- 本 ・本 (485ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344402713
作品紹介・あらすじ
“死のゲーム”の開始後十八時間、混乱のうちに既にクラスメイトの半数が死亡していた。秋也は中川典子、転校生の川田章吾とともに政府への逆襲を誓うが、その前に殺人マシンと化した桐山和雄が立ちはだかる。生死の狭間で彼らそれぞれが守ったのは、意志か、誇りか、約束か。中高生を中心に熱狂的な支持を得た新世代青春小説の金字塔!
感想・レビュー・書評
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この本で燃え尽きてしまったんでしょうか。単著ではこれだけしか出版されなかったはず。正当な続編も書けただろうに・・・。
当時こんな不謹慎な本は出してはいけないという空気感でしたが、読んでみれば青春小説と言ってもいいくらいの作品だと思いますし、描写も実はそこまで生々しくないです。今はもっと血みどろの作品が溢れていますので、今読むと何がそんなに問題だったんかなと首を傾げる思いです。
ちなみに登場人物が中学生というのが違和感ありすぎて笑えます。高校生でもどうかと思う位老成しています。 -
42人いた生徒達も下巻では半分以下まで殺される。
愛と友情と殺しの物語。
これだけいる登場人物を余すところなく、キャラクターを活かし切るのも凄まじい。大概、登場人物が多いとボケることが多いが。
中学3年生が互いに殺し合うというデスゲームではあるが、その実、生きること、生に対する執着というような、あくまでも至極前向きな作品だったんだな。
出版当初、ホラー大賞の選考でお歴々の圧力で抹殺された本作だが、見る人は見るもんだな。当時は国会まで巻き込んだ一騒動も起きてたな。
何にせよ、こうして世に出たわけだから。
他の作品が出てくることを楽しみにしているが、いつになることやら。 -
久々に夜を明かして読んだ小説。
上下巻1000ページ、ぶっ通しで読んだ。 -
上下巻読み終わって思ったことは、タイトルから勝手に想起していたほど「キワモノ」な感じでは無かったということ。
青春小説でありミステリーのようでもあり、話の進みでも色々予想を裏切られたりもした。中学生同士が殺し合うシーンはそれはてんこ盛りだけど、そういう本は世の中に沢山あるし、それが良いのか悪いのかはそれぞれ読んだ人が決めることだと思う(国会でなぜか論議を呼んだようだけど)。私は物語として楽しめた。
長いし1クラス42人と登場人物が多いので、それぞれの関係性やその最期など覚えておくのには少し苦労した。でも全員見事に性格や裏事情など書き分けていて飽きなかった。
最後の方で典子が慶子だったらとして川田にかける言葉「どうか生きて。喋って、考えて、行動して。時々音楽を聞いたり、絵を見たりして、感動して。よく笑って、たまには涙も流して。もし、すてきな女の子を見つけたら、そのこをくどいて、そのこと愛を交わして。きっと、それでこそ、あたしがほんとに好きだったあなただと思う」ーーーっていうのが良かった。 -
設定の荒唐無稽さ、狙ってチョイスしたであろう軽薄な表現、露骨なパロディに現代日本への直球な皮肉と、濃いB級グルメ的味付けに覆われているが、実はストーリーとキャラクターの性格付けがしっかりと作られている。
42人の生徒がデスゲームに強制参加させられるわけだが、生徒をいくつかのグループに分けてみると、どのグループがどんな順序で退場したかきっちり思い出せるくらいにストーリーは明確で、それぞれのグループを特徴づけるエピソードは、そこだけ切り取ると綺麗なジュブナイル小説になっている。
「桐山和雄のコインが表だったら」「三村信史が瀬戸豊に会っていなかったら」「榊祐子の武器が違っていたら」... いろいろなifを想像できるのは、それだけ本作に魅了させるものがあるからだと思う。 -
そして再び、“残り2人”。だが無論のこと、彼らはあなたがた全てとともにある。
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“死のゲーム”の開始後十八時間、混乱のうちに既にクラスメイトの半数が死亡していた。秋也は中川典子、転校生の川田章吾とともに政府への逆襲を誓うが、その前に殺人マシンと化した桐山和雄が立ちはだかる。生死の狭間で彼らそれぞれが守ったのは、意志か、誇りか、約束か。中高生を中心に熱狂的な支持を得た新世代青春小説の金字塔。
・レビュー
上巻レビューと合わせて。
まず、数年(十数年だったか)前の大騒ぎが妥当だったかというと少なくとも現代においては妥当じゃなかっただろうと思う。時代が多くを許容するようになったのか、あの頃が敏感なだけだったのか、その辺は当時幼かった自分にはわからない。描写が残酷かというとそうでもない。例えば本を読まない人か、普段は平和的な本を読んでいる人には衝撃的だったのかもしれない、しかし僕のようなミステリ好きなんかには特別残酷であるとは思えなかった。もっとエグいものはいくらでもある、例を挙げれば『殺戮にいたる病』など本作の比ではない。
さて、内容については素晴らしい。殺し合いの話ではあるけれど、テーマに関しては、単純に考えれば理不尽な極限状態に陥った思春期の少年少女の心情を描いた、ごく普通の青春小説とも言える。
テーマはごく普通であるけれど、描写は繊細かつ正確だと思う。リアリティがあると表現する読者もいるが、僕はリアリティに関してはやや無理がある場面もあるとは思う。だがそれを言い出したら舞台となる国家自体に問題が出てくる。外枠としてのリアリティはこの小説では問題にならない。
リアリティがあるとすれば心理状態に関してだろう。これは大いに賛同する。40人も登場人物がいれば、自分に近い思考をするキャラクターがいておかしくない。自分ならどうするだろうと想像させる。その点がうまい設定だと思う。
七原、桐山、川田、三村、杉村、中川、相馬あたりは序盤から目立つわけだけれど、それ以外のキャラクターの設定に手を抜いているかといえばそうではない。近年、あるコミュニティが突如殺し合いを強いられるという設定は増えてきたがこの辺りが先駆者として本作の作者が一枚上手だと思う。
それでいて、スピーディーさは凄まじい物がある。あっという間に読むことができるはずである。それは、独特な文体、展開のテンポの良さに起因するところと思う。あれだけ登場人物とその境遇を解りやすく描写していながら、テンポは最後まで殺さない。その技術はすごいと思う。
ストーリーに関しては、「まあそうなるだろう」と落ちるところに落ちた感があるけれど、これはおそらくコロンブスの卵であって、当時読んでいれば意外性はあったかもしれない。あるいは本作の系譜として、海外の先駆的な作品を読んでいたかにもよる。
しかし、貫井徳郎の『慟哭』同様、簡単にオチが予想出来ても、それなりに面白い。きっと、テンポに身を任せて一気に読んでしまうのがいいだろうと思う。
高見広春の作品





