ぼっけもん 最後の軍師 伊地知正治

  • 幻冬舎 (2023年6月21日発売)
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784344041264

作品紹介・あらすじ

国のため、小さきもの、弱きものこそ生き延びよ。鳥羽伏見の戦い、戊辰戦争。わずか700の兵で4倍の幕府軍を撃破した片眼片足の不自由な「類稀なる軍略家」伊地知正治。ぼっけもんと呼ばれる激烈な性格で兵を駒として操り薩摩人として勝ち続けてきた伊地知が新時代に目にしたのは、荒廃した土地で貧困に喘ぐ民の姿。大久保利通、西郷隆盛と並び称される勤王の志士の胸に、最後に去来するものとは。

感想・レビュー・書評

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  • まず私はガチの佐幕派です。幕末の薩長の三英傑は〇〇〇(好きな言葉をお入れください)なのと、ちょうど忙しい日々が続いていたため、すぐに手に入れてようやく読み終えました。

    幕末と明治維新を描いた三部作の最後の作品ですね。敗者、民間人、勝者。
    幕府内も混乱をしていたし、朝廷では孝明天皇が急病で崩御。

    そして、始まってしまった鳥羽伏見の戦い。そこから物語は始まり、すべての戦いが終わった次の時代へと交互に語られていきます。

    どちらにも言い分はあり、その後、統治はうまくいかず各地で反乱がおきてしまう現実。(「るろうに剣心」をお好きな方は赤報隊の悲劇を思い出されると思います。あれは史実ですからね)

    官僚であることと政治を行うことは違うし、そこで伊地知が悩むのはわかるし、幕末続く戦と不作。政府には十分な資金がない。でも建白書は新政府に都合が悪いと握りつぶされる。

    戦の英雄は平時には無力なのかもしれないなぁと思いつつ読み終えました。

  • 明治維新、戊辰戦争期の薩摩軍の軍師、伊地知正治を主人公にした歴史小説。あまたある維新小説の中でも伊地知にここまで注目した小説は珍しんじゃないかと思う。

    軍師としての伊地知は戊辰戦争ですでに中古化、維新を進める側なのに戦術が旧態依然だったということ、そして西郷・大久保や大村益次郎に大鳳圭介にまでそれが気付かれるという皮肉。
    でも傑物たちは伊地知の価値を近代軍隊にではなく、産業振興や教育の方にあると観る展開も良き。

    戦争が科学や文化を急速に進化させる一面は否めないが、平和な中での経済振興による世の中の発展(当時の言い方でいう殖産興業的なことなか)の方こそ、民の生活を安定させ、真の意味で社会の地力を固め底上げするんだと思う。

    豆腐を食い、若者に農業をさせ、弟子を役人に仕立てようとする伊地知の価値は、最後まで読んでグイっとあがるのである。

  • 2023年、読んでよかったランキング(自分の中で)上位に入る一冊。

    幕末、薩摩の軍師として活躍した伊地知正治。明治の世となり、歳を重ねると共に何のために生きていくのか考えたり、若き日の自らの行動と向き合ったり、読み進めながら一緒に悩んだ。
    令和の現代、国民と国との関係を考えさせられる一冊。為政者にこそ、読んでもらいたい!

    構成も良いし、板垣退助や大久保利通、西郷従道など、登場人物もよく練られている。
    豆腐の大村益次郎がとても気になったので、この後はそちらにいこうと思う。

  • 誰の言葉だったか、本書を読み終えた時、感動した!と言ってしまった。江戸から明治へと時代が変わり日本の政情は不安定に、そんな時代を駆け抜けた男の物語の一冊をあっという間に読み終えてしまった。

  • 優秀な軍師で、その生き様も興味深いが、やはり戊辰戦争は、薩長土による復讐戦であったと思う。
    東北列藩が恭順の意を示しているのに戦闘をやめず、無辜の人民を殺害した。
    革命貫徹の儀式だったのかも知れないが、江戸開城以降の戦いは、不要な戦いであったと思う!

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著者プロフィール

1986年東京都生まれ。2012年『蒲生の記』で第18回歴史群像大賞優秀賞を受賞。2013年『洛中洛外画狂伝』でデビュー。2018年『おもちゃ絵芳藤』で第7回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。演劇の原案提供も手がけている。他の著書に『吉宗の星』『ええじゃないか』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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