- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344404885
作品紹介・あらすじ
炭管疑獄事件で法務政務次官を辞任した角栄は、その時すでに党内の地歩を固めていた。やがて池田勇人を大蔵大臣に推し、再び政界の中枢へと昇りつめてゆく。カネと女、権力を高らかに肯定し、高度成長を演出した情念の宰相の人間力、その権謀術数。小泉政権が打ち倒そうとする巨大な幻影の源とは何か?戦後最大の栄光と汚辱を描いた一大叙事詩。
感想・レビュー・書評
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実は弱さを秘めているからこそ人の弱さがわかるんだよなぁ。
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戦争終戦を経て高度経済成長時代に運(人と機会)
を掴み取りながら、日本という国を復興繁栄させた稀有なリーダー像が描き出されている。清濁合わせ飲み国を国民を導く、政治家としての判断力と実行力が発揮される、これぞ異形の将軍角栄であろう。本を読むと自分の人生と重ね合わせ、自分もこうありたいなと夢想するものであるが、角栄のようには生きられないなと一歩後ろ引きながらの読後感である。今の令和の時代にはどのようなリーダーが求められるのであろうか? -
ロッキード事件は、巷間言われているように、やはりアメリカの陰謀絡みだったようだ。そして、日本の政治もいつか金権政治からだ脱却しなければならない、そのターニングポイントにおいて、最も派手に金集めをしていた田中がスケープゴートにされた、というのがことの真相のようだ。実際のところ、当時は「カネを集めることこそが政界で実力を測る最大の尺度」だったという。
下巻から、田中の人となりを表す言葉を拾ってみると、「昔の女の縁者が田中を頼って来たこともある。田中はその人達を全部面倒みた。責任回避などは絶対にしない人だった」、「勘がいい、人情味、浪花節的、せっかち、短気、わかったの角さん、政策に強い、行動力、コンピューター付きブルドーザー、汗っかき、そして金権。また天才的、勉強家、呑み込み、気さく」、「物事にこだわらない陽気な人物」、「大勢の人々を統率するために欠くべからざる、細事にこだわらない鷹揚な性格」、「法律の読みかえの名人」(「法律は人間が生活の便宜のために使いこなすもの」)、「強運の持ち主」、「何事についても、具体的な発想、知識では、役人が及びもつかない蓄積にうらづけられた力量を示す」、「田中政治とは、一言でいえば合理主義だね。そして得意技は再建だ。」、「頭の回転は速いし、人間は陽気だし、元気はいいし、異色の政治家だな。とにかく行動力は抜群だね。しかもものを見たらすぐに急所がわかる人間」、「税金のプロ」、「一般的な問題よりは個別的な問題、抽象的な問題よりは具体的な問題を得意とする人物」、「豪毅の精神とはうらはらの、脆弱な一面」、「循環気質で、躁と鬱との間をゆるやかに循環するタイプ」、「欠点は、人のよさ、気の弱さ」(冷徹になれない弱さ)、となる。
日米繊維交渉、日中国交正常化、日本独自の石油ルートの開拓交渉など、田中でなければ達成出来なかったであろう大きな成果の数々は、彼がいかに卓越した政治家だったかを示している。田中角栄の偉大さが分かる一冊だった。
(金権政治の部分を除けば)閉塞感のある現在の日本にこそ必要な政治家なんだろうな。 -
上巻ご参照下さい。
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世の中の田中角栄ブームに乗って読んでみた。
僕が物心つく頃にはもうロッキード事件で悪いことをした人という感じだったんだけど、それまでの政治活動の部分を知ると本当に型破りな人だったんだなと。
他の田中角栄本を読んだわけじゃないけど、とりあえずきっかけにするには上手にまとまってる本なのかなと思う。 -
哀愁が漂い始めた角栄の部分が非常によい。
ここまでの人物といえどもという感覚 -
角栄氏のダイナミックさは、今の政治家にはないものである。目先の事の処理にかけては天才的であった彼は、今の時代ならばもっと活躍できたかもしれない。角栄氏には女が数多くいたといわれるが、女についての記載があまりなかった点が残念である。
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読んだ気がしたがブックオフで購入。やはり読んでいた。でも興味深く読んでいる
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日本の政治家らしいといえば、田中角栄である。
それを、津本陽は、様々な資料を使い、
金権政治家を暴くというより、人間としてどうなのか
を明らかにしようとした。
田中角栄に対する評価はたくさんあるが、
人間味があるというところを、明らかにしようとする。
困った人に対して、とことん対応する。
政治家とは何かを心得ていた。
政策立案能力、アイデア、現場解決能力など、
様々な場面で、田中角栄の凄さを語る。
資源に関して、積極的に動いたことが、
アメリカより、睨まれる。
それが、ロッキード事件の発端とも言える。
小佐野賢治との関係ももっと明らかにしてもいいが、
サラッとしている。
佐藤昭子で浮かび上がらせようとしているからだ。
田中角栄を歴史小説の手法で明らかにしようとしているが、
なぜか、物足りなさを感じる。 -
タイトルの通り「田中角栄の生涯」が、時系列に綴られている。本書下巻では、角栄が閣僚入り、自民党三役、首相就任、そしてロッキー事件に至り、首相辞任、竹下氏の経世会創設など、人生の最盛期から終焉期までが綴られている。読み終わったときに、何故か虚しさと淋しさを禁じ得ない。