ゆうびんの父

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344042575

作品紹介・あらすじ

何も持っていなかったから、走り続けることができた。
誰もが心通わせられる世にどうしてもしたかった――。
歴史小説界のトップランナーが郵便制度を創設した前島密を鮮やかに描き切る感動長編!


郵便制度の祖と呼ばれ、現在では一円切手の肖像にもなっている前島密。だが彼は士農工商の身分制度の影響が色濃く残る時代にあって、代々の幕臣でも薩長土肥の藩士出身でもなく農家の生まれだった。生後すぐに父を亡くし、後ろ盾が何もない。勉強を誰よりしても、旅をしていくら見聞を広めても、なかなか世に出ることができなかった。そんな苦悩を乗り越え、前島は道をどう切り開いたのか。そして、誰もが想いを届けられる仕組みをいかにしてつくったのか。

感想・レビュー・書評

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  • 郵便制度を創設した前島密の一代記。知った名前が、沢山出てくるあの時代ならではの面白さがあった。

    前半生においては人生の無目的に苦しんでいる。全国各地を旅したり、船乗りになったり、英語を学んだり、幕閣へさかんに建言したりしていたのは、人生の目的を渇望して発見できなかった軌跡といえる。もがくようにして、転がるようにして、自分そのものを探していたのだ。それがようやく郵便創始という目的を得て、明治時代に入ってからの後半生は国の大事業の土台を設計し創り上げていく。歴史上の有名な人物とやり合う様子は興味深い。

  • 読み終わりまるで大河ドラマのような壮大な物語でした。小学生の頃切手収集が好きで1円切手の前島密は知っていました。馴染みのある肖像画でした。ゆうびんの父納得です。5歳でひとり旅をするなんてすごいですね。波瀾万丈の生涯、幕末の有名人オンパレード、歴史小説としても読み応え充分でした。郵便制度の開拓は心震えました。あなたも読んで感動して下さい。

  • 今まで一円切手の肖像の人を気にしたこともありませんでしたが、郵便の創設等の感動的なエピソードを知ることができました。

  • 郵便制度をつくった前島密の物語。幼き時は上野房五郎、箱館に行くときに巻退蔵、そして養子になって前島来輔と、明治に入って前島密と。
    苦労人でありながら、医学、蘭学、英語を学び、持ち前の向上心と語学力を生かしてどんどん日本の政治の中枢へと上り詰め、郵便、海運、新聞、電話、鉄道、保険、教育と多岐に渡って新明治の時代の礎を築く。

    理想に燃えるロマンと計算に長けた実務的仕事ぶりによって、多大なる功績を遺した。まずは先人に学び、短時間でモノにしてから我が意を注ぎ込む。
    そのスピード感は見ていて小気味よい。

    せっかち人のごまめが好きな言葉に「Speed Eats Slow」というのがあります。

  • 日本の郵便の父_前島密の伝記

    自分は教科書で1行レベルの知識だけ


    なが〜い前置き



    一応、郵便への伏線になっているのには関心


    幼なじみとの再会シーンは
    今も昔も同じだなと共感した

    みんな一度は都会とか夢を見るのよね


    何となく歳をとって
    落ち着いていく

    でも、それもまた幸せ

    と悟ったような事を書いておく


    最後、
    終わり方は
    あれで良かったのかな~?

    クライマックスを
    このエピソードで終わるのか〜

    うーん

    と俺はなった

    もうちょっといい終わり方

    あったんでない!?

  • 日本の郵便制度を設計した前島密の半生(ほぼ)を描いた小説。
    前島密の名前は知っていたが、ここまで魅力的な人物だとは思わなかった。図書館で受け取ったとき、その分厚さに予約したことを後悔したが、抜群の読みやすさと綴られるエピソードのおもしろさに引き込まれて無事に読了した。
    日本郵政のHPに掲載された「前島密年譜」によれば、この作品以後も84歳で亡くなるまで、様々な方面での活躍が続いたらしい。興味や関心が次々に移り、そこに集中して体得したものが後によい結果をもたらしたのだろう。

  • 前島密が農家の生まれ、何も後ろ盾のない状態から"郵便制度の祖”と呼ばれるまでになる話。師を替えながら様々な分野の勉強を極めたことが国の大事業に収束して行く過程が面白かった。当たり前になっているけれど、全国どこでも一律の料金で手紙や荷物を確実に届けられるって凄いことだ。

  • 『ゆうびんの父』 門井 慶喜 著

     門井慶喜氏の本にハズレはないと新刊をゲット。と思ったところ、前半は前島密(上野房三郎)があっち行ったり、こっち行ったりの繰り返し。北は北海道から南は九州まで、上司・師・仕事を転々とし、「いつ本題は出てくるのやら…」と不安になってきます。後半から郵便事業の立ち上げとなり、ヤマト運輸の小倉昌男氏バリの活躍に移行します。しかも、前半の長々とした旅の経験が事業立ち上げに役立つということもわかりました。特に、旅を通じた維新の志士たちや勝海舟らとの交流が、やがて「人脈」となって活きてくることも描かれています。

     いまでも郵便局には地元の「名士」が就くことが多いようですが(私の知人もそう)、東海道から始めた郵便事業を全国展開するための算段であったということもわかり、歴史がまだ生きていることを実感した一冊です。

  • ちょいと読みづらい部分があったなぁ~越後高田郊外,母一人と暮らす上野房五郎は5歳で糸魚川で典医となっている叔父に無心の使いに出され,聡明さ故に相沢家の嗣子となった。漢方医の学びに飽き高田の儒者・倉石の塾にも飽き,江戸へ出る。儒学の戸沢,医者の上坂,旗本の添田と渡り歩き,叔父の死を知って相沢家の相続争いに勝って三百両で従兄弟に譲って江戸へ戻り,筆耕で糊口をしのいだ。ペリー来航に浦賀奉行の中間となって久里浜へ出掛け,長崎へは糸魚川から山陰を廻る。四国へ渡って和歌山から東海道で江戸へ戻る。旗本・設楽弾正・長尾全庵の知恵袋,次期船手頭と噂される江原に長崎の竹内を紹介される。江戸湾に来た観光に乗って船のしくみは解ったが碇を上げないため,函館行きを決意するが,函館の武田に懇願し昆布を積んで列島一周を達成。長崎で勝と知り合い,二度目の一周を成したが江戸へ戻り,外国奉行・野々山の対馬行きに随行,江戸に戻ると各藩から招聘され松江藩・福井藩の世話になる。オランダは駄目だと判断し,長崎で英語を学び何礼之の従者として洋行の予定だったが,蒸気船の故障で間に合わず,長崎で培社という私塾を経営するが,持ち出しが多く,薩摩に招かれて開成所の教授となったが,兄の死まで留め置かれた。江戸へ戻り目付の平岡から紹介され前島家の末期養子となり来輔と名乗り開成所翻訳筆記方,助教,数学教授,兵庫奉行所,大政奉還後は駿府藩の中泉奉行となったが,勝の誘いで新政府に出仕,民部省の改正掛,大隈の助言機関となった。鉄道の構想を短時日で描いて,好きな仕事を選べる立場となって,飛脚の近代化を図る道を選ぶ。大隈の尻拭いのため洋行している間に密の描いた郵便事業は走り出し,帰国後に各地の素封家を使って郵便局網を造り上げる~郵便の父と言ったら前島密だけど,来歴は知らなかった

  • アヘン戦争で、中国が負けた事は、想定外だったのだろう。いかにして、日本の植民地化を防ぐか。維新期の動乱からの見事な着地をなしえて本当に良かった。旧弊の幕府組織では対応出来なかったろう。混乱から、西洋式の政府への見事な転換。利権を奪われずに制度化していった要人達。ありがとう。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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