草原の椅子〈下〉 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.80
  • (50)
  • (64)
  • (79)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 439
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344401013

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 子を持つ親としては、ザウルスを抱く圭輔の様子に胸が痛む。
    うちの3歳の息子はというと、机について本書の適当なページを開きながら、「オカーサンの真似してるよ」と言わんばかりに私の方を向いてニコニコしていました。3歳児が「草原の椅子」と明朝体でかでか書かれた全く可愛いげのない装丁の文庫本を開く姿は大層微笑ましく、幼児とはこうしていつも楽しげに笑っているべきだ、そのように大人がもっていってやらねばならぬ、と思いました。

  • -安心しているということは、能天気に油断しているのとは全く違う。物事にかしこく対処し、注意をはらい、生きることに努力しながら、しかも根底では安心している。そういう人間であろうと絶えず己に言い聞かせることだ。
    -人情のかけらもないものは、どんなに理屈が通っていても正義ではない  (孔子)

    これから50歳まで、どう生きるか、考えさせられた1冊。

  • 宮本輝さん、「錦繍」を数十年前に読んだのみ。
    よしもとばななさんのWEB上の日記に宮本氏の人格の高潔さを感じさせる文章を読んだ日に書店にて文庫本上下を発見し即購入しすぐに読み終えた。

    50才という同じ年令の、しかし私などとは違い社会経験も人生経験も豊かである二人の男性の友情を軸に、恋愛、親子愛、子供を育てるということ、生きていくということ、日本人であるということ、様々なテーマを、優しい箴言を登場人物の思いとして語らせている。
    自分はどう思うか?どうであるか?という問いかけを始終しながら読み進めた。

    非情に良い読後感。品性いやしくない人間らしい登場人物たちが秀逸。
    50年生きてきた自分を振り返り少々の落胆を禁じ得ないが、この本に出会ったことに感謝。

    フンザは無理でも、土を踏みしめ歩き、星をいつまでも眺めていたいと思った。近いうちに絶対に行ってこよう。

  • 涙が出たどころじゃない。嗚咽。電車とかで読むの要注意。通学電車で読んで恥ずかしい思いをしたが、涙が止められなかった。
    圭輔が愛おしくて仕方ない。ただそれだけでこの作品の価値あり。是非是非多くの人に読んでもらいたい。

  • 良かった~。
    50歳。
    アラフィフが考えていることは
    同じなんだと改めて思った。

    驚くような話の展開は無いが、
    人の心が
    決心したり、くじけたり・・・

    そんな中年の心の葛藤を
    上手く表現していて
    とても同調できる話だった。

    1点だけ言えば
    その後この4人はどうなったんだろう~
    圭輔は養子になったのか?
    二人は人生のパートナーとなったのか?
    読者にその後の夢を持たせるのも
    この本の技なのかも知れない。

  • 日本が舞台だけれど
    フンザやタクラマカン砂漠が頻繁にでてきて
    想像がふわーとなるのが
    これまたよかった。

    真面目に生きてきたのに
    「魔」というものは本当に怖いもので…!
    どこにだって潜んでる。
    その魔にうっかり負けてしまった
    そのうっかりの代償は大きかったり…

    取り返せるもの
    取り返せないもの
    護れるもの
    護れないもの


    なんだこいつは!と思っても
    あっ、そうか、自分もここまで考えなかった
    ごめん。となったり
    良い大人も怖い大人もでてきて
    それって現実と一緒でとても身近な問題だったり。

    遠間さんと富樫さんの
    人生のちょっと切り取ったところを
    読ませていただいた感じです。

    ところで
    楽しいもの、幸福を感じるもの、
    そんなことでいっぱいの写真を撮って
    1冊にまとめる。素敵だなあ。

    (メモ@レビュー上巻分もこちらでまとめて)

  • とてもおもしろかった。
    個人的には、富樫さんが最高。
    愛人に灯油をかけられたり、
    すっぱりと酒を断つことができなかったり、
    なんというか、完璧人間ではないのだけれど、
    「おとな」というものを感じた。
    器というのか、品位というのか、"心根"というのか。

    歳を重ねるのも悪くないな。
    正しく歳を重ねたいな。
    そのために今できることは、
    「正しいやりかたを繰り返す」
    ことなんだろうな、と感じた。

  • 殆ど最後のほうにある、「正しいやり方を繰り返しなさい」という一文で、以前の感動が蘇った。この言葉を人生の指標にしようと心に誓ったことを!
    本は何度か、時間をおいて読み返すものだと悟った。

  • 再読5回目。

  • 宮本輝を読む。
    神戸大地震を経験したことが、
    大きな変化をもたらしているような感じを受けた。

    あとがきにあるように、
    「日本という国、日本人という民族そのものに、
    矜持とか品格とかが失われてしまったことに
    落胆とむなしさを感じ続けていたのかもしれない」
    という言葉は、
    この小説の底流となっているのだろう。

    「人間力のあるおとな」を描こうとした。
    富樫重蔵というカメラ屋チェーン店の経営者は、
    実に生き生きしている。

    「大言壮語せず、その貧弱といっても
    いい体躯や容貌とは逆に、大きな腹芸と、
    決めの細かな心づかいができて、
    しかもいつも茫洋としていた。」

    「物を作るってことは、
    人間がいきるっていうことなんやなぁっておもったんや。
    人間が正直にいきることの根本には、
    物を作るってことが要としてあるんやなぁ」

    「顔と腹の違うやつはいらん。
    口ばっかりで動かんやつもいらん。
    上に媚びへつらい、下に威張るやつもいらん。
    そういうやつは生命力が弱いんや。
    人間としての生命力が弱いんや」

    遠間憲太郎
    50歳 カメラ技術者であるが、
    営業に配置転換され、
    挫折を味わうが、出世頭という設定。

    「あなたの瞳の中には、三つの青い星がある。
    ひとつは潔癖であり、もうひとつは淫蕩であり、
    さらにもうひとつは使命である。」

    パキスタン カラコルム渓谷 
    ディラン、ラカポシ、ウルタルの
    いずれも7000メートルを超える山に囲まれた
    「世界最後の桃源郷」といわれる
    標高2500メートルのフンザという街で
    出会った老人から、話された言葉である。

    ひとえに非は自分の中にあるという
    思いから自由になりたくて
     
    「お母さんの中には、
    悪か善かって評価基準しかないのよ。
    だけど、その二つに対しては潔癖すぎるほど潔癖なの」
    弥生。

    人間は弱くて、失敗をする生き物だということを知らずに、
    許したり許されたりということを学ばずにきた

    魔がさした

    篠原貴志子
    言葉を失い、呆けたように、
    強い磁石に吸い寄せられる小さな砂鉄のように、
    一人の女に魅せられる

    堂本哲心 性格は鷹揚で博学で、
    人間としてどこか華があった。
    交通事故で、下半身を痛める。

    袴田知作
    鍵山誠児 「つばさ」

    楽しいもの。
    幸福を感じるもの。
    美しいもの。
    荘厳なもの。
    笑いがあるもの。
    気持ちのいいもの。
    それらを中心として、人間の心について考えてしまうもの。 

    喜多川圭輔
    母親の虐待。生育不良。
    1,命令口調で喋らないこと
    2,むりやり、何かをさせようとしないこと
    3,同じ目線で話すこと
    4,トイレについて行っても手助けをしないこと
    5,人は自分をいじめるものだという恐怖が
    身についてしまっている子どもだと   
    認識して処理すること
    6,ほめてあげること

    命の器

    生きることから生まれてくることは、
    どのような関わり合いを作っていくかであろう。
    その関わり合いのすぐれて楽しいことは、
    器の大きさにあるのではないか。

全40件中 1 - 10件を表示

プロフィール

宮本 輝(みやもと てる)
1947年、兵庫県神戸市生まれ。1977年『泥の河』で、第13回太宰治賞を受賞してデビュー。1978年『螢川』で第78回芥川賞を受賞。『優駿』で吉川英治文学賞、1987年初代JRA賞馬事文化賞、2009年『骸骨ビルの庭』で第12回司馬遼太郎賞を受賞。2010年、紫綬褒章受章。
主な代表作として、『蛍川』、『流転の海』、『優駿』、『彗星物語』がある。

草原の椅子〈下〉 (幻冬舎文庫)のその他の作品

宮本輝の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

草原の椅子〈下〉 (幻冬舎文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする