暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
3.82
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本棚登録 : 16555
感想 : 1981
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344402140

作品紹介・あらすじ

視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家へ逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まった-。書き下ろし小説。

感想・レビュー・書評

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  • 視力を失い、父も亡くし、一人きりで家の中に篭りがちなミチル。職場の先輩を線路から突き落とし殺した罪で警察に追われる身のアキヒロ。アキヒロはミチルの家に入り込み身を隠す。ミチルに気付かれないように息をひそめて。

    ミチルは視力を失ったことから、アキヒロは子どもの頃から人付き合いが苦手だったことから、他人と関わるより一人きりで生きていくことを選んている。しかし、一つ屋根の下で暮らすようになってから変わってゆく。

    ミチル目線、アキヒロ目線、交互に語られる。
    ミチルに気付かれずにアキヒロは身を隠し切れるだろうか?
    アキヒロの存在に気付いていることを、ミチルは隠し通せるだろうか?
    まずは、ここがこの物語の醍醐味。

    しかし、二人がお互いの存在を通して自分を見つめ直し、もう一人では生きていけないと思っていく過程が最も心に突き刺さってくるところ。

    ミチルとアキヒロのあまりの孤独に読んでいて胸が痛くなることが何度もありました。
    でも温かい気持ちで読み終えることができました。


  • 表紙から、著者特有の奇抜なホラー作と思いきや、盲目の女性と、殺人の容疑で警察に追われている男の共同生活から芽生える思い合いのヒューマンドラマ。

    同じ空間をお互い無言で共有する2人が、やがてその存在を知り知られ、いつの間にか心の拠りどころとなっていく展開は秀逸であり、久々に心がほっこりした。

    著者の新たな一面が見れた善き作品であった。

  • まず、設定が斬新です!!
    殺人容疑で警察に追われている男が、目の見えない女性の家にだまって隠れ潜むというお話とは。
    私はその設定のスリリングさに、読みたい気持ちが押さえられませんでした。

    私の母は 子供の頃から足が悪いのですが
    私は、時々聞かされていました。
    「目の見えない人はもっと不自由だから、」と。
    目の見えない世界、真っ暗闇な世界は、私には想像できない世界です。この本を読んでも暗闇の世界の怖さは想像してもわからないなと、強く感じて読みました。

    ミチルは家族にも恵まれず、天涯孤独です。
    友達もカズエしかいない。しかも、目も見えなくて真っ暗闇の世界にいる、1人家に籠りがちな生活なんて、最上級の孤独な人だなと感じました。
    そして私はそんなミチルに、切ない思いを寄せて読み進めました。

    また、アキヒロも、人付き合いが苦手で孤独を抱えていましたし、何より自己肯定感は、とても低い人だと感じました。
    ミチルの家に潜んでいる間にアキヒロは自分自身のこれまでの人間関係について見つめ直したりします。
    学校でも、職場においても上手く人と馴染めないところ。それにより、バカにされたりすることが許せずに、とうとう殺意まで持ってしまう事など、自分の過去を振り返ったりして考えていきます。
    そしてまた、人との接触を疎い、そんな気持ちもあって自分の居場所はないと、固く思い込んでいた事なども考えます。
    自分にとって必要だったのは何か?居場所ではなくて、それを許してくれる人間だったのだ!と…。
    ミチルとの奇妙な無言の空間のなかでそう、気がついていきます。

    気がついて良かったと読んでいた私も、うれしい気持ちになりました。

    家のなかで二人で過ごすうちにだんだんとミチルは、気配を感じてきたときに…
    お互いに相手への思いやりから生まれる、密やかな行動のいろいろが良かったです。
    あまりにもやさしく、でも切なさもありこちらまで、息をひそめて見守るように読み進めました。

    ミチルもあまりの孤独さと境遇の辛さで、後ろ向きな生活しかできなかったけれど、アキヒロの存在のやさしさに触れてとても強くなったと驚きました…。
    アキヒロの冤罪を、はらすために命をかけて、
    ○○○に真実を問い詰めたりできるところはとても感動しました。
    私はミチルは弱いように思っていたけれど強さを持てるまでに、成長したのではないかと考えました。

    そして、自分の首を絞めた○○○を強く抱き締めて、泣くところ。
    ここで私は、凄いね……とため息が出ました。

    「 せめて、私はあなたのために泣こう。
    悲しんであげることで、傷つけられたあなたの魂が少しでも癒えるのならいくらでも涙を流そう。自分の嗚咽だけでは足りないかもしれないが、それでも私はあなたのために、祈ろう。」

    「 首を絞められたのと、嗚咽で喉が震えるせいで、ほとんど声にならなかった。
    私の目は光を忘れ、もう、何も映さない。
    しかしあなたが、暗闇のなかで頭を抱えてうずくまっている姿が、私には見えるのだ……」

    この表現、この描写にはかなりの衝撃を受けました。
    凄い本を読んでしまったと感じました。

    あとがきも楽しい 乙一さん……
    とてもとても良かったです !!

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      松子さん、コメントありがとうございます。
      松子さんからコメントいただけるなんてとても嬉しいです。
      フォローも、ありがとうございます。
      いつも...
      松子さん、コメントありがとうございます。
      松子さんからコメントいただけるなんてとても嬉しいです。
      フォローも、ありがとうございます。
      いつも、松子さんの感想を、読ませていただいています。
      ブクログ初心者なので、どうぞよろしくお願いいたします。
      本棚に、読みたい本ばかりあって、、読む方がなかなか追いついていきませんが、少しずつ頑張りたいと思います。ありがとうございます。
      2022/07/26
    • 松子さん
      チーニャさん、ブクログ始められたばかりだったんですね
      わたしは一年が過ぎましたが、いまだに使い方がよくわかっていません…(^^;

      そして、...
      チーニャさん、ブクログ始められたばかりだったんですね
      わたしは一年が過ぎましたが、いまだに使い方がよくわかっていません…(^^;

      そして、読みたい本ばかりあってというのが
      一緒ですー!

      チーニャさんの感想これから楽しみにしてます
      (^^)
      2022/07/26
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      松子さん、本当にありがとうございます!
      感激です!
      松子さんのように、ブクログで、楽しい読書をしていきたいです➰✨

      どうぞよろしくお願いし...
      松子さん、本当にありがとうございます!
      感激です!
      松子さんのように、ブクログで、楽しい読書をしていきたいです➰✨

      どうぞよろしくお願いします
      2022/07/26
  • 女の家に男が転がり込んで同棲生活が始まるという物語
    これだけ聞くとこれから幸せな暮らしが始まる予感でうらやましい!
    けど、これは乙一作品です!
    そんな幸せな同棲生活のはずがありません…

    この家の住人ミチルは視力をなくして暗闇の中で独り孤独に暮らす
    そして、転がり込んできた男アキヒロは職場で人間関係に悩んでいた
    それだけだったらまだいいのだか(決していいわけではないが…)、アキヒロは駅のホームで同僚を突き飛ばし殺害した犯人として追われていた
    ミチルの家に転がり込んだのも警察から逃げるためだったのだ
    ミチルの目が見えないことを上手く利用して家に逃げ込み居間の隅にうずくまり過ごす


    少しずつ家に他人の気配を感じるようになるミチルが、ある日、アキヒロの存在を確信する!
    しかし、知らない振りをして部屋から追い出そうとはしない…
    なぜ?

    また、アキヒロもなぜこうしてまでこの家の中に潜んでいるのだろうか?と考えるようになる
    それは、逮捕される前にやっておきたいことがあるからだ
    だから、今はこの家に潜んでいなければならないのだ
    やっておきたいこととは一体…?


    奇妙な形で始まった同棲生活だが、今まで孤独と過ごしてきた二人にとってお互いを心のどこかで必要としている存在に変わってくる
    それは、友情?愛情?それとも…


    ジャケットだけを見ると怖〜いホラー作品を想像してしまうが、本作は心に刺さる作品だ!

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      あゆみりんさん……
      でも怖くないですから~
      大丈夫ですよ〰️!!(^ー^)
      あゆみりんさん……
      でも怖くないですから~
      大丈夫ですよ〰️!!(^ー^)
      2023/03/23
    • mihiroさん
      1Qさ〜ん♬出遅れごめんなさい!
      この作品大好きです\♡︎/
      表紙ホラーで損してますよね〜笑笑
      まあ私なら気づいてないフリして、警察に即駆け...
      1Qさ〜ん♬出遅れごめんなさい!
      この作品大好きです\♡︎/
      表紙ホラーで損してますよね〜笑笑
      まあ私なら気づいてないフリして、警察に即駆け込むけどな〜笑
      2023/03/24
    • 1Q84O1さん
      mihiroさん、警察に即駆け込む!
      それが正しい対応ですw
      知らない人が家に居座るって本当だったら怖いですよ(-.-;)
      mihiroさん、警察に即駆け込む!
      それが正しい対応ですw
      知らない人が家に居座るって本当だったら怖いですよ(-.-;)
      2023/03/24
  • H31.2.27 読了。

     盲目のミチルと殺人容疑者のアキヒロの奇妙な同居生活。事故の場面は描写されておらず。興味をそそられる書き方にページをめくる手が止まらなかった。また、ミチルとアキヒロの関係はどうなるんだろうということも気になった。
     最後まで気が抜けないドキドキ感があり、でも読後感は良かった。
     さらに人間関係で悩むミチルやアキヒロの過去や現在の心理描写は、共感できるところもあった。
     乙一さんの別の作品も読んでみたい。

    ・「一人で生きていけるというのは、嘘だった。」
    ・「自分のいていい場所はどこなのだろうかと、考えたこともあった。しかし必要だったのは、場所ではなかった。必要だったのは、自分の存在を許す人間だったのだと思う。」

  • 一つの部屋に、お互いがお互いを意識しない様に共存する姿は、非常にスリルがあった
    文字にしている分、より描写が細かく描かれていて想像が膨らむ
    映像化してしまったら面白さは半減してしまうかも

    考えてみた
    視覚障害者の他人の家に、何日も無断で自分が潜伏する姿を。。。
    同じ部屋に何時間も息を殺さなければならない
    それにトイレ問題
    私はトイレが近いのでアウトー!
    それにくしゃみや咳もでてしまうだろう
    そして何時間も同じ姿勢はきつい
    なかなかシビアな設定だ

    『孤独』がいいと思って来た似たモノ同士の二人
    でも自分の存在を認め合える人に出会えて、これからは一人ではなく支え合って生きていければいいと思った

  • 約10年ぶりに再読。

    久しぶりに読んですごく良かったなって
    思いました。

    伏線もすごくきいていて、
    設定も良く面白かったです。

    少しづつ心が開けて行って、支え合う。
    感動しますね。

  • これはすごい…
    物語りは盲目のミチルの部屋に、同僚を駅のホームから突き落とし殺害したアキヒロが身を隠し生活をするという、何とも気味の悪い設定で進みます
    読み始めた時は思いもよらなかった、読後のこの感情
    感動という簡単な一言では表せない感情でした

    境遇は違えど、1人でいることが幸せなんだ、傷付かない唯一の方法なんだと自分自身に言い聞かせている2人
    でも、本当は自分に嘘をついていることを分かっている…分かっているけど変われない自分に蓋をする、そんな同じ匂いのする2人
    そんな2人が特殊な設定の元、徐々に変わっていく姿に心が揺すぶられます

    最後まで読むと、すべてに無駄のない展開であることにも驚かされます

    初読みの作家さんでありましたが、凄い作家さんに出会えたと思いました

    【読了短歌】

    希望も光も見えないわたしを
    救い出したのは見えないあなた

  • 駅のホームが見える家に一人で暮らす途中失明のミチル。人付き合いが苦手で、職場でも孤立しているアキヒロ。ホームでの事故をキッカケに、アキヒロはミチルの家にそっと忍び込む。誰かの気配を感じながらも、気づかないふりをするミチル。

     不思議な労わりあうような関係が築かれていく。相手のことを知ると、不思議と怖くなくなる。理解できる気持ちが存在するから。相手が何者なのか理解できない時が一番怖くて、怖くて自分を守るために攻撃してしまう。でも、ミチルには見えない。とっさに逃げることができない。でも、だからって生きていたいと思ってるのか?もうこの先には恋愛も結婚出産も諦めた。なら、怖いものなんてある?

     人を信じるなんてしたことなかったアキヒロが、ミチルの優しさに触れていく。こんなに優しい物語があるのかと。思った矢先に鳥肌。

  • どうしてこんな、夢に出てきそうに怖ろしげな表紙?!
    と首を傾げてしまうような、静かでうつくしい恋物語です。

    3年前、不慮の事故で視力を失って以来、ほとんど家に閉じこもったままのミチル。
    同僚がホームから転落死した事件の犯人として追われ、
    ミチルの家に潜み、警察の追及から逃れようとする青年、アキヒロ。

    ミチルが家の中にアキヒロの存在を確信するまでの
    触れたら切れそうなほどに張りつめた空気が
    お互いの存在を受け入れるにつれ、やわらかくふくらんで
    孤独なふたりを温かく包んでいく様子が、ちゃんと伝わってくるのがうれしい。

    強められすぎたストーブの火を、息をころして弱める。
    戸棚の上からミチルの頭上に落下する土鍋を、隠れ場所から飛出し、受け止める。
    ひとり暮らしだけれど、ふたり分のシチューを作って、テーブルにふたつ、皿を並べる。
    ひとりで外に出る決意をしたミチルに寄り添い、目的地に辿り着くまで見届ける。

    相手への思いやりから生まれる、アキヒロとミチルのひそやかな行動のひとつひとつが
    あまりにやさしくて、せつなくて、こちらまで息をひそめて見守ってしまいます。

    突然閉じ込められた暗闇の世界で、このまま静かに消えていきたかったミチルが
    否応もなく踏み込んできたアキヒロを受け入れ、追っ手から守りたいと願い
    人との接触を厭い、どこにも自分の居場所はないと思っていたアキヒロは
    ミチルによって、必要だったのは居場所ではなく、
    自分の存在を許してくれる人間だったのだと気付き

    「暗いところ」で巡り会ったふたりが、頼りない身体と、頼りない心を支え合って
    明るいほうへ歩き出す冬の日。
    しびれるような寒さのむこうに、温かい春の光が確かに感じられて
    幸せな気持ちになります。
    怖い表紙に惑わされず、ぜひ読んでいただきたい物語です。

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著者プロフィール

1996年、『夏と花火と私の死体』で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー。2002年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞を受賞。他著に『失はれる物語』など。

「2022年 『さよならに反する現象』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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