廃用身 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 957
レビュー : 170
  • Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344406391

作品紹介・あらすじ

廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく-。『破裂』の久坂部羊の、これ以上ない衝撃的かつ鮮烈な小説デビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 久坂部さんのデビュー作。
    実話なんじゃないかと思えるほどのリアリティだった。
    今現在、下半身の麻痺でリハビリ中の父がおり、病院でリハビリを施してもらっている身内として、非常にうなずける点もあり、結末は果たしてどのようになるのかと不安にかられながら読了。本当に胸の苦しくなるような展開だった。
    きちんとした取材もなしに面白おかしく記事にするマスコミも許せないし、それに乗る世論も腹立たしい。
    医師会の縄張り争いにも嫌気がさす。
    本当にフィクション?

  • 廃用身
    脳梗塞などで麻痺があり、動かすことの出来なくなった回復する見込みのない手足のこと。

    医師漆原の遺稿と、編集者矢倉の註釈によって構成される物語。
    はじまりから終わりまで、漆原と矢倉の共著の形になっているため、この物語自体が創作物なのか、実際に刊行された書物なのかわからなくなるような一冊。
    面白い趣向だなと思った。

    漆原は、老人医療を専門とする医師。
    老人医療に欠くことの出来ない介護。高齢社会となり、介護に関しての問題は深刻になるばかりだ。
    麻痺のある高齢者の介護は、介護する側の負担が大きい。
    動かないばかりか拘縮を伴ったりして、介護する妨げになる手足を切断したら、介護をする側もされる側も随分楽になるのではないか。漆原はそう考える。
    患者の同意を得て、廃用身である手足を切断していく漆原だが。

    本作も医師である久坂部羊の着眼点は的確で、漆原の考えは盲点とも言える。
    それでも、動かなくなって邪魔になったからあなたの手足は切りましょうと言われて、わかりました、お願いしますと即答出来るひとはいないだろう。
    虫歯を抜くのとは訳が違う。

    きちんと動いて問題ない手足であって、現在介護を要する状態ではないため、想像することも難しい。
    もし、手足が動かなくなったら。
    もし、介護をしてくれる家族や介護士の身体的負担が重そうだったら。
    もし、毎日介護される度に恐縮してばかりだったら。
    もし、介護をしてくれる家族に虐待されたら。
    もし、もし、もし。

    わたしは、動かない手足を切ってくださいと言えるだろうか。

    漆原のとった方法は、ベストではないかもしれない。
    それでも、動かない手足を切断することによって身軽になったら、介護する側の身体的負担は軽くなるだろうし、介護される側も身軽な分動きやすいだろう。
    高齢者が増える一方で、介護者の数には限りがある。
    介護の負担が重ければ、介護者も増えにくいだろうし、少ない介護者に介護をされるには費用も嵩んでくる。介護の質も落ちるかもしれない。
    現在の介護問題を一気に解決するような方策が無い以上、漆原の考えを馬鹿なことをと一蹴するのもどうかとも思う。

    介護から遠い場所にいるひとは、とかく介護に精神論を持ち込みたがる。
    高齢者は敬うべきだ。
    親を介護するのは当たり前。
    大切なひとなら頑張れるはずだ。
    でも、実際はそんなものではないだろう。
    愛情があれば何とかなるなどと、そんな簡単なわけがない。

    こういった問題は、これが正解というものがない。
    だから難しい。
    本書のようなものを読み、ひとりひとりが他人事ではなく考えておくことが大切なことかもしれない。

    久坂部羊さんの文章は、「無痛」においてもそうだったが、大変読みやすい。
    切断など戸惑う表現も多いが、医師である作者の視点は説得力がある。
    特に本書は現実味を帯びており、考えさせる一冊だった。

  • ノンフィクション的小説w あるある・・・でも、やっぱないよなー、みたいなww
    でも、お医者さんが書いてるのでリアル。どこまでがホントか?とザワザワした気分になる。

  • 他校の高校生がビブリオバトルで紹介していた本です。「老乱」をはじめ、老人問題や介護問題に言及する医療系の小説の多い作者の、これもまた衝撃的な作品でした。

    脳梗塞などで身体に麻痺のある要介護老人たち。
    彼等のQOLや介護者の負担を減らすため、動かない手足を切断するという「治療法」を開発した医師と、彼を巡る社会の混乱を描いた作品です。
    一概にフィクションと言いきれないようなディテールの細さに加え、実際問題としてこれからの超高齢社会における「不安」を示している点など、読んでいて「ザワザワ」させられます。
    理想に燃える主人公と彼に賛同するスタッフ、一方で彼の独善だと批判するメディア双方の在り方が描かれていて、ただのヒーロー物になっていないところも、小説としての完成度を感じます。

    決して綺麗事だけでは解決しない、根深い社会の課題にどうとりくんでいくのか、目をそらさずに考えなくてはならないのだと、改めて感じます。

  • 最初ノンフィクションだと思ってた!
    小説として面白かっただけじゃなく、リアル世界でこれからどんどん増える介護の問題を考えさせられた。
    ほんとにこの治療法、ありえるんじゃないか、と。

  • 評価に迷う。読んでよかったかと言われたら、絶対NOで、読まなきゃよかったとさえ思った。でも「Aケア」と呼ばれる奇妙な治療(なのか?)から目が離せなくなり、一気読み。「廃用身」という言葉にずっと嫌悪感を抱きながら。

    フィクションですよね?リアルすぎてノンフィクションのルポを読んでいる気になる。
    前半の漆原医師の遺稿を読んでいると、確かに洗脳と言うか、これだけメリットを並べられると「あれ?Aケアって正しいのかな」と思わせられた。でもやっぱり心がザワザワする!なんかすっきりしない。自分の両親の体のどこかが廃用身になって、「Aケアしてください」って言えない。。。それは自分がまだ介護の大変さを身に染みて実感していないからなのか。。衝撃的すぎる内容ではあったけど、高齢化社会に向けて介護について考えさせられる本ではあった。

  • 最初は完全にノンフィクションだと思って読んだ。
    こんな治療法?があるんだなぁ…と。
    それほどリアリティがある。

    しかし途中から小説っぽさが出てきてようやく気付いた。
    老人介護は、自分はまだ身近ではないけれど将来何らかの形で必ず関わることになると思うと、ただ小説だから、フィクションだからと終わってしまうのはもったいないかと感じた。
    漆原先生の狂気の部分はもうちょっと詳しく知りたい気がした。その後の話が多くて、説明っぽくなってしまっていたので最後らへんが面倒くさかった。
    Aケアやってる現在進行形で漆原の内面の話が出てきていたらもっと楽しかったと思う。
    漆原の子どもの事故後の匂わせ方とか、小学校時代の友人の悪意?なんかは、すごくフィクションぽかった。

  • なかなかの衝撃的なことですが…ストーリーはぐいぐいといくし、楽しめました。
    読んでると、それもありかもと思ってしまうぐらいには、のめりこみました。
    実際はどうなんでしょうね。
    最期のことばは衝撃でした。

  • うひょー これはオモシロイ!

    脳梗塞などで麻痺した手足を自分や介護者の負担軽減のために、手術で切断ていく話。

    Aケア、と名付けられたこの処置は、老人のQOLを劇的に向上させる。

    出版に向けて動き出したところで、マスコミに祭り上げられ、医師 漆原は毅然とした態度を取りつつも、翻弄されていく。

    最後まで読みやすく、実話かと思うような描写。

    あー おもしろかったあ。
    誰かに貸したくなる本。(というか差し上げます)


    この著者の他の作品も読んだことがあるが、この人の問題意識にはすごく共感できる。
    また読んでみよう。

  • フィクションの体裁をとっているのは、実はノンフィクションで衝撃的な現実を曝すためだったりして?と勘繰ってしまうリアルさ。実際の介護問題に、人の心の闇を絡めたストーリー展開に引き込まれてイッキ読みした。人によっては嫌悪感で途中放棄したくなるかもしれないけれど…

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著者プロフィール

大阪府生まれ。大阪大学医学部卒業。作家・医師。2003年、小説『廃用身』でデビュー。小説に、『破裂』『無痛』『悪意』『芥川症』『いつか、あなたも』『介護士K』、エッセイに『大学病院のウラは墓場』『日本人の死に時』など、医療分野を中心に執筆。

「2019年 『黒医』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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