パレード (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344405158

作品紹介・あらすじ

都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、"本当の自分"を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 第15回山本周五郎賞受賞作。
    ということで、期待値を上げ過ぎた感あり。
    解説の川上弘美さんが、怖い小説だと解く。
    4回読んだとのことで、その都度怖さが変わるとのこと。

    都内の2LDKのマンションを男女4人でシェアする若者達。そこに一人の男娼の男子が加わり、波紋が広がる。
    各章、それぞれの視線で日常が描かれる。
    彼らは、それぞれ問題があるし、将来設計などとは無縁。だけど、同じ空間の中で優しく振る舞い、一定の距離を保てる同居人。
    この中で一番大人の生活をしていたと思われる男の影の行為を知りながら、日常を続け切る他の同居人。現在の自分の領域を守るためか、奇異に映るこの行為が特別でないかもしれないことが怖いのかもしれない。

    • 1Q84O1さん
      自分の本棚見てみたら『横道世之介シリーズ』は高評価で、それ以外はあんまりでした…w
      自分の本棚見てみたら『横道世之介シリーズ』は高評価で、それ以外はあんまりでした…w
      2024/03/02
    • おびのりさん
      横道さん人気だよね。私は、人気作品は数年後。
      横道さん人気だよね。私は、人気作品は数年後。
      2024/03/02
    • 1Q84O1さん
      文庫化まで待ちましょう…
      文庫化まで待ちましょう…
      2024/03/02
  • 1.著者;吉田氏は小説家。型にはまる事が苦手なタイプで「僕は庶民です。庶民感覚をなくさないでいる、というよりも庶民です」と言う。日々の楽しみは、小説を書き終えた後のドライブ。さらに「相手が動物であれば、正直に自分の心の内をぶつける事が出来る心地よさが穏やかな一時を作り出す」と、2匹の猫と暮らす愛猫家。本書(パレード)で山本周五郎賞、パーク・ライフで芥川賞・・等、多数受賞。純文学と大衆小説の文学賞を受賞した事で話題となる。台湾好きで、台湾でも人気作家。
    2.本書;マンションで共同生活を送る若者達の日々を描く。一見普通の男女4人の日常生活に隠されたそれぞれの秘密が題材。5章構成。各章は異なる人物の視点で語られる。第1章;杉本(21歳大学生)先輩の彼女に恋して悩む。第2章;大垣内(23歳無職女性)若手人気俳優と恋愛中。第3章;相馬(24歳雑貨店女性店長)売れない絵を描き続ける。第4章;小窪(18歳男娼)無駄な若さを切り売り中。第5章;伊原(28歳男性会社員)健康オタク。奇妙な若者達の虚々実々な生活が描かれ、不気味な結末を迎える。
    3.個別感想(心に残った記述を3点に絞り込み、感想と共に記述);
    (1)『第2章;大垣内の語り』より、「(丸山;元恋人)社長の息子ってだけで、ただそんだけで、本当にあそこまで偉いのかよって。・・フロア長、“次の社長なんだから偉いに決まっているだろ!”」「俺さ、やっぱり思うんだ。社長の息子にペコペコするのって、当り前の事じゃないんじゃないかなぁって。世の中で当り前だって思われる事って、実は結構当り前じゃないんじゃにかなぁって」
    ●感想⇒「社長の息子にペコペコする」行為は、同族会社にしばしば見られると聞きます。この記述の前文に、「まだ19歳でBMWに乗ってる。大学の休みに、社長と2人で自社(ホームセンター)の見回りに来た時、店長やフロア長が、いい歳なのにその息子にペコペコ頭を下げるんだ」とあります。企業人なので、お客様には失礼無き対応が必要です。しかし、社長の息子への過度なペコペコ行為は、傍(特に若い人)からは滑稽に映るかも知れません。上司に敬意を払うのは常識と言え、“過ぎたるは猶及ばるが如し→人のふり見て我がふり直せ”が必要ですね。とは言っても、本書のような会社は嫌ですね。本田宗一郎氏は、実力本位で後継者を決めたと言います。新入社員に向けての言葉、「会社で長がついたら(人間として)偉いという事ではない」と。世界のホンダと言われる所以でしょう。
    (2)『第3章;相馬の語り』より、「世間では一般に、この匿名であるという事で、人間は本性を曝け出すようになると信じられている。・・もしも私が匿名で何かを出来るとしたら、私は決して本当の自分など曝け出さず、逆に誇張に誇張を重ねた偽者の自分を演出するだろうと思う。今の世の中、“ありのままで生きる”という風潮が、なんだか美徳の様になっているが、ありのままの人間なんて、私には“怠惰でだらしのない生き物”のイメージしか湧いてこない」
    ●感想⇒「ありのままの人間なんて、私には“怠惰でだらしのない生き物”のイメージ」と言っています。“ありのまま”と“怠惰でだらしない”は少し違うと思います。私は、“”ありのまま=自然で着飾らない、怠惰でだらしない=するべきことをせず節度がない”と考え、ありのままで生きる事に憧れます。しかし、誰もが社会の中では、自分を曝け出さずに節度を持って生活していると思います。そうでなければ、社会の秩序を保てないでしょう。所で、現代は親しい人だけでなく、家族間でさえ本音で向き合えない家庭が少なからずあると聞きます。ストレスが貯まり気詰まりな世の中です。人間は自然体でいられ、安らぎを求めるものです。自分なりの居所を模索したいですね。先人の言葉、木曾義仲の『直情径行(自分の思ったままに行動)』、論語の『剛毅朴訥(意志が強く飾り気無し)』、好きな言葉です。
    (3)『第3章;相馬の語り』より、「(良介の言葉を想定)“自分さえしっかりしていれば、どんな状況でも立派に生きていける”って言う奴もいるけどさ、俺はそうは思わないね。どんなに自分がしっかり立ちたいと思っても、足元がぬかるんだ泥だったら、絶対に倒れちゃうに決まってるもん。あいつにはさ、なんていうか、そんな泥の中から引き上げてくれるような人間が必要なんだと思うよ」
    ●感想⇒“人間は自分さえしっかりしていれば立派に生きていける”は正しいと思います。しかし、人間は社会の一員なので、どんなに頑張っても自分だけの力で生きていく事は出来ないのも事実です。会社生活を例にとっても、同僚・上司・・等々の支援がなければ、上手く行きません。私は“俺だから出来たのだ”と自画自賛する人を好きになれません。何事も、“会う人みな師匠(吉川英治)”の心で他人に学び、感謝の気持ちを大切にする人を尊敬します。信頼のおける人とはこのような人だと思います。私もこれまで沢山の人に助けられきたので、少しでも恩返しができれば、と考えています。
    4.まとめ;最初、“パレード”という題名を読んだ時、よくある青春ものかと思いました。読んでみて、人間は外では誰もが仮面をかぶって生きているのだなあというのが率直な感想です。最終章を読むと、怖いミステリー小説とも言えます。次に、世代ギャップを感じました。私にも若き良き時代がありました。年を重ね、今では良くも悪しきも大人です。先の3つの感想も少し道徳的かも知れません。本書で語られる若者の豊かな感性に気付かされる事があり、貴重です。人間はそう簡単に変われるものでは無いので、私なりの考えを吐露したつもりです。たまにはこうした小説を読むのも良いものです。(以上)

    • 村上マシュマロさん
      こんばんは、ダイちゃんさん。夜分遅くに申し訳ありません。
      ダイちゃんさんの感想に使用される言葉の数々、いつも勉強や共感を得ます。

      勉強にな...
      こんばんは、ダイちゃんさん。夜分遅くに申し訳ありません。
      ダイちゃんさんの感想に使用される言葉の数々、いつも勉強や共感を得ます。

      勉強になった事→感想中の木會義仲の「直情径行」や子路の論語「剛毅朴訥」です。

      共感を得た事→“ありのまま”と”怠惰でだらしない”は少し違うと思う点や人間は社会の一員なのでどんなに頑張っても自分だけの力で生きていく事は出来ないも事実、”会う人みな師匠“の心の考え方です。

      私も沢山の人達に助けられてきて、今の自分が成り立っています。やはりその方々への感謝を忘れずに生きていきたいと思います。また少しでもどういう形かわかりませんが、些細な事でも何かしらの恩返しができていければ良いなぁと思う次第です。

      ダイちゃんさんの感想を拝読させて頂き、自分の人生の振り返りが改めて少し出来たと思います。

      ありがとうございます。
      2022/10/20
    • ダイちゃんさん
      おはようございます。昨夜は疲れて早く就寝してしまいました。いつも拙いレビューを読んで頂き、有難うございます。マシュマロさんのコメントを拝読す...
      おはようございます。昨夜は疲れて早く就寝してしまいました。いつも拙いレビューを読んで頂き、有難うございます。マシュマロさんのコメントを拝読する度に、私としても新たな気付きがあります。今後も色んな本を読んで、レビューしたいと思っています。よろしくお願いします。
      2022/10/21
    • 村上マシュマロさん
      こんばんは、ダイちゃんさん。
      レビューの返信が遅くなり、申し訳ありません。
      返信を頂き、有り難く思います。
      今後とも宜しくお願い致します。
      こんばんは、ダイちゃんさん。
      レビューの返信が遅くなり、申し訳ありません。
      返信を頂き、有り難く思います。
      今後とも宜しくお願い致します。
      2022/10/21
  • 冬のなんとかフェアで本屋さんに並べられており、
    有名作品のようなので購入。
    約20年前の作品!?なのかな
    ウルトラマリンとか懐かしい〜!香水。

    4人プラス1人追加でルームシェアしながら、それぞれの視点で語られていき、比喩がとても面白くリアルで面白い。人の本質は誰にも周りにはわからないと理解できるものの、わかるけど、恐ろしいな。

    このまま、それぞれの生活スタイルや考え方を共有され「それぞれ色んな価値観あるよねー」のような読後感で終わるかと思いきや、最後トンカチで頭叩かれた気分……(^◇^;)
    これは、、解説の川上さんが書かれてるように再読したら余計怖そう。川上さんは4回読んだ模様。

    なんか、なんとも言えない気持ちになり、このあとはアマプラで、、
    ボーっと永野芽郁ちゃん可愛いなあと、バトンを視聴。

  • 2LDKのマンション。
    そこに良介、琴美、未来、直輝の男女4人が共同生活をしている。
    そこにもう一人サトルが加わり、5人。
    物語は5つの章からなり、5人それぞれの目線から語られる。

    良介は、四階のベランダから眼下の通りを見下ろし、事故の起きない車の動きを不思議だと言う。
    1日に何千台と車が走っているのに、全然ぶつからない。赤信号になると一定の間隔を空けて、ちゃんと止まる。

    未来は、ここで暮らしている私は「この部屋用の私」だと考える。
    そしてここにいる彼等も「この部屋用の自分」を創り出していると考える。

    こうやって私達は、その場その場に合わせた自分を創り、空気を読み、ぶつからないように生きている。
    本当の自分って何なのだろうか。
    最後の直輝の章では背筋が寒くなる。
    読み終えてすぐ、もう一度読み返したくなるのはなぜだろうか。

  • 5人の若者が住む2LDKの家が舞台。
    シェアハウスでの生活の有り様が、5人それぞれの視点から描かれている。

    一見、何も問題がないお洒落で愉快な生活。
    でも、実は…

    このお話、「直輝」と「それ以外」で分けて考えるととても興味深い。

    例えば。

    ・直輝だけが最初からこの家の住人。直輝がいなければ、5人の生活は成り立たない。

    ・直輝以外は、5人の生活を気に入っていて、維持したいと思っている。
    それゆえに、「この家に合わせた自分」を少なからず意識し、演じている。サトルはその象徴だが、他の3人も気楽な大学生、彼氏依存、自由奔放な呑兵衛に意図的になり、深刻な面を見せないようにしている。

    ・直輝だけは、「頼りになる兄貴役」を「他者によって」やらされている。
    (本当は自分の狂っている部分に気付いてほしかったのかもしれない。)

    ・5章では、直輝の本性をみんなが「知っている」とされるが、4人にとって直輝の犯罪行為は、ただ自分たちの心地よい空間を脅かす面倒くさい、迷惑な行為でしかない。

    サトルにしかり、直輝を警察につき出さない理由が、「直輝を守るため」だったならそこまでぞっとしないだろう。

    直輝だけは、5人の「パレード」の維持に必要な、決して離脱を許されない存在なのである。

  • これはなかなかの破壊力ある一冊。
    「え?思ったよりありふれてますけど、なんてことなかったんですけど、予想通りなんですけど!」と言う感想と「これはゾッとする」という感想で2分される物語だと思うのですが私は後者のほう。

    2LDKに暮らす5人の日常を章ごとにひとり1人の視点から語られるストーリー。
    ふわっとして特に特徴もない大学生の横恋慕に始まり、お次は恋人からの連絡をひたすら待ち続けるためだけに無職である女。
    ちょっとダメな男女たちの奇妙なシェアライフをこちら側から垣間見る退屈なスタート。
    と見せかけてからの…通り魔事件の発生。

    「普通」であることは難しい。5人それぞれが「普通」ではない壊れた部分をひた隠しながら、表面上は面白おかしく暮らしている。
    自分に都合の良い部分しか見せずに、都合の良い部分だけしか見ようとはしない。そして都合の悪いことは見えないことにする。

    物語として〝極端〟ではあるけれど、それは私たちが暮らす日常においても何ら特別なことでもなければ、不思議なことでもない。ダメ人間であるほどに人間くさいことは否めない。

    どんでん返しミステリーではないけれど、ひとり1人の描写が丁寧であった分だけ、やはり終章はゾッとせずにはいられない。

    今年の2冊目

  • うわぁ、これは初めての感じ。

    ほのぼのと楽しく読んでいて、このままほのぼの終わるのだろうと予測していたら、まさかの展開。

    この作品に評価をつけるのが凄く難しい。
    でも私は皆さんの評価でこの作品を購入した。

    文章もリズムもとても好き。
    まさかの展開もびっくり。

    私はアリだと思う。
    でもこの作品を誰かに貸すかは、、、
    ちょっと考えるかもしれない。。。

    うん、そんな作品。

  • 5人の不思議な秩序とちょっとしたバランスが崩れたことで芯が狂ったかのようなフィナーレが恐ろしや。

  • 居心地のいい人間関係を継続しようとすると、その人間関係の参加者は「そこで演じる自分」を変更できなくなり、かつ、相手に変更させないようにする、ということを描いていると思いました。

  • 若干底辺な感じのお気楽な若者もいるかな〜くらいの気持ちで読んでいたが
    読み進めるにつけ、ドブの底の汚泥のような生臭さや嫌悪感が湧き出てきた。
    …そして最後。
    なぁるほど私は吉田修一さんの手のひらの上でまんまと転がされていたわけですね〜。

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著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

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