ダーウィン・ヤング 悪の起源

  • 幻冬舎 (2023年6月11日発売)
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本棚登録 : 71
感想 : 5
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784344041226

作品紹介・あらすじ

末満健一氏による舞台化で話題! 真実と嘘、愛と像、自由と孤独、罪と罰、善と悪、滅亡と繁栄……人間の究極の葛藤を描いた、壮大にして濃密な人間ドラマ。罪を犯さずして、大人になどなれるだろうか――。1~9地区まで区分けされた階級社会に生きる16歳のダーウィン・ヤングは、最上位の1区に育ち、トップ校に通う。ダーウィンは官僚の父・ニースに連れられ、ジェイの追悼式に毎年参列している。父の親友であったジェイは、30年前に16 歳で死亡。9地区の人間が起こした強盗被害に遭ったとされているが、犯人は不明のまま。唯一、犯人探しに執念を燃やすのはジェイの姪・ルミだ。ダーウィンは恋心を寄せるルミから、ジェイのアルバムから不自然に消えている写真があり、それが事件の鍵を握ると打ち明けられる。ダーウィンはルミと一緒に謎を解く旅に出るが、そこで明かされたのは、ひた隠しにされていた世界の光景と自身のルーツだった…。

感想・レビュー・書評

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  • 606ページに上下段の文字。私は余程の事が無い限り最後まで読まないと気が済まない質なので、この手の凶器本に手を出す時は覚悟をして臨みます。
    長時間意図せず筋トレをする事になり、もし内容が好みではなかったり文体が好みでは無かった場合は腕の疲労感が倍に感じられるからです。
    (読む体勢が悪いからなのですが)

    さてこの凶器本はどうだったかと言うと、そこまでのめり込む事ができず、左腕がやられました。
    これは翻訳本なので個人的に文体が合わなかった事と、予想して期待していた話では無かった事が原因です。
    勝手ながら格差社会(第1地区から第9地区に行くごとに格差が拡がっていく世界観です)での革命の話かと思っていましたが、革命に近い話は出てくるのですがただただ絶望的な結果。

    そういうのも好きなんですが、煽り文句の『逃れられない、人間の宿命。混ざりあう、3人の運命。』が私の思っていたような意味では無かったので少しガッカリしてしまいました。

    とはいえ今回は完全に自分の思い込みによる勘違いなので、この3人の数奇な運命を丁寧に描いて繋げていくパクさんの力量は素晴らしいですし、結末もこの物語に相応しい終わり方で強制筋トレをする甲斐は有る作品です。(皆様におかれましては机に置いて正しい姿勢で、どうぞご自愛ください)

    日本でも舞台化されていたようで、そちらを観てみたかったです。舞台でかなり映える物語に思いました。

    あと、フードを被りたくなる事請け合いです。

  • 韓国でミュージカル化され大ヒットし、先日日本でも上演された作品の原作翻訳本。
    1~9区で区分けされた階級社会で、最上位の1区で暮らすダーウィン・ヤングが30年前に起きたとある事件の真相を探っていくお話。徐々に明らかになる謎と、ダーウィンの父・祖父に隠された過去と運命と連鎖。
    各章ごとにそれぞれの登場人物の視点に切り替わっていくので、中盤からは読者だけが全てを知っている状態で物語が進んでいくのが面白い。
    結末は分かりきっているのに止められない、それを傍観するしかない恐ろしさと虚しさが悲劇好きにはたまらないと思う。
    600pを超える長編小説だが一気に読み切ってしまった。

  •  ヤング……ヤング……お前、その道でいいのか?
     読み終わった後に強烈な感情に襲われて、顔を覆いたくなりました。想像してたより面白かったです!

  • 格差に隔てられた第一地区から下層の第九地区
    を舞台に富裕層が住む第一地区で30年前に
    起こった16才の優秀な少年が殺された
    殺人事件を発端に掘り起こされる、過去の罪。
    第一地区に住む優秀なダーウィンとエリート
    の父親はまるで理想的な親子関係を築いて
    いた。
    純真で闇のない世界で育ったダーウィンは
    光しか知らなかった。
    たが、30年前に起こったエミの伯父の死の
    真相に近づく事で自分のアイデンティティ
    が揺らぐ事になる。それはとても信じがたい
    ヤング家の宿命とも言える恐ろしく、血生臭
    ダーウィンの運命を変える真実となる。
    何故その様な事が祖父、父が行わ無ければ
    行けなかったのかは読者にしか分からない
    仕掛けになっている。
    ダーウィンは最後に選択するそれは
    やはり悪なのか?
    家族を守る為に3世代が背負った業は
    何処までも、果てしなく重い。

  • まだ社会の汚れを知らない少年だったダーウィンは父の罪を知ってしまったことにより、嘘をつかずに大人になることは出来ないのだと悟る。そして愛する人を守るために犯す罪は自らの正義を貫くことであり、その罪悪を乗り越えてこそ偉大な人物になれるのだと犯罪への合理性を見つけてしまう。
    「自分はプライムスクールだ。プライムスクールは僕だ。」
    第1地区という階級社会から外れることは出来ない。
    罪は克服してしまえば良い。強者だけがこの第1地区に生き残る。生物の進化論のように...
    純粋な良心を持っていたもう一人の自分と決別してしまったシーンは芥川龍之介の羅生門を思わせた。

    正義は時に暴力となる。
    真実は必ずしも人を幸福にするとは限らない。
    極端すぎる格差は社会の歪みを生み出し、尊厳を守るはずの法は次第に人を追い詰めていき、逃げ場を失った人々は罪を犯す。それを隠すために更に罪が増える。
    悪の根源とは、人間という存在なのか。
    罪を生み出したのが愛であるというなら、その救いも愛ではないのか。
    「罪も許しもみんな人間の作り出したものだから、世の中に人間が人間に許されぬ罪はない」
    レオが残した言葉を真に受け止めることができる日はダーウィンに訪れるのだろうか...

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