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本 ・本 (260ページ) / ISBN・EAN: 9784344042605
感想・レビュー・書評
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イスラエルとハマスの戦争。そこに票田の福音主義派やユダヤ資本家の意を汲むアメリカの、ロシアに対するとは真逆のダブルスタンダードの対応。イスラエルの協定違反、ファタハとハマス、地下道の複雑さ、イランの関与、ヒズボラ、フーシ派の動向。複雑な糸が何重にも絡まり合う。ウクライナもそうだが、ガザにはいつ平和が訪れるのか。
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これは素晴らしい。今のイスラエルとハマスの問題について理解を深めたいのならば、入門編としてオススメできる内容。非常にわかりやすかった。
大づかみに、パレスチナというのは土地である、という解説から。「イスラエル」という国と「ガザ地区」と「ヨルダン川西岸地区」。この3つがパレスチナという土地を構成していると。パレスチナにある「シオン山」、その山の上の都市「エルサレム」。「自分たちの国をつくろう」と移住してきたユダヤ人の運動を”シオニズム”と呼ぶが、これは「シオン」と「イズム」を掛け合わせた言葉。この辺は、基本的な内容で、知っている人も多いと思うが、このレベルから解説してくれる。
シオニストたちは、新天地のパレスチナでは、「農業」と「土地の所有」に大きな価値を置いた。彼らは「自ら農作業に従事すること」と「土地を購入すること」を大切にした。なぜなら、彼らは自分の国や土地を持てない民族だったからだと。そこに「キブツ」と呼ばれる共同農場などを組織したのだ。
また、第一次世界大戦時のイギリスの二枚舌、いや三枚舌外交についても触れられる。イギリスは、オスマン帝国を混乱させようと目論み、オスマン帝国支配下のアラブ人に反乱を呼びかけた。その際に「戦争に利した後には、パレスチナを含むアラブ人の住む地域にアラブ人の独立国家をつくる」と約束した。イギリスとの約束を踏まえて、アラブ人は反乱を起こした(アラブの反乱)。一方で、イギリスはシオニストたちにも戦争への協力を求めた。味方に付いてくれたらパレスチナに国家をつくることを認めると(バルフォア宜言)。で、フランスと中東を分割することを話し合っていた(サイクス・ピコ協定)。狡猾な国だ、という事を忘れてはならない。外交なんて、性善説ではやってられない。
それとか、インティファーダの話。
ー インティファーダに驚いたのは、イスラエルばかりではありません。実は、占領地のパレスチナ人を代表するはずのPLOにとってさえ、この展開はまったくの想定外でした。そして、勢いに乗って「イスラム急進派」と呼ばれるいくつかの組織が、占領地で台頭し始めるのです。代表的な組織は「ハマス」や「ジハード団」などです。そう、今回、イスラエルと戦っているハマスは、そもそもインティファーダの流れに乗り、尖兵となった組織なのです。
米国との関係性。いろんな角度から、勉強になった。
ー トランプは、パレスチナ問題では何をしたのでしょうか。一番大きな「仕事」は、アメリカの在イスラエル大使館をエルサレムに動かしたことです。トランプは2017年にエルサレムへの移転を発表し、2018年に実行しました。大使館をエルサレムに置くということは、エルサレムがイスラエルの首都だと認めることになります。
1947年の国連の分割決議が、エルサレムを国際管理下に置くと決めていたのを思い出してください。聖都エルサレムの国際法上の地位は未確定、というのが国際社会のコンセンサスでした。それで、アメリカも日本も各国は大使館をエルサレムではなくテルアビブに置いていたわけです。ところがアメリカが、エルサレムをイスラエルの首都だと認めてしまいました。中東和平の最大のポイントはエルサレムの所有です。それを最初からアメリカがイスラエルのものだと認めてしまうと、そもそも難しい交渉が、さらに難しくなります。アメリカが、中東和平の仲介者としての地位を放棄するような行為です。 -
20年近く前に「パレスチナ問題って何なのかわからない」から、ただの主婦なのに調べてA4用紙4枚にまとめたものがあり、それと照らし合わせながら本書を読んだ。
また、2023年10月7日のハマスによる奇襲以降に出版された
『ガザとは何か』(岡真理著)
『ガザからの報告』(土井敏邦著)
も読んでいるので、私にとっては本書の大部分は復習のようなものだった。
しかし本書では、とてもわかりやすくここまでの変遷が書かれているので、全くこの問題や歴史を知らない人が読むのに良いと思う。
ただ、本書は2024年4月発行なので、トランプ再選前であり、既に状況が古いものになってしまっている。
また、本書の著者はどちらかというと岡真理氏寄りだった。
ご自身の考えや想像で述べられている部分もやや多い。
著者が一方に寄り気味であるという点には注意して冷静になって読みたいところ。
キッシンジャーのとった行動について言及してあるところを読んで、私は「ああ、キッシンジャーさんはユダヤ人だから、そうなるよね」と思ったのだが、何故かこの著者はキッシンジャーがユダヤ人だということを書かなかった。
他の多くの著名なアメリカ人を、個人名を挙げながらこの人もユダヤ人、あの人もユダヤ人と書いてあるのに、そこは不思議である。
本書で新たに知れたことは、近隣のアラブの国々のみならず、イランとイエメンのフーシ派が、イスラエルとパレスチナの問題に大きく関わっているということと、トランプの娘婿が絶大な力を持つユダヤ人でありネタニヤフと親密な関係にあること!
アメリカが(前回のトランプ政権の時は特に)イスラエル側に付く理由は知ってはいたが、まさかそこまでとは。
「侵略する側が悪い」という国際的通念に反してイスラエル・パレスチナ間のことだけでは侵略するイスラエル側に付くアメリカのダブルスタンダードも、イラン、イエメン、レバノンのヒズボラも怖い。
頼むから第三次世界大戦なんてやめて!
(追記 2025/06/13 イスラエルがイランを空爆。ホントやめて!!) -
評価が高いので気になっていた本。
アメリカ大統領がまだバイデンさんの頃なので内容が少しだけ古め。
ハマスがどのような経過をたどって変化していったのかがよくわかった。
これまでの読書で得た知識もあり、タイトルのようになるほど!とまではならなかったけど、中東の戦争が私個人に関係してくるということも理解できた。
後半の内容はちょっと興味が薄れてきて何度かうたた寝してしまった。
印象に残ったのは、合衆国憲法が3期目の任期を一切禁じていることで、トランプ大統領がもう再選のために支持基盤に気を使う必要がないということ。
トランプの暴走が中東に与える影響が心配です。 -
わかりにくい中東情勢とパレスチナ問題をわかりやすく解説してくれてる。
文章も口語体で読みやすい。
刻々と変化していく状況のなか、現状を把握するのはとても難しい。
複雑に絡む利害関係なのだが、どの戦争も割とトップの右傾思想が暴走し、止められなくなってるところが共通していると思った。(イスラエルのネタニヤフについての解説がわかりやすかった)
アメリカの立ち位置も、先鋭化していく宗教も政治に絡んでより複雑になってんだなぁ、と。 -
たまたま二週間ほど前に、同じテーマに関する著者の「生」講演を夫婦二人で聴いて来たばかりだったこともあり、その復習も兼ねて読んでみた。講演内容ともピタリとシンクロし、まさにハマス、イスラエル、パレスチナ、ガザの「今」を解説する極めて時宜を得た学びに繋がった。
先ず何よりも、分かり易い。
パレスチナ問題には予てから人並み程度の関心は持って来たつもり。いろんな本や記事も読んで来たが、どれも今一つ「すとんと腹に落ちる」感触が得られなかった。
それに対し、本書は初めて「すとん」と落ちた。細切れにしたテーマの切り口や語り口が巧みなこともあるだろう。これならば中高生でも十分に咀嚼出来る解説になっているのではないだろうか。
ハマスのイスラエル奇襲勃発から間もなく丸一年。出口の見えない戦争の終結に向けて、我々日本に、そして一人の日本人にすぎないオレ自身に出来ることはあるのだろうか?少なくとも、関心を失わないこと。そして、争いの双方の立場を僅かなりとも理解しようと試みる営みだけは続けることが肝要だ。 -
今までに読んだイスラエルとパレスチナに関する本の中では一番わかりやすく、戦争の原因や現状を理解できました。
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選書番号:230
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ガザ戦争のすべてがこれ1冊ではっきりすっきりとわかる。
著者プロフィール
高橋和夫の作品





