親父の納棺

  • 幻冬舎 (2022年8月2日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784344039919

作品紹介・あらすじ

東工大の教授(メディア論)である著者が、納棺師の女性の勧めで、突然、父親の「おくりびと」になったリアルな体験から、家族の死とどう向き合うのか? というプリミティブな感情を綴る。遺体の着替えをやるなどして考えた「死者へのケア、死者からのケア」についての論考と、「コロナ禍」で向き合う家族の死と「Zoom」の関係も。付章として、養老孟司さんと、「おくりびとアカデミー代表」木村光希さんへのインタビューも収録。■「さわる」だったその手に「ふれた」とき、親父が帰ってきた、と思った。 ■5日間、亡くなった家族と過ごした稀有な体験 ■コロナ禍だからこそ遺体が葬儀場に向かわずに家で。■父親の「おくりびと」になった貴重な時間の記録■納棺師の女性が教えてくれたか「エンゼルケア」もくじ[プロローグ]親父が死んだ。そして「納棺師(見習い)」になった。[1章]コロナで会えない--親父の病、ボケ、そして死。[2章]コロナがもたらした神「Zoom」。お通夜も、葬儀も、お見舞いも。[3章]私と弟、生まれて初めて親父に下着を履かせる。[4章]親父との握手。「さわる」から「ふれる」へ。そして世界が変わる。[5章]弔いである前に、死者のケア、生者のケア。[6章]『手の倫理』と、居間で戦うウルトラセブン。[付章1]「おくりびとアカデミー校長」木村光希さんに、聞いてみた。[付章2] 養老孟司さんに、聞いてみた。[エピローグ]1年後のストリートビュー。[解説的あとがき]ケア、ミーム、埋葬、バーチャル化、そして「からだ」

感想・レビュー・書評

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  • コロナ禍で父の入院から火葬までの出来事の中、納棺時のケアを通して、ケアとは、人の死とは何かを考えさせてくれる1冊。

    いくつかのお葬式を思い出して、触れてはいけないもの、と思っていた。この本を読んで、考え方が変わった。

  • 死者に正しくさよならを言える瞬間、二人称から三人称へ。

  • 「さわる」から「ふれる」へ。
    納棺は死者と生者へのケア。
    人称が変わる。抽象的な三人称、他人から「あなた」へ。

    『ケア学 越境するケアへ』 広井良典。

  • エンゼルケアはケアなんだ。やたらと細かいイラストがいい。

  • これは、たくさんの人に読んでほしいなと思った。
    結構ハードな話だろうか?と思って読み始めたがそんなことはまったくなく、一気に6章まで読んだ。
    2021年5月21日というたった1日の、たったの2時間足らずがこんなに濃密に書かれている本はないだろうな。
    リハーサルなしで「納棺師」の仕事を手伝うことになった著者兄弟の話と、お父さんが亡くなる前までの話。
    その後、付章1・2、エピローグ、あとがきと続くが、著者が納棺師の経験を通して感じたことを掘り下げている内容で、本の1/4ほどのボリューム。
    6章までと同じくらいの軽やかさで、重要なことがギッシリと詰まっていた。

    思いがけず納棺師の手伝いをしたことは「思いがけず利他」だったんだな。

    2012年に父が亡くなったときに感じた感覚が言語化されていて、私の中でまたひとつ、父が成仏(p195の養老先生の言葉を拝借)した。

    イラストも、よかった。
    以下印象的だった箇所抜粋。ネタバレあり。
    ------------------------
    p97
    「いまでも、トイレで用を足すとき、ぺしゃんこになった親父の陰茎を思い出す。こいつも、いつか空気、いや血液がぬけてぺしゃんこになるんだな。男の死とは、陰茎がぺしゃんこになることなのだ」

    p104
    「実家に帰った夜、親父の遺体に直面した私は、顔をさわってみた。映画なんかでよく出てくるシーンみたいに。どうしていいかわからないから、映画の真似をしたのだ」
    私も父の病院に駆けつけたとき同じだった。
    悲しくて泣いているのに、戸惑いを感じている自分に戸惑った。
    そこだけ妙に他人事に感じている自分がいた。

    p105
    「さっきまで私は親父を「さわって」いた。
    モノをさわるように。
    いま、私は親父に「ふれて」いる。
    ヒトにふれるように。
    (中略)
    このとき、大学の同僚の伊藤亜紗さんの本を思い出した。『手の倫理』だ。
    (中略)
    『手の倫理』を読んでいなかったら、当初、親父の死体を「さわっていた」ときのよそよそしさと、親父の手を握ってからの「ふれる」親しさの差異を、言葉にして伝えることは、考えることは、不可能だったかもしれない。」

    5章終わりから6章で出てくる「ケア」について。
    それまで葬儀は死者のための儀式だと私は思っていたが、父が亡くなったとき、葬儀は残された人のためなんだと気づいた。
    人はいずれ死ぬ。しかし頭で分かっていても悲しい。それを葬儀という儀式で、悲しい気持ちを共有しケアし合うための儀式。
    納棺の仕事を「ケア」だと表現されている感覚、理解できる。

    p184
    「人間は必ず亡くなるわけで、1000万人都市に亡くなった方の居場所があまりにない、というのはヘンな話です。」
    p186
    「東京という街は、死を排除しているよ、と。なぜならば、多くのマンションは棺が入らない。つまり自宅で死を迎えることが想定されていない。(中略)
    都市という人工空間は、死という生き物の行為、自然の理を内包していないんです」

    p205
    「この日記を読みながら、いまは、灰になったおやじとときどき「対話」することにしよう。」
    ふと、本当にふと、亡き父が頭に浮かぶ。
    この本を読んでいたからだろう、普段朝まで起きない私だが、ゆうべ夜中に突然目が覚めて父に、大丈夫だから、と一言「対話」していた。

    以下独り言
    ------------------------
    雨の朝、子供達を保育園に送って電車に乗る前に父危篤の留守電が入っているのに気づいた。
    いつもの通勤電車に乗ったがその途中で亡くなった知らせが入った。満員の日比谷線で涙が出てきたが誰も気づいていなかっただろう。
    職場の最寄り駅の二駅先で降りて病院に行った。
    母方のおじおばいとこ達がどんどん集まってきて泣き笑いしながら、お互いを「ケア」していた時間だった。
    悲しくても腹は減り、みんなで雨上がりの街を眺めながら昼を食べた。
    午後部屋を移動し、体を拭いたり(病院で納棺した?か覚えていない)葬儀屋を待ったりしている間に、私は「いつもの電車に乗って子供達を迎えに行く」ことをしなくてはいけなくなって途中で抜けた。
    電車に乗っている40分の間に無理やり気持ちを切り替えて、
    いつもの迎え、いつもの夕飯からいつもの寝かしつけまでのバタバタをこなした。
    夕方以降は、毎日こなしていたいつものバタバタした日常にケアされた日だった。
    決して二人称(p188)ではなかったが、
    父を自分の中で、納得できる形で、成仏させられたから、養老先生みたいに引きずったりしなかったのかもしれない。

  • 納棺師という職業によって亡くなった人に対する対応などがいまいち度考えさせられた。

  • とても感銘を受けた。私のりょうしんも高齢。いつか…。

  • コロナ禍で母と義母が亡くなった

    看取りはできなかったが この状況下で通常通り通夜葬儀ができたことは悔いがない

    納棺師の方は全くタイプの違う対応だったが 家族と故人の関係性でいろんな選択をしてもよいのだと知った

    家族のカタチでこんなに違いがあると実感した

  • 2022I118 916/Ya
    配架場所:A3 東工大の先生のコーナー

  • 著者の父親の納棺についてエンゼルケアという視点で詳しく紹介してある。両親が居る中、身近に感じた。死者を3人称ではなく、2人称に感じられるケアが大事。

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著者プロフィール

1964年静岡県生まれ。編集者。日経ビジネス チーフ企画プロデューサー。慶應義塾大学経済学部卒業後、日経マグロウヒル社(現、日経BP社)に入社。雑誌「日経ビジネス」の記者、専門誌の編集や新媒体開発などに携わった後、出版局にて『小倉昌男 経営学』『矢沢永吉/アー・ユー・ハッピー?』『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』『赤瀬川原平&山下裕二/日本美術応援団』『板倉雄一郎/社長失格』『武田徹/流行人類学クロニクル』など数百の本の編集を行う。TBSラジオで「文化系トークラジオ Life」「柳瀬博一Terminal」のパーソナリティも。2008年より「日経ビジネス オンライン」のプロデューサー。2012年より現職。プライベートでは、三浦半島小網代の谷の保全を行うNPO法人小網代野外活動調整会議の理事。週末の半分は、山の中でササ刈りをしたり、土木作業を行ったり、カニの数を数えたり、ムシの写真を撮っている。

「2015年 『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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