パレード (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 7017
レビュー : 1053
  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344405158

作品紹介・あらすじ

都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、"本当の自分"を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 映画を観てから、どうしても読みたくなって購入した。
    結論としては良かった。5人のより詳細で繊細な感情が伝わってきた。

    先に映画を観ていたせいか、脳内に出てくるイメージはどうしても俳優たちになっていたけれど、その描写が想像に容易かった。

    たんたんと描かれてる話の中にたくさんの「こわい」が散りばめられていて、読後感は決して爽やかではない。
    けれど、何か惹かれる。中毒性がある。
    映画も結局2回見返してしまったけれど、小説の方も何回か読んでしまいそう。

  • 5人の若者が住む2LDKの家が舞台。
    シェアハウスでの生活の有り様が、5人それぞれの視点から描かれている。

    一見、何も問題がないお洒落で愉快な生活。
    でも、実は…

    このお話、「直輝」と「それ以外」で分けて考えるととても興味深い。

    例えば。

    ・直輝だけが最初からこの家の住人。直輝がいなければ、5人の生活は成り立たない。

    ・直輝以外は、5人の生活を気に入っていて、維持したいと思っている。
    それゆえに、「この家に合わせた自分」を少なからず意識し、演じている。サトルはその象徴だが、他の3人も気楽な大学生、彼氏依存、自由奔放な呑兵衛に意図的になり、深刻な面を見せないようにしている。

    ・直輝だけは、「頼りになる兄貴役」を「他者によって」やらされている。
    (本当は自分の狂っている部分に気付いてほしかったのかもしれない。)

    ・5章では、直輝の本性をみんなが「知っている」とされるが、4人にとって直輝の犯罪行為は、ただ自分たちの心地よい空間を脅かす面倒くさい、迷惑な行為でしかない。

    サトルにしかり、直輝を警察につき出さない理由が、「直輝を守るため」だったならそこまでぞっとしないだろう。

    直輝だけは、5人の「パレード」の維持に必要な、決して離脱を許されない存在なのである。

  • うわぁ、怖い…。
    本を閉じてからが、凄く怖い。
    サトルを加えた、このまま5人の今までと同じ生活が続いていくのも怖い。
    それとも、全員いなくなってしまう(色んな意味で)のも怖い。

    解説の川上弘美さんと同じく、何度も読み返して怖さを確認したくなる。
    不思議な感覚。

    物語は、都内のマンションで共同生活をする男女4人の日常。
    そこに、ひょんな事から加わる男娼のサトル。

    登場人物は全員が、一般的な現代の若者。表向きは善人だし、最低の常識も持ち合わせている為、特にトラブルもなく暮らしてきた。その日常が楽しそうで、時々起こる小さな出来事は退屈な毎日のスパイスにさえ見える。

    そう。私もこの5人が大好きだ。
    怖い小説なのに、この5人の中に混ざりたいと思ってしまうのは何故なんだろう。

  • 5人(1人は物語の途中で入ってくる)の男女が一緒に住んでいるシェアハウスの生活が淡々と描かれた小説。物語の中で何回も強調されるのは、シェアハウスでの生活が、住人たち一人一人の暗い部分や悲壮な部分をその生活においては表に出さないようにしていることで成り立っているのだ、ということをそこに住んでいる一人ひとりが自覚しているということ。それは同時に、そこに住むほかの人がある種「演技」しているということを、指摘しないことで成り立っているということでもある。「直輝」が周辺での連続傷害事件の犯人だということを、「直輝」以外の住人が皆知っていてなお、なにもなかったかのように生活していたことが最後に明らかになる。それは、「演技」を暴かないことでその生活が成り立っているということの表現だと思う。
     そして、面白いのはそのような「うわべだけの付き合い」が、必ずしも否定的に描かれないこと。事実、途中でその家に住み始めたサトルは、そこでの生活を楽しいと感じている。僕としては、太宰治の『人間失格』の冒頭で、主人公が「わざ、わざ」と言われるシーンを思い出した。演技していることが暴かれてしまうことの気持ちの悪さ。演技をしていることが暴かれないことが約束されている世界、それは確かに心地いいかもしれないと思う。

  • 居心地のいい人間関係を継続しようとすると、その人間関係の参加者は「そこで演じる自分」を変更できなくなり、かつ、相手に変更させないようにする、ということを描いていると思いました。

  • ルームシェアをしている5人の男女。
    彼らは、生活の場とそれ以外の場所で違う顔を使い分けている。
    ある人は、親友が亡くなった悲しみを部屋では見せない。
    ある人は、心の中にある負の感情をしまいこむ。
    途中からシェアに参加する少年は、他の4人が思い描く理想像を演じるために嘘をつく。
    そうして彼らのルームシェアは成立する。
    シェアする部屋では、楽しいことしか見せない。
    楽しく皆が並んで行列をするパレードのように。
    もし、怒りや悲しみ、負の感情を抱くのなら、そのパレードから出れば良い。

    また、物語の中で発生する暴行事件。
    登場人物のうちの一人・未来がその事件の犯人は、シェアに途中から参加した少年・サトルかと疑う。
    「私が知っているサトルは、皆が知っているサトルとは違う気がする。」
    それをシェア仲間の兄貴分・直輝に相談すると、こう言う。
    「皆が知っているサトルなんて存在しない。」

    この場面で、ハッとする。
    もしかしたら、自分や自分の周囲の人も、その場や人に合わせてキャラクターを使い分けているのだろうと。
    そのキャラクターの中には、明るく楽しいキャラクターも居れば、負の感情を持つ悪人も居るかもしれない。
    この社会の中では、自分の中にある複数のキャラクターを使いわけ生きている。
    それが上手くいななくなった人は、社会から離脱する。

    そう思うと、こわくなる。
    本当の自分とは何なのか。
    周りの人たちは、自分の何を知り見ているのか。
    また、自分が日々接している人たちは?

    読み終わった後、何だかもやっとした不安が残る。
    少し後味の悪い作品。

  • もう何作目かの吉田さん作品。

    巻末の解説は「こわい」と表現していた1つ、この話のラストは、
    まともに見える人が意外とそうじゃないという点では、ある意味読めた。

    それより、お互いを詮索しない住人たちが、調和とは異なる不思議なバランスで
    一つ屋根の下で同居している「おもしろさ」のほうが印象に残った作品。

    「毎日何千台と車が通っているのに、ぶつからないのって不思議」
    というのと似ているなと。

  • この空気、雰囲気、よくわかる
    最後の最後に衝撃 吉田修一の本って感じ

  • 先に映像化作品を鑑賞しておりたまたま書架のタイトルに反応して手にとった次第。タネ明かしをされた状態での再鑑賞はこれいかに…

    で、結果は上々。映画では味わえなかった章ごとの語り口や視点の遷移が楽しく、それでいて時系列的に物語が進んでゆくのが面白い。うまい、とついうならされてしまう。

    「空気を読む」という言葉が日常語になったのはいつ頃からなのだろうか。その言葉の浸透感と同じように増殖してきた空気を読むことにだけ長けた世代というのが今の日本には確実にいるように思える。その世代、人口層に対する警鐘とも受け取れるこの題材。

    もう一度細部にこだわりながら読んでみたい。そんな気持ち。

  • 人が集まる場所ではあるかもしれない。自分の居場所を確保するために。でも、じわりとくる怖さ。

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著者プロフィール

吉田 修一(よしだ しゅういち)
1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業後、スイミングスクールのインストラクターのアルバイトなどを経験。
1997年「最後の息子」で第84回文學界新人賞を受賞しデビュー。同作は第117回芥川龍之介賞候補にもなった。
2002年『パレード』で第15回山本周五郎賞を同年「パーク・ライフ」で第127回芥川龍之介賞、2007年『悪人』で第61回毎日出版文化賞及び第34回大佛次郎賞、2010年『横道世之介』で第23回柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。2016年には芥川龍之介賞選考委員に就任している。
その他の代表作に、2014年刊行、本屋大賞ノミネート作の『怒り』。2016年に映画化され、数々の映画賞を受賞。体当たりの演技を披露した広瀬すず出世作としても名を残すことになる。

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