死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.36
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  • (50)
本棚登録 : 9249
レビュー : 912
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344401631

作品紹介・あらすじ

飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現れた。ホラー界の俊英が放つ、書き下ろし長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 最近暑いな、夏は乙一だ。

    さて乙一らしい、綺麗にまとまった作品。
    1つ違うのがこの作品には作者の主張が込められているということ。

    'きっとみんな、自分が他人にどう思われているのかを考えて、怖がったり不安になったりするんだ'

    この物語はそういった恐怖に囚われた大人が、反撃をしてこなそうな子供を攻撃することから始まる。

    背筋の凍るホラーであり、なのに読後感も清々しい。一度で二度美味しい一冊だ。

  • 「死にぞこないの青」
    マサオの戦いが始まる。


    マサオは、ちょっと太り気味で運動は苦手。走るのはクラスで一番遅い。性格は引っ込み思案でクラスのみんなを笑わせることはない。しかし、それは欠点ではない。マサオはとても良い子なのだ。にも関わらず、マサオはいじめの渦に巻き込まれていく。それも、大人の指導者によって。


    作者は、基本的に語り手(マサオ)の年齢は関係なく地の文で様々な用語を使用するそうです。その理由は言葉そのものは幼い為に知らなくても、言葉が意味するものは名付けられないまま頭の中に収まっていて思考しているに違いないと考えているから。


    例えば、マサオは、先生が自分ばかりを虐める理由をこう結論付ける。自分は“一番下の階層だからだ”と。クラスメイトは、マサオが一番下の階層の人間だから先生に叱られることはない。先生は、クラスメイトの不満はマサオに行くのだから、自分の評判を下げることはない。ここまで考える。そして、最終的に自分はクラスのバランス係だと認識する。飼育係のようにただのクラスの係であり、クラス特有のルールであり、特段悲しむべきことではない。先生に怒られることもクラスメイトが話かけてこないことも当然なんだと理解する。


    「一番下の階層」「虐められるのはバランス係のようなものだ」。小学五年生が口にすることはないだろう言葉が、マサオの頭の中で思考されている。マサオは、次第に虐めを当然と思い込むことで、悲しい・悔しいといった感情が薄れていく。このマサオの“いじめられて悔しい。哀しい。何故だ”という気持ちから“自分はバランス係なんだ。仕方がない”という諦めの気持ちに変わっていくところが非常に悲しい。


    虐めとは、非常に理不尽だと痛感させられる。しかも理不尽の主犯は、羽田という大人であり、マサオがターゲットにふさわしいと考え、意図的に生贄にすることで、自らの評価を守ろうとする。クラスメイトは、先生の意図に同意することなく、自然といじめに染まっていく。逃げようにも逃げれない。


    しかし、マサオは負けないのだ。負けない理由にアオの存在があった。しかし、アオは劇薬であった。「おまえは抜け出さなきゃいけない」というアオと「羽田を殺せ」というアオがいるのだ。


    アオの不気味さから最後までホラー一本と思いきや、マサオの強さを見せつける結末がGOODな一冊。

  • 夏だからなんとなく乙一
    中盤までの胸くそ展開を我慢すれば、後半は清々しい気持ちになれる。
    ホラーなのかな?でもああいう先生は程度は違えどやっぱりいそうなので、そう考えるとそれが一番ホラーなのかも。

  • ホラーと銘打たれているものの、主人公マサオの青春・成長物語の色彩が強い。読後には爽やかさすら残る。

  • 一晩で一気に読んで、興奮のためかその後眠れなくなった。とても読みやすくて引き込まれるために、どんどん読めた。

    イジメられた経験がある人や、現役の生徒で心当たりある人にこの本はちょっとキツイかなと思う。マサオについての描写がとても生々しくリアルで、何度も自分の学生時代を思い出す。いつのクラスにもいじめられる(シカト)対象の子が必ずいて、こんな先生もいたような気がする。決して珍しくない、どこにでもある設定で、それが余計に恐ろしかった。
    最後どうなってしまうのかと案じたが、結局ハッピーエンド(?)で終わる。しかし、現実はどうだろう。今現在、この世界で何人のマサオくんがイジメに耐えているだろうか。決してフィクションではない怖さがあった。
    本当に悩んでいる人やトラウマがある人には、この本の後酸味であるフィナールの爽快感は救いにならないだろう。むしろ傷を広げてしまうかもしれない。

  • みんな大好き乙一作品です。
    私はまだ、そんなに数を読んでないので、ピンとこなかったりしていますが……。

    今回の話の内容は、ちょっとしたことから、いじめの対象になってしまったマサオの前に、死に損ないのような真っ青な顔の子供が現れる。
    その子供は、マサオ以外に見えないようで、マサオはその子供に「青」と名前をつける。
    その青は、マサオとつかず離れの距離をとってただそこにいるだけ。何かをしてくることはない。
    マサオは、最初は「青」が何者なのかを考えるけれど、だんだんといじめがひどくなっていく中で、マサオはただそばにいるだけの青の存在を受け入れていく。
    そして、マサオは夏休みを利用して、ある復讐計画を実行に移すけれど……

    という話でした。
    話のメインは、あくまでもいじめられっこの復讐。
    ただそこに、「青」という常識ではありえないちょっと気持ちの悪い存在がプラスされるだけで、一気に物語に恐ろしさとファンタジーな要素が付加されるんですよね。
    この作者さんの発想力が面白いと思います。

    ただ、勘違いして欲しくないのは、決して青は誰かに危害を加えたわけでも、マサオの復讐に直接手を貸したわけでもない。ただ、いただけ。
    そのいただけの存在である青に、何を見い出し、何を考えるのかは、その受け取り手次第なんですよね。
    そういうことをひどく印象付けられました。

    この話は決してホラーではありません。
    日常と非日常が交差すると、こういうことが起こるんだろうな、と思わされる小説でした。

  • 理不尽な理由でイジメの標的にされたマサオに終始読んでて胸が痛くなりました。言い返せって何回も思ったけど、小学校の先生ってやっぱ絶対的な存在だったなーって自分の小学校時代を思い出しました!ラストわマサオの強い部分が見れて少しスッキリしましたし、新しく来た先生の一言が和みました!あの言葉がこの本の1番のテーマなのかなと感じました!
    読みやすく引き込まれる作品で面白かったです!

  • 何を言っても悪い方に捉える先生の、マサオをじわじわ追いつめる感じがとても怖かった。
    たぶんアオは分裂してはいけない部分だったのだと思う。アオのように人を憎んで傷つけたいという衝動も、人間が人間らしくあるためには必要なものなのかなと。
    グロテスクなだけかなと思っていたので想像以上に心に響く本でした。

    ●合わせて読みたい本●
    「人間失格」 太宰治∥著
    マサオの常に顔色を窺っているような態度が葉蔵と似ているように感じた。

  • 乙一なので最後先生は凄惨な亡くなり方で終わるのかと思ったら生かされていた。
    でも死ぬことは一番つらい事じゃないし、マサオに弱みを握られつつ生きる方がいろいろ大変かもなぁ。
    アオの容姿は気持ち悪い感じだけど、読んでいてそんなに気味悪さは無かった。

  • アオは幻なんかじゃなく、考えてた以上にやばい存在だった!…なんて結末を待ち構えていたからちょっと肩透かしだった。

    ----内容紹介----
    飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現われた。書き下ろし長編小説。

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