月に繭 地には果実 (下) (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2001年8月1日発売)
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本 ・本 (414ページ) / ISBN・EAN: 9784344401549

感想・レビュー・書評

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  • アニメを観てから20年以上経っているのではっきりとは覚えていないのですが、SFなのに人の業とか情念なんかの演歌的な世界が広がっていて私はこちら方が好きです。

    終わり方も落差有って良かったな。

  • 良い終わり方であった。サイコミュ、ゼロシステム、トランザム、バグ等、往年の科学技術が盛り込まれているのも良い。ただこれらのいくつかは、ロストテクノロジーなのだろうな。

    「普通に生き、普通に死ぬ。高い精神性を永続させるより、愚かでもいい、限られた生を思う存分謳歌したいと願うのも、人がしょせんは生身の動物であるからなのだろう。 業や欲を捨て去って穏やかに生き続けるなどできはしないし、できたとしても、やさしくなりすぎた人は自然に淘汰される運命をたどる」p329

    全体主義の果ての一つの可能性がこの物語の結末だ。変化を望む=種のために新たな情報を集め続けろという欲動が人間にはある気がする。


    「平和への希求はあっても、あなたにはこだわりがない。狭い原理主義に陥ることもなければ、個人の感情を大義や欲望に投影させることもない。いつでも中間に立って世界を概観できる立場にいたのですから」p357

    絶対に間違えない王政、コスモ・バビロニア主義をなしえる存在、即ちニュータイプと呼ばれる人がこの特性を持つ。
    しかし、それでもうまくいかなかった…。革新した人々による平和で自由な統治、宇宙世紀の歴史がこれは絵空事だと教えてくれる。すがりたい、導いてほしい、考えたくない…そんな思いの先に確固たる平和な未来はないのだろう。
    甘えるな、悩見(なやみ)続けろ! 黙過を否定するところからしか、良い政治は生まれない。

  • 原典からは大きく外れるまさかまさかの展開。しかし間違いなく、同じ材料の違う料理の仕方の一つの答が表されていた。
    同じ人が少しのたどる道を間違えるとこうなるということは現実世界の人間も少しのボタンのかけ違えの積み重ねで間違った生き方をしてしまう。いま間違った生き方をしている人も間違ってない生き方をしている世界もあるやもしれない。
    この作品はいまの世界との共通点が多々ある。度々出てくる時代の揺り戻しという言葉。文明を捨てた時代。癒しや過去を懐古する人々。
    なにが正しくて間違いなのか。それは分からないけれど、誰もがなにかを求めている。

    人は美しい言葉だけで生きていけるけれど、反対に醜い言葉で死んでいくこともできる。

  • 虚しい。地球を巻き込む宇宙戦争。長い世代を経て繰り返し戦争する。戦争に反対だった人達も。人の欲の行き着くところ最後は戦争になり全てを破壊し尽くす。それが人の宿命かのようで、救いがない。
    これは小説の中のお話しだ、と思ってみても現実に戦争は世界のどこかで常に起こっているということに気付くと、とても虚しくなった。うーん…

  • みんな死にすぎ

  • 福井さんにはまって片っ端から読みあさってたときに手に取った本。まさかガンダムとは知らずに読んでびっくり。ガンダムのことはよく知らないけどすごく面白かった。知ってたら10倍愉しめると思う。

  • ノンストップで物語が終息したという感じです。言いたいことはいっぱいあるんだけど、この巻の注目は、なんと言っても、ハチクロ級の“みんな片思い”の結末でしょう。福井さんの作品で、1つの物語の中にいくつもの愛の形を描いたのは珍しいので、やたらと気になってしまいました。しかし、それらの多くが一方通行というかすれ違っているというか、伝えたい気持ちが伝わらない、相手の気持ちに応えられない、のです。“こんなにあなたのことを思っているのに、どうしてあなたは私のことを受け入れてくれないの?”そんな声にならない声が、文章から聞こえてくるようです。こうやって書くと、ただのわがまま、エゴだなと思ってしまいますが、愛なんてそんなものなのかもしれません。そして、戦争も、平和も、みんなそう。相手の気持ちなんて全部わかるわけないのだから、たとえそれがエゴだとわかっていても、一方的に自分の気持ちをさらけ出すしかない。そう考えたとき、物語中で一番感情を露にして自分の思ったことを言っていたソシエに、この結末があって良かったと思いました。この巻で好きな言葉は、“「愛されたい」と同義語の「役に立ちたい」。”うっ……、身に覚えが……。

  • 完結編。福井は終わり方がいいよねえ

  • 月と地球の間で行われた戦争はついに最終局面を迎える。
    あまりにも大きすぎる被害と失われる生命の規模に恐れ慄き、愛ゆえに生きて愛ゆえに死んでいくキャラが哀しく、争いはなにも生まない事をこれでもかと描写するなんとも恐ろしい物語でした。

    アニメ版∀ガンダムからの変更点はかなり多く、特に最終盤はまったく異なる展開で、さらにその展開がとても惨たらしく血肉が溢れかえる地獄の様相で読んでいて辛くなりました。
    それでもこの小説で改変された部分、特にディアナ、ハリー、キエル、グエンの掘り下げは大好きなので読んで欲しい。
    キエルとシドじいさんヤーニ中尉も凄く良い味出してます。

  • ガンダムなんだよね……。

    完全なSF世界の物語だけれど、戦争の悲惨や人間のエゴをこれでもかという程に描かれていて、圧巻。筆者の強いメッセージをひしひしと感じた。

    上巻、中巻と比してガラリと陰惨な物語に様変わりしてしまったが、そこは福井さんの筆力により、最後までのめり込んで読み終えられた。

    名作だと思う。

    ……それにしても、これが「ガンダム」だとは…。

    ★4つ、9ポイント半。
    (あまりに壮絶な展開に、若干引き気味になってしまったための-0・5ポイント)
    2015.02.17.了。

    ※テレビアニメ版は、これよりは明るい内容だと聞きかじった。そちらにも興味が沸いてきている(笑)。

    ※“自分ら世代でアニメ好きなわけではない層“にも許容範囲な「Zガンダム」「ZZガンダム」も、福井晴敏によるノベライズなら読んでみたいな……と。




    【追記】
    この作品で「ああ、福井さんが書くならば“ガンダム”でもちゃんと読めるな」との手ごたえをつかみ、全10冊の「ガンダムU.C」を約1年がかりで読了した。読み終えた頃には、すでに「ガンダムの世界」が好きになっていたという(笑)。
    (とはいえ、ガンダムファンが言うところの「宇宙世紀もの」に限るが)

    過去の作品も、劇場版の「ガンダム」3本を観、「Zガンダム」のテレビシリーズをゆっくりと観進めている。「ガンダムU.C」を観ることを最終目標にして。

    ・・・と、そんな今、この「月に繭地には果実」を思い出したなら、「ターンAガンダム」も観たくなってしまったという(苦笑)。

    2016.08.08.書。

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著者プロフィール

1968年東京都墨田区生まれ。98年『Twelve Y.O.』で第44回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年刊行の2作目『亡国のイージス』で第2回大藪春彦賞、第18回日本冒険小説協会大賞、第53回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2003年『終戦のローレライ』で第24回吉川英治文学新人賞、第21回日本冒険小説協会大賞を受賞。05年には原作を手がけた映画『ローレライ(原作:終戦のローレライ)』『戦国自衛隊1549(原案:半村良氏)』 『亡国のイージス』が相次いで公開され話題になる。他著に『川の深さは』『小説・震災後』『Op.ローズダスト』『機動戦士ガンダムUC』などがある。

「2015年 『人類資金(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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