- 本 ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344041653
作品紹介・あらすじ
立て続けに起きた無差別殺人が裏で富裕層が教唆するゲームならば?格差と貧困、SNSでの誹謗中傷、スマホ依存……。『震える牛』『血の轍』『ガラパゴス』の著者が現代の歪みを露わにする社会派警察ミステリ
21歳の理子は金銭面で厳しい生活を送ってきたが、ある女性と出会い、人生が好転する。彼女に誘われてラウンジで働き、高い評価を受け、新規の店を任されることになった。充実した暮らしぶりをSNSにアップロードする一方で、その飛躍を妬む者も増えていく。百貨店で閑職に追いやられ、しまいには墓穴を掘ってクビになった小島もその一人だ。そんななか、世間では無差別殺人事件が立て続けに起きる。模倣犯なのか。警視庁サイバー犯罪対策課の長峰はインターネット上で一連の事件の奇妙な共通点に気づく。折しも、小島の理子への嫉妬心はやがて殺意に変わっていって――。
感想・レビュー・書評
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SNSを駆使した題材としては『おっ』と思わせるアイディアで感心したけど、キャストの振り幅が大きくて、その理由が示されるまではややついていけてないなと自分自身に感じる部分もあった。
エリートから貧困へ、それとは逆に貧困からの成り上がりという両極端の人物を描いており、それに伴い貧困や非正規雇用などの社会問題を強い呪詛にして表現しているので心がだいぶ疲弊した。
全体的に感じたのは転落するにしても下剋上するにしても短兵急で、捜査の進展についても大雑把に感じる点も多々あり興醒めしてしまった。
最近の作者の作品は当たり外れがはっきりしている気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
有りそで無さそな、無さそで有りそな事件。今や何が起こっても不思議のない世の中。
我が身は我がで守るしかないのか? -
現実でもありそうな話だと思いました
ボリュームがあったがスラスラ読めて引き込まれていきました
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ここまで人間を操ることが出来るのかと思うもの、今まさにきな臭い世の中になってきていることが背景なんであろう。
そして、太古の時代からこんなことが繰り返されているのだから。
若干、理子の設定、成長に違和感があるけれど、人間をゲームの駒にする話はよくあり、それを現代社会に当てはめると違和感なく話が展開していくところ、さもありなん。
結末には救いはあるものの、なんだかすっきりしない現実を知ってしまったような。 -
21歳の学生高梨理子は、SNSがきっかけで貧困状態を抜け出し、世間から注目される存在となる。しかしその裏では…
本作品では、人々の憎悪が引き起こす事件が描かれる。主人公は上で挙げた理子だが、作者が真に描きたいのは元老舗百貨店のバイヤー、小島だと思う。彼の経歴や言動を読むうちに、こちらまで彼に対する憎悪がつのっていく。母親の入院、同僚へのハラスメントを理由とした解雇、自宅の全焼…。次々と彼を襲う不幸に対し同情できない理由の一つに、彼の不遜な態度が挙げられる。小島は、犯罪に走る前に救うべき人間である。なのにそうならないのは、ある富裕層を糾弾する、という著者の目的があるからだ。
事件は実際に起こり得るかもしれない。SNSをしている人々への警鐘という見方もある。でも一方で、人の憎悪をさらに増長させるきっかけにもなるような気がして怖くなった。唯一の救いは事件解決に全力を注いだ2人の刑事の存在だ。ともかく、このような後味の悪い話はもう読みたくない、というのが今の正直な心境である。 -
相場英雄の最新作は、現代で起こりうりそうで恐ろしい話でした。どん底人生から好転していく人物と好対象に華やかな人生からどん底に落ちていく人物を描きつつ最後にこの2人が結びつくのですが、なぜ結びつくのか?というところが非常に怖い話です。しかしながら物語としては、とても面白い作品だと思います!
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SNS社会のいま、こんなことが起きたらと思うとかなり怖い。。
話が壮大すぎてあまりリアリティはないけれど、テンポよく展開するのでぐいぐい読めたかな。 -
長いけどテンポよく読める展開。スリリングだったけど教唆の手段が解明されずモヤモヤ。こんなに上手く人を操れるのか?黒幕がエグすぎる割に登場シーンが少なくて残念。
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家の生活を維持しながら、大学に通う費用を稼ぐのに苦しむ21歳のヒロイン理子。
そんなある日、彼女に成り上がりのチャンスが。
一方で、百貨店のエリートバイヤーだった小島は会社をクビになるという転落人生を辿ることに。
その交わることのないはずのふたりの一般人が金持ちの思惑で交錯する、生と死を賭けたサドンデスを描いた作品です。
無差別殺人事件の裏に金持ちの思惑あり?
そんな馬鹿なと思いつつも、今の日本での出来事やテレビなどで得た情報、実体験から、本作で起きていることを100%フィクションだとも言い切れない内容だなと思える話です。
まさにリアルではないでしょうがリアリティがどこかある作品。
ただ、作者をみて勝手にゴリゴリの刑事モノかと思っていたら、私が今まで読んだ作者の作品にしては刑事パートは少なめだなという印象です。
作品のテーマもあるとは思いますがヒロインの成上り、小島の転落部分にスポットライトが当てられています。
はじめは、サドンデス?っていう感じでしたが、読み進めるごとに、牙が見えてきて、どんどん話に引き込まれていきました。
そして、頭の中ではエディ・マーフィの『大◯転』みたいなシーンが出できて、確か金持ちってこういうことやるシーンあったよなぁと思いながら読んでました。
さて、そんな本作品から感じたことは、成上りをみる面白さです。
人の成上りって、見ていて嫉妬したくなる人もいるし、不快に思うものもあるし、応援したくなるものもある。
それは成功の過程を見聞きしている時であって、SNSであがったものだけをみたら、私も
「やらせやん」
とか
「どうせ、いかがわしいことしてるんだろ?」
とか、妬みながら眺めてしまうかもしれないタイプの人間です。
でも、サクセスストーリーというか、成功したと思われる人の自伝や伝記を読むと、この人凄いなと思ったりします。例えばスティーブ・ジョブズの本とか読むの面白いですし、世界的にヒットしてるということは、こういう成功者について書かれた本を読むことが好きな人は多いということなんだろうなと。
そう思うと不思議なもので、サクセスストーリーは好きなのに、反面嫉妬や妬み、疑惑、何ならいつか痛い目を見てほしい(失敗してほしい)と呪いのように願う不思議さ。
こういう矛盾を抱えているなと気付かされました。
そして、こう読んでみると、登場人物の小島は私だなと思いました。
私も、大なり小なりの成功体験を勲章のように胸に抱えていて、その体験がいつ暴れだすかわからないなと思いますし、成功した時の気持ちよさを忘れられる人もそんなにいないだろうし、まさに成功は麻薬だなと思いました。
最後に、お金を動かす力を持っている人、それこそが今では権力者であり、権力者に利用される、これは今を生きている私達の生きている世界の1面を言い当てていると思います。
ただ、お金の力でことをなし得ようとすると、結局お金の力に最後は屈する。
暴力で勝ち続けてもやがてその暴力に屈するように。
結局、どこまでいってもサドンデスということなのかなと思いました。 -
もし自分の人生が誰かの手のひらで転がされていたとしたら。
そんな事を思い背筋が一瞬寒くなった。
貧困に喘いでいた21歳の理子は、一人の女性と知り合った事で人生が好転していく。
あれよあれよと言う間に京都祇園のママの座にまで上り詰め、膨大なフォロワーを持つインフルエンサーとして名を馳せる様になる。
そんな彼女に仕掛けられた巧妙で悪質な罠。
成功者へ向けられる嫉妬や憎悪を利用した命を賭けたゲームに震える。
SNSを悪用した世界最悪の殺人ショー。
荒唐無稽に見えて有り得ないとも言い切れない。
ラストまで目が離せない社会派小説。
著者プロフィール
相場英雄の作品





