夜しか泳げなかった

  • 幻冬舎 (2024年7月18日発売)
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本 ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784344043138

作品紹介・あらすじ

切実な物語を誠実に描いた、その先にある救い。
軽率に手に取って、打ちのめされるこの感じ。
今もっとも読まれてほしい作家・古矢永塔子の勝負作!
——書評家・藤田香織氏、大推薦!!


「私が死ぬまでの一年間、くそみたいなこの世界に八つ当たりするのに付き合ってくれない?」
中高生に人気のベストセラー小説『君と、青宙遊泳』。それは、高校教師・卯之原朔也がかつて封印した物語に酷似していた。
今は亡き高校の同級生・日邑千陽と過ごした7年前の夏——あれは「僕たちだけの物語」だったはずなのに。
覆面作家ルリツグミの正体を探る卯之原の前に、当の本人が転校生として現われる。

「生まれ変わったら、深海魚になるのもいいよな」
愛とか死とか幸せとか、その言葉の本当の意味を僕たちはまだ知らなかった……。

乾ききった心を潤す、書き下ろし長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 物語と現実のギャップに徐々に打ちのめされる妻鳥の気持ちの描写がリアルでこちらにも伝わってきた。独り歩きして美化された理想が崩れるほど、卯之原もその差に引っ張られ過去を見つめ直すことに後悔や期待、恐怖が入り交じっていて後半は読む手が止まらず一気に読了

    日邑は何がしたかったのだろう。
    その答えは空かされていない。小説の日高とは違って何も起きなかった現実だったけど、卯之原と過ごした日々はきっと彼女の特別だったに違いない。
    卯之原の前では強がったり喚いたりした姿が痛々しくも切なかったが、一番気を許せる唯一の存在だったのだろう。

    あんなに反感をもっていた卯之原が故郷の海で泣くシーンは奇しくも美化された小説と状況が重なってうるうるきてしまった。

    ありきたりな余命ものではない小説だった。

  • 表紙だけ見て、青春小説かなと思って読み始めたら、途中まである事件の加害者の男を彷彿とさせる主人公の一人称で、事件を思い出しなかなか読み進めるのが辛かった。




    最終的には青春小説でホッとして読了

  • 古矢永塔子『夜しか泳げなかった』
    2024年 幻冬舎

    こちらは完全にタイトルとジャケ買い。
    書店に行くたびに手に取っていたのですが、積読が250冊くらいあるしと思い直していました。でも5度目くらいかな。こんなにもこの装丁とタイトルに惹かれるのなら今読まないと!と思い購入しました。
    イメージしていた内容とは違ったのですが、おもしろい切り口と構成でした。そして切なさと思春期の強がりというか生き様、そして病が描かれていました。
    物語内の小説と現在とがシンクロしながらの展開もよかったです。
    これでやっと深海の海から抜け出し、明るい海を泳いで行けるのだろうと。

    #古矢永塔子
    #夜しか泳げなかった
    #幻冬舎
    #読了

  • Amazonの紹介より
    「私が死ぬまでの一年間、くそみたいなこの世界に八つ当たりするのに付き合ってくれない?」
    中高生に人気のベストセラー小説『君と、青宙遊泳』。それは、高校教師・卯之原朔也がかつて封印した物語に酷似していた。今は亡き高校の同級生・日邑千陽と過ごした7年前の夏——あれは「僕たちだけの物語」だったはずなのに。
    覆面作家ルリツグミの正体を探る卯之原の前に、当の本人が転校生として現われる。
    「生まれ変わったら、深海魚になるのもいいよな」
    愛とか死とか幸せとか、その言葉の本当の意味を僕たちはまだ知らなかった……。
    乾ききった心を潤す、書き下ろし長篇小説。



    大人気小説が自分の物語と酷似していたというなんとも興味をそそる内容で面白かったです。
    なぜ作家が、自分の物語を知っているのか?はたまた、なぜ物語に出てくる同級生が謎の死を遂げたのか?といったミステリーな内容も登場し、探っていくので、一筋縄ではいかない展開に、興味をそそります。

    ただ、丁寧に描いている分、ちょっとだるくも感じました。
    時折、過去に遡って、同級生との物語を描いているのですが、ゆっくりと時間が流れていくようで、早く知りたい自分にとっては、なかなか前に進んでくれない焦ったさもあるように感じました。

    ただ、まるで深海を漂うような、気持ち暗めな雰囲気でしたが、真相が明らかになると切ないけれども優しい気持ちになれました。

    主人公と作家、出会ったことで相反する反応を見せ、そこから物語に登場するヒロインを深堀していきます。
    それぞれが思うヒロインの印象を通じて、ヒロインが本当に思っていたことや事実が明らかになっていきます。

    純粋が故に、主人公が思い描く物語が剥がれ落ちてゆく心の葛藤が垣間見れて、読み応えがありました。
    最終的に、ヒロインの謎の死の真相が明らかになるのですが、ジーンときてしまいました。
    やはり、愛されて傷んだことに安心と後悔、切なさなど入り混じった気持ちになり、もう複雑な心境でした。

    そういった事を乗り越えて、主人公と作家の掛け合いに、今まで深海を駆け抜けていた分、光が射したようで、段々と明るさがきて、心も穏やかになっていきました。

  • 普通に面白かった。
    最初、話が見えなくて、殺人鬼か変な妄想癖のある男の人の話かと思って焦った。

    ネタバレ
    誰も知らないはずの自分の過去の体験(夜だけ遊ぶ仲の同級生が病気で亡くなる)が、第三者によって美化されて小説として世に発表される話。

    売る

  • 『七度笑えば、恋の味』
    『今夜、ぬか漬けスナックで』
    『ずっとそこにいるつもり?』
    と連続して面白い作品を生み続けている古矢永さんの最新作は、過去作とは趣が異なるミステリー要素を含んだ作品。

    高校教師・卯之原朔也が、ふとしたきっかけで手にした中高生に人気のベストセラー小説「君と、青宙遊泳」。

    そこには自分が経験し封印していた物語が綴られていた。

    卯之原の元に転校生として現れた覆面作家ルリツグミの正体は?
    不穏な幕開けだが、物語は予想だにしない方向に転がり始めた。

    作中作で描かれなかった真実を知ると切なさに打ちのめされる。

  • タイトルに惹かれて読んでみた。
    主人公の卯之原は高校教師。自身が勤める高校にルリツグミという名で執筆活動をしている生徒、妻鳥が転校してくる。妻鳥は若者にも人気で映画化も決まった『君と、青宙遊泳』という作品を書いて、人気作家となっているが妻鳥がルリツグミであることは秘密。妻鳥が書いたその作品には卯之原の青春時代が描かれていた。卯之原は高校時代に同級生で不治の病にかかった日邑とふとしたことから同じ時間を過ごすことが多くなっていた。受験に挑む卯之原、余命が僅かな日邑。ちょっとしたことで喧嘩し、卯之原と日邑はある時を境に会わなくなった。そんなある日、病院を抜け出した日邑が駅の線路に落ちて亡くなってしまった。日邑は病院を抜け出してどこに行こうとしていたのか、目撃者によると落とした何かを拾おうとしていたようだとも言う。日邑が持っていたのは受験のお守りにもなる砂だった。喧嘩しても、卯之原のことを思っていたに違いない。卯之原も日邑も、本当の自分を出せるのが、お互いしかいなかったんだろうなと思う。二人がよく会っていたのは夜。タイトルの『夜しか泳げなかった』は、夜しか本当の自分でいられなかった、ということなのかな。家や学校では猫を被ってしまったりして…あの高校時代にお互いが自分の思うことを自由に言い合える関係ってきっとすごく大切で知らないうちに支えにもなってたんだろうなと思った。
    個人的に妻鳥の担当編集者さんが良い人なんだけど勢いがあってかわいいなぁと思って好き。

  • 高校教師・卯之原朔也は、自分の物語が覆面高校生作家・Ruritsugumi (妻鳥透羽) による余命モノ小説『君と、青宙遊泳』としてベストセラーになっていることを知り動揺する−−−。

    何故こんなことになっているのか、少しずつ答え合わせのように展開していく。

    正直、余命モノや戦争を軽く美化したような小説は苦手なので、本作はどうか不安だった。
    『君と、青宙遊泳』は苦手の王道のような話だったけれど、現実はそうではなくて、そこが良かった。

    自分が追い込まれるとみんな必死に足掻いて、己の領域を守ろうとする。自己防衛にもいろんなタイプがあるな。きっと私は卯之原タイプ。

    妻鳥の新作は、新しく創造したものであって欲しかったので残念。卯之原が言うようにたくさん経験を積んで、20年後くらいの作品を読んでみたいと思った。

  • 謎が次々と湧いてきて、謎解き小説を読んでるみたいな感覚だった。
    40万部のベストセラー本が主人公の過去そのものな内容なのはなぜなのか、日邑はなぜ岡山に行こうとしていたのか、日邑がホームに落としたものとはなんだったのか。

    妻鳥の知る誇り高く清廉な日邑が何もかも巨像だったことがわかるあたり、もう何も暴かないでやって…といたたまれない気持ちになった。
    どこにも居場所がなくてネットで知り合った年下の子にええかっこして綺麗なように話を盛るくらい、罪じゃないでしょう…
    本当の日邑を知りたいという純粋な欲求は皮肉にも本当の日邑が言っていた「生きる人間のための養分」にするための行動にしか見えなくてグロかったな。
    でもそのおかげで看護師さんから最期の情報を得られたんだから、やっぱりこの「日邑を知りたい」という旅路は無駄ではなかったのかなあ。

    最後に明かされた、日邑と妻鳥の本当の出会いは恐れ入った!一杯食わされた気分!そりゃそんな美しい奇跡的な出会いなわけねーよなー!

  • 世の中に余命モノの小説はあふれるほどあるけれど、余命宣告された女の子との、自分だけの思い出がなぜベストセラーになっている、という設定にまず惹かれる。しかもその女の子の最期は病によるものではなく線路からの転落によるという。病院を抜け出してどこに行こうとしていたのか。そもそも、それは自殺なのか事故なのか。
    そして自分だけの思い出を小説として書いた少年が自分が教える学校に転校してくる。
    なんとも複雑な様相を呈している。あまたある余命モノとは一線を画している。
    本当のことを知るための帰郷。彼自身の不幸な生い立ちもまた複雑な思いに拍車をかける。
    知っている過去。知らない過去。彼女の本当の姿。少しずつ明らかになる謎。
    深海でしか生きられなかった二人の、行違ったままの思いが切ない。

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