永遠の仔(五)言葉 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344405844

感想・レビュー・書評

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  • 重い内容ながら、読み進まずにはいられなかった「永遠の仔」、最終巻でついに全ての謎が明かされる。

    これまでの話の展開もそうだが、未解決だった事件の真相も衝撃的すぎる。
    唯一の救いは、優希の母が遺書に残した優希への謝罪と、「あなたは絶対に悪くない。間違っていもいない。あなたは、本当は、少しも汚れていない」「あなたを愛しています」という言葉か。

    しかし、17年前の山登りの際、父を突き落としたのは母だったということをもっと早く打ち明けていれば、梁平も笙一郎も優希もここまで苦しまずにはすんだのではないか。笙一郎が発作的に虐待した親や梁平に振られて傷ついていた奈緒子を殺したり、優希の弟、聡志が亡くなったりすることはなかったのではないか。
    傷ついた者たちが、互いのことを大切に思うが故に、17年もの間、真実を語れずにいた。そして、そのことによって、本来であれば、支え合えたかもしれなかった人たちが距離を取り、それぞれが独りでその苦しみを抱え、さらには自分自身を責め、傷つけながら生きてきたなんて切なすぎる。

    著者が文庫版あとがきの中で「この小説は、・・親にされたことをつい繰り返したり、繰り返す不安にふるえていたりする人・・・また、過去の傷へのとらわれから、なかなか抜け出せずにいる人に、寄り添いたいと願った作品でした」と書かれているが、おそらく幸いにして、そういうこととは無縁に生きてきた人たちにも、いろいろな気付きを与える作品だと思う。

  • なんて難しい人生を描くのか。特にモウルに至ってはメインキャラクターとしての描写じゃなければこの同情を、同じように感じ得ていたのか。例えば彼が殺した被害者たちの遺族が主要登場人物の物語があったとして、私はそれをどう感じるのだろう。結局、自分が立っているところから見える範囲でしか世界を切り取れなくて、切り取った世界が自分の世界でしかないってことであって。感情ってつまり一元的でしかないのに、心の大部分を占めていて。ああ、生きるってなんて大変なんだろうと思わざるを得ない小説だった。だけど、だから、ジラフの「生きてていいんだ」って最後の言葉以上にこの物語を締めくくるのにふさわしい言葉はないような気がしてくる。名作でした。

  • 石鎚山

    に、登ってみました
    鎖場があって、険しくて、なんとなく敬虔な気がしたのは、この本を読んでいたからでしょうか

    苦しい、苦しい、物語

    誰かの苦しみを思いやって、してはいけないことをしてしまう人たち

    自分の大切な人のために罪を負うことを選ぶということ

    せめて、残った人の生きる道が、少しでいいから平坦になればいいなと思います

    中谷美紀さんが大好きで、同時、ドラマも観ていましたが、本当に辛いお話でした
    坂本龍一さんの音楽も素晴らしいです

  • 5巻、台風で家に閉じ込められていたこともあり、1日で一気読みしてしまいました。

    望んだ結末ではなかったが、悪い終わりではなかったと思う。

    心にグっと響く物語だった。。。
    読み終わった直後の今は胸がいっぱいになった。
    読後のカタルシスも凄い。

  • 記録用(感想は(一)に記載)

  • 母に続き弟まで喪ってしまった優希、母と優希への愛情にもがき苦しみ続けた笙一郎、そして恋人を殺害されてしまった梁平。三つの無垢なる魂に最後の審判の時が訪れる…。十七年前の「聖なる事件」、その霧に包まれた霊峰に潜んでいた真実とは?〈救いなき現在〉の生の復活を描き、日本中に感動の渦を巻き起こした永遠の名作、衝撃の最終章!

  • 5巻の超長編なのに、一気に読み切った作品。とにかく重い。つらい。でも読ませる。

  • 先に読んだ『悼む人』における、人生で大事なことは
    「誰を愛し、誰に愛され、何をして人から感謝されたか」

    今作では
    「相手を認めること、相手から認められること」

    永遠の仔があって、10年経って、悼む人ができたんだと、感心し納得した。

  • 当たり前の愛情を、当たり前には享受できなかった人々の悲しい話。
    一応ミステリという体裁ではあるものの、ミステリ的な読み方を楽しむ小説ではないのは皆が一致するところではないでしょうか。

    私はおそらく当たり前に育ったことになるのだろうから、登場人物の心情・行動については理解できない部分もあったものの、重いテーマを読者に問い、深く考えさせられる作品であると思います。

  • 予想通りの結末に着地。児童虐待などのテーマの小説が溢れている昨今ではあまり衝撃度がなかったのかもしれない。

著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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