パンとペンの事件簿

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  • 幻冬舎 (2024年11月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784344043794

作品紹介・あらすじ

新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。
文章に関する依頼、何でも引き受けます。
どんな無理難題もペン一本で解決してみせる〝売文社″のもとには、
今日も不思議な依頼が持ち込まれて――。

ある日、暴漢に襲われた“ぼく”を救ってくれた風変りな人々。彼らは「文章に関する依頼であれば、何でも引き受けます」という変わった看板を掲げる会社――その名も「売文社」の人たちだった。さらに社長の堺利彦さんを始め、この会社の人間は皆が皆、世間が極悪人と呼ぶ社会主義者だという。そんな怪しい集団を信じていいのか? 悩む“ぼく”に対して、堺さんはある方法で暴漢を退治してやると持ち掛けるが……。
暗号解読ミッション、人攫いグループの調査……。社に持ち込まれる数々の事件を、「売文社一味」はペンの力で解決する!
世の不条理に知恵とユーモアで立ち向かえ。驚きと感動が詰まった珠玉の推理録!

感想・レビュー・書評

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  • 新聞でいちおしミステリーとして紹介されていたので、柳広司作品を初読み。

    時は大正時代。新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。『文章に関する依頼であれば、何でも引き受けます』という変わった看板を掲げる会社『売文社』を舞台に、数々の難事件を解決する4編からなる連作短編集。

    登場人物に堺利彦、大杉栄、荒畑寒村など実在の社会主義者が出てくるが、その辺の知識は無くてもキャラクターとして魅力的に描かれているので十分楽しめた。

    2話目に暗号解読の話があって普通に読み進めてしまったんだけど、もう少しじっくり解読に取り組めば良かったと後悔。ちゃんと考えれば解読できたかもな〜

  • 以前読んだ「太平洋食堂」とも連なる作品なのか、その時代の社会主義者が集っている作品。
    波乱万丈の実在の人物達が一時代でもこんなに楽しげに暮らせてたら、と思います。
    「大いに逆さま事件」と名付けられた、幸徳事件。
    その時の傷を持ちながらも前に進んで行くのは、現代よりももっと不安定で、生活は自分自身で切り拓く逞しさがあったのでしょう。
    最終話の法廷に登場した弁護士は最高です。これだけでスピンオフが欲しいですね。

  • 独特の言い回し、時代的な言葉使いも
    含めて少し個人的に読みづらかったが
    為になりました
    クスッと笑える所もあり面白かった

  • 自分の中での解釈の選択肢の重要性を教えてくれる小説

    4つの短編集で、各章ジェットコースターみたいに上げ下げ上手、感心しながら読めました。また、時代背景を感じずスラッと読めます。
    個人的には「乙女主義呼ぶ時なり世なり怪人大作戦」がハラハラして楽しかったです。

    実在した組織とのことですが、自分が無知なので知らない人ばかりでした・・・
    それでも楽しく読める小説でした。

  • 依頼があれば何でも書く〈売文社〉。
    ぼくを助けてくれた彼らは、警察が24時間監視している社会主義者で……。

    実在の人物や〈売文社〉が、さまざまな事件に向き合っていく、連作短編集。

    全員はわからなかったが、大杉栄や伊藤野枝など知っている名前も。

    社会主義とはを紐解いたり、社会の矛盾をあぶりだしたりつつも、どこかユーモラスで痛快な〈売文社一味〉の活躍劇。

  • 著者初読み。

    大正、昭和と好きな時代。
    知らないことも多く、読後もにわか調べで歴史を再認識。

    この時代をモチーフに、見事にミステリーを組み立てる策士。
    今の時代だからこそ、この本を読むこと、時代を振り返ることへのメッセージが含まれているような気がする。

    著者本、まずは「贋作『坊っちゃん』殺人事件」を読んでみよう。

  • こんな時代もあったのだなぁ。

    今は少しでも幸せな時代になっているのか知らん

  • 社会主義者の集まる「売文社」を舞台にペンの力で事件を解決する4編からなるミステリーなかでも「乙女主義呼ぶ時なり世なり怪人大作戦」ハラハラドキドキの展開にあっと声が出てしまいそうなほどのおもしろさでした。大正時代の社会主義者実在も数々登場飽きさせない傑作ミステリーをあなたも読んで手に汗握って下さい。

  • 堺利彦を主人公にした小説。当時の社会状況が浮かび上がる様。ただ、当時と現在の様子が似ている様な気がする。当時は新聞などで、今はSNSで。疑いを持たず信じる民がもたらす事が危惧される。語り手の男性が誰なのかが興味ある。

  • 大正時代に実在した人物たちを活躍させた、ミステリー。登場した「ぼく」には失礼なことだけれど大変楽しく読み終えた。
    四話目の山崎弁護士の話は特に痛快!
    こんな裁判ネタならもっともっと読みたい。
    時代は暗く、人が人を裁き国が人を押さえつける時代だったとは言え、名もなき人たちはみな、いつも何かと戦っているということに時を超えて感銘してしまう。

  • 【収録作品】
    第一話 合い言葉は〝パンとペン〟
    第二話 へちまの花は皮となるか実となるか
    第三話 乙女主義呼ぶ時なり世なり怪人大作戦
    第四話 小さき旗上げ、来れデモクラシー

    ミステリ、という形を借りた、啓蒙書(といってしまうと敬遠する人もいるだろうが……)。
    実在の人物をモデルにした物語は苦手なのだが、現代の不穏さを思うと、語れるうちに語っておくべきだ。そして、彼らが受けた不当な扱いを伝えるためには、彼らを描かなければならないわけで、納得である。

    社会主義、共産主義というだけで毛嫌いする日本人の多いことに常々疑問を抱いてきたが、昨今では疑問ではすまない思いがある。
    書き続けてくれる著者に感謝。

  • 社会主義者の集まり「売文社」のお話。
    面白かった!

  • 大正、昭和時代も現在も、日本語しか分からないと世界の多様な価値観、思想に疎くなってしまうのだろうな。

  • 「文を売る会社」…文章に関する依頼を引き受ける会社で働く登場人物が遭遇する4つの事件のお話。そんなテーマに惹かれて期待した割には、各事件のオチや展開なら期待を超えずでハマれず。また大正時代の風景や人物描写にあまり慣れ親しんでおらず若干読みにくさも感じてしまった。

  • 明治を舞台に一つの主義主張を持った人たちが権力に対してペンを取る。大手のA新聞社もまだまだ本来の力を見せていた時代。貧しい青年を通して、権力と民衆の闘争を軽妙に描いた作品だが、自作があれば権力者の横暴と残虐さを描いて、それが今も続いている点を書いて欲しいな。

  • <先>
    本作は先(2024年6月)にAmazon オーディオブック Audibleで先行配信された作品の『紙版!』らしい。Audible。僕の所にもアマゾンから「使って下さい。初回只」みたいなお知らせMailがしょっちゅう来るけど,まあ先行して発行された紙の本を録音しているだけだろうと思っていたせいもあって 見向きもしなかった。それがなんと柳広司の新刊が先にAudibleで読める(聴ける)事態が起きているとは…。まさに ”うーむ” である。

    巻末にとても面白い作者のことわりがきをみた。いや面白い のではなくて 目づらしい が正解だな。それは「※本作はノンフィクションではありません」というお断り。普通は「本書はフィクションであり 登場する…実在する…とはかかわりありません」みたいに書いてあるのだけれどなぁ。まあともかく僕は先にこの断り書きを読み,そうか!と俄然興味を抱きながら本編に取り掛かったのであった。

    添田啞蝉坊 本人が本書には何回か登場する。登場するだけで何か物語上の役割を演じているわけではないのだけれどw。 大正~昭和期の演歌師だ。僕の大好きなシンガーソングライター高田渡るさんが この添田の歌詞に曲を付けて歌っていた。代表曲は『ブラブラ節』 『あきらめ節』など。それだけでもうこの本はぼっく的にはとっても面白い!(笑)

    「ちびた万円筆の先に…」という云い方がこの本には出て来る。え!万年筆ってエンピツみたいにちびはしなくいから 万年筆って言うのじゃないのか。初めて聞いたしちょっとびっくりした。でも確かに 万年筆と云えども作家さんが仕事で使う,等と ずっと長く書いているとペン先は減って来るのだろうなぁ。


  • 歴史を絡めたアニメで見ているようで、
    するする状況が流れる。

    テンポが良くて想像が途切れない。


  • 新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。
    文章に関する依頼、何でも引き受けます。
    どんな無理難題もペン一本で解決してみせる〝売文社″のもとには、
    今日も不思議な依頼が持ち込まれて――。
    面白かったです

  • 労働環境の改善を工場主に訴えようと、従業員たちの代表に祭り上げられたぼくは、工場主が雇ったヤクザ者たちに半殺しにされて路地に放り込まれた。
    倒れていたぼくを発見し、助けてくれたのが堺利彦(さかい としひこ)を代表とする「売文社(ばいぶんしゃ)」の面々だった。
    堺は、うちで働けばいいと、二階に住み込みの部屋も与えてくれた。

    「売文社」は文章に関することなら一枚五十銭で何でも引き受ける。今度「人生相談、探偵調査」も引き受けたいと堺。
    ぼくはそこで、戦争成金と政治家の癒着を暴く場面を見たり、暗号を解いたり、女装させられたり、そして生まれて初めて裁判の傍聴もした。
    堺利彦(さかい としひこ)をはじめ、大杉栄(おおすぎ さかえ)、荒畑寒村(あらはた かんそん)など、売文社一味は、みな社会主義者たち。
    世間で言われているような怖い人たちではなく、変わり者ではあるが、意外に普通で面白い人たちだ。
    社会主義者には、一人に一人、専任の警官が監視に付く。警官が常に近くにいることを逆手に取って事件を解決してしまうところなども面白い。

    ぼくにやっと新しい就職先が決まった時、これからの社会主義の担い手は君たちだよ、と堺に言われた。
    金持ちだけがうまい汁を吸うのではない、労働者や小作人もみんなが望ましい社会に変えていく、それが本当の意味での社会主義なのだから。

    大逆事件を扱った『太平洋食堂』の数年後を少し軽いタッチで描く。
    しかし、この後も決して労働者や国民一般にとって軽い時代ではないのだが・・・
    もしかしたら続編もあり?
    「ぼく」には最後まで名前が与えられていなかった。

  • 社会主義者・堺利彦が起ち上げた【売文社】を舞台にしたエンタメミステリー。ヤクザ達に襲われ瀕死の状態だった〝ぼく〟を助けてくれたのは堺さんを始めとする売文社の人達だった。彼等は「大いに逆さまの事件」を免れた社会主義者・無政府主義者たち。売文社に持ち込まれる謎の依頼を解決していく4話収録の連作短編集だ。作者の『太平洋食堂』のスピンオフのような物かなと読んでいて感じた。エンタメ寄りで楽しんで読めるが、登場人物たちを検索すると理不尽な最期を遂げていたりで腹立たしくもなったり…。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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