いとしい (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 1008
レビュー : 122
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344400061

感想・レビュー・書評

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  • 一瞬気持ちが落ち着いたので、日曜の夜、眠る前に少しだけ読もうと開いたら、朝の6時までノンストップで読み切ってしまった。それくらい文章が好きで面白かったです。

    ユリエとマリエという姉妹の愛の物語なのですが、幼い頃、姉妹で昼寝して長い髪がからみつく…という冒頭が朝吹真理子さんの『きことわ』と同じだったから驚いた。まあ、ある表現と言えばある表現かも。長い髪が絡み付くメタファーは中世ヨーロッパからありますし。(最近自分自身の仕事でのパクリ問題で病んでいるので、似ている表現に気が飛びがち。)

    というのは置いといて、姉妹が幼い頃から空想話を楽しんでいるのですが、その様子や物語が楽しいのです。
    で、その母は最初の旦那を亡くし、春画の絵師と結婚します。姉妹はその父の仕事の影響を受けて、セックスに対してフラットで特異な価値観を持っています。この年にして、セックスって何だろう……と改めて考えてしまった。笑 
    絵師の父親も亡くし、母には弟子のイラストレーター・チダさんという恋人らしき人ができます。チダさんにほのかな恋心を抱くユリエは「人魚みたい」と表現。このあたりから、姉妹それぞれの具体的な恋愛模様の物語に。どちらも変わった物語になっているのだけど、それは極端なメタファー(と言っていいのか。おくるみのようなもの。)で、核だけ取ると誰もが身に覚えがあるような、よくある恋愛物語の2サンプルという感じです。

    マリエは流れるように自然なお付き合いを始め、いつの間にかそれはぴったりの人で、だけど結ばれない。
    盲目型・束縛型・愛の強要型のユリエの彼オトヒコくんは、ユリエの愛から目をつぶりたかったのか、変な膜をかぶって休眠して新しいオトヒコに。。

    ミドリ子は何だろう。。魔性の女のメタファーなんでしょうか。
    オトヒコくんの自分話は気持ち悪いし面倒臭くて読み飛ばしそうになりましたが、登場人物がみんな魅力的なので、ふったふられた・とったとられた的な恋愛沙汰があっても誰かが嫌だということもなく。久しぶりに川上さんの文章の美しさを堪能できて幸せな読書でした〜。

  • 奇妙、散花みたいに、絢爛、眩い、虚しい。

  • こんな可愛らしくてピンク色の字体の「いとしい」じゃないよ。
    もっと暗い「いとしい」だよ。
    この本読んだ人なら、こんな春めいた初恋のような表紙にしないよ。


    この「いとしい」は、
    とっても「こわい」。
    人間の奥深くに埋まっている気持ちが、じわじわとにじみ出てくる感じ。
    暗くてこわいのです。
    「恋する」お話だけど、「恋するって決めた」お話だから、
    「恋するって決める」と、人間ってどんなこと考えて、
    どんなことに執着るんだろう?って考えながら読んでみる。
    ありえない非現実的なできごとも、心の奥底に埋まっている感情が表れたものかもしれないね。
    そう考えると「いとしい」って言葉の響きが、とても味わい深い音に感じるよ。

    だから、この表紙違和感。

    でも内容は、とても良かった。

  • 川上弘美の長編小説。
    ところどころほつれがあるなめらかな布みたいな読みざわり。
    狙ってない綺麗さが良い。

    変わらないものはないのも当たり前なのだけど
    だから変わらないものはそれだけ貴重なのかな。

  • 好きで居続けることの努力。
    好きなモノ、人はかわるけど、
    一度好きと決めたらずっと好きで居続ける、
    と、いう覚悟。

    そういう話。

    何度も恋を繰り返した母親、
    引っ越しを繰り返す恋人、
    セックスの度にねじれる少女、
    手を描く男に、
    さなぎになって羽化した男を愛した姉。

    例えば気まぐれのように見えたその感情も、
    本当はずっとずっと「決めて」たのかもしれない。
    そうであろう。と。
    いつまでも自然にそのままであることよりも、
    どこかで、何かを真っ白に感じてしまうコトがあるように。
    望めば望むほど、狭くなる世界を、
    いくつもの結び目を点在させてばらまいてしまった。
    それならば、いくらでもあるんだよ。と。
    カタチはいくらでもあるけど。
    覚悟の類はそんなに多くはないのかもね。

  • 昼寝してたらお姉ちゃんの髪が足首に絡まるとか、相当好きな雰囲気だった。後半のごたごたはちょっと読んでて面倒だったけどこれは良い本です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「相当好きな雰囲気」
      川上弘美には、夢の中のような、ちょっと独特の雰囲気がありますよね。。。
      「相当好きな雰囲気」
      川上弘美には、夢の中のような、ちょっと独特の雰囲気がありますよね。。。
      2013/05/11
  • 川上さんらしい作品です。
    何と言うか、おとぎ話のような登場人物の実在感の無さ。それで居て、存在感はしっかり有るのです。
    前半は普通に始まります。実の父親は早く死に、今は春画を描く義父と暮らす幼い姉妹。その義父も事故で亡くなり、母と時折訪問するその愛人との思春期。そして姉妹も大人になり。。。このあたりから、川上さんらしい奇妙な”変身物語”が始まります。繭に包まれ、やがて発芽する姉の恋人。恋人の下に現れる義父のモデルだった男女の幽霊。。。
    この何とも言えない、取りとめも無く、つかみ所も無い物語は何なのでしょうかね。私は普通ならこういった話は苦手なはずなのですが、何故か川上作品には惹かれてしまいます。そこに何があるのか、自分でも良く判らないのですが。
    もうしばらく、付き合うことになりそうです。。。。。

  • この空気がとても好きです。ふわふわととりとめなくつかみどころがないようで、しっかりと世界に絡めとられている、その感じが決して嫌ではなく、心地よいです。人を好きになるって、こわいことなのかもなと思いました。叶う思いも、叶わない思いも、あっていいのかも。誰かをいとしいと思うことは、幸せな反面、とてもつらいかもしれないけと、それでもやっぱり、誰かを好きになるのだろうなと思いました。

  • ふわふわした夢のような小説。
    なぜだか最後の紅郎への手紙などで涙がはらりん。

  • 相変わらずよくわからない世界観。
    淡々と進んでいくんだけど、恋愛小説なのかな? と最後に疑問符がつくような小説。

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プロフィール

1958年東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。著書に『蛇を踏む』(芥川賞)、『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)、『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)、『水声』(読売文学賞)等。

「2018年 『話しベタですが… 暮らしの文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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