夜の大人、朝の子ども

  • 幻冬舎 (2022年4月27日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784344039506

作品紹介・あらすじ

大人でいることにひと息つきたくなったら読んでほしい。
愛しい思い出がくれたのは、未来の希望でした。

朝の純真さを忘れ、切ない夜に自分を
閉じ込めていた女性の成長を描く感動作。

今日マチ子さんの漫画「夜の大人、朝の子ども」の1ページ目は、
土曜日の家族連れは大きな花束みたいだ から始まります。
離婚して、息子の親権を夫に渡し、ひとり暮らしをするゆいにとって、休日に見かける家族の姿はとてもまぶしく見えるからです。うっすらとした不安や焦りを抱える彼女にとって、「無邪気でいられた子どもに戻りたい」という願いは浮かんでは消えますが、夜見る夢の中で叶います。
引っ越してから音信不通だった親友、寂しいときに大切な1冊を教えてくれた図書館司書の先生、意地悪をされてもどこか嫌いになれなかったクラスメイト……。あたたかい子ども時代に、大人になって感じた傷を癒されて過ごしていくうちに、また夢の中で願うのです。「はやく大人になりたい」と。子どもの頃の思い出が、大人のわたしに勇気と自由をくれる全12話の漫画です。

感想・レビュー・書評

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  • 「大人でいることにひと息つきたくなったら読んでほしい。」と紹介にひかれて読みました。
    今日マチ子さんのあとがきを読んで、「夜の日記、朝の返事」を書くのもいいなあと思った。ノートのページを上下分割、上半分に夜に日記、朝読み返して下半分に返事。
    夜の大人の愚痴めいた言葉に、朝の少しだけ元気になった自分が返事をする。
    書くのがしんどい人はスマフォに自分あてに音声入力してもいいのかな。と思った。

    今日マチ子さん、本文を読んで心が少し軽くなりました。ありがとうございます。
    本文より いいなと思った言葉
    「後悔もわからないことも がんばったことも 消すことはできないよ 全部 ゆいちゃんが歩いてきた道だもん」
    「手に入れてしまうと 失うのがこわくなる そして あのときみたいに 必死にしがみつきそうで こわい」
    「ちょっと前まで 他の家族を うらやましいと思ってた 大きな花束みたいだって 自分は枯れてしまった 一輪の花だった
    見えないように ゴミ箱に捨てた 家族に見放された わたしは みっともない 消えてしまったほうがいい 一人…ずっと暗闇の中にいた
    わたしは 花束の中にいる たぶん みんな少しずつ 不安で みんな一人 一人はみんなに支えられている 一人は最高にぜいたくだ まだ見ぬ誰かを思い 待つ時間なのだから」

    ******************************
    ちょっと脱線しますが、吉田拓郎さんのインタビュー記事をタイミングよく読んで共鳴した。
    孤独への向き合い方の持論(ネットに紹介されてました)
    「結局1人なんだっていうのは寂しいことでも何でもなくて。とっても素敵なことで、ひとりぼっちってこんな素晴らしいことはないんで。せっかくひとりぼっちで生まれてきてんのに、この大事なひとりぼっちを大事にしないで、みんなとワイワイやることばっかりに時間を費やして、そっちを気分としてメインに重きを置いちゃうとつまらない人生にならないかなってのは、僕の言い分ですね」と

  • 子どもの頃は早く大人になりたかったのに、大人になった今は、子どもの頃に戻りたいと思う。

    あの頃、夢見た大人の自分はいつも笑顔だった。きらきらと輝く幸せの笑顔。
    でも、現実は…
    こんなはずじゃなかった、と、どこで間違えたのか、と、もう一度子どもの頃からやり直したい、と、そんなことばかり考えてしまう大人の自分。
    後悔と自己嫌悪。周りはみんな幸せそうなのに、と自分と比べてまた落ち込んだり。
    でもね、過去の私も、今の私も、未来の私も、みんな同じ道の上を歩いているんだから。
    子どもの私が思い出をたどって一人ぼっちの私を見つけてくれる。
    一人で泣いてる子どもの私を大人の私が抱きしめる。ほら、私は一人じゃないんだよ、と抱きしめる。
    出来なかったらやり直せばいい。失敗したなら別の道を探せばいい。間違えたのなら戻ればいい。いらないなら捨てればいい。やりたくなかったらやめればいい。
    そうやって毎日を繰り返しながら生きていくのだから。

    時々自分を甘やかして生きていく。素敵じゃないか。明日の笑顔を待ちながら、今日マチ子の優しさに救われた。

  • すごかった。

    ・子どもに戻りたい

    ・早く大人になりたいなあ

    と繰り返されていたけれど、ページをめくるとその言葉たちは消えてゆき、

    ・わたしにも誇れるものがあるんだな

    ・今ならこわくないかも
    あの頃のこと
    きちんと向き合える気がする

    ・あの頃のこと全部忘れられたらいいのに
    ーそんなのムリに決まってるよ!
     後悔もわからないことも がんばったことも
     消すことはできないよ
     全部 ゆいちゃんが歩いてきた道だもん

    ・完璧にわかるのってむりなんだよね
    その人と同じように感じなきゃと焦るより
    こんなふうに一緒にいてくれるとか
    ただ話を聞いてくれるだけでいいんだと思う

    ・いつだってもう一度走り出せる

    ・わたしは花束の中にいる
    たぶん みんな少しずつ不安で みんな一人
    一人は みんなに支えられてる
    一人は 最高にぜいたくだ
    まだ見ぬ誰かを想い 待つ時間なのだから

    と、自分を許す?抱きしめる、そんな言葉たちに変わってゆく。
    そして最後の筆者からのあとがきのページを読んで、すべて納得した。

    私は今休職中で、定期的にカウンセリングを受けている。
    と言っても、自分をちゃんと認められるようになり始めていての、やっとこさの休職とカウンセリング。

    今の私にはカウンセリングが必要だし、考えの癖を可視化して整理している途中だ。
    でもいつか、いらなくなることもわかっている。
    旅立って軽やかに歩く未来も想像できるくらいには元気だ。

    そんな私だからか。
    読んでいてものすごく胸に響いたし、何度も涙が溢れた、胸がいっぱいになった。

    決して暗い作品ではない。
    やさしく温かく、寄り添ってくれる。
    全部否定していた過去とそれが作り出した今の自分だと思っていたのに、「私にも誇れる物があるんだな」とじわっと思いを馳せたりできる。
    頑張ってきた自分をもうこれ以上傷つけることなく、優しくなれる。

    今の私にとって、すごく良かった。
    大切な一冊です。

  • 以前読んだときよりも心に沁みたのは、この本を描いているときの著者の心境といま近い状態だからだと思う。あとがきも含めて好きな一冊。

  • 一人の女性の物語。今日マチ子さんが「世界から必要とされていないなんて、どうでもいい」と思えた時にできた作品のようです。

  • すごく良かったんだけどまだうまく言葉にできない。うまく言葉にできないけど、心が仕事で荒んでしまっている最近においてはかなりバンドエイド的な役割になってくれた感じがする。もう一回読んで感想書く。2022.07.30

  • 「私が世界を必要としているならそれでいいじゃないか」
    本当に世界を必要として生きている人が、しがみつける人がどれほどいるか?
    最近は一周回って軽やかでありたくなってきた

  • 子どものころに戻りたい、とは思わない。
    幸せなんだろうか。
    モヤモヤはいつもあるけれど。
    ある程度年齢を重ねたら、何かしらみんなある。
    それでも前へ一歩進む力はどこからくるのかな。
    1人で考えてばかりいるのはあまり良いことじゃなさそうだなとは思う。
    ゆいちゃんは前を向けて良かった。
    でも、自分はまだここでモヤモヤバタバタしてる。
    幸せなはずなのに。

  • 夫と別れ、息子の親権も失い、孤独と向き合う女性の過去と現在をつなぐストーリー。饒舌ではなく人や空間や時間の余白を味わうような感じである。細い線と水彩画のようなタッチに、キャラクターの柔らかな人柄のようなものを想起させる。イラスト作品とは違う何度も噛み締めたくなる作品。

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著者プロフィール

漫画家。東京都出身。東京藝術大学、セツ・モードセミナー卒。2005年に第1回「ほぼ日マンガ大賞」入選。2006年と2007年に『センネン画報』が文化庁メディア芸術祭「審査委員会推薦作品」に2年連続で選出。2010年に『cocoon』、2013年に『アノネ、』がそれぞれ、文化庁メディア芸術祭「審査委員会推薦作品」に選出。2014年に『みつあみの神様』で手塚治虫文化賞新生賞、2015年に『いちご戦争』で 日本漫画家協会賞大賞(カーツーン部門)を受賞。その他の作品に『みかこさん』『かことみらい』『U』『5つ数えれば君の夢』など多数。最新作は『かみまち』上下巻(集英社)、『すずめの学校』1巻(竹書房)。

「2024年 『きみのまち 歩く、旅する、書く、えがく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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