さは主人公樋口係長のものの考え方が”隠蔽捜査”の竜崎に似ている事でも,またその妻の性格がこれまたなんとなく似ている事でもない。ズバリ,樋口がコンビを組んだ相手 藤本が若くて美人の女性刑事だという事だ。その事がこの物語を実に面白く又ちょっぴりスリリングなものにしている。いやはや やはり今敏作品は毎回凄いのであった。

    今回はGoogleで『無明』意味を調べたのを写しておく。
    ・む‐みょう ‥ミャウ【無明】
    存在の根底にある根本的な無知をいう。 真理にくらい無知のことで、最も根本的な煩悩。 生老病死などの一切の苦をもたらす根源として、十二因縁では第一に数える。 ② (形動) まったく知らないこと。

  • 今野さんの作品では隠蔽捜査シリーズと警視庁強行犯係・樋口顕は欠かさず発売すぐに買っています。
    樋口は隠蔽捜査の竜崎とはちがい、人と足並みを揃えて、出来るだけ波風立てずに過ごしたいと思っているにも関わらず、その安定した人格と鋭い洞察と慎重さで、順調に出世を果たしていて、その成果に自分自身が一番驚いている。という人物です。
    そんな樋口が、自らを省みない熱さで正義を貫き通そうとする話で、非常に非常に熱かったし、読後の満足感が素晴らしかったです。孤立無援と思ってしまいがちな時に、実際には味方がいる事を忘れている。そんな教訓も与えてくれる本でした。

  • 調べ出したらあっさりと…

  • 柔らかいソファに包まれたような読み心地。言葉の使い方がそうさせてくれたのかな。
    本作は「樋口頑張れ!」と応援したくなる内容で味方のありがたみを感じさせてくれた。
    全体的には満足なんだけど新庄がなぜ自殺説にそこまでこだわったのかについての記述が薄いように感じた。
    なんのために秩序があるのかを組織の上層部が正しく理解していないとブラック企業になっていくのだなと教えられた。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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