月の裏側 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 3724
レビュー : 432
  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344402621

作品紹介・あらすじ

九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも?事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは"人間もどき"の存在に気づく…。

感想・レビュー・書評

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  • 九州の水郷都市で起こった複数の失踪事件。
    失踪した人たちは数日後、何事もなかったかのように戻ってくる。
    ただし記憶を失って…。
    その事件に興味を持ち、調べ始める元大学教授・その教え子・元教授の娘・新聞記者。


    主人公の一人である多聞が印象的だ。
    「僕は愛される男なんだ」
    こんなセリフをさらっと自分で言っちゃうような人。
    だからといってナルシストなのではなく、淡々としていて周りにも自分にも執着がなさそうな人。いろんな意味でマイペース。

    決意の夜の多聞の長靴は藍子が履かせたのかと思ったけれど、最終章の藍子の独白を読んだ感じでは藍子ではなさそう。

    このタイミングのこの状況下で多聞に再会した藍子はなんだか不憫だなぁ。


    まだ恩田作品を少ししか読んでいない身で「いつもの通り」というのも気がひけるけれど、いつもの通り大きな謎の解決・解明はなし。
    お話の風呂敷がだんだん広がっていくのを読みながら「コレちゃんとたためるのかしら」と心配してしまったのだけど、たたむどころか、広げる余地があるままラスト。

    登場人物の一人の言葉
    ―この世の中には説明できないこと、説明しなくてもいいことがあるんじゃないかな

    この物語の謎もそれでいいような気がする。

  • 久しぶりの恩田作品。
    本屋で裏の内容紹介を読んだら、消えた老女と「人間もどき」真相が気になって買ってしまった(笑)
    思ってた以上にホラー色の強い作品でした。
    肌にねっとりとした湿度と恐怖を感じれる、さすが恩田先生の描写力。
    こわいこわい。中盤怖いです。
    恩田先生の作品はいつもラストがねぇ…好みでないんですけど、今回も見事……にこけました。
    急に恋愛色強くなってもねぇ…
    グロさでご馳走さま状態の心についていかないですねぇ……
    もういっそのこと、恐怖状態のまま放り出しておいてくれても良かったですけどねぇ………
    あともう一点。藍子は子どもがいない設定の方が良かったなぁ。あんな狂気じみた状況で我が子の安否も分からず取り乱さない親いないでしょ。書く気がないなら半端な設定しなけりゃいいのに…。
    大体、戻ってきた奴らが半端すぎる。骨がないって…レントゲンしたら分かってまうやん(笑)白い餅って…??採血できんよね…とか医療職目線で見てしまう(笑)どうせなら完璧作ってお返ししてくれたらいいのに……
    不満ばっかりでてしまいますが、やっぱりここまで一気読みしてしまうのは恩田先生の魅力です。濃密な夜を過ごせました。

  • 怖かった。怖かったけど再読したくなる。この終わり方やから怖いんやろなぁ。スッキリせん気もするけど好きな作品。

  • 以下、ネタバレ含むので注意。



    箭納倉の地で連続して起きた失踪事件。
    その謎を解くべく、協一郎教授が多聞くんを呼び寄せるのであった……。
    とミステリー色強そうに見えて、途中からはもうホラー。怖すぎる。

    それ故?謎は謎として放り出されてしまう。
    まあ、何にでも理由を求めることは良くない。
    のだけど、ここまでひっそりと人を「盗んで」きた筈なのに、なんでまたこんな大規模な計画を企てたんだろう、と。
    それが日本各地で起きていて、なら分かるけど、箭納倉の地という規模で、果たして新たなる夜は身を結ぶのだろうか、と疑問。
    そもそも、「盗む」という言葉からは、何か意味を感じさせるんだけど、「盗む」ことの生物的利は、相手側に何をもたらすんだろう。
    などなど、割と読み飛ばしているだけかも分からないけど、分からないけど良かった!とまで言い切れないモヤモヤ感が残ったりする。

    藍子さんなんて、まさに巻き込まれ事故とも言えるもので。
    まさか多聞くんがテキパキと帰っちゃうわ、自分は最早取り返しのつかないことになってるわ、で。
    さて、箭納倉勢はここからどうするよ、って面白い終わり方でもあるとは思う。(けども。)

    今いる自分は、自分ではないのかもしれない。
    忘れただけと思っていた記憶は、そもそもなかっただけなのかもしれない。
    そんな自分への不安を掻き立てられる作品でした。
    ま。人類補完計画には反対!ということで。

    「だって、僕たち自身が遺伝子の乗り物なんだもの」

  • 最初は理解出来ない内容が多かったが、図書館の一件で唐突に面白くなった。
    そこからは最後の一文まで文句無し。
    ユージニアのような柔らかな文面に、有川浩の自衛隊三部作のようなSF感を融合させた印象。
    あまりにも面白かったので読み終えたその場で同僚に貸しました。
    恩田陸作品はいくつか読んでいるけれど、読むたびに印象がまったく違う。
    個人的にはこれが一番好きです。

  • なんという重厚な読み応え。
    面白かった。

    細かく分けられた章(チャプター)と、
    章の冒頭で語られる正体不明(少しずつ特定可能になってくる)のモノローグが印象的。

    最初は馴染みのない堀の街と多聞と協一郎という捉えどころのない不思議なキャラクターに警戒心がなかなか解けず、世界に入り込むのに時間がかかったけれど、
    4割を超えたあたりから、少し怖いくらい箭納倉の街に入り込んでしまった。
    そのあたりから面白さとともに、ゾクリと背筋が寒くなる緊張感がぐっと増し、却って休み休み現実の乾いた温かな空気を確認せずにはいられなくなった。
    この時期に読んだのもある意味当たりだったのかもしれない。私の住む街には梅雨はないが、やはりこの時期雨が多く、読んでいる間に天気の悪い日が続くと現実感が時々わからなくなる。
    最近久しぶりに恩田陸作品を読んでいる。
    今作は初読。
    けれど、この『月の裏側』を読んでやっと恩田さんの作風を思い出した、というか読んでいる時に受ける印象を思い出した。
    そうだ、この感覚だ、と。
    恩田作品は私の好きな他のどの作家とも全然違っていて、独自の不思議な世界観を持っている。
    謎が多く、少し怖いホラー的な要素を持っていることも多い。
    謎が謎のままで終わることもままあるが、
    ほどんどの場合はそれでも良いような気がするから不思議だ。
    ”なんて言うのかな。この世の中には説明できないこと、説明しなくてもいいことがあるんじゃないかなって。”
    そういうことなのだろう。
    もちろん、その手法が”逃げ”のために使われてはいけないけれど、物語の深みを出すために利用されるのならば、アリということか。

    先日再読した『Q&A』も、もう少しだけ全体像の輪郭がはっきりしていれば、もやもやを残すこともなかったかもしれないな。私見ではありますが。

  • あらすじをほぼ読まず読み、どういう方向へ行くのだと不安になりながら読み進み、あぁ、こういった小説は初めてだなと思った。ホラーやオカルト映画はたくさん観るが、小説は初めて。
    じんわり、じわじわが続き、映画では描かれない、恐怖の中で冗談言ったり、緊張感が途切れてなんかどうでもよくなる感覚などが描かれている。いつのまにか盗まれているという感覚も怖い。ただ、原因がわかってからは失速。というより僕の興味が失われてしまった。
    文章表現が魅力的で、じめじめとした雰囲気作りやニュアンスに膝を打つ。しかし丁寧すぎて不気味さがいまいち伝わってこない。例えば夢野久作のような不安定感が文章にあると、本当に怖くなるのではないか。まぁそんなん恩田さんに求めてないんなけど。

  • 独特な世界観。読み終わった後にも余韻に浸れるとてもいい作品だと思う。SF好きな人向けかも。

  • 表紙の印象から何故かずっと時代ものだと思い込み敬遠していたけど、全然違った。

    水路が張り巡らされた街、素敵だ。不気味さもあり美しさもありで夢中で読んでしまった。

    白雨みたいな猫が欲しい。

  • 柳川に旅行し、帰りの電車内で読んだ。
    本当は事前に読むべきだったんだろうけど、怖いんだもの!掘割が!雨降ってたし!!
    しかし農協倉庫は探すべきだった。
    鳩笛は入手したけど。
    水天宮の近くにあっただろうか…

    小説内に漂う得体のしれない不気味さが確かに存在する街だった。
    どこまでも水に囲まれているし。
    ふと気がつくと細い水路が張り巡らされている。
    柳川までの車窓から見るにつけ、周辺の街も溜池や水路が多い。
    こりゃ逃げられないわ。

    結局、集団で盗まれたのは箭納倉だけだったのよね。
    このあと、世界に盗まれた人たちが拡散して、無意識は大きな一つのものき集約して行くのかな。
    その世界でのお葬式はどうなるんだろう。火葬したらタールのようなものが残るだけになっちゃうんだよね。
    みんなが盗まれたあとは火葬って文化が自然と消滅するのかしら。

    またいつか柳川へ行こう。
    フランス料理屋さんを探して。
    合歓の木の盛りの時期に。

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著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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