崩れる日なにおもう 病葉流れて (上) (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎 (2005年12月1日発売)
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本 ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784344407268

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  • 1

  • 大学を卒業し、大阪の会社に就職した梨田。しかし、勤め人の生活が性に合わず辞めてしまう。自分自身を借金のカタにとられ、先物取引の会社でコキ使われる事に・・・。その前に最後の卓をいつもの面子で囲む。

  • 「毀れゆく者、なにを祈る」――。梨田雅之が大阪のメーカーに就職してそこをやめるまでの事が描かれています。やはり、梨田雅之はなるべくして梨田雅之になったのだ。そう思います。

    大阪の電機メーカー「S電器」に就職した梨田雅之は新入社員として社会人生活を送ることになる。しかし、東京で放蕩無頼の限りを尽くしてきた彼にとって、「使われる」身分というものはただただ苦痛でしかなかった。そんな時、梨田は就職試験で大阪に行ったときに立ち寄った「ブー麻雀」の雀荘「赤トンボ」に赴き、そこを切り盛りするタッちゃんと一枝の夫婦に再会する。なれない仕事と、ホワイトカラー族に対する違和感。上司や同僚、先輩からもだんだんと疎んじられる梨田はその鬱憤を晴らすかのように破滅的に競輪、さらには千点一万円という無茶苦茶なレートの麻雀を打ち、競輪で買った儲けをすべて吐き出すばかりか、借金までこしらえ、男と女の関係になった一枝の店も担保にかけてそれを巻き上げられるという苦境に立たされます。

    もうこうなると完全にブッ飛びすぎていて、おとぎ話の出来事のようでした。そして、ここで麻雀を打っている面子もまた魅力的で、ヤクザ者の安藤。アルバイトサロン(いまでいうキャバクラ)をはじめとする水商売で成功した坂本。そして、パチンコ屋をいくつも経営する金本など。ピカレスクな魅力が全開でした。社内での同僚や先輩たちを麻雀でカモにしながら、「すみれ倶楽部」でホステスをするようになった一枝と一緒に暮らす梨田。ロクデナシ街道を大爆走です。

    ある日、梨田の勤める会社の元に、一枝と別れたタッちゃんが訪ねてきて、梨田はまた「ヤクザと交際している」などと社内では噂が立つようになります。そして、莫大な借金を抱えた梨打は一枝と波口というバーテンダーの三人をお互いに保証人とすることを条件に「北浜の金貸し」である辻野から300万円を借ります。しかし、彼の本業はこれではありませんでした。

    安藤や坂本、金本を交えた麻雀の再戦ではぎりぎりのところで首の皮をつなぐも、会社を辞めたことで辻野からは借金の一括返済を迫れ、窮した梨田の出した答えは、辻野の会社で働くというものでした。辻野の会社は大阪米穀通商という商品先物取引の会社でした。そして、一週間の猶予を与えられた梨田はまず金沢に行って家業を継いだ永田と再会し、彼の継いだ家業が順調であること、そして自身が先物会社に「転職」することを報告すると永田は
    「そうか、相場か……。いよいよ病んだ葉は木から離れ落ちたってわけだ」
    というせりふを口にします。それが僕にはすごく印象的でした。

    東京に戻って、姫子と再会し、金をもらった後、大学で同級生だった湯浅が競輪による借金で変わり果てた姿になっているのを見ると梨田は彼がかねてからの夢であった司法試験に合格して弁護士ということを約束させ、彼の借金を肩代わりします。そして大阪に帰った梨田は「この先しばらく麻雀はしないから」といって「赤トンボ」で安藤、坂本、金本とともに千点一万円のこうレート麻雀を打つという展開で上巻が終わります。僕がここで麻雀を打てれば打っている場面のスリリングさを描写できるのですが、それは勘弁してください。

    ここでこういう記事を書いてこういうことをいうのもなんですが、物語は物語として、適切な距離を保つことをお勧めします。この本は僕にとってバイブルのひとつで、僕の人格形成に相当な影響をうけておりますが、こういう小説や梨田雅之の生き方に共鳴する、ということは確実に「埒外」の人生を歩むことになり、まっとうな生き方が困難になります。これはあくまで僕個人の意見に過ぎませが、どうか頭の隅にでも入れておいていただけると、たすかります。なにとぞ、よろしくお願い申し上げます。

  • 遊蕩無頼の大学生活を終えた梨田雅之は、就職を機に大阪で新生活を始める。だが社会の枠に鬱積するばかりの日々の中、彼の胸中にあった真っ当に暮らす決意は崩壊し、再び巨額を賭けた博打に溺れて精神の均衡を保つしか生きる術がなかった...。更なる自滅への道程で彼が開いた活路とは?自伝的賭博小説の傑作『病葉流れて』激動の第三部。


  •  宿命が迫り始める

  • 終わってしまうのが心苦しいと思いながらも読み進めてしまいます。

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