死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2001年10月1日発売)
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本 ・本 (212ページ) / ISBN・EAN: 9784344401631

作品紹介・あらすじ

飼育係になりたいがために嘘をついてしまったマサオは、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。先生は、他の誰かが宿題を忘れてきたり授業中騒いでいても、全部マサオのせいにするようになった。クラスメイトまでもがマサオいじめに興じるある日、彼の前に「死にぞこない」の男の子が現われた。書き下ろし長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • またしても土瓶さんが覚えていない作品を発掘してしまった。
    あとがきによると 本当に好きなものを自由に書いてしまった小説らしい。
    おとなしめのどのクラスにも数人は居そうな心優しい少年。
    教室でそっと生きていたかったのに なぜか担任教師の標的となってしまう。
    担任は、大人の弱さだね。
    自分のクラス運命の潤滑油として彼を使う。
    彼を底辺として扱うことで、他の生徒の反抗を抑え、団結に導く。
    現実的にこういう大人が存在するのがホラー。
    教室内の蟻地獄にずるずるはまっていく感じがうまいなあと思う。
    “死にぞこない”の男の子青は、少年の幻想であり、彼自身の意思だよね。
    優しさだけでは社会は生きていけないのです。
    復讐という意思表示。

    • 土瓶さん
      みんなのとこ長いね。
      ウチんとこの図書館はもう開いてたよ。
      みんなのとこ長いね。
      ウチんとこの図書館はもう開いてたよ。
      2024/01/11
    • おびのりさん
      大人だから、買えばいいのにねえ。
      大人だから、買えばいいのにねえ。
      2024/01/11
    • 1Q84O1さん
      うちは1月末から長期閉館予定です…
      さぁ、どうしようかな(・・)
      うちは1月末から長期閉館予定です…
      さぁ、どうしようかな(・・)
      2024/01/12
  • H31.2.7 読了。

     小学生のマサオ君のいじめがテーマのお話。首謀者は担任の先生。タイトルからして、もっとおどろおどろしいものを想像していたが、良い意味で裏切られた。読後感も晴れ晴れとしています。
     登場人物(?)のアオは、ダークヒーローのような存在でした。怖い印象を与える言葉を話しますが、マサオ君を助けてくれる良い奴でした。
     すごく引き込まれるように一気読みしてしまった。

    ・「そうアオが教えてくれた。たとえ足が裂けて一生、歩けなくなっても、おそらく屈服するよりはいいのだ。」

  • 引っ込み思案で自己主張が全くできない少年マサオ(小学5年生)。そんなマサオを新任教師がネチネチと苛めだした。教室でただ一人人身御供にされ、最下層の扱いを受けるマサオ。マサオという叱られ役を作ると、他の生徒に不満が溜まらず、クラスが上手く運営できるのだ。なんと浅はかな教師! 不合理もここに極まれり、だな。モンスターペアレントならぬモンスターティーチャー。「おまえが黙っていればクラスは平和なんだよ!」ってセリフ、教師の言わせるか!

    精神的に追い詰められたマサオは、真っ青で醜悪な子供アオの幻覚を見るようになる。復讐せよとアオに囁かれるマサオ。

    2/3ぐらいまでは、読んでいてひたすら不快だった。ラストに救いがあってホント良かった(ホッ)。

  • 乙一さんの作品は数冊読みましたが
    私の中では
    1番ホラーでした。

    学校や職場でも狭い世界の中では
    ありそうだなと感じました。

    この物語を読む事によって

    いじめにおいて

    加害者と
    被害者、両方の感情を知ると

    現代に起きている
    悲しい出来事も少し減るのかなと
    思います。

    メンタル安定している時に
    読むのがおすすめかも
    しれません^_^

  • マサオは悪くない。
    状況や理由を聞かず、結果から多数の意見が正しいと判断する大人(まして先生で)あってはならない。

    先生は自分の空回りが怖くなり、マサオを生け贄にクラスのみんなをまとめようとする。
    こんな下衆な先生が実際いたら困るけど、現実多くの先生は生徒を好き嫌いでランク付けしていると、学生時代から感じていたので、あながちゼロではない気もする。


    アオは、マサオの負の感情だけが幽体離脱したような存在で、マサオが感情を捨てて人形のようになると現れなかった。

    自分の感情を犠牲にしてまで、まわりに我慢する必要性はないと、家族だけはちゃんと見て気付いてあげて欲しかった。


    最後、先生にある意味生き地獄を与え、アオを消すことができ良かったと思う。

    新しい先生が来てから、前と同じように友達だったものが戻ってきて、マサオは怒らず接しているのが凄いと思った。相手の気持ちがわかる良い大人になれるだろう。

  • 久しぶりの帰省で見つけた本を備忘録として登録。
    自分でも内容をよく覚えてないのでレビューが書けません。

  • 家庭ドラマみたいな本好きで多く読んでたけど、最近飽きて

    SNSで怖そうな本(ホラー)紹介してて読んでみた。
    ホラー?て感じで
    実話⁈と思うくらい身近な話しだった。
    小説なので結末はもちろん違うけど。
    私は中学入る時に転校したのでその後はわからないけど
    小学生の高学年の時イケニエみたいな男子居たな‥
    先生から理不尽に怒られてた男の子

    初めての作者でどんな感じかと思って読み始めたけど読みやすくて凄い良かった。



  • 主人公に感情移入してずいぶん引き込まれました。
    この、はっきりとしたあからさまな身体的な暴力でもなければ徹底的な無視でもなくて休み時間には共に遊ぶけど他は皆からの視線が馬鹿にされた様な扱いだったりどこか冷たい気がする、、、って。これが平成や今のイジメなのかなと思いました。自分の経験と少なからず重なります。
    決めてがないから誰も罰せられる事はないけど、じわじわと集団で苦しめられていく感じ。無言の同調圧力。そのあたりの表現がとても緻密で好きでした。
    アオに自分の本とを自覚させてもらい救われたのと
    羽田先生も最後は自分の弱さを認めてくれて
    それがせめてもの救いだった。実際なら最後の最後まで認めてくれないオトナばかりだと思いますがそこは物語としてハッピーエンドでよかったと思いました。新任の一生懸命やってもこれなら、しょうがないじゃない、ってあっけらかんと笑える感じがとてもホッとしました。

  • 心の思いと現実は整合性がよれてなくても良い

  • 「死にぞこないの青」
    マサオの戦いが始まる。


    マサオは、ちょっと太り気味で運動は苦手。走るのはクラスで一番遅い。性格は引っ込み思案でクラスのみんなを笑わせることはない。しかし、それは欠点ではない。マサオはとても良い子なのだ。にも関わらず、マサオはいじめの渦に巻き込まれていく。それも、大人の指導者によって。


    作者は、基本的に語り手(マサオ)の年齢は関係なく地の文で様々な用語を使用するそうです。その理由は言葉そのものは幼い為に知らなくても、言葉が意味するものは名付けられないまま頭の中に収まっていて思考しているに違いないと考えているから。


    例えば、マサオは、先生が自分ばかりを虐める理由をこう結論付ける。自分は“一番下の階層だからだ”と。クラスメイトは、マサオが一番下の階層の人間だから先生に叱られることはない。先生は、クラスメイトの不満はマサオに行くのだから、自分の評判を下げることはない。ここまで考える。そして、最終的に自分はクラスのバランス係だと認識する。飼育係のようにただのクラスの係であり、クラス特有のルールであり、特段悲しむべきことではない。先生に怒られることもクラスメイトが話かけてこないことも当然なんだと理解する。


    「一番下の階層」「虐められるのはバランス係のようなものだ」。小学五年生が口にすることはないだろう言葉が、マサオの頭の中で思考されている。マサオは、次第に虐めを当然と思い込むことで、悲しい・悔しいといった感情が薄れていく。このマサオの“いじめられて悔しい。哀しい。何故だ”という気持ちから“自分はバランス係なんだ。仕方がない”という諦めの気持ちに変わっていくところが非常に悲しい。


    虐めとは、非常に理不尽だと痛感させられる。しかも理不尽の主犯は、羽田という大人であり、マサオがターゲットにふさわしいと考え、意図的に生贄にすることで、自らの評価を守ろうとする。クラスメイトは、先生の意図に同意することなく、自然といじめに染まっていく。逃げようにも逃げれない。


    しかし、マサオは負けないのだ。負けない理由にアオの存在があった。しかし、アオは劇薬であった。「おまえは抜け出さなきゃいけない」というアオと「羽田を殺せ」というアオがいるのだ。


    アオの不気味さから最後までホラー一本と思いきや、マサオの強さを見せつける結末がGOODな一冊。

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著者プロフィール

1996年、『夏と花火と私の死体』で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー。2002年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞を受賞。他著に『失はれる物語』など。

「2022年 『さよならに反する現象』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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